同時刻、高畑で学園長室へ報告に戻っていた頃、横島とルシオラは世界樹の下の広場で甘い空間を作っていた。
監視の魔法使い達は口から砂糖を吐きながら監視していた、
彼女彼氏の居ない魔法使いは血の涙を流しながら監視していた。
「俺さ今とても幸せなんだ、また蛍をこの手で抱くことが出来て」
(もう身分がばれたか、予定よりかなり早いな。明日中には身元がバレるなこりゃ)
「私も幸せ・・・・・私も忠介の傍に居られるだけで良いの」
(関東魔法協会の情報網は広いみたいね、GS協会にも食い込んでるようだし侮っていたわ)
「もうこの手を放さない、どんな事があっても」
(この『学園長』が関東魔法協会のTOPかな? しかし妖怪か?)
「本当に私でいいの? 私のせいで忠介は・・・」
(人間よ・・・たぶん。
それよりも厄介そうな人間が出てくるみたいね)
「そんなの関係ない! 俺は蛍じゃなきゃダメなんだ蛍が欲しいんだ」
(ハァ~嫌だな~、凶暴なバトルジャンキーじゃないだろうな、
やっぱこの依頼無かったことにしないか?)
「嬉しい! 私の全てを忠介にあげる、私も忠介が欲しい」
(もう!そんな訳には行かないでしょ、
今夜ホテルで××××××してあげるから元気出して♪)
(ホ、ホントかーッ!!夜まで待てねー」
第三者にはイチャついているだけの様に見えるが横島とルシオラは作戦会議をしていた、最後に横島が暴走したが。
ルシオラの眷属は学園長室のへの侵入に成功し、そこでのやりとりは横島たちに筒抜だった。
ルシオラの眷属は対神魔ステルス仕様であり魔法使いといえども発見する事は不可能なのだ。
(ヨコシマ、ホテルの部屋に誰か来たわ)
(一人だけか、泥棒か?)
(何も盗んで行かないし私達の荷物を調べてる、魔法使いよ。
私たちを調べに来たんでしょうね)
ホテルに残した眷属からもガンドルフィーニが部屋を物色する様子が届いていた。
ガンドルフィーニは眼鏡をかけた黒人男性で一般人の妻と今年小学校に上がる娘を家族に持つ魔法使いである。
右手に拳銃、左手にナイフを持ちCQC(Close Quarters Combat 近接格闘)を得意とする、
近右衛門が屋内戦闘のスペシャリストである彼に横島たちの部屋の調査を命じたのだ。
(怖!!この黒人拳銃とナイフ持ってるよ)
(物騒ね、誰かに見つかったらどうするつもりなのかしら)
(じゅ、銃刀法違反!けっ警察!! )
(依頼が終わったら拳銃不法所で警察にチクッちゃいましょう)
ガンドルフィーニに逮捕・強制送還の危機が迫っていた、
ガンドルフィーニの魔法道具である銃やナイフは法的にマズい気もするが魔法使いたちは気にしていない。
(あ!盗聴器を仕掛けてる)
(結界札で部屋の様子が解らないから仕掛けてるのよ)
(帰ったら盗聴器をネタにホテルから誠意(慰謝料&口止め料)を見せてもらうか、
『ネットに証拠付きで噂を流す』と言えば嫌とは言えまい、骨の髄までしゃぶらせて貰おうか、クックックッ)
確かにホテルと関東魔法協会は関係している、しかしホテルもエライ奴に目を着けられたものである。
その後横島とルシオラは世界樹広場で夕陽を眺めてからその場を立ち去った。
◆
「今晩は、お食事中お邪魔します私は・・・」
「・・・言わんでもいい、おまえ関東魔法協会の魔法使いだろ」
「よくお解りで」
「馬鹿にしとんのか!! そんな明らさまな格好してたら解るちゅーねん!!」
横島とルシオラが夕食のイタリアンレストランで最後のデザートを食べていると男が声を掛けてきた、
男はローブに深いフードをかぶり誰が見ても魔法使いだった。
それに明らかに魔法を使っていた、レストランに場違いな魔法使いが現れたというのに店内の客は誰も気にしていない。
「ユ○クロで買った服なのですが何処かおかしいですか?」
「○ニクロにそんな服おいてへんわ!!」
「本当ですよ、ピー○のファッション○ェックでも誉めて頂けました」
「嘘つけ!! 何処にそんな服着た奴が町を歩いとんねん!!
美形ってだけでも気にいらねーのに、わざわざフードで顔を隠しやがってイヤミか!!」
フードから少し見える顔は誰が見ても美形と言える顔だった、横島にとって天敵とも言える存在だ。
しかし横島は男のボケにツッコんでしまう、大阪人の悲しい血の習性だ。
「で?なんの用だ、」
「あなた方に興味がありましてね、ああ!私のことはクウネル・サンダースと呼んでください」
「どこのフライドチキン屋だ!!おもいっきり偽名じゃねーか!!」
「それはお互いさまです高島忠介さん高島蛍さん、すみません!チーズケーキとカプチーノのセットをください」
自称クウネル・サンダースはウェイトレスにオーダーを頼む。
この長髪の美青年は本当の名をアルビレオ・イマといい重力系の魔法を得意とする魔法使いだ、
悪ふざけを好む性格でありその外見は20年間全く変わっていない。
「注文すんな! 何しに来たんだ」
「あなた方が食べているのが美味しそうだったもので、甘いものには目がないんですよ私は」
「知るか!! 俺たちは興味を持たれるほどの者じゃなねーよ」
「いえいえ大変興味深いですよ、特にあなた横島忠夫さんにはね。
霊力が感知されない霊能者で若手No.1のGS、しかも・・・・・・あなた人間ですか?」
「そう言うあなたはどうなのかしら? クウネル・サンダースさん。
本体はどこかしら? 遠いところから操作しているようだけど」
「おや、気づいていたのですか? 私は数キロメートル離れた場所にいますが詳しい場所は秘密です♪」
「じゃあ私たちの事も秘密ね♪」
「つれないですね人との出会いは大切にするものですよ、
私は図書館島で司書の様な事をしているんですがお暇なときお茶を飲みに来ませんか?」
「脇役の分際で人の女に色目を使ってんじゃねぇ!!この美形野郎があああぁぁぁ!!」
「ぐバボハッ!!」
横島は電光閃光でアルビレオ・イマの顔を殴りつける、目の前で自分の女に手を出されたうえ相手が美形では容赦が無い。
アルビレオ・イマを睨めつけながらルシオラを抱き寄せる、まるで餌を横取りされそうになった野良犬である。
アルビレオ・イマは口からは血を流し妖しい笑みを浮かべながら立ち上がる、頭にケーキが乗っているのはお約束だ。
それまでのやり取りは結構な騒ぎだったのだが認識阻害の魔法の効果で店内の誰も気にしていない。
「さ、流石ですね私を殴り飛ばすとは、しかし勘違いはいけません私が特に招待したいのは貴方の方ですよ横島忠夫」
「お!おまえホ○か?! あの女より男が好きという特殊な嗜好の持ち主の・・・」
「ふふふふ、まあその辺はご想像におまかせするとして・・・」
「否定しろー!!」
「さて、そろそろ私は失礼しますよ、またお会いしましょう」
「あら? もう帰るの、魔法の事を聞きたかったわ」
「ふふふ、それは秘密なんですよ、あなた方の事を教えてくれたら教えて差し上げてもよいのですが」
「帰れ帰れ、美形と○モは男の敵じゃ
ってあの野郎!! 金を払わないで帰りやがった!」
アルビレオ・イマは横島に身の危険を覚えさせて帰っていった、チーズケーキとカプチーノのレシートを残して。
殴られたのでせめてもの仕返しのつもりなのだろう。
結局、横島はアルビレオ・イマの料金も支払い店を出た、少し負けたような気分だった。