最初は麻帆良学園のはずれにある森、人々がそろそろ寝始める時間それは始まった。
妖蝶が50匹ほどの群れを作り学園の結界を超えてやって来たのだ。
「プールをはさんだ○こう側♪~アイツの視線気○かないふりして♪~慌てて決めるボ○ィーライン♪~」
近右衛門の携帯電話が鳴る、着メロはア○ドリング!!!のプール○イド大作戦である、
相手によって着信音を変えている、こんな所も近右衛門のおちゃめな性格が現れている。
「ジジィ私だ、森から侵入者だ数は約200、小型だが魔の気配がする。
報告は以上だ、私は今から寝るので朝まで起こすなよ」
「エヴァンジェリンか? いやいやスマンとは思うんじゃが出来れば寝ずに引き続き監視して欲しいんじゃが」
電話を掛けてきたのは先日『血』と『真面目に学校へ行く』を賭けてネギ・スプリングフィールドと戦った
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、外見はただの10歳の少女だが600歳を超えている。
『ハイ・ディライトウォーカー』と呼ばれる日光を克服した真祖の吸血鬼で最強クラスの魔法使い、
『闇の福音』『人形使い』『不死の魔法使い』など数々の異名を持つ魔法界では600万ドルの元賞金首。
現在は『登校地獄』と『学園結界』により魔力が極限まで封じられて麻帆良学園女子中等部で15年間学生生活を送り続けている。
「断る、夜更かしは美容の大敵なのでな、監視ならば明石と弐集院がすればいいだろ、せいぜい頑張るのだな」
「実は麻帆良に不審な男女が滞在しておっての」
「なに!! 私は何も感じなかったぞ!」
「普通に電車で麻帆良に入ったようじゃ、今は麻帆良ホテルにいるがこの侵入者に関わりがある可能性がある、
タイミングを考えても偶然とは考えにくい。
今夜の侵入者は何かの前触れの様な気がするのじゃ、あくまで勘なんじゃがの」
「ジジィの勘か・・・どんな奴らだ?」
「男の方はGS、名前は横島忠夫です年齢19歳、横島心霊事務所の所長。
女性の方は正体不明まったくの謎じゃ、
二人ともイノチノシヘンでもなにも解らなかったようじゃ」
「なに!! イノチノシヘン?!
ジジィ貴様アルの居場所を知っているのか?! さっさと吐け」
「それは秘密じゃ、時が来ればいずれ教えよう」
「本当だろうな? しかしイノチノシヘンがな、
面白いなそいつ等は私が直々相手してやろう、動くときは必ず連絡をよこせ」
「いや、それよりも侵入者の監視をして欲しいんじゃが」
「フンッ、そんなモノはお前たちだけで相手していろ、
くだらないモノ相手に私は出る気はない!!」
プッ・ツー・ツー・ツー
また一方的に電話を切られる近右衛門、もしかすると関東魔法協会のトップとして威厳が足りないのかも知れない。
森エリア担当の魔法使い達は被害もなく妖蝶を殲滅できた。
しかし今度は麻帆良の南から妖蝶の群れが侵入して来た、それを殲滅し終えると今度は東と西から同時に侵入して来る。
妖蝶は世界樹を目指し進行してくる、そして世界樹に取りつき魔力を吸収しようとする。
樹高270mの世界樹に一度取り付かれると対応が困難である、そのため纏めて一度に対応する事が出来なかった。
魔法使いたちは侵入の知らせがある度に出向いて対応するしかなかった。
エヴァンジェリンはその後も一応侵入の報告をしていたが第七波侵入の報告を最後にサボりを決め込む、
それ以外の魔法使い達は麻帆良中を走り回り対応した。
◆
朝、魔法使い達は疲労困憊だった、なにせ昨夜から朝日が昇るまで何度も何度も妖蝶が侵入して来ていた。
魔法使い達は総出でその対応にあたったがその数が尋常でなかった、最終的には35回の侵入を確認しその全てを殲滅した。
表の仕事に支障をきたす者も少なくないだろう。
そんな魔法使い達の姿を横島とルシオラはホテルで眷属を通し見ていた、
そしてパピリオも自分の眷属である妖蝶を通して魔法使いの戦いを見ていてた。
三人は距離があるのでテレパシーを使って作戦会議をしていた。
パピリオはまだ麻帆良には居らず妖蝶のみを麻帆良に侵入させていたのだ。
昨夜の行動はパピリオによる威力偵察、小規模な攻撃を行うことによって敵情を知る偵察行動である。
(パピリオお疲れ様、どうだった?ここの魔法使い達は)
(人間にしてはなかなかでちゅ、物理的な攻撃力だけならGSより強いでちゅよ、
霊的攻撃力は大したことなかったでちゅね、その辺の浮遊霊にも苦労するレベルでちゅ)
(まあ除霊は専門外みたいだし幽霊みたいな物質を伴わない純粋な霊的存在は苦手なんだろ、
性質から考えると対人用の攻撃魔法だな、嫌な魔法だよな~)
(半霊半物質の妖怪なんかにも有効ね、
あとは結界魔法や召喚魔法もある様だからそれらを破るのに効果的な魔法もあるでしょうね)
(雷系の攻撃が近くのビルの避雷針に落ちずにパピリオの眷属に当たったのはどういう理屈だ?)
(魔法攻撃の追尾機能は便利そうね、私も研究してみようかしら)
(パピリオどうだ?今夜の作戦いけそうか?)
(まったく問題ないでちゅ、任せるでちゅ!!)
(作戦中は俺とルシオラはパピリオと別行動だからすぐにフォローには行けない、無理はするなよ)
(神魔は高位な霊的存在、今私たちがこうして実体を持っているのは自分の魔力で体を具現化しているから
ここの魔法使い達には相性が悪いでしょうね、だからきっと大丈夫よ)
(ヨコチマは心配性でちゅね~)
パピリオは魔神アシュタロスが大戦決戦時に作り出した魔族の三姉妹の三女、神魔と戦う為に作られた存在である。
その眷属も同様で神魔と戦う為のモノであり魔法使いとはいえ人間相手に殲滅される事は無い。
昨夜は本当に殲滅された訳ではない、ある程度攻撃を受けたら自ら消えていたのだ。
そしてその日の夜、横島心霊事務所は作戦の最終段階に入った。