最終話以降の設定集。
といってもその後の原作の流れとは明確に違う形になったキャラのみですが。
設定集というよりは簡単な後日談とも言う。
ネタばれが酷いので本編未読の方はご勘弁を。
そして何よりも、最終話以降のモヤモヤとした余韻と想像を楽しみたい方にはお勧めできません。
自己判断でよろしくお願いします。
おそらくこれは蛇足ですから。
≪エルク≫
届きそうになった手が、空を掴んだ。
許せなかったはずの結末は炎を弱め、そして誰かと共にいることすらも恐れはじめた。
それは過剰なほどに仲間が傷つくことさえも許容できなくなり、やがてガルアーノを倒すという目的の中でミリルやジーン、そしてリーザすらも戦いの中から突き離そうとし始めた。
仲間たちもそれぞれの目的のため戦おうとするため、最後には決裂。
誰かを失くすことに耐えられないエルクは、一人仲間達から離れて個人行動を取り始めた。
大事な親友の犠牲の下に手に入れた平穏に、手を伸ばそうとする元凶を打ち滅ぼすために。
ククルの導きもあってかエルクが最初に訪れたのはパレンシア城跡。
そこで出会った一人の気弱な勇者が、エルクに仲間を信じることの大切さを思い出させていくのだった。
希望の炎はまだ消えない。
≪ジーン≫
白い家脱出後、ジーンは誰よりも自分の力の無さを悔いた。
エルクのように最後までクドーやミリルを信じ続けた心の強さも無く、クドーのように全てを捨てて戦う覚悟も無い。
仲間と親友に対して何一つできなかったジーンがその身を委ねたのは、ガルアーノに対する復讐心だった。
彼にとってガルアーノのみでなくその裏にいるロマリアという大国とも戦うアーク一味という存在は、何よりも自分の復讐を完遂させるために利用できる者たちだった。
結果同行を拒否するアークに無理やり付いていくようにして、大国グレイシーヌへ。
そこで知る、ラマダの拳・勇者の剣。それは誰かを傷つけるためではなく、誰かを守るための強さ。
真の強さを知るために、ジーンは風の精霊の住まう小国・ニーデルへと一人旅立つ。
闘技大会が盛んな国として有名なニーデルの地に辿り着いた風の子ジーン。
しかし確かに闘技大会が盛んなように街中を屈強な男たちが闊歩するものの、何かおかしい。
偶然出会った盲目の少女に聞いてみれば、この地は一年に一度の闘技大会で盛り上がるクレニア島。
残念、ここはニーデルじゃない。
≪ミリル≫
クドーの死という結末が彼女に与えたのはあまりに重い罪の意識だった。
自分が目を閉じなければ、もっと早く自分が心を開いていれば。ただ眠るだけだった間に親友たちはどこまでも辛い思いをし、結果自分はただ助けられるだけの足手まといだった。
そんな誰かの負担になることを恐れたミリルは戦いに参加することを禁止したエルクの言葉にも従い、一人トウヴィルの下に残る。
せめて皆の力になれればと暗い雰囲気の中で作りだす彼女の痛々しい笑顔など何の意味も無く、それぞれが喧嘩別れのように離れていく仲間達の姿に、彼女もまた自分の罪の重さを感じていく。
誰の負担にもならないように、誰かの邪魔もしないように。
やがて笑顔すらも消えていくミリルに声を掛けたのは、同じく待つ身でありながらもアークと戦いを共にしているというククルだった。
自分が出来ること。慈愛の意味を。本当の笑顔の意味を。
彼女が向かうはアリバーシャ・水の神殿。凍てつく氷を癒しの水に変えて。
陽気な陽気な機神と共に。
≪リーザ≫
目の前で起こってしまった悲劇。
信じて、信じて、信じて。それでも自分を助けてくれた人たちは涙を流した。
傷を残しながらも進もうとするエルクとジーン、そしてミリル。リーザに出来ることは何もなかった。
そんな中、自分の言う事を聞いてくれるというシャドウとアヌビスの言葉が彼女の心に突き刺さる。
お前の言葉は優しさか。それとも甘さか。ヒトを信じる意味はあるか。
やがてシャドウの誘われるような言葉につられてやってきた故郷、フォートレス。
そこにホルンの魔女の居場所はなく、魔物も、そして人すらも魔女を傷つけ裏切っていく。やがて助けたはずの人間の裏切りで囚われたリーザは、一人獄中で誰かを信じる意味を失っていく。
そんな彼女に聞こえる一つの言葉。
勇気ある行動は人の心を開く。
捕まった彼女を助けた自称・大魔道士の言葉に、言葉の内に燈る本当の優しさの意味を、誰かを信じる意味を取り戻していくリーザ。
助けられるだけではない。彼女もまた一人の英雄であり勇者なのだ。
≪シャンテ≫
行き場を失った憎しみが悲鳴を上げた。
自分の愛する弟を殺した者を目の前で失い、そしてその者もまた誰かに大切なものを奪われていたと知った彼女は、密かに自分とクドーを重ねていた。
目的を果たすために誰かを犠牲にし、罪を重ね、そして訪れる残酷な最後。
そうでなければ誰かは救えないのか。
この身の内に眠る憎しみの心をどうすればいいのか。
この悲しみを一体どうすればいいのか。
ガルアーノ打倒に向けて動き出した仲間たちとは離れて、彼女は一人崩壊した白い家に足を伸ばす。
先日入った時とはまるで様子の違う、帰らずの森に囲まれた惨劇の地。
青葉一枚もなく灰色の森へと変わった帰らずの森。その中心で砂に埋もれた白い家。
子供の遊び場を思わせる砂場の中心、悲劇はいた。
壊れ、壊れ、壊れ果て。
悲劇を前に、シャンテは願う。
もう誰も、失いたくはないと。
命も罪も想いも背負い、その魂を解き放て。
こんな感じで本来ならば後日談的なプロットも存在しておりました。
存在しただけでそれを文にするのはないと思いますが。
生意気を言うようであれですが、やはり多少妄想の余地が入る位が丁度いいなんて言ってみたりもして。
あと、感想で突っ込まれていたファラオのこと。
裏設定ではありますが、クドーが一番最初に行ったキメラ合成の相手がキングマミィのファラオでした。
ですからクドーの容姿がミイラ染みた包帯姿と描写していたわけです。
で、何故にファラオが最後まで出なかったかと言うと、まあ、最初の合成相手という事で最終決戦において全開の不死能力を維持する為にはとか、なんかそんな理由でクドーと心中しました。
台詞すらあまりに出ずにいたキャラを最後の最後に深く描写するのは、ただテンポが悪くなるだけだと思いはしょったわけです。
これは完全に作者のミス。
思わせぶりな台詞を吐き、妙なキャラ設定にはしたものの、完全に絡ませるタイミングを計り損ねました。反省。
ちなみにブラックレイスのシャドウは元々ニンジャ系列の魔物で、ウルフアンデッドのアヌビスも元々の素体はケルベロスでした。
クドーに取り込まれ、特別に自我をそのまま保った代わりにシャドウは影としての特性を帯び、アヌビスは人型の特性をそれぞれクドーという媒体から受け継いだ、という無駄な設定でした。
さらに言えばクドーの親元となった魔物はデーモン系列。
序盤からリーザが仲間に出来る強力なモンスターですね。
どれもこれも描写する必要も無い設定なので、結局は本編に活かされることはなかったですが。
兎にも角にもホントに終わり。
最後までお付き合いいただき、有難うございます。