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No.24734の一覧
[0] 【正式採用決定】(末期戦モノ)幼女戦記Tuez-les tous, Dieu reconnaitra les siens[カルロ・ゼン](2013/08/04 06:42)
[1] プロローグ・ベータ版[カルロ・ゼン](2012/03/30 23:57)
[2] 第一話 学校生活[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:35)
[3] 第二話 良い一日。[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:29)
[4] 第三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:30)
[5] 第四話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:08)
[6] 第五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:33)
[7] 第六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:35)
[8] 第七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:36)
[9] 第八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:38)
[10] 第九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:40)
[11] 第十話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:42)
[12] 第十一話[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:36)
[13] 第一二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:55)
[14] 第一三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:56)
[15] 第一四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 00:59)
[16] 第一五話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:26)
[17] 第一六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:17)
[18] 第一七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:18)
[19] 第一八話[カルロ・ゼン](2012/04/22 18:37)
[20] 第一九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:21)
[21] 第二〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:23)
[22] 第二一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:24)
[23] 第二二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:27)
[24] 第二三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:30)
[25] 第二四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:33)
[26] 第二五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:48)
[27] 第二六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:50)
[28] 第二七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:52)
[29] 第二八話(外伝①)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:54)
[30] 第二九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:56)
[31] 第三〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:58)
[32] 第三十一話(外伝②)[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:15)
[33] 第三十二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:17)
[34] 第三十三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:18)
[35] 第三十四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:20)
[36] 第三十五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:20)
[37] 第三十六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:12)
[38] 第三十七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:12)
[39] 第三十八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:11)
[40] 第三十九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:09)
[41] 第四〇話(外伝追加)[カルロ・ゼン](2011/11/13 23:03)
[42] 第四一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:07)
[43] 第四二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[44] 第四三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[45] 第四四話[カルロ・ゼン](2012/03/08 22:55)
[46] 第四五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:06)
[47] 第四六話(外伝3)[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:05)
[48] 第四七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:04)
[49] 第四八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:04)
[50] 第四九話[カルロ・ゼン](2011/11/25 02:02)
[51] 第五〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:03)
[52] 第五一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:01)
[53] 第五二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 02:00)
[54] 第五三話(時系列的には第五二話前の外伝)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:46)
[55] 第五四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:44)
[56] 第五五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:43)
[57] 第五六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:42)
[58] 第五七話(外伝追加)[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:41)
[59] 第五八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:41)
[60] 第五九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:39)
[61] 第六〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:38)
[62] 第六一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:37)
[63] 第六二話[カルロ・ゼン](2012/01/15 05:00)
[64] 第六三話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:35)
[65] 第六四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:34)
[66] 第六五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:13)
[67] 第六六話[カルロ・ゼン](2012/03/17 23:56)
[68] 第六七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:12)
[69] 第六八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:12)
[70] 第六九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:11)
[71] 第七〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:10)
[72] 第七一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:10)
[73] 第七二話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:09)
[74] 第七三話[カルロ・ゼン](2012/03/16 22:14)
[75] 第七四話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:09)
[76] 第七五話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:08)
[77] 第七六話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:07)
[78] 第七七話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:07)
[79] 第七八話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:06)
[80] 第七九話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:05)
[81] 第八〇話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:04)
[82] 第八一話[カルロ・ゼン](2012/04/12 01:03)
[83] 第八二話[カルロ・ゼン](2012/04/18 01:19)
[84] 第八三話[カルロ・ゼン](2012/04/18 01:20)
[85] 第八四話[カルロ・ゼン](2012/04/22 20:41)
[86] 第八五話[カルロ・ゼン](2012/05/11 02:16)
[87] 第八六話[カルロ・ゼン](2012/05/13 18:13)
[88] 第八七話[カルロ・ゼン](2012/05/18 00:55)
[89] 第八八話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:33)
[90] 第八九話[カルロ・ゼン](2012/05/31 00:03)
[91] 第九〇話[カルロ・ゼン](2012/07/02 04:25)
[92] 第九一話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:38)
[93] 第九二話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:32)
[94] 第九三話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:29)
[95] 第九四話[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:36)
[96] 第九五話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:28)
[97] 第九六話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:27)
[98] 第九七話[カルロ・ゼン](2012/09/02 12:59)
[99] 第九八話[カルロ・ゼン](2012/09/02 16:01)
[100] 第九九話[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:26)
[101] 第一〇〇話[カルロ・ゼン](2012/09/22 01:53)
[102] 番外編的な何か。 という名の、泣き言的な何か。[カルロ・ゼン](2012/09/23 20:17)
[103] 番外編1 『ライヒの守護者』[カルロ・ゼン](2012/09/28 05:02)
[104] 番外編2 『ラインの食卓』[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:25)
[105] 番外編3 『203は何処にありや?』[カルロ・ゼン](2012/10/25 22:20)
[106] 番外編4 『ルナティック・ルナリアン』[カルロ・ゼン](2012/11/07 09:34)
[107] 番外編5 『毒麦のたとえ』[カルロ・ゼン](2017/01/29 16:24)
[108] あとがき(+ちょっとした戯言)[カルロ・ゼン](2012/12/17 01:20)
[109] The Day Before Great War 1:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2012/12/24 11:11)
[110] The Day Before Great War 2:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2012/12/24 11:11)
[111] The Day Before Great War 3:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/01/29 01:14)
[112] The Day Before Great War 4:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/01/28 22:00)
[113] The Day Before Great War 5:ノルデン北方哨戒任務[カルロ・ゼン](2013/08/04 08:53)
[114] The Day Before Great War 6: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/06/06 20:30)
[115] The Day Before Great War 7: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/06/06 21:33)
[116] The Day Before Great War 8: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/08/04 06:45)
[117] 『おしらせ』[カルロ・ゼン](2013/01/28 22:19)
[118] 番外編6 『とある戦場伝説』[カルロ・ゼン](2013/09/25 01:57)
[119] 番外編7 『ラインの…オムツ』[カルロ・ゼン](2013/09/25 02:13)
[120] 番外編8 『喰らうた肉』[カルロ・ゼン](2013/09/25 01:55)
[121] 番外編9 『総力戦問題1』:農務省、人手を求める[カルロ・ゼン](2014/03/10 21:47)
[122] The Day Before Great War 9: 秋津島戦役[カルロ・ゼン](2013/10/07 16:12)
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[24734] 第一二話
Name: カルロ・ゼン◆ae1c9415 ID:ed47b356 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/12 00:55
頭が重い。それに、意識も霞む。
部隊は、部下はどうなっているかの心配どころではない。
それどころか、次の瞬間には飛びかける意識をつなぎとめるので限界。
咄嗟に光学系の屈折光学デコイを展開したにもかかわらず、安全規定を大幅に超過する乱数回避の連続。
辛うじて、統制を維持しているものの共和国の精鋭と自負した中隊が、わずか一人に翻弄されている。

わずかな間に、事態があまりにも急激に進展していた。

「MAYDAY MAYDAY MAYDAY」

始まりは、接敵を知らせる緊急警報。
あの前線戦域管制官が悲鳴を上げるのを聞くのは初めてだった。

「Break!break!」

指揮官が散開を指示。
遠距離から纏まって撃たれるほど馬鹿げたことはない。
即座に其れに従い散開したが、その指示に迅速に応じられる練度の高さであったが甘かった。
敵が見当たらないと首を傾げた瞬間に、バディの上半身が吹き飛ぶ。

「ショーン!?」

「Bandit!Angel12」

「Angel12!?」

攻撃を受けた方向を走査し敵を発見するも、あまりの高度に絶句する。
高度12000
魔導師の実用限界高度6000が馬鹿馬鹿しくなる高度だ。
対地上比で6割程度の酸素濃度という過酷な環境云々以前に魔力が枯渇する。
航空魔導師の実用限界が6000というのは、生半可な理由ではない。

「It is supposed to be a fighter!」

「Shit!It's not!The magi particle is detected!!」

戦闘機かとも勘ぐるが、やはり間違いない。
感知される魔力の粒子反応と魔力光。
紛れもなく航空魔導師だ。

うすくなる酸素濃度。
急激に低下する体温。
魔力の枯渇は致命的だ。
加えて、高所順応も大きな問題になる。

信じがたいことに敵の魔導師はそのすべてを克服し、あまつさえ戦争をしていた。
悠々と飛ぶ姿は、帝国の武力を如実に体現しているかの印象すら纏ってやまない。

「Climb! Climb and maintain 8000!」

疲れ切った部隊。
敵観測班排除に集中力を喰われた上に、長時間の滞空は全てを摩耗させていた。
質・数が互角の部隊と戦えば鋭気に満ちている方に分があるのが道理。
帝国の航空魔導師はその精鋭が謳われてやまない存在。
対する我々は質的劣勢を数で補う傾向がある。ましてや、この敵はあまりにも非常識。
たとえ、充足しきった状態であったとしても苦戦は免れ得ないだろう。
そもそも高度12000へのアプローチは不可能に等しいのだから。

「Sir!?Are you sure!?」

「We have no choice!」

理論上は航空魔導師と航空機ではやや航空魔導師に分がある。
ただし、それは高度6000以下という限定的なフィールドでの話。
航空魔導師は魔法が使えるが所詮生身の人間なのだ。
高高度での戦闘では、ただの的に過ぎない。

「That's why AWACS is in so panic.」

「I agree. It's a horrible.」

なるほど、規格外も良いところだ。
AWACSが慌てるのもよく理解できる。
なにしろ、一般に航空魔導師空戦規定によれば6800以上への上昇は不可能とされてきた。
いや、実際不可能なのだ。

演算宝珠とライフルで殺し合えるのは6000が限界。
ごく例外的な高地連隊出身の航空魔導師は7000以上で戦闘ができるというが、桁が違う。
高度12000。
戦闘機ですら酸素供給が無ければパイロットがブラックアウトする世界。
酸素濃度があまりにも薄すぎるのだ。
この高度以上へあがる場合は、よほどの緊急避難的な措置とされる。

例えば、圧倒的に劣勢であり離脱を試みる際など、本当に限定された局面でしか行われない。
戦闘機動など論外とされる。
たとえ仮に敵魔導師を撃墜したところで帰還は絶望的だ。
一時的に敵地で潜伏し回復を図れれば、よいが其れも希望的観測。
それ以前に、ブラックアウトで墜落するか動けなくなって的にされるか。
しかし、今ばかりは例外的な事態である。

「Otherwise, our ground troops will be annihilated.」

「Sir,you are right.We've no choice.」

しかし、航空魔導戦に限らないが空で上を抑えられるのは致命的。
故に、上がるしかない。
せめて、こちらの射程にとらえなければ鴨だ。
逃げるにしても、戦うにしても上がらなければ何もできない。
だが、逃げるのはなしだ。
地上軍が退却するまでの時間を稼がねば、我々どころか地上軍そのものが壊滅しかねない。
元より選択肢はないのだ。

「Engage until Bingo fuel.」

魔力限界まで、交戦。
なにより、ショーンの仇だ。
生かして帰すわけにはいかない。

「Go for engage and defeat them or just die!」

指揮官の決意がこもった号令とも叫びとも付かない一言。
叩きのめすか、我々が叩き潰されるか。
選択肢は二つしかない。
魔導師というものは、兵隊なのだ。
殺すか、殺されるかという本質は不変。

「B in Engage!」

ブラボーチームも交戦に突入。
各個撃破されかねない情勢に思わず、神を呪いたくすらなる。
あんな厄介な敵の他にも、敵増援があると思えば実に憂鬱にならざるを得ない。

「My God!」

だが、長距離観測術式を展開した先にあるものは、それ以上だ。
目標の個体魔力素をライブラリで検索。
敵増援という事実以上に最悪の答えが叩きだされる。
『登録魔導師』
早い話が、複数回の戦闘における記録で照合した結果碌でもない物を引いたということだ。

「It's a Rhine's Satan!」

戦術的脅威と認識されて軍のライブラリに登録された魔導師。
その中でも、ラインの悪魔は出会いたくない航空魔導師筆頭格である。
当該方面の戦闘で出現が確認されたのは、わずか1か月前。
わずか1か月。そして、奴の撃墜スコアは60を超えている。
特に、重魔力系の空間爆撃や精密な光学系狙撃式は恐ろしい。
狙撃兵と同様の手段、『友釣り』に掛った部隊など半数が壊滅した。
なにより嫌らしいのは、辛うじて帰還できる程度の致命傷を負わされた魔導師が多いという事実。

貴重な航空魔導師を惜しみ、治療に傾注したとしてもほぼすべてが死亡。
医薬品の消耗は厄介であるし、なにより軍医達の手が拘束されるのは痛い。
おかげで、地上軍は多くの兵士に軍医が不足する羽目になってしまう。
しかも、航空魔導師が損耗することにより、戦術的に見た場合危険なまでに魔導師が減少している。

単独の個が、戦略を、軍隊を相手に渡り合うのだ。

悪魔と呼ばずして、これを何と呼べというのだ。
ここで、何が何でも撃墜せねばならない相手。
無論、高度12000を相手取るのは無謀だろう。
だが8000程度の高度ともなれば、十分に狙える。
何より、こちらは落とされたとはいえ、数で勝る。

12000で飛んでいるのだ。
相当無理をしなければ、できる話ではない。
たとえ、規格外であるとしてもだ。





視点:デグレチャフへ回帰

デグレチャフという個人からしてみれば、敵部隊がこちらに吶喊してくるというのは想定外もよいところであった。
通常の魔導師では高度6000を越えての戦闘は自殺行為。
まして、長距離進出せざるを得ない航空魔導師。
そのような連中に魔力の余裕があるはずもない。
そうとばかりにたかをくくっていたのは完全に失敗だった。

遠距離から、一方的に攻撃するのは最高だが、さすがに皮算用だったらしい。

「ラインの悪魔め!今日こそ、今日こそ貴様を叩き落としてやる!」

「・・・貴方とは初見になるはずだが?」

軍人だ。
さすがに、恨みを買っていないとは思わないが初見の人間から執念じみた叫びを聞くのはどうなのだろう。
悩む、というよりも純粋に疑問を覚えるにとどめ戦術的判断を続行。
動きが素早く、しかも乱数機動を取っていることから、精密狙撃はもはや効かない。
故に、大まかな領域ごと爆破する爆裂系か、空間目標に対する誘導射撃が最適と判断。

目標捕捉。相対速度修正。無意識のうちに、エレニウム95式で最適な射撃方法を選択。
ニューラルリンケージ、イオン濃度正常、メタ運動野パラメーター更新。
全システム、オールグリーン。



nicht!

微弱な初期照準魔力照射を複数検出。
形式、不可視の誘導系射撃式及び空間発現系爆破式。

敵のアプローチ圏内に侵入していたにもかかわらず、意味のない会話に気を取られ、思考が停滞していた!

頭の中に照射警報が全開で鳴り響く。
即座にエレニウム95式の核で魔力発現プロセスへ緊急割り込み。
体勢を崩すことを承知で魔力をつぎ込み最大加速。
同時に乱数回避機動が自動起動。

辛うじて、間に合ったその直後に、つい先刻までいた空間に雨霰と魔力光が降り注ぐ。
一部には爆裂式まで混ざっていたいらしく爆風の余波で大きく高度を狂わされる。

「っ、と。これはさすがに、どうしたものか。」

高地連隊の部隊かとも思ったが、高度8000へ高知順応すら省略して上昇してくるとは。
高低差を考慮しても、敵射程圏内に捉えられた。しかも、まずいことにこちらは数的に劣勢。
咄嗟に、光学系デコイを緊急生成し、欺瞞行動を展開。
複数の幻影をばら撒くものの、即座に射撃魔法が飛んでくる。
咄嗟射撃でここまでの統制射撃。

「アレを回避する?化け物か!」

うるさい連中だ。いや、わざとやっているのだろう。相手は数的優位を活用している。
会話に引き込み、集中力を削ごうというやり方を繰り返したのだろうが、もうその手には乗らない。

統制された射撃魔法による戦闘形式は、個人技に依存する帝国魔導師の鬼門だ。
特に、質的優勢を誇る帝国に対して、共和国は数的優位を徹底的に活用してきた。
中でも、目の前の連中のように一糸乱れぬ交戦具合。
戦域通達で注意が呼びかけられるネームド以外にありえるだろうか。
違うとしたら、有力な敵部隊がたくさん存在するということで、実に望ましくないことこの上ない。

検出された魔力反応をライブラリで照合。実にありがたいことにライブラリはきちんと仕事をしていた。
その忌々しい予想は見事なまでに的中する。連中、ネームドの中隊だ。
わざわざ、本国戦技教導隊から統制射撃に警告が発されるほどの厄介な連中。
明らかに給料分以上のサービス労働だ。見合わない事この上ない。

「CPへ至急、敵魔導師はネームド。繰り返す、敵はネームド。」

「CP了解。現在増援が急行中。無理に撃破する必要はない。」

ありがたいお達しだ。
死んでこいと言われないだけ上出来と言ってしまってもいいいだろう。
だが、軍人という生き物の社会では「勇敢さ」と「大声」が評価されるのだ。
臆病よりは、蛮勇が尊ばれる狂った集団の中で正気であるのは実に大変である。

しかし、出世のためだ。いた仕方ない。

「増援把握。なれど、ここは私の戦場。」

やりたくないが、吶喊くらいはしておかないと戦功評価にさし障るのだ。
思い起こせば、よくぞ関東軍なぞあそこまでお気楽に自己幻像を肥大化させたものだと思う。
だが彼らの真似をすれば出世はできるのも事実。愛国者と自称する奴に碌な奴はいない。
真の愛国者というのは、行動で示すが、似非共は口で表わすのだ。
だが、出世のためならば、行動と口でアピールしてこそである。道具としての愛国主義は実に便利なのだから。

「帝国を侵すのであれば、協商連合だろうと共和国だろうと有象無象の区別なく排除するのが我らが使命。」

エレニウム95式は全力で使えば使うほど精神を蝕む呪いつき。
要するに、性能の代償として神と称する存在Xを全力で賛美する悪夢の様な仕様である。
関東軍式出世ドクトリンを採用している手前、それらしい言葉に聞こえることが唯一の幸いか。

しかし、頭でっかちのつじーんのような連中の真似をすればするほど出世できるとは、軍とは何かが間違っている。
だからこそ戦争なんて馬鹿げているものを望むような軍人まで出てくるのだろう。
本来ならば、軍人ほど平和を希求し、無駄飯ぐらいであることを望む職業もないというのに。

「空間座標把握、各目標の乱数回避軌道算出、チャンバーへの魔力充填正常」

敵は数的優位をいかし、こちらを狩らんとする。
協商連合の航空魔導師相手に各個撃破が通用するとも思えない。
個別に撃破していては数に押しつぶされてしまうだろう。
なにしろ、相手は一糸乱れぬ統制を誇っている。
最初に狙撃で幾分減らせたのは僥倖に等しい。
二度目は望めないと覚悟するべき。

だから発想を転換させる。要は、連中を統制のとれた群像と認識すればいい。
ジャイアントキリングだ。

ちまちま狙うのではなく空間を標的にすればよい。

「CPへ戦域空間爆撃警報。」

「CP了解。戦域空間爆撃警報を発令する。」

エレニウム95式は4核の同調機構と魔力のストックが可能。
そして、ため込んだ魔力と全力稼働による爆裂系式は、戦術戦域全体を巻き込んだ干渉が可能。
もちろん欠陥演算宝珠による全力稼働だ。碌でもないことを惹き起こすのは保証を付けられる。
敵味方の区別なく吹き飛ばす上に、魔力ノイズまで撒き散らし、爆煙が有視界領域を狭め、そして孤立を生む。
組織的戦闘を著しく困難にし、統制を皆無にするために組織的戦闘において使い勝手は最悪だ。

教導隊の評価では、自爆以外に使い道はあまりないというありがたい講評まで頂いた。

だが、個人対組織だとなれば、組織を吹き飛ばし、個人対多数の個人に持ち込める。

「去ね。不逞の輩よ。ここは、我らが帝国、我らが空、我らが故郷。」

愛国心を空間全域に垂れ流すことで、戦功評価に期待しよう。
ついでに、一般的には信心深いことも比較的評価されるのだから、存在Xによる呪いも出世のためだ。
今回ばかりは甘受しよう。例え、自己の自由と尊厳が耐えがたい苦痛に悲鳴を上げるとしても、である。

「汝らが、祖国に不逞を為すというならば、我ら神に祈らん。」

敵魔導師が散開。左右より十字砲火を形成しつつ、こちらの火線が集中できないような空中機動だ。
全く、油断のない連中で通常の爆裂系術式に対する散開基準より大幅に間隔を取っている。

「主よ、祖国を救い給え。主よ、我に祖国の敵を撃ち滅ぼす力を与えたまえ」

低酸素環境下において、基準を大幅に超える高機動を連続した揚句に、牽制の射撃を行ってくる戦争狂だ。
まったく、そんなに戦争が好きならば自分たちで二つに分かれて殺し合えばよいモノを。
何を好き好んで、人を巻き込むのだろうか。本当によい迷惑である。人に迷惑をかけてはいけませんと、教わらなかったのだろう。
つまりは、教育に深刻な欠陥があったに違いない。子供達の未来を決定するのは教育なのだから、しっかりしてほしいものだ。
それとも、こちらと同様に戦争による出世と生存を狙った経済的合理性でもあるのだろうか。

いやまて、そうであるならば、交渉するべきだろうか?
交渉によって、より大きな利益を見出すことも可能ではないだろうか。
利益追求という合理的経済人としての自覚まで失いかけさせるとは、なんたること。
戦争とはかくまでも、過酷であり人間の理性を失いかけさせるとは。

理性的に考えれば、利益が一番なのだ。
当然の自明のことではあるが、交渉する前に相手を空間ごと吹き飛ばしてしまっては交渉にもならない。
ここは、ジャングルではないのだ。

ジャングルのように掟ではなく、合理的論理性がすべてを支配する。
弱肉強食といっても、経済的利益による弱肉強食が単純な力に優越するのは疑問の余地がない。
例えば、殺し合いを趣味としていない以上、私に相手を殺すのは利益があるからに過ぎない。
ゼロサムゲームで無いとすれば、協力関係の構築はゲーム理論上可能。

なら、八百長でもやりたいところだ。
私は生き残る保証と出世の可能性があってハッピー。
相手は、出世なり生き残る何なりできてやはりハッピー。
所謂Win-Win関係が構築できるだろう。

確かに、ジャパンの国技なるものは、八百長だと統計的に示した経済学者の予想も正しかったことだし、経済学は侮れない。
優秀な経済学者ならば統計で、勝敗の不自然さを指摘し、分析できる。
だが、彼らが八百長を見抜くようになるころにはきっと戦争も終わっているに違いない。
なにしろ、戦争中なのだ。経済学者のやるべき仕事はいくらでもあるし、重要度も遥かに高い。

「信心なき輩に、その僕らが侵されるのを救い給え。神よ、我が敵を撃ち滅ぼす力を与えたまえ。」

一応、術式の展開を行うように見せかけるべく意味のない讃美歌を全力で垂れ流す。
これによって、こちらの意図をしばらくCPに隠すこともできる。
上手くいけば、魔力ノイズでこちらの様子がうかがわれない間に交渉を妥結させてしまえばよい。

やはり、そうなると相手を見極めねばならないだろう。

・・・ここは、メッセージを送るべきではないだろうか?
ひょっとすると、相手は交渉の窓口を開いてくれるかもしれないし、お互いに上手くやれるかもしれない。
先入観に縛られてしまうのは、社会人として失格だ。
共和国軍人という連中のことを私は、共和国という先入観で見ていたのかもしれない。

人は見た目ではないのだ。
きちんと、相手の中身で本質を見極めて丁寧に対応しなくてはいけないだろう。
人間の個性とはかけがえのないものなのだから、尊重されてしかるべきもの。
いくら、戦争中とはいえ、交渉できるかもしれない相手に対しては誠実であるべきだ。

だが、もちろん言うまでもないことであるが、敵との交渉は当然のことながら軍法会議ものだ。
戦闘放棄など、敵前逃亡扱いに等しく、言い逃れの余地なき銃殺刑が待っている。
いくらなんでも、背任で捕まりたくはないし、殺されるともあれば非常に微妙だ。

しかし、善良なる一個人として、無用な戦闘を避けることができるとあれば個人の犠牲も甘受しよう。
話が通じる相手であれば、個人的な出世と休養の機会を先送りするのは吝かでもない。
それは、戦争狂から自衛する際に戦果として稼ぐことにする。

だが、こちらの労働は明らかに給料を上回る不当労働でもあるし、休暇が欲しいのもまた事実。
つまり、バランスを取ることができれば最善にできるに違いない。
連中に話が通じれば、素晴らしいハッピーな関係が構築できるだろう。
話が通じなければ、叩き落として後方でゆっくりと休暇と美味い食事を楽しむことにしよう。
ワインが飲めないのは残念極まるが、後方地域は魚のソテーが有名であるところだ。
ぜひとも、美味に期待したいところ。

「告げる。諸君は、帝国の領域を侵犯している。」

だから、取りあえず、当たり障りのない言葉を選んでみよう。

「我々は、祖国を守るべく全力を尽くす。我々には、守らねばならない人々が背後にいるのだ。」

軍人の義務は、祖国の人々を守ることらしい。
暴力装置としての軍隊と、皇帝の軍隊という性質があるとはいえ、やはり軍人とは国家を守るものだ。
まあ、国家が軍隊を保有するのではなく、軍隊が国家を保有するプロイセンの様な国家もあるので、一概には言えないのだが。
一般論として言えば、建前論のアピールにもなる。

「答えよ。何故、帝国を、我らが祖国を、諸君は侵さんと欲す?」

譴責するようで、その実問いかけ。交渉の糸口をこちらから投げかけてみるとしよう。
この程度であれば、敵兵に対して話しかけるという非常識さが、誤魔化すこともできる。
まあ、相手に対する戦場での抗議や嫌がらせ音楽と同じ扱いだ。

さて、御返事は如何に?
と期待するも、帰って来たのは罵詈雑言と雨霰と降り注ぐ射撃。

乱数回避機動を取っているために、被弾こそしないものの、やはり気が進まない。
やはり、言葉なき獣に等しい戦争狂なのだろうか?
正気になって合理性をお互いに追求できる近代的な経済人ではないのだろうか?

だとすれば、本当に悲しいことではあるが戦争を楽しむ連中に付き合わねばならない。
時間外労働手当と危険手当を請求したいところであるが、どこに請求するかも規定されていないのを思えば、泣きたくなる。

『CPより、戦域へ警報。高魔力ノイズに警戒せよ。』

ご丁寧にCPが要請通り警報を発してくれている。
すでに、十分な魔力も蓄積されていることだ。
合理的な経済人であれば、0よりも1を重視するに違いない。
つまり、ひょっとすると電波状態が悪化しない限りリスクを取る気にならない慎重な相手がいるかもしれないのだ。
そして、そういう合理的な相手ならば爆撃されても生き残ったら合理的解決を選択するに違いない。

少なくとも、私ならそうする。
そういうことならば、仕事は迅速さを追求するべきだろう。
一切の躊躇も、一切の遅延も排除し滞りなく事態の進展を促す。
溜めに貯めた魔力を全力で制御しつつ、思考にノイズが入ることを甘受。

「聖徒よ、主の恵みを信じよ。我ら、恐れを知らぬものなり。」

充填されていた魔力が急激に解放される脱力感。
全身の細胞が吸い取られる魔力によって悲鳴を上げそうになるが、エレニウム95式の呪いが封じ込む。
苦痛が強制的に法悦へ変換されるぬぐい難い違和感。
喜びと苦痛のブレンドで頭がシェイクされる感覚は、何物にも形容しがたい最悪なものだ。

「運命を嘆くなかれ。おお、主は我々をお見捨てにならず!!」

全身で感じる喜びと、自由が奪われる忌避感はもやは耐えがたい水準。
許される事ならば、今すぐにでも悪態をつきたいにもかかわらず、口は讃美歌を口ずさみかねない。
忌々しいことだがアカが唯一正しかったとすれば、宗教は麻薬だという認識に違いない。

麻薬はシカゴ学派的な見解で言えば、経済的に統制し得るものではあるが。
とはいえ、この麻薬はやめたくても止められないのではなく、止めたら死にかねないところに問題がある。
実に厄介極まりない。シカゴ学派の見解には、止めた場合即死しかねない薬物なぞ考慮されていないのだ。
考慮する方が、どうかしている想定であるのは言うまでもないだろうが。

「遥か道の果て、我らは約束された地に至らん。」

瞬間的に、気化爆弾と類似のプロセスが発動。
圧力が限界に達した魔力が、計測不能な速度で噴出。
沸騰魔力拡散爆発反応に加えて、拡散した魔力が空気と混合され自由空間魔力爆発を誘発。

急激な気圧の変化は、急性無気肺や肺充血を惹き起こし、燃焼によって唯でさえ薄い酸素濃度は致命的な水準にまで低下する。
高度8000での酸欠と一酸化炭素中毒は頑強な航空魔導師をして一瞬でブラックアウトさせ、地面へ突き落とす。
辛うじて、意識が残った魔導師を襲うのは、もがきたくなるほどの苦痛。
急性無気肺と一酸化炭素中毒、それに酸素分圧の急激な低下による合併症状は地獄のような苦しみを伴う。

「っ、ゲホッッ、ゲホッ。」

有効攻撃圏外であるデグレチャフですら、ともすれば酸素濃度の低下に息苦しさを覚える程だ。
攻撃圏内に留まっていた魔導師では、飛べたとしても最早長くはない。
なにしろ、自由空間魔力爆発で魔力が広域に拡散され魔力ノイズを形成している。
通信の途絶程度で留まるどころか、飛行術式の維持すら困難になれば、戦闘の継続は不可能。
煙で視界が制限されているのが厄介ではあるものの、直撃を受けた相手の様子は容易に想像がつく。

「交戦中の共和国軍に告げる。すでに、勝敗は決した。」

故に、勧告を試みることにしてみる。
ここまでやって生き残っている相手がいるかどうかという疑問があるが、さしてコストがかさむ行為でもない。
まあ、生き残っていなければ中隊撃破の功績をもって後方でお茶を楽しむとしよう。

「投降するならば、ヴォルムス陸戦条約に基づき、捕虜としての権利を保障する。」


※ひっそりと時々、更新します。
大量に誤字修正を行っております。
ZAPの嵐。
ZAP


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