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No.24697の一覧
[0] 【ネタ】ヴァナ・ディール浪漫紀行【FF11】[為](2011/01/24 13:01)
[1] 00-前文[為](2010/12/18 01:28)
[2] 01-誘うは異界のほむら[為](2013/09/29 09:49)
[4] 02-ようこそヴァナ・ディールへ[為](2013/09/29 09:44)
[5] 03-待ち人来たらず[為](2013/09/29 09:44)
[6] 04-そして、めぐりあう[為](2010/12/30 21:46)
[7] 05-グスタベルグ観光案内[為](2013/09/29 09:44)
[8] 06-ある冒険者の足跡[為](2010/12/30 21:46)
[9] 06.5-Goblin Footprint[為](2010/12/30 21:47)
[10] 07-をかしき祖国[為](2013/09/29 09:43)
[12] 08-護衛の報酬~バストゥーク編[為](2013/09/09 13:32)
[13] 09-ひとりでできる?[為](2017/11/03 05:47)
[14] 10-ミスリルに賭けた男たち[為](2013/09/29 09:43)
[15] 11-憎悪[為](2013/09/29 09:42)
[16] 12-ブリジッドのファッションチェック[為](2013/09/29 09:42)
[18] 13-センスを磨くのにゃ[為](2013/09/29 09:42)
[19] 14-買い取りなら天晶堂[為](2016/05/28 20:43)
[20] 番外編-01[為](2010/12/17 00:00)
[21] 番外編-02[為](2010/12/17 00:00)
[22] 番外編-03[為](2013/09/09 13:35)
[23] キャラ覚書[為](2013/09/11 06:49)
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[24697] 番外編-01
Name: 為◆3d94af8c ID:b82d47da 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/17 00:00



 何度と無く失敗した。
 幾度と無く失敗を繰り返し、繰り返した果てについぞ今まで成功の二文字は彼女の前に現れはしなかった。
 そして今も。

 陣を敷いた草原に爆音と土煙が舞う。また失敗だ、ルイズの心は落胆できるほど上を向いてはいない。
 春の使い魔召喚試験においてかつてこれほどまでに失敗し続けた生徒はいないだろう。元より失敗するような魔法ではないのだ。

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラ・ド・ラ・ヴァリエール。周囲の生徒から『ゼロのルイズ』と罵られる彼女は、その名の通り今まで魔法を成功させたことがない。
 故にゼロ、成功率ゼロのルイズ。
 貴族にとって、メイジにとってこの上ない侮辱であり、しかしルイズはプライドの高い少女であった。いずれ名高いメイジとなって彼らを見返してやると常日頃から心に決めていた。

 しかしその機会も、今失われようとしている。
 使い魔召喚はメイジにとって通過儀礼のひとつだ。魔法学院での進級をかけた試験であると同時に、呼び出された使い魔からメイジ自身の資質を測るバロメータでもある。
 だがそう、あくまで通過儀礼のはずだったのだ。ルイズはここであっと皆を驚かせるような使い魔を召喚してやろうと密かに思っていたし、今までいくつかの不測の事態を除いて──例えば緊張で当日になって体調を崩すだとか──召喚に失敗して落第するような生徒はいなかった。
 それだけに失敗を重ねるルイズの心中には絶望だけが広がり、そして監督官を努める教師のコルベールの胸中にもルイズを不憫に思う気持ちが重なっていった。

「ミス・ヴァリエール。今日はこのくらいにしておきましょう」

 ルイズ1人を落第させるのはあまりに哀れだし、こう言っては何だがここで落第生を出すのはコルベール自身の、ひいては学園の沽券にも関る。
 学院長に相談して後日彼女に再召喚の機会を与えようと思っての進言だった。この召喚場もまだ数日は使えるはずだ。

 しかし疲れと悔しさに打ちひしがれていたルイズにとって、それはまるで最後通牒のように聞こえた。

「待ってください! 私はまだ出来ます、お願いします……もう一度だけやらせてください!!」

「いい加減にしろよゼロのルイズ! そう言ってもう何度目だよ!!」

 待たされることに焦れてきたのだろう、先に召喚を終えた生徒が明らかな罵声をぶつけてくる。
 コルベールはそれをひと睨みで黙らせると、唇を強く噛んで耐えるルイズに努めて優しく声をかけた。

「ではもう一度だけです、それで本日はいったん終了しましょう。大丈夫です、私の生徒から落第生を出させたりはしませんよ」

「はい!!」

 いくらかは勇気付けられたか、あるいはまだチャンスを与えてもらえることに希望を抱いたのだろう。瞳に活力を取り戻したルイズは、今一度召喚のための魔法陣に向かってタクトのような杖を振りかざした。



 そんなルイズたちから10歩ほど離れたところに集まった生徒たちの中で、唯一他の生徒とは違う目でその様子を見守るものがいた。
 赤い髪の少女──キュルケは、杖を掲げるルイズの姿をじっと見つめながらため息をついた。

「全く、よくやるわよあの子も」

 キュルケの隣には、対照的に蒼い髪を持もち眼鏡をかけた小柄な少女がいたが、彼女の返答を期待していたわけではなかった。半分独り言だ。

 キュルケともう1人の少女……タバサは、今年の2年の中では"アタリ"とされる2人だった。その2人がともにトリステインの人間でないというのは、学院にとって憤懣やるかたないかもしれないが、それはともかく。
 共にこの歳でメイジの第3階位であるトライアングルの実力を持ち、片やキュルケは火竜山脈もサラマンダーを、片やタバサに至っては幼いとはいえ風竜を召喚したほどた。

 そんなキュルケであるが、実力において天と地ほども評価に差があるルイズとは浅からぬ縁があった。
 なにせ実家の領地が国境をはさんで隣接していることに加え、かねてより……まあともかく、主にルイズからしてみればとかく気に食わない女の筆頭がこのキュルケであった。
 逆にキュルケからしてみればルイズは良いおもちゃである。
 何かにつけてちょっかいをかけてみれば、他の生徒に対しては我慢を覚えることでもキュルケに関してはことのほかよく噛み付いてくる。そのこらえ性の無い猫のような挙動が嗜虐心をいたくそそるのだ、と本人は思っている。

「ここで落第なんてことになったら、ヴァリエールの家もそれまでね。まあ姉のほうは優秀って聞くけれど」

 そもそも魔法がまともに成功しないのに学院に入れたのも、相当に実家であるヴァリエール公爵家の横車があってのことだろう。しかしここで落第しようものならいい加減かばうことも難しいはず。ともすれば退学にもなりかねない。

 ヴァリエールがいなくなれば……それは少し、惜しい。彼女のいない学院は今よりいくらかつまらなくなってしまうだろう。
 そう思いながらもう一度ため息をつき、キュルケは僅かに驚いた。
 タバサと目が合った。ルイズにさしたる興味も無い彼女は、本に没頭していると思っていたのに。

 読書狂いで無口な親友がぼそっとつぶやいた。

「心配?」

 その意味を一瞬図りかね、理解してからぷっと思わず噴出してしまった。

「やぁね、そんなんじゃないわ。ただヴァリエールにここでいなくなられたら良いおもちゃがなくなるってだけよ」

 それだけなんだから。
 そう言ってルイズに視線を戻す……というよりもこちらを見つめる透き通った瞳から視線を逸らせたキュルケに、タバサは何も言わなかった。

 言ってもどうせ本人は認めないだろうし──ルイズを見つめる目が、出来が悪いけれど憎めない妹を見つめるようだったなんて。

 それでもしばらくキュルケを見つめていたタバサだが、やがて興味をなくしたように本に目を向け……ようと思ったところで、本日最大の爆音が響き渡った。
 煩わしげにそちらに目を向けたタバサは、かすかに目を細めた。



 爆風に煽られながら、ルイズは今度こそ地面に膝をついた。
 彼女の魔法は常に"爆発"する。結局、この日与えられた最後のチャンスさえ棒に振ってしまったのだろう、そう思うともう立っている気力すらわかなかった。

「ミス・ヴァリエール」

 コルベールが声をかけてくるが、それに応える言葉も考え付かず、ルイズはただうつむくばかりだった。
 その肩にコルベールの手がかかる。
 ようやくのろのろと顔を上げてみると、コルベールはこちらを見ていなかった。

「?」

 コルベールの顔に浮かぶのは驚愕の二文字だ。目を丸く見開いてルイズの起こした土煙の中を見つめている。
 何事かとそちらを見て、彼女もまた驚きに包まれた。

 土煙が徐々に晴れる。
 そこには、鏡のようなものが浮いていた。

 ルイズは一瞬まさかと肝を冷やした。まさかアレが自分の使い魔か、と。
 しかしその鏡は、どう見てもただの鏡ではない。
 鏡面は水面のように波打っているし、そも自分たちの姿が映っていない。かといってその向こうの草原が覗けるわけでもなく……鏡に映し出されているのは荒野であり、高原であり、砂漠であり、深い森であり……刻一刻とその姿を変えている。
 遠見の鏡というマジックアイテムに似ていなくも無いが、こんな奇妙なものは見たことがない。

「ミ、ミスタ・コルベール……あれは一体……?」

「おそらく、ですが……召喚のゲート、ではないかと……」

 召喚のゲート? ルイズは思わぬ答えに首をかしげた。
 確かに鏡がどこか遠くの土地と繋がっているような印象を受けるが、しかしゲートがこのような形で姿を現すことなどあるのだろうか?
 そもそもゲートが開いているのに使い魔が現れないのはどういうことなのか。
 次々と映し出すものを変える鏡は、まるで……。

「探してる、の……?」

 まるでルイズが呼び出すはずであった使い魔の姿を必死で探しているように見える。
 そう思った瞬間、ルイズは弾かれたように立ち上がり、鏡に駆け寄っていた。

「あ、待ちなさいミス・ヴァリエール!」

 コルベールの静止も聞かず鏡に取り付くと、映し出される光景に必死で目を凝らす。

 ────どこ、どこにいるの……? お願い、姿を見せて……ッ!

 もしかしたらこのどこかに自分の使い魔が見えるのかもしれない。そう思えばいても立ってもいられない。
 なおも鏡は次々と映し出すものを変える。砂浜、風車の回る丘、湖のほとり、暗い洞窟の中、奇妙な形の塔、雪と氷の大地、荘厳な城、巨大な樹、石造りの街……。
 それはルイズの知るどんな土地とも違う世界だった。
 ひとつひとつはさして違和感のある景色ではない、だが目まぐるしく変わる景色を見続けるうちに直感する。ここに映し出されているのは、酷く遠いどこかだと。

 しかし次の瞬間、まるで蝋燭の火を吹き消したように、すべての映像が途絶えた。

「そんな!」

 まさか、諦めてしまったのか?
 だが何も映っていないかと思われた鏡に、誰か……そう、誰か人の姿が映ったかと思った瞬間、ルイズの体に突風が襲い掛かった。

「え、きゃあ!?」

 あたかも鏡がその周りにあるものすべてを飲み込もうとするように、風を吸い込んでいく。
 思わず鏡面に手を突いたルイズはぎょっとした。右手が、鏡の向こうに消えている……!
 左手を鏡のふちにかけてどうにかこらえる。少しでも気を抜けば全身丸ごと飲み込まれてしまいそうだ。

「だ、誰か……ッ!」

 期せず呼んだ"誰か"が自分を羽交い絞めにするのを感じルイズは振り向いた。
 ルイズの体に抱きつくようにして支えているのは、寮の隣の部屋に暮らすいけ好かない同級生だった。

「何やってるのよ、ヴァリエール!!」

「な、あ、アンタの助けなんか要らないわよツェルプストー!!」

 反射的にキュルケの腕から逃れようともがいてしまうが、そんな場合じゃないでしょ! と叱責され暴れるのをやめる。
 確かに、今は差し伸べられた助けに文句を言っていられる場合じゃない。

「油断してるとこっちまで吸い込まれそうだわ……腕は抜けないの?」

「できればとっくにやってるわよ!」

 それどころか腕はじりじりと飲み込まれていき、先ほどはひじまでだったのが既に二の腕まで見えなくなっている。
 ぐっ、ともう1人誰かがルイズの体を抱きとめる。
 見れば蒼い髪の少女がいた。名前までは分からないが、キュルケとよく一緒にいたのを覚えている。

「タバサ!? あなたは危ないから、」

「手伝う」

 3人で思い切り力をこめて引くものの、それでも鏡はルイズの腕を解放しようとはしない。それどころか風はさらに強く吹き込み、いまや肩までが鏡の中に飲み込まれようとしていた。
 そして。

「あ」

「ちょっと、何、どうしたのよヴァリエール!?」

「何か掴んだ……」

「ちょ、何かって何よ!?」

 鏡の中で踏ん張りどころを探してもがいていた腕が、その向こうにある何かをつかんだ。
 と思ったその瞬間、ルイズの腕が今までになく強く引かれ、そして3人は悲鳴を上げるまもなく鏡の向こうへと姿を消した。







 一体何が起こったというのだ。
 頭髪の薄くなった教師コルベールは、今目の前で起こった事態に頭の回転が追いついていなかった。
 ルイズが召喚を行ったらゲートと思しき鏡が現れ、当の本人を含めて3人もの生徒がその中に飲み込まれてしまった。コルベール自身も吸い込まれないように必死だった、鏡から5歩は離れていたというのにだ。
 周囲では生徒や使い魔たちが落ち着きなく騒いでいる。無理もない、あまりにも事態が異常すぎる。
 彼女ら飲み込んだ鏡は既に消えてしまっている。あとに残されているのは3人が落として行った杖だけだ。
 もはや状況はコルベール1人でどうにかできる域を超えている。すぐにでも学院長なりに指示を仰ぐ必要があるだろう。

「皆さん落ち着いてください! とにかく冷静に、今は教室に戻り、」

 しかし、予想だにしない事態はさらに続けて起こった。

 魔法陣の上に魔力が集まり始めたのだ。
 それはすぐさま大きなうねりとなり、光を放ち始める。
 空間がゆがみ、景色が揺らぎ、いっそうまばゆく輝くとコルベールはもう目を開けていることも出来ない。

「な、何が……ッ!?」

 光が晴れたとき、そこにいたのは……。



「や……った……成功、した……やっと戻ってこれたのよ!」

「くぅぅう……長かったわ……よーやく帰ってこれたのね……!」

「…………」



 きゃっきゃと喜びをあらわにする、たった今消えたと思った3人の少女だった。

「な、ミ、ミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ……無事でしたか!?」

 ルイズたちは声をかけられると、それでようやくこちらに気づいたとばかりに振り返り、何故か僅かに戸惑ったような表情をしながら満面の笑みを向けた。


「あ、え、ええと……そう、コルベール先生! お騒がせしました、召喚と契約の儀はこの通り成功させましたわ」


 そういって笑うルイズの腕の中には、蒼く輝く見たこともない幻獣がおさまっていた。










 その夜。

 ルイズは寮の自室の窓から外を……漆黒の夜空に浮かぶ2つの月を眺めながら、ほうとため息をついた。
 ようやく、この部屋にも帰ってくることが出来た。自分たちの住むべきところに戻ってきたのだという実感が遅まきながらにやってきたのだ。

 あれからは慌しかった。
 しきりにこちらを心配するコルベールをどうにかなだめ、それから異常が無いか調べるためにと医務室に連れて行かれ、最後には学院長室に呼び出されることになった。

 ────自分の召喚魔法はまだ誰も見たことが無いほど遠くの土地と繋がった上、魔法が不具合を起こし飲み込まれてしまった。しかしそこでエメラルド色の幻獣と出会い、契約を交わしこの地に戻ってこれた。

 教師たちにはそう説明した。
 もちろん嘘ではない、だが話していないことも……いや、話していないことのほうが多い。
 学院長オールド・オスマンも、コルベールもしきりに首をひねっていたが、しかし自分たちの話以上に証拠が無いためそれ以上追究はしなかった。
 しかしコルベールの明らかにこちらを警戒した目には肝を冷やした。
 自分たちに何らかの違和感を感じたのだろうか、おそらく偽者や、あるいは操られていることを想定したらしく、念入りにディテクト・マジックをかけていた。
 けれど何も見つかるはずが無い。当然だ、自分は正真正銘本物のルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなのだから。

「カーバンクルも、つき合わせてしまってごめんなさい。ここはあなたの見守る世界ではないのに」

 膝の上にちょこんと丸くなった幻獣を、ミトンをはめた手で優しくなでる。体長は小型の犬ほどで両腕で抱きかかえることができる。全体のシルエットはリスにも似ているが、ウサギのように長い耳と3つ股に分かれた尻尾が特徴的だ。足は短いが、太くしっかりとしている。
 そして極め付けに、額に輝くルビー。
 それが、ルイズが自分の使い魔ということにしてつれてきた幻獣……いや、神獣カーバンクルであった。
 気持ちよさげに目を細めていたカーバンクルは、ルイズの言葉を聞くと体を起こし気にするな、というように首を振った。

「うん、ありがとう」

 そして満足げな表情をすると、また丸くなる。

 ルイズの部屋の扉がノックされたのは丁度そんなときだった。
 返事をする間もなくノブをひねって入ってきたのは、キュルケとタバサの2人だ。

「はぁいルイズ。全くやっと終わったわ、あれこれ聞かれて大変だったんだから」

「ちょっと、誰も入っていいって言ってないわよ」

 ルイズの抗議もどこ吹く風でキュルケは勝手知ったる様子でベッドに勢いよく腰掛ける。その動作は優雅ながらどこか乱暴で、貴族のお嬢様としてはいかがなものかというところだ。
 タバサも同じようにベッドに腰掛けた。そこにはつい先ほどまでは無かったはずのルイズに対する気安さがうかがい知れる。

「いいじゃない、どうせいつもあなたの部屋が溜まり場だったんだし」

「今までと同じ」

 全く勝手なものだ、ルイズはカーバンクルと目を合わせて諦めたようにため息をついた。
 しかし、悪い気はしない。
 こうして3人で集まると、まだあの世界にいるような気がしてくるのだ。今にして思えば、まるでひと時の夢のように駆け抜けたあの冒険に満ち溢れた世界に。

「夢じゃないわよ」

 はっとして振り返ると、キュルケはどこから取り出したのか、親指の先ほどもある大ぶりな真珠を加工したピアスを手にしている。その隣でタバサも同じように。
 ルイズは慌てて自分のかばんを──鏡の向こうから密かに持ち込んだ背負いかばんをごそごそとまさぐり、自分も同じ物を取り出す。

 それは証。
 自分たちと、そして今ここにはいない仲間たちとの絆の形。

「そうね……夢じゃない、わよね」

 そうして3人は今一度思いを馳せる。
 危険と、スリルと、そして冒険の世界、ヴァナ・ディールへ。




 コルベールの懸念はある意味で当たっている。
 ルイズたちは昼間鏡に飲み込まれ姿を消したときのそのままでは決して無かった。なにせ彼女たちの体感時間にして実に8年以上の時を別の世界で過ごしていたのだから。





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