(´・ω・`)やあ、こんばんは同志諸君。うん、頑張って更新してみた。でも、外伝なんだ。みなさん、こんにちは。こちらはWTN特派員アンドリューです。今日はBlack Fridayでクリスマス商戦の戦が繰り広げられているニューヤークよりお送りしております。もうすぐクリスマス、ええ、クリスマスです。私も、たくさんプレゼントを子供たちや妻に買って帰るつもりですよ。本当のところを言えば、WTNのお仕事なんて忘れてショッピングに走りだしたいくらいです。でも、残念ながら私のボスは許してくれないでしょう。そういうわけで、趣味と実益を兼ねてお仕事です。もちろんテーマはいつもの謎とき。ええ、クリスマス前だからと言ってやることは変わりません。ご安心を。とはいえ、何か面白い小話が子供たちにあればよいなぁと皆さんお思いではありませんか?そこで、我々WTN特別取材班がお勧めするのが『サラマンダー』です。良い子にしていないと妖精さんが悪戯するぞというクリスマスの脅し程度ではビビらなくなったお子様にぜひ!なにしろ、強面の軍人ですら怯えてしまうほどインパクトのある噂です。私達をミドルイーストで護衛してくれた恐れ知らずのPMC達から聞いた彼らの怖いものリスト筆頭。それが、『サラマンダー』伝説。なんでも、『サラマンダー』は大変賢く加えて愛くるしい外見をしているそうです。可愛がっていると、実によく懐いてくれる上にシェパードの様に信頼できるファミリーの一員になってくれます。ときどきおねだりや悪戯をしますが、まあ皆大目に見て上げてしまうらしいですね。さすがに、やりすぎると怒ったレーゲンおばさんに怒鳴りつけられてしまいますが。まあ、そんなこんなでも皆が結局『サラマンダー』を可愛がってしまいます。やっぱり、頼りになるシェパードの上に愛くるしいとなればつい、ね?それが気がつけば、いつの間にかだんだん『サラマンダー』のお願い事や悪戯が度を越してくるようになります。でも、怒って叱りつけてくれるしっかり者のレーゲンおばさんのことを皆疎ましがってしまったらどうなるでしょうか?そうです。だれも、『サラマンダー』を止めることができなくなっていたのです!もちろん『サラマンダー』は皆の事が大好きです。でも、悲しい事に良い事と悪いことを教えてくれる人がいなかった。こうして、『サラマンダー』は自分が皆から嫌われてしまっていることに気が付けません。やがて、誰もが愛想を尽かしてしまいます。でも、『サラマンダー』は良く見るととても強そうでした。なにしろシェパードに似ているのです。皆が考え始めます。いったい、どうするべきだろうか?と。ここからの結末は、語り手によって様々。でも、親御さんたちはこのお話を通じて子供たちにこう言えるはずでしょう。「トム、君も『サラマンダー』になっていないかい?と。」ちなみに、私にこのストーリーを教えてくれた元軍人に聞いてみました。すると、彼曰くやはり『サラマンダー』は子供の事らしいです。軍人であっても人間ですからね。やっぱり子供の事で様々な悩みを抱えているのでしょう。ええ、皆親御さんは子育てに悩んでいるという事でしょう。ついでに、子供達には増長しすぎないように甘やかしすぎない事。アンドリューとの約束です。さて、ではこの伝説の物語は何処から来たと思いますか?なんと戦場物語だそうです。あの大戦で兵士たちの間に広がったストーリー。一体、なんだと思いますか?真実は、出征兵士たちが残して来た家族や子供達のことを思ってという事のようです。つまり会えない分、どうしてもプレゼントを贈って甘やかし過ぎた彼ら。戦争が終わって帰国してみたら、どうしようもなく我がままになった子供にショックを受けるという話らしいですね。こうして、帰国後初のクリスマスで『サラマンダー』となった我が子をしつけるという逸話ができたという事です。まあ、戦争が今日に残した物語と絡めて見ました。たまには、変わったアプローチも皆さまに楽しんでいただけたのではないかと思います。では、ごきげんよう。参謀本部の与えられていた執務室。ヴァイス大尉と入れ替わりで上からの命令とリストを運んできたのはグランツ中尉。そのリストを受け取り開封したターニャは凍りついた。一瞬、白磁の様な指をわなわなとふるわせるとリストを怨敵であるかのように睨みつける。グランツ君が届けてくれたリスト。それは参謀本部オリジナルで、私は中佐でした。その内容は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいリストをもらえる私は、きっと特別な存在なのだと感じました。今では、私が戦闘団長。部下として連行するのはもちろんデグレチャフオリジナル。なぜなら、彼らもまた、特別な存在だからです。「・・・新編歩兵大隊及び、補充砲兵中隊?」提示された書類で候補はそれぞれ4つ。歩兵部隊とわずかな補充砲兵中隊。あと、新編の装甲中隊が与えられるという事になっている。こちらは、選択肢が無いらしい。それにしても、新編の素人を与えられるとはこれいかに。一応、これから激戦地と名高い東部に放り込まれる身としては抗議もしたいところ。ラインで面倒を見ていたグランツ君らですら、まだ訓練を受けたうえで放り込まれていた。それがいまどきの連中ときたら、促成栽培すら生ぬるい急速練成というありさま。端麗な容姿がみるみる歪み、その表情は頭痛をこらえるかのような様に急変。傍で直立不動を保っているグランツ中尉が思わず表情を引き攣らせるほど機嫌が悪化していた。いや、それも無理がない程状況が悪かったのだ。役に立つかどうかも不明な新編部隊。加えて、火力の中核となるべき補充砲兵中隊に至っては旧式の砲も良いところ。文字通り、補充要員をかき集めたのだろう。まあ、完全な新編よりはマシだがそれでも装備・質の面で不安が残る。そこまで考えて、ターニャはそれ以上の思考に意味を見出し得なかった。これ以上は愚痴になると判断。いやはや、足で稼ぐのは銀行員だと思っていたのだがと独り言をつぶやきつつ立ち上がる。仕方がないので、部隊の相談をするために参謀本部内部で頑張って足で稼ぐことにする。軍に入ってまで足で稼ぐことになるとは夢にも思わなかった。そう嘆きつつ、彼女は引き攣った顔でつき従うグランツ中尉をお供に参謀本部装備課へと突進。居合わせた装備課で担当している班長クラスの少佐を捕まえると、即座に猛烈な抗議をねじ込む。「最大限、兵員の質で充当できるものは配慮しております。」そして、装備課の解答にデグレチャフ中佐殿はお怒りになられたと後日グランツ中尉はひっそり上司に漏らすことになった。官僚的答弁、それも疲れ切った官僚ではなく如何にも後方で元気そうな後方士官のそれ。一応は、儀礼的な笑みを張りつかせていたターニャの激怒はあっさりと沸点に到達。形ばかりの儀礼をかなぐり捨てると、能面となって一歩担当官へと近づき口を開く。「ベテランを欠いた大隊?人形の方がまだマシだ。」リストに載せられた兵員の大半は、予備役か徴兵されたばかりの新兵。基幹要員となるべきベテランは、基本的に軍の考課で最低基準の連中ばかり。少し使い物になりそうな下士官もいないではないが、ラインで負傷し復帰したばかりの連中だ。体力の衰えや現場を離れていたことを思えば、頭を抱えたくなる現状。正直、これなら邪魔にならない人形の方がデコイ代わりに使えてましだ。「しかも、15cmは15cmでも新型でなく旧式?射程が劣ること甚だしい。」数値だけ見たとしか思えない配慮。射程の短い旧式で火力を構築しろと要求するのは狂気の沙汰だ。塹壕戦を経験したことのない連中には、アウトレンジで一方的に叩かれる恐怖など理解もできないのだろう。そう判断したターニャの口調は苦々しいものが込められている。「機甲中隊はマシとはいえ、4号のD型?打撃力欠如に加えて装甲も撃たれ弱い。」加えて彼女を不機嫌にするのは、機甲部隊への割り当て装備。すでに訓練部隊用や後方警備用である旧型の4号戦車を割り当てられるとは我慢できなかった。彼女の赴任先は、占領地ではなく最前線なのだ。パルチザンは対戦車砲や重砲を持ちださないかもしれないが、主戦線では航空魔導師まで出張ってくる。「・・・南方大陸割り当て分のG型に余剰はないか?」最低でも、現役のG型でも割り当てられない限り前線ではモノの数にも数えられない。そして、幸いにも彼女はつい先日ロメール軍団長と私信を交換する機会があった。軍団長から耳にしたのは、補給の途絶に対する憤りと補給状況の悪化に関する危惧。それによれば、装甲車両の消耗は極めて低レベルなれども燃料と弾薬の補充が緊急に必要らしい。ところが装備課の連中、余っている車両と燃料、弾薬の割合を変えようともせずに送ってくると愚痴が書かれていた。そこまで官僚的ではありますまいと書いたのであるが、いやはや。まさか、全くその通りだとは。「無茶を仰らないでください、中佐殿!すでに、余剰物資など何処にもありません!」対する解答は、実にシンプル。余剰物資はないと。だが、ターニャは知っている。ロメール閣下が、つい2日前に送ってくださった返信に、2個中隊規模のG型ではなく燃料が欲しいと送って拒まれたという愚痴があることを。「南方大陸軍集団の第5軽師団には貸しがある。連中割り当てのG型をこちらにもらいたい。船ではその分燃料でも送りたまえ。」私は必要な装備を得られてハッピー。ロメール閣下は緊急に必要な燃料の補給を獲得できてハッピー。誰もがハッピーになる功利主義的合理性による提案。考えてみよう。誰も損をしない取引。そんな取引を断るのは、コミー位だ。合理性のない拒絶は、全く理解しがたい。人間、幸福追求を怠ってはそれまでだ。「本気でおっしゃられているのですか!?むちゃくちゃですよ!」「今は第21装甲師団だったか?ロメール閣下に話は私が付ける。」「付けられるなら、付けていただきたいものです。」責任はだれが取るのか?そんな表情をしていた少佐が、口を滑らした。迂闊な奴だ。交渉に際して、答弁に際してぼやかすこともできないとは。ニヤリと素敵な微笑みを浮かべるとターニャはつい先日届いたばかりのロメール将軍の手紙を懐から取り出す。「結構。では、さっそくもらっていこう。」「はっ?」呆けた間抜けの先に親愛なる南方大陸派遣軍団長直筆のお手紙を突きつけてやる。つい先日受け取った時は、こんなことに使うとは夢にも思わなかったが役に立つものだ。結局、人間社会というのは人の縁であるなぁと実感しつつもロメール将軍とのご縁に感謝。そして頭が事態を理解できていないらしい彼のために、ターニャは優しくそこを読み上げてあげることにした。「ロメール閣下の言葉を教えてやろう。“どの道届かないのであれば、戦友が使いたまえとすら思う。”とのことだ。」少々ならば強引でも良い。そういう風にゼートゥーア閣下からも御許可を頂いている。軍団長が同意した戦力融通に参謀本部戦務ボスの御許可だ。官僚主義的な装備課の装備管理班から一個中隊分のG型を巻き上げる程度は問題ないだろう。少なくとも、彼らが言い出した条件はクリアしているのだ。「ついでだ。」わなわなと震え始めた少佐を見てふと思い出したことがあったので要求してみることにする。人間、自発性が大切というではないか。行動あるのみだ。なにしろ、聞いてみるだけならばタダなのである。「西方大進撃時に分捕った共和国の奴があったな?」「は?」「装甲車があったはずだろう。自走砲に改修してもらいたい。」旧式の大砲を新型に変えろというのはさすがに無理難題かもしれない。でも、共和国軍から分捕った装甲車に大砲を据え付けて自走砲とするのはどうだろう?どうせ、使い道がないから保管しているに違いない車両だ。燃料を食うかもしれないが、どのみち東部はエスティ油田の近くだ。防衛戦となれば、いくらでも汲みだされたばかりの新鮮なオイルを車両に飲ませることができるだろう。その点では、南方大陸の連中と違って燃料の心配はあまり要らない。うむ、考えれば考えるほど理にかなっている。「む、無茶を仰らないでください、中佐殿!」「結構、自分たちでやらせるとも。だから、装甲車を倉庫から出していただきたい。」ま、改修しろと装備課に要求するのは確かに無茶かもしれないと反省。彼らの仕事は管理であって、改造ではないと言われればそれはそうかもしれない。一応、反論に理を認めたので引き下がる事にする。技術廠あたりをせっついて、突貫工程で改修させるしかないだろう。幸い技術廠にはつてがあるし、教導隊つながりで工兵隊にも知己がいる。人数は集められるはずだ。だが、彼女が物分かりの良い姿勢を見せているにもかかわらず相手の態度は頑固だった。「そんなむちゃくちゃな。」「いや、ぜひとももらいたい。」一体、これ以上なんだというのだろうか?向こうの言い分を飲んで、譲歩したというのに。・・・?いや、まて、思い出そう。確か偉いろーまんな旧教徒でいすかりおてな方が人にお願いする時に必要な言葉があると言っていた。ううむ、嫌な相手に頼むときでも礼儀があるという事なのだろう。よろしい、笑顔で頼みごとをしっかり頼むことにしよう。人間、礼儀を忘れてはいけない。何事も人間社会と文明が築き上げてきたルールにもとづかなくては。さあ、笑顔で『Please』と言おう。命令を出したばかりのところに、部下が嘆願に来るというのは良くある話だ。参謀本部に努めている将校ならば、だれしも経験したことがあるに違いない。だが、さすがのゼートゥーア少将をしても来訪者の要求は理解できなかった。正確には、理解できたのだがそれほど厚かましい要求はほとんど初めてだったというべきだろうか。「・・・補充魔導中隊が欲しい?」要望書には、一個魔導中隊の増派依頼と書かれている。どこからどう読んでも、そこに誤解の余地はない。文章の体裁に誤りがあるわけでもなく、書類としては完璧なソレ。ソレをゆっくりと机に置くと最近疲労がたまりつつあるゼートゥーア少将はゆっくりと顔を上げる。眼の前には、直立不動で立ち並ぶ中佐と中尉。大方、デグレチャフ中佐に連行されてきた不幸な若い中尉だろう。「はっ、練度を勘案しますと、絶対に必要不可欠であります。」「中佐、君はすでに増強大隊を有している。言い換えれば、並ぶもののない最強の矛を持っているのではないのかね?」それだけで、ほとんど連隊か旅団並みの戦力足りえる増強魔導大隊を指揮下に収めている戦闘団だ。ここに新編とはいえ歩兵大隊と装甲・砲兵各一個中隊付けてやるというのにさらに増強しろというのか?それは、ほとんど事実上独立増強混成旅団並みの戦力を寄こせと言っているに等しく思えてしまう。はっきり言って戦力過剰にも程がある。まして、一介の中佐に預けられるべき戦力ではない。「ご明察のとおりであります。ですが、叶うならば弱くとも盾も必要なのであります。」だが、彼女は全くこちらの咎めるような声にも気にした様子が無い。その姿を見ている限りでは必要だと本当に確信しているように見えてくる。この戦況で一個魔導中隊を捻出しろと平然で要求してくる神経が信じられん。「無茶を言う。」「無茶を言えとのことでしたので。」確かに、多少は許すと言ったがこれはどうか。いや、・・・本当に必要ならば考えないでもないが。「使える魔導師部隊はほとんど前線だ。」しかし、考えるとしても実際に使える魔導師など余っていない。やりすぎて扱いに困り果てた増強大隊が余っていたのはほとんど政治的な事情があればこそ。帝都防衛において防空を担う連中を削ることは厳しい上に、戦略的にまずいことを招きかねない。仮に、帝都襲撃でもうければ政治的・軍事的打撃は連邦が証明したような面倒事になる。面倒だが、ゼートゥーア少将は少しばかり考える素振りを取って考えてはみる事にした。魔導師の育成状況は望ましくない。元々才能があるような連中は、だいたい軍が吸い上げている。魔導師の余剰人員というもの自体が、実は乏しいのだ。まあ、次世代の未発掘である才能ある連中もいるかもしれない。だからといって、いくらなんでも碌に教育も完了していない魔導師が使い物になるだろうか?眼の前ですました顔をしている中佐。この戦場帰りのローティーンの様にどこか壊れた子供が帝国にそれほどいるとも思えない。というか、軍人としてはともかく一個の個人としてそれは怖すぎる。・・・使えるかどうか微妙だったために徴用の対象外だった連中。それと、促成栽培された魔導師が少数いるにはいるか。かき集めれば大隊程度は形成できる。補充中隊程度であれば、引き抜くことも不可能ではない。だが。兵士というよりは、あれはひよっこ。それも、殻のついたひよっこもいいところだという。「この際、贅沢は申しません。魔導師ならば、何でもいい。」・・・だが、そもそも使える物は全て使う。その理念の提唱者であり体現者でもあるのがデグレチャフ中佐だ。生まれてから、10年とたたずに軍に飛び込んで人生を戦場で過ごす。この狂った世界で狂っていないという贅沢を楽しめる権利は、誰にもないのだろう。まともであるという贅沢は、戦後に楽しむしかない。「・・・歩兵の直掩に使える程度の魔導師で良ければ、少しは用意できる。」「結構です。ぜひとも頂きたい。」機動戦どころか、まともな魔導師としての訓練も完了していない新兵連中。歩兵の支援程度には使えるだろうが、苛烈ならざる戦局において限定的防戦にのみ耐えうるという評価だ。ある程度の損耗率上昇も許容せざるを得ないようなお粗末な部隊。「ただし、新兵も良いところだ。おまけに、訓練も未了。教官連中は使い物にならないと評価したが。」通常ならば、最低でも6カ月与えられるべき訓練期間のうち半分も完了していない。促成栽培教育だ。詰め込むことを詰め込んでいるとはいえ、術式や魔導師としての訓練はまだ始まったばかり。教官連中の評価では、まあ弾よけくらいにはなるかもしれないという程度。「銃殺の経験は?」「したはずだが。」「ならば結構です。取りあえず、殺せれば問題はありません。現地で再教育しながら使っていくつもりです。」だが、平然とデグレチャフ中佐は人殺しの経験を訊ねてきた。まさに、彼女がデグレチャフという一個の異常な個人であることの証明だろう。人間を製品の様に見なし、テスト済みかと聞いてくるようなニュアンスの会話。人間を、ここまで機能で見ることができるように育てることができるものだろうか?軍は確かに個人の機能に注目する組織だ。代替可能性、コスト意識といった要素は常に付きまとっている。だが、ただの人間にそれだけで判断できるようになるものだろうか?「・・・分かった。即座に手配しよう。」「感謝いたします。」そして向けられるのは、丁寧な謝辞。将校として模範的態度と評するほかにない敬礼。伸びた背筋は、子供らしい顔をどこか現実離れした人形に近く見せる。誰か。何か、おかしいと思わないのだろうか?その日、戦闘団の仮駐屯地に設定された大隊司令部に飛び込んできたのは殺意に満ち溢れた中佐殿であった。いつもならば、能面な表情でほとんど機械的に答礼してくるデグレチャフ中佐殿が感情を露骨にあらわしておられる。あのデグレチャフ中佐殿の逆鱗だ。勘のいい連中は、これ幸いと訓練に逃げ始めた。それも、近くにいてはたまらないとばかりに普段は嫌がる長距離低空分散襲撃演習航程が今日ばかりは大人気。とにかく姿をかくして可能な限り魔導反応を抑えて長距離飛行というハードな訓練だが、リスクの比較は段違い。逃げ出すわけにもいかない大隊当直要員と、ヴァイス大尉は実に暗澹たる気分であっても危険な虎の檻に入らざるを得ない。「使い物にならん!今すぐに、再訓練するか、撃ち殺してやりたい気分だ。」想像上の何かを脳内で銃殺しているのだろう。無意識なのだろうが、中佐殿のお手が腰の拳銃に伸びかけている。ポーチに手を伸ばす幼い少女ならば絵になるのだろうが、これは恐怖しか呼び起さないだろう。「いったい、どうなされたのですか?」聞きたくないが、聞かねばもっと怖いことになりかねない。地雷だとわかってはいたが、取り敢えず慎重にヴァイス大尉は口を挟む。次から、グランツ中尉あたりを戦闘団長付き副官に任命するかと考えながら。「不服従に抗命だ!信じられん!」「・・・はっ?中佐殿にでありますか。」だが、怒り狂った中佐殿の口からもたらされた答えに一瞬凍りつき理解が及ばなかった。顔面をほとんど怒りで真っ赤に染め上げた中佐殿の表情からすると、本当に何かがあったのだろう。しかしだ。待ってほしい。常識的に考えて、あの『抗命=銃殺』に何の躊躇いも見せないという中佐殿にわざわざ不服従・抗命するアホがいるのだろうか?正直、偉大なるアホと呼んでやりたい。というか、どうしてそういう連中が生きているのだろうか?中佐殿の事だ。射殺されていても、一向におかしくないと思う。意味がわからない。何があったか、説明しろ。混乱しきった顔でデグレチャフ中佐殿についていかせたグランツ中尉に視線を向ける。「歩兵将校殿一同曰く、“我々には我々のやり方がある”とのことであります。」そして、引き攣った顔で答える中尉。曰く、新編の歩兵大隊らの指揮官は中佐殿を甘く見られていた。曰く、自信満々にプロだからと言って中佐殿のご指示を丁重に無視した。曰く、指揮権に関して独自の判断権を求めた。「信じられん、戦争に別のルールも何もあったものじゃない。そんなことも分からないのが士官だと?狂っているな。」銃殺してやりたい。そんな思いを全身で体現した中佐殿が吐き捨てる。「いったい、誰がそんなことを?」「全員だ!332大隊全士官がだ!」・・・後方部隊の士官に碌なのが残っていないという噂は耳にしていたが。まさか、まさかよりにもよって獅子と猫を取り違える馬鹿どもとは。なんということだろう。ちょっとだけ。ちょっとだけだが、無能を銃殺に処したいと口になさる中佐殿のお気持ちが理解できてしまった。「いかがされるのですか?」まさかとは思いますが、今から撃ち殺しに行かれるのですか?だとすれば、ちょっとどうかと思うのですが。「決まっている!親衛師団から新鋭の降下猟兵大隊をもらってこい!」「・・・はっ?」・・・・・・・・・・・・・・・はっ?親衛師団?降下猟兵?一体、中佐殿は何をおっしゃっておられる?「第二親衛師団は、当分休養再編だったはずだな?」ええ、はい、その通りであります中佐殿。「ライン戦線で我々の後ろをついてくるしか能のない馬鹿に本物の師団をやるほうがどうかしているのだ。」ええ、はい、御尤もであります中佐殿。ですから、お願いですからお腰のホルスターを握りしめるのをやめていただけないでしょうか?「戦力の有効活用だ。交換する。お飾りの防衛任務なら、馬鹿でもする振りくらいはできるはずだろう。」ええ、はい、お言葉通りであると思います中佐殿。ですからどうか、どうかお願いです。胸元の演算宝珠へ無意識に手を伸ばされるのをおやめ下さい。「・・・それを、参謀本部に申し入れるのですか?」どうか、どうか暴発しないで頂きたい。ほとんど神にすがる思いでヴァイス大尉は恐る恐るその一言を口にする。彼にとってみれば剣林弾雨の中に飛び込む方が、まだ希望が持てた。なにしろその相手は、デグレチャフ中佐殿ではないのだ。そして、奇跡が起きた。少なくともその日、その場に居合わせた帝国軍第203遊撃航空魔導大隊の司令部要員はそう信じる。「心配無用だ。第2親衛師団の大隊長は同意済みだよ。」つい先ほどまで、地獄の獄卒すら裸足で逃げ出しかねない表情だった中佐殿がにこやかな微笑みを浮かべられたのだ。それこそ、天使のように荘厳で素晴らしい笑顔が花開く。「一体、どうやって説得されたのですか?」「なに、簡単さ。あれは戦争フリークスだ。渇望していたよ。一発だ。」・・・訂正。誘惑する悪魔に違いない。少なくとも、中佐殿は恐ろしいお方である。偉大な魔導師であらせられる。偉大な指揮官であらせられる。神様、どうか私達の中佐殿が私達の敵でないことを感謝させてください。「加えて編成主任のレルゲン大佐は話がわかる方だ。問題はないだろうよ。」心中、今度の日曜日はきちんと教会に足を運ぼうと決意するヴァイス大尉。そんな彼の内心をつゆ知らず、ターニャは事が順調に進むとばかりに喜ばし気に微笑む。なにしろ、何とか目算が立った。いやはや。【PLEASE】と言ってみるものだとしみじみと思っている。皆イエスと言ってくれた。『お願いします』と頭を下げることにも意味があるようだ。これで、少しは危険な前線に行っても生き残れる公算を高められる。・・・せめて、せめて明るい未来のために頑張ろう。生き残れれば、最低でも西の方に逃げれば希望はあるし。それは、ひどくおかしな光景だった。集められたのは、新設される戦闘団の結成式。場所は、参謀本部肝煎りを表してかわざわざ参謀本部の一室を貸し与えられている。上の気合も十分なのだろう。列席している高官らの姿もちらほらと見えている。それは、いい。新しい部隊の設立という行事に来賓がいるという事に過ぎない。儀礼任務も多かった親衛師団でそれは良く経験している。「・・・ようこそ、大隊戦友諸君。頼りにさせてもらおう。」だが、あれはなんだ。特注の演説台にわざわざ乗らなければ部下を見渡すどころか第一列の背に姿が隠れてしまうような指揮官。そんな馬鹿げた存在が、人形の様な能面で見るからに戦地がえりの殺気を漂わせる魔導師らを顎で動かしている。一挙一動を逃さないように緊張した魔導師らにニヤリと微笑む姿は、ひどく違和感がある。「中佐殿!戦闘団長殿!指揮官殿!」一心不乱に唱和する姿は、完全に上官を信頼し地獄の底まで共に進軍するような姿を想像させてしまう。曲がりなりにも、精鋭と評されていた我ら第二親衛師団の降下猟兵大隊らですら敬意を払わざるを得ない連中が。地獄のライン戦線で曲りなりにも勇名をはせた部隊が。たった一人の子供に全身全霊で敬意を表している。「共に遊んだ素晴らしき大隊戦友諸君。新たな仲間が戦列に加わることを祝賀しよう。」まるで、百戦錬磨の将校の様に微笑みすら浮かべるその姿は理解の範疇外。「新兵諸君、ようこそ最前列へ。」訓練将校の微笑みの様な凶悪な微笑み。はたして、はたしてこんな子供の様な姿が浮かばせうるのかというソレ。「私の、我々の戦場へようこそ。歓迎しよう、盛大に。」柔らかく、それこそお人形でも抱えている方が似合いそうな手を広げて歓迎の言葉を述べる何か。殺人人形とか、戦闘妖精とでもいうべき何か。誰も。そこに居合わせた高官らの誰もそれに異議を申し立てない何か。ベテランの魔導師らが服従している何か。何故、あの戦争フリークの大隊長がこんなのにつき従うのかと訝しがるべきではなかった。覚悟してくるべきだったのだ。あの、あの戦争狂が惚れ込んでいるという事実に!「私から、諸君に期待するのはたった二つだ。」まるで、どこかで聞いたことがあるような台詞。「我が大隊の足を引っ張るな。追いついて見せたまえ。以上だ。」そういうなり、中佐殿の浮かべられる微笑み。あれが、笑うという行動なのだろう。本質的に、笑みとは攻撃的だと良く言ったものだ。間違いなく、笑うという行為は牙をむき出しにする行為そのもの。威嚇以外の何物でもない。あとがききっと、中佐殿の頑張りが帝国を救うと信じて!本当は、もうちょい早い予定だったんだ。本当はブラックフライデーに間にあわせるつもりだったんだ(´;ω;`)でも、5日でできる部隊の作り方(交渉編)はできたと思う。基本は、プリーズにあるんだ。プリーズさえ付ければ、お互い蛇蝎のごとく嫌いあっている2人もお話できると思うし。取りあえず、部隊はこんな感じ。指揮官:ターニャ・デグレチャフ魔導中佐・第203遊撃航空魔導大隊(参謀本部直轄)・第22装甲中隊 (新編:4号G型装備)・第116降下猟兵大隊(元第二親衛師団所属)⇒員数外として、ロレーヌ150mm自走砲もどき保有運用上、砲兵中隊は歩兵大隊付き・第204補助航空魔導中隊(新編)戦力的には、独立増強混成旅団?あと、中佐殿を背後から撃つとかクーデターとかは予定にないです。熊さんと森で幼女が遊ぶほのぼのストーリーの予定です(*´∀`)いろいろと混乱させてしまい申し訳ありません。>誤字修正+2ZAPの嵐、吹き荒れるZAPorz誤字修正に加えて、追記。そろそろブラウ作戦でも発動させようかと思っています。候補は二つ。①A集団に所属させて、ハグー油田めがけて大行進。ついでに、登山もして山頂にまた国旗を突き刺します。ところが!・・・深入りしすぎて包囲せん滅の危機に!間にあうのか、撤退作戦!?②B集団に所属させて、ヨセフグラード大攻防!遅れた進撃計画、待ちかまえる敵兵。ようやく始まった作戦。順調に包囲してみれば、待ちかまえる冬将軍!冬の嵐作戦、君は生き残ることができるか!?気分的には、国旗をさすために登山というのは浪漫があると思います。でも、ヨセフグラード大攻防戦も楽しみだと思います。気分が乗った方がたぶん次の奴になる予定。ZAP