おはようございます、間桐桜です。今日も愛しい先輩のために、朝食作りにお邪魔したら……
玄関で先輩が倒れていました、傍には大河先生愛用のバットと何故かラッキョ入りの瓶が。思わず、叫んじゃいました。
「先輩ーっ!?」
朝、衛宮家に桜の絶叫が響く。頭に瘤が出来て血の池に沈む士郎を見れば、誰でも悲鳴を上げるだろう。士郎がこんな目に合った理由は、ただ一つ。
ラッキーマンの変身代償、士郎本人の不運ぶりに磨きがかかること。
ラッキーなのは、変身しているときだけである。昨夜、ランサーを撤退させ人間にパッと戻り、幸運の星からラッキーマンに変身するためのラッキョ入り瓶を貰い帰宅した所で玄関に置いてあったバットが何故か棚の上から倒れ直撃。
沈む時の言葉が、
「ついてないよ……」
だった。
桜に介抱され復活した士郎、何とか朝食と弁当を一緒に作り襲撃してきたタイガー姉と朝の一時を過ごす。
今朝は本当にビックリしました、先輩が倒れていたんですから。でも私に心配かけないよう笑顔で接してくれるのは嬉しいんですけど、先輩も身体を大切にしてくださいね?
「そう言えば、桜。慎二から頼まれてたラジカセの修理、出来たから渡したいんだけど……アイツまだ、元気ないのか?」
「……兄さんは、先輩の心の中に生きてるんです」
「は!?」
先輩が驚いて兄さんが無事かどうか聞いてくるんですが……羨ましいですね、やっぱりライダーに頼んでサクッと……駄目です、そんな事をしたら先輩が悲しんじゃいます。ハァ、本当に兄さんの始末はどうしたらいいんでしょうかね? クスクスクス……
急に笑い始めた黒桜から、一歩身を引いた士郎。三日前から登校していない慎二の無事を心から祈るのだった。
間桐家、慎二の部屋。そこには何故か、縄で縛られた特徴的な頭の男が。言わずと知れた慎二本人である、事の始まりは三日前。
本当にちょっとした出来心、桜が士郎の為に作っていたクッキーを摘み食いした。だだ、それだけだったんだ。そうしたら、いきなり桜が……
「にいさん? なにをしてるんですか? ちょっと、おはなししましょう」
何故か黒くなって……そこから先の記憶は僕にはない、気が付いたら縄で縛られてた。カレンダーで日付確認。くっ、三日も気絶していたなんて! 桜、僕に何をしたんだ!? いや、そんな事よりも。
「ライダー! 居るんだろ出てこいよ、マスターのピンチだ……ぞ……?」
縄から抜け出せないので、ライダーに頼もうとしたら紙が床に置いてある。“僕”のサーヴァント、ライダーの自筆。こう書かれていた。
〈桜の逆鱗、触れるべからず。お仕置き中、なので手助け出来ません。ご自身で脱出を、健闘を祈ります。 ライダー 追記、私のマスターは桜になりました〉
……。
え? 僕、妹からも英霊からも見捨てられた?
その事実に気付き絶叫。
「ライダァァァァッ!?」
穏やかな心から怒りによって目覚めたスーパー慎二、縄から気合いで脱出。数分で慎二に戻る。
学校に行く気にもなれず、兄としてのプライドがガラガラと崩れた僕は冬木市を歩き回りそれを見た。
〈ヒーロー製作所 あなたもすぐヒーローに!〉
(ヒーロー? 正義の味方か、そう言えば衛宮がよく口にしていたな……無料でヒーローに……か。よし、これで兄としての威厳を取り戻してやる!)
思い立ったら即行動。
「ヒーローにしてくれ」
「へい。ぼうやに相応しいのは……二代目スーパースターマンですね、私には分かるんです」
「スーパースターマンか、格好良いじゃないか。それで、行こう」
「やってみましょう!」
「え? トンカチとノコギリでやるの!? ちょ、待っ……」
「任せなさい」
「痛い、痛いんですけどー!?」
10分後、冬木市にまた新たなヒーローが誕生した。
ヒーロー同士の出会いは、直ぐかもしれない。