「ふぉふぉふぉ、これでネギ君は伝説の『悪の魔法使い』を倒した事になる予定通りじゃな、
それにエヴァンジェリンにはこれからも真帆良に居てもらわなければ困るからのぉ」
「たしかに予定通りに事は進みました、
しかし!! エヴァが初めから全力でネギ君と闘っていたらどうするつもりだったんですか?!」
なにやらキナ臭いことを言うこの頭の長い老人は近衛 近右衛門、
麻帆良学園理事長であり裏では関東魔法協会の長を務める学園最強の魔法使いである。
近右衛門の目の前で憤る男はタカミチ・T・高畑、彼は学園広域指導員として『死の眼鏡(デスメガネ)』と恐れられ、
裏では居合い拳、咸卦法を使う学園No.2の魔法使い、そして煙草の似合う渋い30代独身である。
「電力の復旧が遅ければどうするつもりだったんです?! 危ない処だったんですよ!!」
「結果オーライじゃ、危ない処じゃったが良いタイミングで結界を復旧出来たんだから無問題」
「ギリギリのタイミングだったじゃないですか、
それにエヴァだって危なく怪我をするところでした!!」
実は近右衛門は結界用の別電源を確保していて何時でも結界は起動可能だった。
例えば病院のように重要施設に予備電源は常識、有事の備えとして主電源とは別系統で用意されていた。
ただし別電源での結界は稼働時間が短いためギリギリまで使いたくなかったのだ。
しかしその事は高畑に秘密にしていた、高畑をハラハラさせたい近右衛門の悪戯だ。
「それにアスナ君まで戦いに巻き込んで、いったいどうするんです」
「彼女も同意の上じゃ問題なかろう」
「同意といっても彼らは戦いがどういうモノなのか知りません、
場合によっては文字通り命がけの時もあります、先ほどの戦いも下手をすれば死んでいました!!」
「・・・魔法界には『新たなる英雄』がどうしても必要じゃ、
そしてこれからのネギ君には従者が必要じゃ、彼女には悪いがネギ君の力になってもらうしかない」
「しかし彼女は!!」
「わかっておる!! こちらも出来る限り事はする、陰ながらにじゃがの」
近右衛門はネギ・スプリングフィールドを『新たなる英雄』にする計画を行っていた、
自称『悪の魔法使い』エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルを利用する事によって。
ネギがピンチになったとき結界を作動させる事によってエヴァンジェリンの魔力を封じネギに勝利させたのだ。
しかし予定外の事態が起こった、神楽坂明日菜がネギの『魔法使いの従者』になってしまったのだ。
「・・・エヴァやアスナ君がこの事を知ったら恨むでしょうね」
「彼女達は君の管轄じゃ、アスナ君は勿論じゃがエヴァンジェリンは君の初k「わかりました!!!」」
「僕が出来る限りのフォローをします」
「そうかの? その時はよろしく頼むぞい、ふぉふぉふぉ」
近右衛門の言葉を遮って高畑が珍しく大声をあげる、実は高畑の初恋の相手が元同級生であるエヴァンジェリンであった。
男にとって初恋は美しい思い出のままなのだ。
そして神楽坂明日菜は高畑の庇護の下で生活していた事もある、二人とも高畑の関係者だと言えなくもない。
◆
麻帆良学園都市中央駅にひと組のカップルが降り立った、
男はジージャンにジーパン頭に赤いバンダナ、ファッションセンスの無い貧乏くさい格好、
女性は白のワンピースにカーディガンを着ていて清楚で可憐な印象を受ける。
共に二十歳前後だろうか男の背おう大荷物が異様に目立っていた。
「やっと着いた、しかしここは本当に日本か?まるっきりヨーロッパの街並みじゃないか。
昔は埼玉と言ったら日本の田舎の代名詞だったんだけどな、いつの間に変ったんだ?
あの素晴らしいオッパイなんかまさにヨーロッパの並み!!」
男の視線は始めは街並みを見ていたが、途中から近くを歩く女の子の大きな胸に向けられていた。
つられて感想の対象もそれに変わっていた。
「どこ見て言ってるの?ヨコシマ」
「いや、あの・・・」
(マズイ!!エロ本やDVDを処分されたせいで巨乳分が足りなくて視線があの素晴らしいバストに釘ずけに。
ルシオラじゃ巨乳分の補給にはならないなんて事を本人に知られたら俺は・・・
ここは何としても誤魔化さなければ!!」
「全部声に出てるわよヨコシマ」
「しまったあぁぁー!」」
「フフフ、そんなに大きな胸が好きなの? 私という者がありながら!? 私の胸じゃ不満なの?
わかったわヨコシマ・・・・・・お前を殺して私も死ぬーーー!!生まれ変わって私は巨乳になる!!!」
女性は男に泣きながら首を絞めながら詰め寄る。
一見貧弱そうに見えるこの男は三界でも稀少とされる神器【文珠】の使い手であり若手GSナンバー1との呼び声も高い横島忠夫、
魔神大戦においては魔神アシュタロスを倒し神魔界やオカルト業界では『影の英雄』『魔神殺し』とも呼ばれ、
仲間からは『煩悩魔神』『セクハラ大王』『ザ・丁稚』とも呼ばれている。
その隣に立つ女性は横島の恋人であり、魔神アシュタロスが大戦決戦時に作り出した魔族の三姉妹の長女。
スパイとして潜入していた横島と恋仲となり造物主を裏切り愛を選んだ蛍の化身、
一時は横島を助ける為に自分の霊基構造の大部分を与え死んでしまったがある方法により復活した。
小さい胸にコンプレックスを持ち、三女の蝶の化身に言わせれば『終わった胸』を持つ女性。
「堪忍や~、ルシオラ~ 昔の癖が直ってないだけなんや~」
「なによ! 私の胸じゃ不満なの?!」
「そんな事はない、いつも俺には勿体ないくらいの彼女だって思ってるよ」
「ヨコシマが見てくれないのは私に飽きちゃったのかって・・・」
「・・・ごめん」
「もう私に興味が無くなったのかって・・・」
「・・・スマン」
「私じゃダメなの? 私、ヨコシマの恋人なのに・・・私の胸じゃ満足できないの?」
「俺の恋人はルシオラお前だけだ。今までもそしてこれからも、胸なんて関係ない」
「ヨコシマ」
「ルシオラ」
喧嘩していたかと思うとすぐに仲直りして人前でイチャイチャしだす、二人は筋金入りのバカップル。
二人は最近GS事務所を立ち上げたばかりである、彼らはある依頼の為に麻帆良までやって来た。
「ホテルに行きましょ、
それから・・・・・・ね?」
「そうだな、着いたらさっきの言葉を証明するよ」
「やだ人前で・・・でも嬉しい」
依頼を受けて来たはずである・・・