死体の傍のから続いていた血痕を追いかけてみてから数時間が経った。
もはや血痕も血の付いた足跡もない。
今俺は少しでも歩き易いだろう道らしきものに沿って歩いている。
(どこに続いてんだこれ?獣道ってやつか?クマとか出たらどうすっかなあ)
左肩からは剣をひもで吊っている。鞘はボロボロで使い物にならなかった。
右肩には死体から盗んだ…もとい借りた装備が袋につまっている。
しばらく血痕を追いかけて歩いていたがある地点から先には血の跡を発見できなかった。
多分治療をしたのだろう。その最後の血の跡には布や幾つか薬の容器らしきものなどが落ちている。
自動車のタイヤの跡はないし、ヘリが着陸できるほど広い場所は近くにはない。予備の靴を持っていて取り替えるなんて有り得なさそう。
(ここで怪我人を治療し、担架か背負って連れて行った人間がいる。殺人犯じゃなさそうだな。)
それが俺の出した結論だった。誰にでも出せそうな結論だったが。
日がそろそろ沈むので燻製肉(何の肉かは不明)を少し食べて、毛布みたいなでもただの布切れを体に巻きつけその辺の草の上で寝る事にした。
状況もわからない状態で歩き続けたせいかすぐ眠れそうだ。
日の入り前に眠りにつき、日の出に起きる。昔はそんな生活が当たり前の時代があったらしい。
(でもさあ、24時間営業のコンビニを常識としてる文明人には不可能じゃね?)
寝るのは中断。
ポケットからPSPを出し即座にスリープを解除。残り時間やアイテムの残数をチェック。報酬金は残り3分の2。
やばい…電池があと1目盛りしかない。すぐに液晶のバックライトの出力を抑える。
そしてやっぱり残り時間が減らない。討伐達成してないにも関わらずだ。
「バグかなー。そんな情報聞いたことなかったけどな。」
不安になって声に出してみる。バグなんて一々確認してないので判らないが友達からも聞いたこともない。
クエリタしてみた。できない。再起動してみた。できない。ただ休止状態になるだけだ。ディスクを抜いても変わらず次のエリアをロードした。
山菜じじいからゲットした千里眼の薬を飲んでみたが飛竜がマップに表示されない。
全エリアを歩き回ったがやはり討伐対象も見つからなかった。
空が暗い。街頭もない今PSPの画面を切ると真っ暗だ…なんだか怖くなってきた。
(こ、怖い…木の上とかで寝た方がいいかな?)
PSPの光を頼りに太い木の上によじ登った。
(どこまでも行っても森の中。もうヘリしかない。明日こそは、救助ヘリが飛んでいますように。)
翌朝、
顔も洗わず、皮袋に入った不味い水を飲みながら血が途絶えた地点から歩き始めた。
病人を背負っても歩き易いだろう道を、または背の高い草が生えていない道を、もしくは空が良く見える場所を選んで歩き始めた。
そう、彼らを救援にくるだろうヘリが飛んでいれば俺を発見できるような道を歩き始めた。
血痕の人達が移動するなら歩き易い場所を通る。遠くへは行っていないだろう。ヘリが着陸可能な場所を探すはずだ。その付近に彼等はいる。
他の可能性は勝手に棄却した。ヘリコプターが助けに来てくれない可能性も棄却した。
それが俺の出した結論だった。そして見当違いだった。
しばらく歩いた後、死体のあった場所が一番ヘリが着陸しやすそうなことに気づいた。
慌てて引き返す。
ちなみに、昨日は結局草の上で寝た。危険だってことは判ってたけどしょうがない。
(…マジで木の枝の上で寝るとかないわ。それって猿じゃね?)
第二話
空が白み始めたころ、誰かが近くで動く音で目が覚めた。
「…」
キールと目が会った。
「…すまない。」
長い沈黙の後彼が言った。眉間に皺を寄せ、申し訳なさそうに目を伏せ、しかし声はしっかりしたものだった。彼はハンターだから。
「ええ、急いだ方がいい。ポット村も危ないから。」
なぜとは言わない。助けてとも言わない。私もハンターだから…問題ない。問題ないけれど、思わず首に掛けたギルドカードをぎゅっと握る。
首から下げた二つのギルドカード。正式名称:ハンターズギルド認識票。しかし、ハンターの間では認識票をギルドカード・ギルドタグと呼ぶのが一般的。
ハンターネーム(ネーム)・ハンターランク(ランク)・所属するギルド駐屯所(ホーム)の印が刻まれている。ギルド創立時代にもいまだ一部で使われていた古典文字で刻まれている。
戦死したとき、仲間がそのカード一つを持って遺族に届ける。もう一つは死体に残し後の身元確認のためのタグとなる。
本当の意味でのギルドカードは駐屯所に保管してある。
それにはネーム、ランク、ホームの3つ以外にも、達成クエスト履歴、装備品傾向、授章した勲章、討伐モンスター数などの詳細なデータが記入されたカードである。
本人の申請でギルドカードの写しが発行される。ギルド認識票を身分証明書として使うことが多いので、写しを使う機会は少ない。
「すまない。」
彼はもう一度同じ言葉を口にして、振向かず歩いていった。
私は彼にギルドカードを渡さなかった。なぜならまだ私は死んでいないから。
彼はずいぶん食料を置いていったようだった。この分なら10日以上は持つかも。
飲み水が足りないから川へ下りなくてはならないけど。
不味い頑固パンを水でふやかす間に適当な木を探し即席の杖とした。
(どうせ後10日の命なんだから!)
痛む足、左手は動かず、右手は動く。逃走時の腕の痺れは投げナイフの毒だったのだろう。傷口からごく少量進入したのだ。
頑固パンは問題なく食べられたし杖も持てる。傷口には故郷の秘薬を塗ったので、杖を使えば歩けるだろう。
歩ける。二人の所へ行こう。
(二人とも獣やモンスター達に食い散らかされてなければいいけど。できるかわかんないけど埋葬してあげよう)
ガ-ティもビックスも今回のクエストで初めて会ったけどハンターズギルド所属のハンターならばいつものこと。
大きな街のギルドの集会所ではクエストメンバーの募集でごったかえしているのだから。
私の父も母もハンターだった。母さんは私を妊娠した時にハンター業を引退した。
父は私が母の片手剣を片手で振り回せるようになるころには戦死していた。口癖は「それでもハンターか!」
「泣くな!それでもハンターか!」とよく叱られたこと。私がハンターでない幼児であることは承知の上での叱咤は懐かしい。
私はそれほど泣き虫だったのだ…いや昨晩を思い出す。今も泣き虫かも。
父はそれほど腕のいいハンターではなかったが、幼い私は父が敗れることなど信じられなかった。
(さいきょー = おとうさん)
幼い私はそんな戯言をホンキで信じていたのだ。その父さんも死んだ。
その後、母さんに師事して数年間、厳しい訓練も耐え抜いた。
けれど母さんが病に倒れた。私は訓練を続けながらも母の看病をする毎日を送っていたが、母は快復することなく息を引きとる。
泣いた。父の言いつけも守らずに泣いた。悲しかったが落ち込んでいる余裕はなかった。
私は母の死を期に同時にハンターズギルドの門を叩いたのだ。
その時、私は13歳。近年若年化すギルド。所属を希望する若年ハンターの仲でもでも若すぎる。普通は体が成長しきるまでは危険なハンター業に就く者はあまりいない。
その普通ではない人間が私だった。ハンターをやる以外には、体を売るぐらいしか生きるすべをしらない子供だった。
ギルドへの入門は一定以上の身体能力と戦闘能力があればいいのだ。言い換えれば走り回るスタミナと剣を振る体力。
走る。剣を振る。それだけのスタミナと体力があればいい。つまり健康ならば誰だってなれる。
私は幼い頃から両親から英才教育を受けていたから優秀だった。とにかく私はギルド所属のモンスターハンターとなった。
実践こそ未経験だが剣士・ガンナーからタル爆弾の調合・起爆までこなすオールラウンダー。けれども若すぎる私は信用もなくソロ狩りが基本だった。
時々は今回のような遠征もする。その際には、採集、調合、後方支援、近接戦闘と自分の力を見せ人脈を広げるように努力した。
ハンターランク(HR)はまだ低いが、父を超える日も近いだろう。そうなるだろうと思っていた。そうあるよう努力した。
私は努力をしたし実力も将来もあった。
私はもうすぐ死ぬ…また泣きそうだ。
この体中に走る痛みと発熱が私を弱気にさせる。
「だけど…はあ……なッ!?」
とっさに杖を構える。意識が散漫になっている。
(馬鹿か私は!それでもハンターか!)
驚きの表情は一瞬で消えて、目を細め目の前にいる珍妙な格好をした男を睨みつける。
男は両手に白い光るプレートを持っていた。彼はそのプレートから目を離すとこちらに目を向ける。
「え、えきゅすきゅーじゅみー」
彼は良くわからない言葉を投げかけてきた。
(初稿:2010.12.04)
モンハン日記
12月3日 晴れ
プレイ時間 8:56
使用武器:ボーンアックス改
スラッシュアックスは謎です。変形とか有ってダメージ効率が判らないです。どの攻撃を繰り出せばいいんだろ。適当に振ってます。カッコイイし。
クマを狩りましたよ。誰もいないのにブンブン爪を振り回すクマかわええ。SEがゴツイだけに空回りっぷりが萌えです。
あと弟が購入!試験前なのに大丈夫か弟よ。
みなさん、ちゃんと買いましたか?しっかり狩ってますか?