それは月のきれいな夜、縁側で俺と衛宮切嗣が交わした会話。
「だったら俺が正義の味方になる、俺が切嗣の代わりにみんなを助けてやるよ!」
「……ああ、それはいい」
衛宮士郎が正義の味方になる事を決意した瞬間、そしてその思いが叶う時が来た。
黄昏時の学校、廊下で血の池に倒れている俺。突然だった、いきなり青い髪の男に刺されて……
「即死か、あっけない人生だったな……」
心残りは正義の味方になれなかったこと、頭に天使の輪、背中に白い翼をはばたかせ俺は天に昇る。
本来なら衛宮士郎は、ここである少女に救われるはずだった。だが、世界は彼に別の選択肢を与える。そう士郎の前に現われたのは――
《ちょっと待て》
「わっ、あんた誰だ!?」
頭に茶柱、耳は福耳、胸には判別不能な文字。何処となくウルトラマンに似た外見だ、彼の名は元祖ラッキーマン。力はないが宇宙一のラッキーをもつヒーローである。
《私はラッキーマン、何度も死んでこれから先も不運な目にあう君を救うためにやってきた》
「はぁ……って何度も死ぬ!? これからも不運な目に!? どういう意味だよ!!」
憤るがラッキーマンからある本を見せられた、それはFate/stay nightと書かれた物。
どうやって手に入れたのか? ラッキーで。
読み終えて呆然、これから先あんな目にあうのならこのまま死んだ方がマシ? いや正義の味方を目指すなら今ある力でなんとか……できません。終わった。
絶望する俺にラッキーマンは希望の言葉をかける。
《私の命と力を君に与えよう》
「え? ……でも、それじゃあ貴方が」
《心配はいらない、一心同体になるだけだから。しかもラッキーマンになればいい事ばかり、ついてついてつきまくる。それがラッキーマンだ》
「是非、お願いします」
即答、そして。
《ではそういうことで》
「そういうことで? うわっ!」
《合体》
バビョーンという効果音と共に俺は、ラッキーマンと一つになる。
「ラッキーマン参上!! ラッキー、クッキー、ピーナッツ入りおかき」
冬木市に、最強のヒーローが誕生した。
ランサーは彼を見る、頭に茶柱。耳は福耳、胸には大吉の文字。帰還中に出会った者、サーヴァントかと疑ったが思ったより魔力は感じられない。精々出来損ないの魔術師位である、正体不明故に問い掛けた。
「てめえ、何者だ?」
「私はラッキーマン、君を止めにきた」
「は?」
奇しくもあの日と同じ月がきれいな夜で、ランサーとラッキーマンは対峙する。こうして衛宮士郎の聖杯戦争が、始まった。