「なんですの、これ?」
初春がキーボードを叩く後ろから、モニターを覗き込んでそう呟くのは風紀委員(ジャッジメント)の同僚、白井黒子だ。
風紀委員活動第一七七支部。
第七学区にあるビルのワンフロアで、初春は端末を弄りながら昨日の夜に発生した事件のレポートを読んでいた。
事件が起きたのは隣の第五学区。
この都市では良くあるイザコザである。武装無能力集団(スキルアウト)と中途半端な能力をひけらかすチンピラの喧嘩であるらしいのだが。
「それが良く分からないんですよね。何か特殊な能力なんでしょうか?」
「こいつらがグルになって証言を合わせてる、って可能性もありますわね」
第五学区には飲酒店が多い。年齢をゴマかし、酒を飲みに行く学生が後を絶たないくらいだ。
そんな場所での喧嘩など腐るほどある。
この事件もご多分に漏れず、酒を飲んだ武装無能力集団(スキルアウト)の五人組と、気が高ぶったレベル2から3程のチンピラ能力者集団がぶつかったとの事だ。
武装無能力集団(スキルアウト)とは、《学園都市》に所属しているレベル0達が武装した集団の総称だ。それぞれの学区にチームがあるうえ、都市内の治安悪化の要因でもあったりする。
そんな中、事件は途中からおかしい事になる。能力者の一人が突如暴走したのだ。
更に、本来レベル2程の発火能力(パイロキネシス)が、路地裏を丸々焼きそうになったらしい。
その能力者に『黒い影』の様なものが乗り移った、などというオカルトチックな証言も残っている。
だが事件後に起きた現場検証からも、その痕跡がレベル2程度では無い事。さらにその能力者の身体検査(システムスキャン)結果から、AIM拡散力場に特異な乱れが発生している事が判明している。
「『黒い影』、ねぇ。どうにも胡散臭いですわね」
「『影』の有無はともかく、能力の暴走が起きた事は確かな様ですよ」
顔をしかめながらの黒子の言葉に、初春が幾つかのデータをモニターに出しながら返す。
そして能力の暴走の最中、スキルアウトとチンピラが右往左往する中、一人の男が現れ事態を解決したらしい。
「何ともまぁ。それでその男の能力レベルはどれくらい何ですの?」
「それが……どうやら能力を使わずに解決しちゃったようで」
「能力を使わずに?」
路地裏へ一人の男が走ってきた。
時代遅れの長髪、大きなメガネ。おおよそ前時代的な風貌の男は、野球のバットを一本持ち炎に飛び込んだ。「だ~いじゃうぶっ!」と叫びながら、そのまま暴走した能力者を殴り倒し、そして『影』もバットで打ち倒したとか。
「冗談ですの?」
「それが、現場の映像は無いんですが、周囲の監視カメラの映像と合致するんですよ。ほら」
初春が映し出した映像には、路地裏に走っていくメガネ男の姿が小さく映っていた。
事件解決後、警備員(アンチスキル)が現場に駆けつけた時には、残っていたのは能力者のチンピラ達だけだった。
チンピラ達に話を聞くに、どうやらそのメガネ男、スキルアウトとチンピラの両方に面識があるらしい。
スキルアウトには親しく名前で呼ばれつつ敬語で感謝をされ、チンピラ達には「リーダー」を親しみを込めて呼ばれているとか。
残ったチンピラに話を聞くと、彼らもメガネ男の本名は知らないものの、彼はこうやってイザコザに首を突っ込みまくっているらしい。
その度にバットや拳で能力者を倒し、はたまた集団で襲い来るスキルアウトをなぎ倒し、時には倒した彼らと酒を飲み親しくなったりし、アウトローな彼らから敬意を持たれているとの事。
「……これ、本当ですの? 要注意人物じゃありませんか。なんで今までこの男の名前が挙がらなかったんですの?」
「もちろん、何度かは証言や様々な事件で痕跡を残していた様なのですが、どうにもログを覗いてみると――」
初春が幾つかの事件ファイルを開けるが、どれも虫食いの様に部分部分の文字が文字化けしている。
「こんな風に。ほら、一時期都市内で流行ったコンピューターウィルスがあったじゃないですか、ナリハラウィルスって」
「あぁ、あの趣味悪いおっさんの顔がモニターにドアップになって、『私を追放した学会に復讐してやるーッ!』って叫ぶウィルスですわね。あぁ、思い出しただけで鳥肌が……。それでそれが?」
「あはは。私もアレにはビックリしました。ほとんど実害が無いけど、セキュリティホールへのアクセスの仕方が奇抜なんですよね。私もあの発想には……ゴホン、話が反れましたね。それでどうやらあのウィルス、ほとんど実害が無いにも関わらず、どうやら一定のワードに対しては機敏に反応する様に出来てたみたいなんですよ」
「それが、あの男と?」
初春は少し考えつつ、言葉を返す。
「わかりません。ただ、無関係だとは思えなくて」
「ふむ。まったく、困ったものですわね。『黒い影』に『メガネ男』に『幻想御手(レベルアッパー)』に『毛玉人間』。変な事件ばかりですの」
フン、と鼻息荒く腕を組む黒子に、初春はキョトンとしながら首を傾げた。
「あ、あの~、毛玉、なんですか?」
「『毛玉人間』、らしいですわよ。ネーミングセンスは酷いものですが、何やら私の寮で噂になってましてね。昨日の夜、窓の外で見たらしいですの。信じられない程長い毛を持つ人間が、体に毛を巻き付けながら屋根の上を走り、次から次へと建物を飛び移っていたとか」
「はぁ~」
初春は半ば呆れ、といった顔をする。
「私も本来だったら馬鹿にする所なんですが、目撃者が複数いたとなると、あまり馬鹿に出来ませんの。それに、その内の一人は写真まで撮っていました」
「写真、あるんですか?」
黒子は携帯を弄り写真を表示させると、ズズイと初春の鼻先に突きつけた。
「写真と言ってもこんなもんですの。焦って撮ったからブレが酷いわ、窓の光が反射するわで、微かにしか見えません。それでも――」
「この端っこのシルエットですよね。うわ~、これ体より髪長いですね。お風呂とかどうするんだろ」
黒子はため息を一つ。
「どーせ、どっかのお馬鹿のコスプレでしょう。あまり仕事を増やしてほしくありませんわね」
◆
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』か。俄かに信じがたいが、これを見たらそうも言えないな」
西条は目の前に散乱する破魔札〝だったもの〟を見て、呟いた。丈夫なはずの破魔札が、バラバラの紙くずへと変貌を遂げている。
『見鬼くん』が破壊された後、西条は件の学生と共に近くの喫茶店に腰を下ろした。
西条の向かいに座る、ツンツン頭の男子高校生は上条当麻と言うらしい。そして彼が『見鬼くん』を壊した能力を説明し、更には目の前で実証し、西条の冒頭の呟きに繋がったのだ。
「あの~、そろそろ帰ってよろしいでしょうか? えーと西条さん、ですよね。とりあえず弁償の金は出来るだけ払いますんで。なんせウチには腹ペコシスターがいるわ、そろそろスーパーの特売だわで、ちょっとばっかし忙しいんです」
西条が軽い自己紹介の折に渡した名刺を見つつ、上条は語りかけた。
上条のそんな言葉も、西条の耳を素通りしている。
「異能の力をかき消す、か。定義が曖昧だな、本人の価値観や判断によるものなのか?」
西条は目の前で起きた出来事に、自分なりの答えを見つけようと必死だ。
上条が説明した『幻想殺し』なる能力はシンプルだ。右手で触った『超能力』や『魔術』を問答無用でかき消す、らしい。
西条が一向に返事をしないので、上条は汗をタラタラかきつつ、目の前に置かれたアイスコーヒーをズズズー、っと飲み干す。
ふと視線を外せば、たくさんの学生が見えた。大通りに面した建物の一階にある喫茶店。その窓際の席に上条達は座っている。
上条のアイスコーヒーが空になり、残った氷でも口にいれようか、と思った頃に西条は返事を返した。
「あぁ、すまない。弁償だったね、さすがにそれは無理があると思うよ」
西条は壊れた『見鬼くん』から、精霊石の欠片を出した。
「この『精霊石』という結晶は結構値が張ってね、いいものになると億は下らないんだ。まぁ、『見鬼くん』に使われてるのはサイズが小さめだが、それでも数千万はするよ」
「お、億!? す、数千万!?」
ギョっとする上条に対し、微笑を絶やさない西条。
「ま、またまた~。上条さんは、そんな嘘には騙されませんよぉ」
「うーん、やっぱり信じられないか。あ、そういえば精霊石のカタログがあったはずだ、ちょっと見てみるかい?」
西条がブリーフケースから、何かの冊子を取り出した。簡素なコピー用紙の束のようだが、リストとなって幾つかの品名が表になっていたり、モノクロの画像が印刷されていたりする。そんな中、精霊石のページにはモノクロの写真と共に、十万や百万といった数字のゼロが並んでいる。
「ちょっと見づらくてすまないね。知り合いの個人経営のオカルトショップのリストなんだよ」
「そ、そうなんですか……ってこの『精霊石』っての高くても百万台ですよ! やっぱり嘘じゃないですか!」
ホっとした上条は、空になったアイスコーヒーの代わりに、お冷を口にした。例え百万でも高い事を、彼は失念している。
「あぁ、そのページの値段表記はアメリカドルなんだよ。精霊石は海外のバイヤーも多く買い取りにくるせいなのかな」
「ブフォッ! ド、ドルーー!」
そうなるとまた桁が違ってきた。上条の顔がサーっと青くなってくる。
「上条君、本当に気にしないでくれ。学生に対し、あれを弁償しろ何て言わないさ。さっきも説明したが、何しろ僕は特殊な公務員だからね、あれぐらいは現場の経費で落とすよ」
今度こそ上条はホっとした。
「ところで上条君、先程特売とか腹ペコがどうのこうのと言っていたが、お金に余裕が無いのかな」
「え? あぁ、まぁなにせ貧乏学生ですからね。一応奨学金も下りるんですが、俺はレベル0ですから」
レベル0、その言葉に西条は目を細める。
(異能を打ち消す、か。なるほど。それじゃあ、この都市のランク付けには反映されないか)
ゴホンと咳を一つした後、西条は切り出した。
「君にお願いがあるんだ。今、この都市には何かしらの霊障が起きている。だが、あいにく人手が足りなくてね。ぜひ、君の力をオカルトGメンに貸してほしいんだ。とりあえずバイトという事で給料も出そうと思う、どうかな?」
「きゅ、給料ってそんなのいいですよ。むしろ困ってるんだったら、俺手伝いますよ」
「手伝ってくれるのかい! いやー、助かるな。でも、給料は受け取ってくれないかい」
西条の言葉に、上条は両手を振った。
「いやいやいや、あんな高い物壊した上にお金なんて貰えないですよ」
「ふむ、君の気持ちも分からんでもないが、それはそれでこちらが困るんだよ」
「困る?」
西条は苦笑を浮かべる。
「ウチのオカルトGメン、いやGSという職業と言った方がいいかな。最近になって、やっとオカルトのメディア露出が増えたおかげで認知度が上がっているがね、実際のところ、僕らの様な職業は世間への風当たりが強いんだよ」
「はぁ……」
「悪質な新興宗教や、オカルト詐欺などと混同される。特に僕は公務員だからね、この手の風聞に乗せられない様に、仕事上注意すべき事が沢山あるのさ。そんな中、君の様な〝一般人〟を無償で働かせた、なんてのはマスコミへの良い撒き餌になってしまう。僕を助けると思って、給料を受け取ってもらえないかな?」
「ま、まぁそういう事情があるなら、受け取らせて貰います」
上条が少し申し訳なさそうな顔をしながら答える。
(――ニヤリ)
西条は内心ほくそえんでいる。どうにも先程から少年の話を聞く限り、彼は正義感の強い人柄だと感じていた。
この手の人間はいざとなると勝手な行動を取り、事態を混乱させると相場が決まっている……西条の経験上だが。
そんな少年に対し『金』という首輪を取り付けたのだ。まるで、『金を受け取る事』が『こちらを助ける』と誤認させる事によって。
これでお互いに雇用契約が出来た。
絶対的な繋がりではないが、それでもそれなりの効果はあると西条は思っている。上条の律儀な性格を考えれば、間違いはないだろう。
「それで給料なんだが、放課後の数時間、僕に協力してくれないかな。少ないが、とりあえず日当としてこれだけ払おう」
西条は指を五本立てる。
「少ないって五千円ですか? そんなに貰って――」
「? 何を言ってるんだい。五千円じゃない、五十万だよ」
「ご、五十万! い、一日でですか!」
思わず身を乗り出す上条。
「あぁ、そうだが。もう少し欲しかったかい。ならば――」
「い、いえいえいえ。それで十分です! と言うか十分すぎます!」
上条は先程のカタログを思い出す。
(そうか、西条さん達の業界は、そのままの意味で〝桁〟が違うんだな)
ふと、長身で赤い髪の不良神父を思い出す。
(〝あいつら〟もこんな風に金持ちなのかねぇ)
上条はつい最近にも、この手のオカルトに関する事件に遭遇していた。しかし、その事件の結果、彼はあるモノを失っている。
「ところで上条君、君の手を少し見せて貰えないかな」
「え、別にいいですけど……」
その言葉を聞くと、西条は少年の右手を掴み、じっくりと見つめた。ちなみにここは喫茶店なので、ウェイトレスなんかももちろんいる。
男同士が向かい合いつつ、手を取り合う光景に、一部のウェイトレスがいらぬ誤解を受け、喜んでいたという事実があったりなかったり。
「やはり何も感じないな」
(いや、違うか。何も『感じない』じゃない。『感じられない』のか)
西条は、自分の中の霊力が正常に働いてない事を認識できた。そして奇しくもこの時、彼の霊感は働かず、周囲の違和感を感じる事が出来なかった。
彼らの席のすぐ脇、窓ガラスを挟んだ通りを、一つの人影が通り抜ける。その妖気すらも見逃した。
◆
同じ時、同じ場所。西条達がいた席の二つ隣に涙子と愛衣の姿があった。
「――ですので佐天さん、あの槍を渡してください。あれは危険な物なんです!」
「えぇ~、でも拾ったのは私だよ~。ほら、それにこの都市には妖怪とかがいるんでしょ。だったら私の槍があれば、バババーッと倒せたりすると思うよ」
「だから~……」
話は平行線だった。
槍の危険性を唱え、涙子の安全を思い、『槍』の譲渡を要求する愛衣。
槍の力を知り、どうしても手放したく無く、あの手この手の理由を付けて拒否する涙子。
涙子は愛衣のお説教を聞き流しつつ、テーブルにペタリとうつ伏せになり、そのまま行儀悪くズルズルとストローからジュースを飲む。
「そういえば佐倉さんさぁ、先輩に相談するとか何とか言ってたけど、その先輩はどうしたの? きっとその先輩も〝ソッチ〟なんでしょ」
「う……、その……、お姉さまは所用があって居ないんです。うぅ」
気まずそうに顔を伏せる愛衣。
「でも、お姉さまがいないからこそ、私が頑張らないと。この都市は、どうにも魔法的な防御機構が薄い様です。いや薄いというより、必要なかった、って事でしょうか」
気を持ち直した愛衣が、自らの印象を確認する様に述べる。
「必要なかった?」
「はい、私見ですが。最初この都市に来た時は、無菌状態? とでも言うべきなんでしょうか。霊的に〝落ち着きすぎた〟印象がありました。おそらく《学園都市》を作るにあたり、魔力的にも地ならしした結果なのでしょう。強固な結界に頼り、その手の懸念に怯える必要な無かった。ですが今は――」
愛衣は少し考えるそぶりを見せる。
「異物がこの都市にあります。それがきっと佐天さんが言っていた男性、いや悪霊でしょうか」
「う……羽生さんかぁ。じゃあ私のせいじゃない。だったらなおさら引けないわよ」
バツが悪そうな顔を涙子は浮かべる。
「だから、それが危険な事なんです。素人が気安く関わるべき事じゃないんです。それに大事になってからじゃ遅いんですよ」
「し、素人じゃないもん。私には《獣の槍》があるし!」
涙子が思い出すのは、槍を持った時の万能感。それに昨日は愛衣が苦戦していた霊に対し、一撃で屠った自負もあった。
「この都市でアイツらと戦えるのは私達だけなんでしょ。その『お姉さま』だって居ないんだし。だったら私も――」
サラリ、と背筋に悪寒が走る。涙子の言葉が詰まり、固まる。見れば愛衣も硬直していた。
周りの風景が色あせ、モノクロの世界がゆっくりと動いている様に感じた。
窓ガラス越しの通りを、学生達がたむろして歩いている。その中、一人の男性が歩いていた。モノクロの視界の中で、彼だけがしっかりと色づいていた。
彼の『昨日』の情けない印象は薄い。スーツに帽子を被った姿は、違和感無く中年紳士といった出で立ちだ。
男は涙子達の席の横、窓ガラス越しの場所に立つと、帽子を取り、軽く会釈した。
ニッコリと笑うその表情。顔に刻まれた皺が不気味に歪み、見つめる瞳はギラギラと狂気をはらんでいる。
羽生道雄。
羽生はそのままゆっくりと喧騒に消えていく。先程周囲を覆っていた妖気は綺麗に霧散していた。
目を見開き、二人は顔を見つめあう。
「い、今のってもしかして?」
愛衣の質問に、涙子はコクコクと頷く。
「う、うん。あれがそう、あの人が昨日私が見た、羽生さん」
二人同時に立ち上がり、さっさと会計を済まして、店を出る。
周囲には下校時のため、学生が多く視界が悪い。
「ど、どこに行ったんだろう」
「微かに妖気がある。これなら出来るかも」
愛衣はそのままビルとビルの間に滑り込み、ブレスレッドに魔力を注ぎこんだ。使うは魔力探知の魔法。
いくらか術式は変えねばならないが、この程度は愛衣にも出来た。光る球体の術式が現れる。
レーダーとして機能するソレを、愛衣は右手に握りこみ、探知の情報を元に羽生へ向けて走り出す。
「佐天さんは帰ってください。また、明日連絡します!」
「って、このまま帰れるわけないじゃない!」
涙子も愛衣を追いかけて走り出す。
「危険って言ったじゃないですか!」
「そ、そうかもしれないけどッ! それに、羽生さんの目的が私っていう可能性もあるじゃない! だったら一緒にいた方がいいでしょ!」
「うっ……それは……」
なぜ不意に羽生の方から接触してきたのか。もしかしたら気まぐれかもしれない。だが、その目的が涙子、いや《獣の槍》にあったら危険だ。
愛衣はそう判断し、しぶしぶ涙子の同行を許可する。
「今回だけですからね!」
「ふふふ、りょーかい」
昨日から起こる数々の不思議体験に、涙子は自分を物語の主人公と重ねていた。
自らが向かっている場所には、容易く人を屠れるバケモノが居ることを忘れ、浮ついた心のまま。
第五話 END