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No.24822の一覧
[0] 【ネタ】家族で僕だけがハブられている件について【オリジナル】[ヨヨヨヨ](2010/12/09 17:30)
[1] 犬からもハブられている件について[ヨヨヨヨ](2010/12/13 13:54)
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[24822] 【ネタ】家族で僕だけがハブられている件について【オリジナル】
Name: ヨヨヨヨ◆ec27c419 ID:e5937496 次を表示する
Date: 2010/12/09 17:30
「康彦、今日は大切な話があるの」

夕食の席で、僕の母親である女性はそんな風に切り出してきた。
普段はおちゃらけている母親のそんな態度に、これは本当に真剣な話なんだろう、と僕は箸を置いた。

「ど、どんな話?」
「そんなに緊張する必要はないわ。そこまでの話じゃないから。寝転がりながら、いつもの様にお尻をポリポリ掻きつつ聞いても大丈夫」
「いや、今ご飯の最中だから寝転がらないし、僕人前でお尻ポリポリ掻かないし」
「ウフフ」
「何故そこで笑うの?」

私には分かってるんだから、みたいな笑みを浮かべる母親。
意味が分からないが、まあこういう人だと慣れているので流すことにしよう。

ここまで言うからにはそこまで重要な話じゃないのかもしれない。
せいぜい妹が車に轢かれたぐらいのレベルの話だろう。
他の家ではどうか知らないが、ことウチに限って妹が車に轢かれるのはそう珍しい話ではないのだ。
ダンプカーに轢かれるくらいじゃ『え、そうなの? 怪我は?』ぐらいの反応だ。
しかし一週間ほど前に、離陸する飛行機の轢かれた、という話を聞いた時には流石に驚いたけど。
そもそも飛行機に轢かれるシチュエーションが不明だし。

「で、どんな話なの? 加奈子に何かあったの?」
「加奈子……ね。うん、そうね。加奈子に関係する話でもある」

ああ、やっぱりそうか。
ウチの重要な話といえば絡んでくるのは妹の加奈子だろう。
ああ、一体どこで何をしてきたのか……。
他所様に迷惑をかけてなければいいけど……。

「私にも関係するわね。……そしてあなたにも」
「え……僕?」
「そう。私達家族の話」

家族の話?
な、なんだろう。
も、もしかして……離婚!?
ウチの母親は父親のことを尋常じゃなく適当に扱っており、以前から離婚の危機を心配してたけど……遂にか。

「……離婚、するの?」
「離婚? 誰と誰が? ……私とあなたが!?」
「い、いやいや! 何でそんな驚いた顔で意味分からないこと言ってるのさ!? 僕と母さん結婚してないでしょ!? ……母さんと父さんの話だよ」
「ああ、そう……驚いたわ」

ふー、と額の汗を拭う母親。
今の会話のやり取りは相当におかしいが、まあいつものことだ。

「別に離婚はしないわ」
「そ、そっか……よかった」
「そもそも偽装結婚だから」
「……え?」

思わず体が石化してしまう。
今この人は何と言ったのだろうか?
偽装結婚?

「い、今なんて!? 何て言ったの!?」
「想像妊娠?」
「言ってないでしょ!? い、いや字面は似てるかもしれないけど。ぎ、偽装結婚って言ったよね?!」
「……」

母親は急に黙り込んだ。
顔を俯かせて。
つ、つまり大切な話というのは――偽装結婚の話!?
ど、どういうことになるんだこれ!?
ぎ、偽装ってことは、母親と父親が愛し合って結婚したわけじゃなくて。
ああ、納得できる!
普段の母親の父親に対する態度を考えれば納得できる!
前々から何でウチの両親は結婚したんだろ、とか思ってたけど十分納得できる!
偽装かー……そうか、偽装結婚だったのかぁ。

「ど、どうして偽装結婚を?」
「……」
「何か目的があったんだよね? も、もしかして……何かの詐欺とか?」
「……」
「それに何で今日になって……」
「……」

母親は俯いたまま答えない。
辛いのだろう。
こんな秘密を明かしたのだ、辛いに決まってる。
僕だってこんな状態の母親を責めたくはない。
でも、聞かなきゃいけない。
僕は立ち上がって母さんの方を持った。

「母さん! 聞かせて!」

その僕の真摯な声に答えるように、ゆっくりとその顔が上げられ

「……ふわ。ふぁああ……ふぁ」
「ちょっと何あくびしてんの!? もしかして寝てた!? 今の僕の葛藤の間に寝てた!?」
「え……いや、別に。寝てないけど……まあいい夢は見た」
「滅茶苦茶寝てるじゃん!」

何だこの母親は……。
何でこの人が母親していられるんだよ……。

「えっと……何の話だった? あ、そうか。あなたが私の本当の子供じゃないって話だっけ」
「……え?」
「はい大切な話おしまい。冷める前にご飯を食べましょう」
「い、いやいやいや! いやいや! いやいやいや!」
「ど、どうしたの? そんなにいやいや言って……好きのうちってこと?」

いやいやいや!
そりゃいやいやを連呼したくもなるよ!
え? ちょ、ちょっと待って、え!?
お、落ち着こう僕!
た、確か偽装結婚の話をしようとしてたんだよね。
で、僕は母さんの子供じゃない、と。
……。
な、何が何だか分からない……。

「か、母さん……一体どういうことなの? そ、そもそも本当の話なの?」
「何が? ……うわ、このコロッケまずい」
「いや、コロッケ食べてないで答えてよ! あとその僕が作った野菜コロッケは不味くないよ! 改心の出来だよ!」
「や、野菜コロッケ!? ど、どうしてコロッケに野菜を混ぜたりするの……!? い、意味が分からない……! 私の大好きな食べ物と反吐が出るほど大嫌いな食べ物を混ぜる意味が分からない……!」
「それは母さんが野菜を食べようとしないからの苦肉の策で……ってコロッケの話はいいよ!」

どうして僕が野菜嫌いの子供に懸命に野菜を食べさせる努力をしているか、それはまた別に機会に話そう。
それよりも今はもっと大切な話がある。

「僕って母さんの子供じゃないの?」
「母さんって呼ばないで!」
「……っ」

珍しく声を荒げた母親に、僕はショックを受けた。
初めてだった。
こんなに嫌悪感を露にする母親を見るのは。
これが答えなんだろう。
本当の母子の関係じゃない。
今までそれを我慢していた母さんはとうとう我慢が出来なくなった。
それこそ16年の秘密を明かすくらいに。
どれだけ辛かったんだろうか。
本当の息子でもない僕に母と呼ばれるのは。

「……じゃあ、何て呼べば……いいの?」
「光。愛する妻を呼ぶ様に――光、と」

……。
……。

「……光」
「……っ!? きた……ッ! きたこれ……ッ!」

母さん、もとい光はニヤケながらガッツポーズを取り始めた。
椅子に片足を立てて、ガッツポーズを取っているので、制服のスカートからチラチラと下着が見える。

「もう一回! もう一回!」
「……何が?」
「名前を呼んで!」
「……光」
「ッシャ! ヨッシャ……ッ! これで勝てる……ッ!」

何に勝つ気なんだ……。

「……で、そろそろ話を聞きたいんだけど」
「話って?」
「い、いやだからその……僕と母さん――光の関係」

本当の母親じゃない、ということは本当の母親がいるのだろうか。
何故この家で暮らしているのか。
深い事情がありそうだけど、聞かないわけにはいかない。

「え? か、関係って、それは……ねえ?」
「いや同意を求められても」

頬を染めつつ人差し指をツンツンされても、僕はどうすればいいか分からない。

「本当の母親は誰? その人と光の関係は? 僕の本当の母親はどこにいるの?」
「そ、そんな十個も二十個も一辺に言われても……」
「三つしか聞いてないでしょ!? どれだけ処理能力低いんだよ!」

僕の言葉に少しカチンときたのか、頬を膨らませる光。
ウチの母さんは相当若く見えるので、そういう子供っぽいリアクションが似合う。
一緒に出歩くと、まず確実に兄妹と思われるほどだ。

「本当の母親……か。そう、そんな事を聞いてくる歳になったのね。――雅さん」

雅さん、その言葉を呟いた光の顔は今まで見たことが無いほど切なく、泣きそうな顔をしていた。

「雅さんって……もしかして……」
「……うん」

その表情が全てを物語っていた。
つまり、そう、その雅さんが――

「隣のおばさんの名前」
「だよね! 隣の家の人の苗字だよねそれ! 何で今隣のおばさんの名前を――え? ちょ、ちょっと待って、それって……」

ありえない、そう思った。
まさかすぐ隣に本当の母親が。
僕は光を見た。
真摯な表情で光は頷き――

「何となくここで言っておけば面白いと思ったからで、全く関係ない」
「ないのかよ! ちょっとは空気呼んでよ!」
「本当は橋の下で拾ったからで、母親とかは知らない」
「そしてサラっと真実告げるし!」

そうか、僕橋の下で拾われたのか……。
うわぁ、まるで漫画の中の話のようだ……。

「15年前、その日は雨が降っていた。私はその日のことを鮮明に思い出せる」

僕の顔を見つめながら語る光。
この話は、僕を拾った時の話だろう。

「その日はそう、確か……パチンコ帰り……あ、いや漫画喫茶に行った帰り? 学校で補修を受けた、確かそんな感じだったと思う」
「全然覚えてないじゃん!」
「……うう。で、でもこれだけは覚えてる。三丁目のタバコ屋を曲がった先、その先の橋を渡っている時その声は聞こえた」
「三丁目のタバコ屋の先はラブホテルだよ!」
「む、昔は橋があったの」
「いやいや! あのラブホテル20年前からあるよ! この前20周年記念割引してたよ!」
「……」
「……と、友達がね、そう言ってたんだよ」

ジト目で見つめてくる光に少したじろぐ。

「……三丁目のタバコ屋を曲がった先のラブホテルの中を歩いている時、その声は聞こえた」
「えええええ!? 場所訂正しないの!? ラブホテルの中なの!?」
「淫らな喘ぎが響き渡る廊下、その声にシンクロするようにその泣き声は聞こえた」
「シンクロとかいいよ!」
「そこにいたのは小さな赤ん坊。彼の泣き声は私の心を捉えて離さなかった。近づくとその赤ん坊は言った。――俺を拾え、と」
「言わないよ!? 赤ん坊は言わないよ!?」
「いや、言った……ような気がした。だから私はその赤ん坊を連れて家に帰ることにした」

そして今に至る、と光は話を〆た。
そして何やら手紙を渡してくる。

「こ、これは?」
「一緒にあった手紙。中には『拾ってください』それだけ書いてある」

手紙を開くと、その通りそれだけが書いてあった。
肩を落とす。
何という出生秘話だろうか。
まさかラブホテルで拾われたなんて……。
まず確実に他人に話せない。

「……ごめんね、今まで話せなくて」
「え?」
「悲しむと思ったから」

そう、か。
それで今まで黙っていたのか……。
僕を悲しませないために。

「ありがとう」
「ううん、いいの。今度一緒にあなたを拾った場所に行こう……ね」

自分が捨てられていた場所、か。
それを見ることは辛いことだと思う。
もしかしたらもっと辛い何かを思い出すかもしれない。
でも、光と二人でなら……二人なら。
二人で――

「二人でラブホは行かないよ!?」
「……ちっ」
「あ、今舌打ちした!」

何て母親だ……あ、いや母親じゃないのか。
ていうか僕はこれからこの家でどういう立場なんだ?
母親である光からは母親と呼ばないように言われたし。
父さんはどうなんだろうか。
妹も――妹とも血は繋がってないのか。

「光、その、加奈子は……このこと、知ってるの?」
「このこと? 私が17才なこと?」
「えええええええええ!? ちょ、ちょっと、ええ!? な、何!? えええええええ?!」
「そ、そんなに驚くこと?」
「驚くよ! え、ちょっと待って、ええ!? 17才なの!?」
「うん。高校生」
「う、嘘だ! それは嘘だ!」
「本当だって。ちゃんと制服着てるでしょ?」

制服を着てるのはいつものネタだと……。
ん、待てよ。
そういえば光は基本的に制服を着ていた。
コスプレ的な意味だと思っていたけど……本当に学生だった?
……いや待て待て。
記憶を回想すると、僕が小学生になった時も制服を着ていたはず。
そして今と姿形が全く変わってない。
……あれ? それもおかしくないか?
今と全く変わってない?
いくらなんでも10年前だぞ?

「まあ正確に言えば、17才の時に不老不死の薬飲んでるから、それから成長止まってるんだけどね」
「はぁ!? 不老不死!?」
「ん。私が作ったの。自由研究で作ったのを、うっかり飲んじゃって」
「……制服昔と変わってないよね」
「高校楽しいからずっと通ってるの」

……。
……。
……。
もうこれは最初から嘘だったと思った方がいいんじゃないか?
いくらなんでも不老不死はない。
そうだ。
これはいつもの母さんの悪ふざけだ。
最初から嘘で、僕は母さんの息子で、母さんは10近く前から見た目が殆ど変わっていないコスプレ趣味の主婦。
こう考えた方がいいんじゃないか?
ああ、そうだ。
畜生。全く、うっかり母さんに騙された。

「ちなみに加奈子は私が作ったロボットね」
「はいはい」
「――ただいまー」

僕が適当に頷いていると、当の加奈子が帰ってきた。
さて、今日の母さんの悪ふざけを加奈子にも語ってやるかね。
僕はリビングを出て、玄関に向かった。

「お帰り加奈子」

加奈子は玄関マットの上に座って靴を脱いでいる。
また転んだか車に撥ねられたのかのか分からないけど、全身泥まみれだ。

「おいおい、また何かあったのか? どろどろじゃないか。それに右腕だって今にも取れそうだ……し?」

右腕。
加奈子の右腕。
それは肘の先からブランと薄皮一枚で繋がっている状態であり、今にも落ちそうだった。

「おっ、おまっ、そ、それ! う、腕! 腕が!」
「あー、そうなんだよー。おばあちゃんが車道に出て危なかったから飛び出したらね、タンクローリーに轢かれちゃって。轢かれたならまだいいんだけどね、大爆発に巻き込まれてさー。あ、ちなみに周りにいた人で被害者はいないよ?」

光が何か語っているが、僕の耳には入らない。
途轍もなくショッキングな光景だ。
腕が。
今にも落ちそうで、早く病院に行かないと。
むき出しになった腕の内部はバチバチと火花を放っており、どの科に連れて行けばいいのか、僕の頭はそんなことがグルグル回っていた。

え? 火花?
よく見ると腕の中身は血や骨ではなく、無機質な鉄が見えている。
まるでロボットのような。

「って、うわっ。お兄ちゃんだ! やべえっ、見られた! 記憶喪失ビームを――」
「大丈夫だから加奈子」
「あ、お母さん」

いつも間にか僕の後ろには母さんが立っていた。
何故か制服の上に白衣を纏っている。

「お母さんじゃなくて博士と呼びなさい」
「え、だって――」
「もう康彦は知ってるの。全部話したから」
「ええー! 全部って博士が不老不死ロリ女子高生科学者なのも、あたしがロボっ娘中学生サッカー部なのも?」
「うん」
「じゃあパパが人狼秘境冒険家ホモだってことも?」
「それは言ってない、どうでもいいし」
「えーと、じゃあ庭で飼ってるポチが変形機能付犬耳メイド(ドM)だってことも?」
「それは今から言おうとした」

僕を挟んで意味不明の言語が飛び交っている。
僕の意識は段々薄れてきた。
尋常じゃないショックが度重なって僕の脳を刺激したので、脳が防衛行動を起こしているのだろう。
願わくば、寝覚めたらこのタチの悪い夢が覚めていて欲しい、そう願う。


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