…新兵ばかりの新編部隊。はっきり言えば、ドレーク中佐にとって昇進よりも配置転換拒否の権利の方が欲しくなるような任務である。弾薬と新型の演算宝珠にたっぷりの訓練予算が宛がわれるとはいえ、それだけで部隊が造れるなら苦労はしない。実弾演習も装備も訓練された兵士に宛がわれて初めて意味があるのだ。忌々しいことに、実戦経験の乏しい兵士を選別し、使い物になるまで鍛え上げるだけで数カ月はかかる。それを、火急的かつ速やかに行えと言われるのだ。現場を知悉したパルトン中将の無理難題でなければ、一蹴していたほど問題は山積している。だから、幸か不幸か彼は大体の事に対してシニカルにならざるを得ない。新兵に卓越した技量を持ち、なおかつ誰からも愛される人格者が入っていると聞いても鼻で笑うだけだった。だから、どうした、と。はっきり言えば、ドレーク中佐に必要なのは悪鬼を殺し得る刃なのだ。切れ味がよかろうと竹光では使い物にならない。なればこそ、お上品なレイピアなどではなくエストックを獲物として選んでいる。生理的に受け付けない、というのは極端だろうか?だが、おおよそ『誰にでも愛される』という評価が気に入らなかった。気に入られる、程度ならばまだわかる。まあ、それでも胡散臭いが。愛されるとなれば、もはや違和感しか残らない。言葉にできないが、感覚が合わないのだ。そして、ドレーク中佐は自分の勘を信じればこそ今日まで無事だと知っている。つまるところ、厄介なのが入ってくるのかという気分に変わりはないだ。だから、ドレーク中佐はある新任を本能的に気に入らないと悟った。その新任は、合州国から鳴り物入りで派遣されてきた魔導少尉だ。彼女の名前はメアリー・スー。外面は、瀟洒で可憐な18歳の乙女である。彼女は、生まれて以来毎週欠かさず教会へ足を運んでいたと聞く。物心ついた頃からは自分で。それより前は、孤児院の保母さんらに連れられて。特筆されているのは、彼女が如何に人格的に卓越したかという絶賛に尽きる。人事の人間ともあろうものが、心酔しているのかと眉をひそめたくなる内容だった。彼女の両親は子供の頃に死んだらしい。らしいと言うのは死因を、誰も彼女に伝えられる人間がいないのだ。だが、彼女は日々の糧を頂くことを主に感謝し日々を清く正しく生きている。まあ結構なことだろう。そして、戦争に心を痛めた。多くの人々が傷つき、倒れることに耐えられなくなった。一晩泣いた後、彼女は決心したという。軍に志願し、自分のできることをしようと決意したというではないか。実にすばらしいと、手放しで誰もが称賛するだろう。プロパガンダだと言われれば、なるほどと納得してしまえるほどに現実感が欠如しているとしてもだ。いや、現実味のなさという点では赴任してからのメアリー・スーは想像よりも酷かった。鼻につくような正論。正義とは何か、信仰とは何か?自分達の義務とはなにか?大いに結構だった。従軍牧師とでも語り合ってくれれば、それでよい。だが、先任らの忠告と教育は完全に逆効果。頑なに『明白なる天命』とやらを延々聞かされる羽目になる。おかげで、どうやら自分の部下がおかしくなってしまっていたらしい。気が付いたのは、巡察中に苦虫をダース単位で噛み潰した訓練担当の軍曹からの報告によってだ。新任どもが、変な影響下にあるという理解しにくい報告。だが、嫌な予感に突き動かされたドレーク中佐は即座に足を動かしていた。突進先は、奴の所属する中隊宿舎。そして、絶句することになる。曰く、神の命ずるままに戦う。曰く、正義の戦いに赴くは喜びである。…理解しがたい何かに直面したと、後に彼は語る。目の前で誠実かつ、敬虔な信仰心を発露しているらしい少尉。大変結構なことだが、それならば聖職者を目指せばよろしいだろう。ドレーク中佐が行っているのは、戦争の訓練だ。断じて、『神の兵隊』とやらを育成することではない。間違っても正しい戦争のために、正義の兵士が、英雄的に雄々しく戦うということなどありえない。戦争とは、本質的には殺すか殺されるかに尽きる。死にたくなければ、敵兵を排除しなければならない。必要なのは善悪などではなく、まして正義という戯言であるはずがないだろう。信じがたいことに。いや、信じたくないというべきだろうか。ドレークの指揮下にあった一つの中隊丸ごとが彼女の、メアリー・スー少尉の影響下にあった。一個中隊全員が、自らの天命とやらを信じてやまないアホになっていたのだ。許されるならば即座に中隊長を解任し、狂った信仰者を軍から叩き出したかった。だが、そのためにとった方策は悉く棄却される羽目になる。理解しがたいことに、上層にある一派が強固にメアリー・スー少尉を支持していた。それどころか、積極的に彼女を支援しようとすら試みているほどだ。指揮権に対する干渉すら、一部には策動している痕跡が見られたほどである。なにしろ、暗にながらも彼女に『独自行動権』を付与しろなどという戯言すら囁かれた。いくら政治的プロパガンダの必要性があるとはいえ、これは我慢しかねる仕打ち。なにより腹立たしいのは、メアリー・スー少尉はそれが自分に与えられた天命だと信じて疑わないのだ。間違っているのは、ドレーク中佐であり、彼女はいつも正しいというスタンス。何故か、自分だけが異物になったかのような感覚。苦悩するドレーク中佐にとって、その中隊は劇物だった。だが。メアリー・スー少尉は魔導師としての素質において、卓越し過ぎていた。ドレーク中佐をしても、軍から放逐するどころか部隊から放逐できないほどに。内心の不信感や、葛藤を無視せざるを得ないほどに。いや、正確には上がそう望むがゆえに。それ故に、ドレーク中佐はその中隊の存在を許容した。厳密には、その中隊が存在するという前提で部隊を編成し直した。彼にとって、もはやその中隊は統制できない部隊だった。故に、彼は隔離しその悪影響を最小限に留めるべくはからう。そうまでして、彼は部隊の統制を保つべく最善を尽くした。だが、結果的に彼は一身に誹謗中傷を浴びせられることになる。一体いつから、軍は古代の十字軍に先祖がえりしたのか?ほとんど理解しがたいほど、理屈では説明できない程の逆風だった。それに屈せずに抵抗し得たのは、パルトン中将の支持とドレーク自身の軍歴故だ。だが、このために遂にドレーク中佐は不安要素を抱え込んだままその日を迎えることになる。なつかしいにおいがする突き刺される男のにおい斬り倒される女のにおい焼き殺される赤児のにおい撃ち殺される老人のにおい死のにおい戦のにおい ああ、屈辱の思いが、蘇る。あの日、あの時、忌々しい豚どもに、我らは、蹂躙された。南方で、蹴散らされた我々が嫌というほど嗅いだにおいだ。あの時も、このにおいがした。なつかしいにおいだ。誰が、忘れられようか。共に南方大陸から敗走した戦友諸君。ヴァルハラに逝った英霊に背を向けまだ、息のある戦友を、無力な戦友を見捨て守るべき大勢の人々を、背後に残し名誉が汚泥に突き落とされ我らが、無様にも負け犬のように逃げ出した南方だ。怨敵との再会を言祝ごうではないか。今日はここが、その南方だ。一日たりとも、一時たりとも、ここにいる我らが忘れること叶わずに煩悶した南方以来の怨敵だ。道半ばで逝った戦友が、復讐をと願った南方以来の怨敵だ。ああ、懐かしい敵だ。無敵の敗残兵諸君。最古参の敗残兵諸君。我が、敗残大隊戦友諸君。万願成就の時が来た。誰が、この日を待ち望まずにいようか。この日がくることを、ひとえに渇望していたのだ。この日が来ることだけを、夢見て、恋する乙女のように、待ち焦がれていたのだ。この日を、思うだけで、胸が焼き焦がれるほどの焦燥に駆られたものだ。地獄の底をはいずり廻った。汚泥をすすり、屍肉を喰らい、ひたすら、この日を渇望しついに、遂に待ちに待った時が来た!多くの英霊が無駄死にで無かったことの証の為に・・・帝国の安寧を掻き乱す豚どもを、間引く為に!南方の戦場よ!我らは帰ってきた!!豚共の血で、大地を紅く、紅く染め上げ二度と、二度と、豚の分際で、我ら帝国の土地を犯さぬように。連中を教育してやろうではないか。言葉ではなく、銃弾と銃剣で持って、連中に教育してやろうではないか。ここが、誰の土地であるか、教育してやろうではないか。ノルマルディアは決して南方の轍を踏まないと。ターニャ・デグレチャフ魔導中佐より、D-DAYをお知らせいたします。状況がひっ迫しておりますため、最前線よりの簡略な礼式になることを御寛恕ください。喜びと共に、帝国軍将兵らはその任を最前線にて遂行しております。ごきげんよう、親愛なる帝国臣民の皆様。最前線より、帝国の防人たる我らが軍人を代表し御挨拶を申し上げるは無上の喜びであります。我らは、祖国より任じられ、祖国より期待される国家の盾であります。祖国を防衛せんとする確固たる意志。己が任務を理解し、全うせんという明確なる義務感。ご安心ください。祖国の宸襟は我らが案じ奉りましょう。危機に晒された祖国がために、わが身を呈して祖国を護持いたしましょう。幾多の躯を晒すことになろうとも、寸土たりとも侵すことを阻止いたしましょう。最後の一兵に至るまで、我らは抵抗いたしましょう。帝国に、栄光を!我らが、帝国軍に、皇帝陛下に無窮の栄光を!今の気分?強いて言うならば、この世の地獄に向かって、超特急で飛んでいるのが今の気分。たぶん、この上なく最悪でしょう。ターニャにしてみれば、状況というのは最悪を通り越して災厄だった。なるほど、D-DAYがあることは覚悟していたし、ある程度備えることもしている。だが、どうみても自分の想定以上に連合王国や合州国は戦力を結集しているらしい。確かに。確かに、全てが史実通りにいくとは思っていなかった。だが、同時にまさか史実を遥かに凌駕する大規模侵攻に直面するとは誤算も良いところ。許されるならば、咄嗟に全てを放り出してイルドア方面に逃げ出したい状況だった。しかし周りは、壁として確保した部下が取り囲んでいる。壁として確保した筈が、今となっては一個大隊により意図せぬ監視下に置かれているようなもの。要するに、敵前逃亡は不可能である。敵前逃亡で、軍法会議、銃殺刑のコースよりは、まだ敵に突撃したほうが生存率はある。・・・たぶん。事の始まりは、D-DAYによって混乱した部隊を掌握していた時だ。偶々、バグラーチオ戦によって消耗したサラマンダー戦闘団から古参兵らが合流していた。最初は最高の防壁をゲットできたと笑いが止まらなかったターニャだが、今は激烈に後悔している。なにしろ、好戦的に過ぎる部下らだという事を過小評価していた。後退し、機動防御をすべきかという提案は一笑された。まるで、自分が冗談を言っているのではないかと受け取られてしまうのだ。それどころか、逆襲すら進言される始末。だが、一理あると認めざるを得ない提案だった。「中佐殿、一発敵をビビらせてやりましょう。」「良い提案だ。だがどうする?」敵が、ビビってくれるにこしたことはない。懸命に、構えられても困るし無駄だ。ターニャは合理的解決策を好む。周囲の評価はともかく、本人はいたって平和的な解決策を望んでやまない。主観では本気で殺し合いがやりたいと思うほど、人格が破綻していないのだ。いや、むしろ人的資源の浪費を嘆く実に熱烈な平和主義者だと自負している。だが悲しいことに、戦争であり軍にあっては敢闘精神を疑われる訳にもいかない。やむをえず、理想的将校の模倣を行っているがそうすると今度は好戦派と見なされてしまった。評価にバイアスがかかることは覚悟していたが、あんまりだ。いくばくか、周囲の評価に理不尽さを感じつつもターニャは生き残るために懸命に頭を回転させる。敵は、史実以上の大規模部隊。よりにも寄って、自分の所在地に軍団規模の部隊が投じられている。逃げ出すだけでも、知恵を働かさねば。「いっそ、何かを広域念話でばら撒いてはいかがでしょうか。」ばら撒く?ああ、敵を言葉で脅すというのは一つの手だ。向こうも上陸戦でがちがちに緊張しているだろうから、有効だろう。「脅してみるか。いいだろう、少しばかり腹案もある。」ふむ、例の少佐殿に倣ってやるアレをやってみるか?たしかに、臆病者には、強烈なビビらせ効果が期待できる。ついでに言うと、外見は無表情の幼女軍人でも、中身はチキンな自分にとっても自己暗示が効いてよい。テンションが高い方が、戦場にいる時は、気が楽だ。では、一発、かましてみよう。「腹案でありますか?」「諸君でも怯えることを請け負えるぞ。さて、行動を開始しよう。」かくして、冒頭に至る。せいぜい緊張しきった敵軍を怯ませれば楽になるだろう。そんな程度の威嚇だが、こちらが戦意旺盛であることくらいは伝わるに違いない。ビビってくれたかな?そうなれば、楽なんだがと本気で思いたい。いや、相手も合理的なら勝利が見えた戦闘で命を惜しむだろう。どう考えても、積極的にリスクを冒してまでこちらと交戦したがる理由は乏しい。ターニャは、本気でそう分析し自らの安全を確信しかけたほどだ。なにしろ、自分ならば勝ち戦で手負いの獣と戦うつもりは微塵もない。合理的に考えられる手強い相手ならば、自然と手を控えてくれるはずだった。だが、帰ってきたのは最悪の反応。「ターラントでの借りを返させてもらおう。死んだ部下の墓標に添えてやらねばならんのだ。」聞き覚えのある嫌な奴の声。連合王国の執念深い指揮官の声。散々手を焼かされた厄介な連中。「アレーヌで燃やされた部下と市民の仇だ。共和国の怨念を思い知れ。貴様だけは、貴様だけは!」ログを検索。・・・共和国特殊作戦軍?生き残りか。目撃者は排除した筈だったのだが。市街戦を意図する連中まで来ているとは実に厄介である。「消えろ!今すぐに、私の視界から、私の世界から消え失せろ!」「殺せ!奴とて、不死身ではない!」聞き覚えのない声。しかし、感情的に激昂していることは十二分に理解できる。どちらかと言えば、理性よりも感情を優先しそうだ。どうやら、敵は戦時国際法よりも殺人衝動を優先するのだろうか?困ったことに、どうもこの感じから言って素直に投降が受け入れてもらえる雰囲気でもなさそうだ。以前読んだものの本で、ノルマンディーで双方が捕虜を殺し合ったという記述は間違いなく現実に違いない。ああ、すごく厄介なことだ。デグレチャフ中佐として、軍務を全うしただけなのにどうして此処まで戦意旺盛な敵に遭遇しなければならないのやら。勝ち戦とはいえ、命を惜しむのではなく殺人衝動に酔うという事だろうか?やっぱり、現実はそんなに甘くないのか。むしろ、理解しがたいことだが嬉々として連中戦争する気である。ちくしょう、腐った存在どもめ。やつさえ、こんな、理不尽な環境に自分を放り込まねば、こんなことにはならなかったのに。世界に災いもたらす存在Xに災いあれ。そこまで思った時に、ターニャは遭遇する。自らにとって、存在自体が許容できない存在に。覚えのない波長の通信波。だが、確実に嫌な匂いをぷんぷんと漂わせている。奴の、奴らの匂いが付いている。天敵。そう、天敵の匂いだ。不倶戴天の天敵の匂い。「聞きなさい、恐れを知らないものよ。私は、メアリー。メアリー・スー。」鈴の音色の様な麗しい声だ。実に、奴らが好む声色に違いない。ああ、讃美歌を歌うならば素晴らしい声にちがいない。「悔い改めなさい。主の御心を偽る異端よ、貴女は間違っている。」・・・ぱーどぅん?ああ、きっと可憐な面持ちで素晴らしい心の持ち主なのだろう。信仰の自由は尊重されてしかるべきだ。だから、お願いだから死んでくれ。今すぐに、自由に死んでくれ。神の国とやらに行って、自由にしてくれ。だから、お願いだから。現世から、消えてくれ。「悔い改めるならば、慈悲の心をしめしましょう。」・・・慈悲?結構、不倶戴天であることは理解している。いい加減、ウンザリしている時なのだ。慈悲というのは、要するに存在Xの手先でストレスを発散しろということか?そうであるならば随分と、味な真似だ。「祈りなさい。自らの罪を、神の前に懺悔なさい。慈悲にすがることを、主はお許しになるでしょう。」・・・奴に、縋れと?結構。冗談は、存在だけにしてもらわねば。今すぐに、殺してやる。その存在を、叶う限り速やかに抹殺してやる。幾度夢見たことだろう。貴様らだけは、根絶やしにしてやる。ターニャが珍しく、心底好戦的衝動に駆られていたときの圧迫感は司令部内に満ち渡っていた。その時、傍に立っていたヴァイス少佐は自分が中佐殿の敵でないことに安堵する。噛みしめられた歯の音と、何かを握り殺さんという手の引き攣り。自分が敵なら、何も考えずにひたすら逃げ出さんというばかりの強烈な殺意だった。百戦錬磨の古参魔導師をして、思わず敵対すれば死しかイメージしか浮かばない。それほどまでに、デグレチャフ中佐からは死の匂いが立ち込めている。「・・・我らが戦闘団長殿?」「ああ、ちくしょう、愉快だ。」なんと、嗤っていた。いついかなる時でも、ほとんど感情を表に出さない中佐殿が。勇猛無比な突撃を行う時ですら、冷静さを持ち合わせる中佐殿が。喜び勇んで、ぶち殺してやると言わんばかりに怒り狂っていた。いや、こんな戦場だ、東部ですら平和に思えるような戦場だ。冷静であるという贅沢は、生き残ってから楽しむことにしよう。「ああ、確かに、愉快ですな。」「ヴァイス少佐、君もか。」「いえ、中佐殿ほどでは。」くくっ・・・ふふっ・・・くくっ・・・ふははははぁっ来るか。また来るか。懲りずに来るか良いだろう。まだまだ少ないぞ。いくらでも来い固まれ!!集え!!群れて集え!押し寄せて集え!!脆弱な力を拠り合わせて私を殺しに来い!!『ひとり』たりとも逃げるなよ!!そして朽ち果てろ!!一列に並んで端から食われろ!!それだけのために来い!!次から次へと途切れなく!!右も左も埋め尽くせ!!刀槍のきらめきが地平を覆った、あの時のように!!血肉をむさぼり、骨も残さず食らった、あの時のように!!魂のひとかけらも残さず!!食らってやるさ!!『あの時』のように!! 私が殺戮に関して教授して差し上げよう!!!異端の豚共で、大地を染め上げて、主の御覧に入れよう!!主に、お喜びいただこう。ああ、ハレルヤ!!帝国の平安と、安寧のため。主の王国の安寧のため。主の御心のままに、喰らい尽くしてやろう!!喜べ。貴様らは、御心のままに殺してやる!!!!!ターニャという存在にとって。あるいはメアリー・スーという存在にとって。心からの殺意と、純粋極まりない悪意。それは、不倶戴天の天敵同士による戦いの始まりであった。艦砲射撃を行う戦艦群の火力支援。無数の重砲の支援を受けつつ上陸を開始した合州国海兵師団。彼らの多くは、戦争を終わらせたいと願っている。祖国奪還を願う自由共和国軍将兵。悲願を目前とする彼らにとって、祖国の地は待望の地だ。長きにわたる激戦を終わらせんと願う連合王国軍将兵。疲れ果てた彼らは、なお任務を果たさんと激戦に赴く。対して、圧倒的鉄量に晒される帝国軍将兵。構築され、複線化された防衛線。悪意の塊のような地雷原に、強固なトーチカ群。偏執的なまでに配置されたトラップは、岸壁にすら埋め込まれている。それらをもってして帝国は津波のように押し寄せる敵を迎え撃つ。史上最大の、空前絶後の大規模作戦。そして、同時に誰もが願っていた。どうか、どうか自分だけは死にませんようにと。縋れるありとあらゆる存在に。彼らは、心から祈りを捧げる。多くの者が、祈りむなしく散華するとしても。確率論による無情な結果があるとしても。兵士には祈ることしか許されない戦場がある。こうして、歴史が築かれる。ノルマルディアよりラインへの道は拓かれた。幾万もの将兵らの血と、無限に思える鉄量によって。その日、幾万もの将兵にとっての悪夢は幕を開けた。あとがき(ノ;_ _)ノ作者は、力尽きました。残念ながら、頑張ったのですが…。疲れましたorzしばらく、更新は御寛恕ください。ZAP