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No.22769の一覧
[0] 【ネタ・習作・短編連作】ぐちり屋in恋姫(萌将伝×銀魂)[モトオ](2010/11/03 15:30)
[1] ぐちり屋in恋姫・魏編[モトオ](2010/11/03 14:57)
[2] ぐちり屋in恋姫・袁家編[モトオ](2010/11/03 15:34)
[3] ぐちり屋in恋姫・蜀編[モトオ](2010/11/07 01:11)
[4] ぐちり屋in恋姫・三英雄編[モトオ](2010/11/12 14:55)
[5] ぐちり屋in恋姫・炉利編[モトオ](2010/11/17 04:45)
[6] ぐちり屋in恋姫・軍師編[モトオ](2010/11/22 00:01)
[7] ぐちり屋in恋姫・華蝶連者+1編[モトオ](2010/11/26 19:03)
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[22769] 【ネタ・習作・短編連作】ぐちり屋in恋姫(萌将伝×銀魂)
Name: モトオ◆e71ef7c8 ID:d88471de 次を表示する
Date: 2010/11/03 15:30
 初めましてモトオと申します。 
 二次創作を読み漁っているうちに自分も挑戦してみたくなり今回初投稿させていだきました。
 このお話は恋姫世界に銀魂のぐちり屋(二十八巻より)がなぜか普通にあるというクロスオーバー設定です。
 稚拙な文章ですが暇つぶしにでも読んでいただければ幸いと思います。
 それではどうぞ。

 追記
 続編を投稿させていただいたので、【ネタ・習作・短編連作】に変更しました。






 北郷一刀は珍しく一人で夜の街に繰り出していた。
 政務が一段落ついたので軽く酒でも呑もうと思った出てきたのだが、生憎どこも満員である。どうしたものかと悩んでいると、通りの端に『ぐちり屋』と書かれた暖簾が見えた。

「あれ、なんだろ……」

 そこは屋台ではあるが名前からはどんなものを出しているのか想像もつかない。だが客は誰もいないのですぐ食べれそうではあった。

「まあいいや。入ってみるか」

 どうせどこも満員なのだ、腰を落ちつけられるのならそれでいい。軽い気持ちで一刀が暖簾をくぐると、

「ヘイらっしゃい」

 穏やかそうな親父が笑顔で迎えてくれた。

「おや御使い様、ウチは初めてだね」
「ああ、店の名前が珍しいからためしに寄ってみたんだけど……」

 見るとどうやらおでんの屋台らしい。三国志の世界でなんでおでん?と思わなくもないが、日本の食べ物を味わえるのは嬉しいので野暮な突っ込みはしない。

「とりあえず熱燗と、大根とコンニャクとチクワね」
「ヘイ」
 
 そうして目の前に出されたのは徳利と猪口、皿に盛られたおでん各種。いかにも屋台という風情である。
 手酌で酒を注いで、一息で呑む。辛口の日本酒は人肌に温められており、じんわりと胃が熱くなるのを感じた。次はおでん。箸で割れば中まで出汁の色に染まった大根。口にすれば噛み締める必要もないほどの柔らかさである。
 うん、美味い。
 勿論この世界の食事が嫌いな訳ではないが、出汁と醤油の味わいはやはり日本人として抗えないものがある。一刀はしばらくの間久しぶりの日本の味に舌鼓を打つのだった。 

「ところで御使い様、ずいぶん疲れた顔をしてらっしゃいますね。何か悩み事でもあるんでしたらここでグチでもこぼしていったらどうですか」
「え?」
「いえね、ウチはおでんの味もウリですが、どんなグチでも聞くってのもウリなんですよ」

 言いながら親父はプラカードのようなものを持ち出した。
 それにはこう書かれている。

『ぐちり屋規約。
 ・好きなだけグチってください。
 ・一人で来てください。
 ・知り合いに会っても知らぬフリをしてください。
 ・ここで聞いた事は他言しないでください。   』

「まあこんな感じで家庭や仕事のグチを吐き出してリフレッシュしてもらおうってのが趣旨でして。今日は腹ン中溜まってるモンぶちまけていってくだせぇ」
「いやでもな、一応これでも都を預かる身だし下手なことは言えないよ」
「大丈夫、ウチはプライバシーは守ります。ここでは御使い様もただの兄ちゃんってことで。地の文の方も何となーくぼやかしますから」

 地の文とか言うな、と少年は思った。

「って、マジで変わってるっ!?」
「こんな感じで行くんで多少羽目を外しても問題ありやせんぜ?」
「うーんまあそこまで言うんなら。でも本当に悩みって訳じゃなくて、単純に疲れてるだけだよ。今はいろいろ忙しくてね」
「そりゃ立場が上がれば遣り甲斐も責任も気苦労も増えるってもんでしょう。兄ちゃんも大変だね」
「はは、まあね」
 
 確かにこうやって口にするだけでも意外とすっきりするものだ。酒が入っていたこともあり、少年は様々な話を口にした。なるほど、親父の言うとおりたまにはグチをこぼすのもいいのかもしれない。
 
 しばらく親父と喋っていると、

「主人、邪魔するぞ」

 新しい客が暖簾をくぐった。

「ヘイらっしゃい。おや、眼鏡さんじゃないか。良かったね兄ちゃん、むさ苦しいところに美女が来てくれたよ。それもすこぶる付きだ」
「ふふ、相変わらず世辞が上手いな」

 満更でもないのか楽しげに声を弾ませる女性。
 少年としてはすこぶる付きの美女と聞いては黙っていられない。その顔を拝見しようと女性に目を向けると、ちょうど女性も少年の方を向き、二人の視線が重なった。

「……………」
「……………」

 しばらく二人は見つめ合うような形になった。と言っても別に色っぽい話ではない。動きが止まってしまったのは動揺のためだ。
 確かに彼女は美人だった。
 美しい長い黒髪。眼鏡の奥にある切れ長で理知的な瞳。赤い衣から覗く褐色の肌はえもいわれぬ艶めかしさである。
 彼女を形容する美辞麗句などいくらでもあるが、取りあえず総合するとなんかすっごく見慣れた顔だった。

「ど、どうも」
「ん……ああ」

 お互いぎこちなく挨拶を交わす。眼鏡さんの方もかなり動揺しているらしく、視線が定まっていない。まあこんな場所で会えば仕方のないことかもしれないが。なんといってもここは『ぐちり屋』である。日常生活に不満たらたらな人が集まる場所なのだ。

「熱燗を。後は何か適当に選んでくれ」
「ヘイ」

「…………」
「…………」
 
 注文を終えればまた沈黙が続く。
 非常に重苦しい空気を何とか変えようと少年は意を決して眼鏡さんに話しかけた。

「なあ、ここにはよく来るのか?」
「いや、まぁ……偶にな」
「五十回ぐらい来てますね。今日も頭がお天気な王様の話ですか?」
「主人、やめてくれ。あまり余計な事は……」

 どうしよう。少年は思わず頭を抱えた。
 というのも頭がお天気な王様の顔が簡単に想像できてしまったのである。
 想像の中の彼女が『頭がお天気ってどーゆーことよ、ぶーぶー』とか言ってたりするけどそれは無視する事にした。

「ま、まあ、あれだよ。眼鏡さんも立場的に責任とか気苦労があるもんな。多少のグチくらい出るよな」
「だ、だろう?それにグチと言ってもだな、ネチネチ悪口を言う訳ではな」
「そうですね。ネチネチ悪口っていうか毎回簡潔に『死ね』って言ってるだけですもんね」

 再び沈黙。気まずい事この上なかった。

「いやね、眼鏡さんはとある国で軍師をしてるんですがね。その国の王がそりゃあ適当な人なんですよ。仕事はしないわ抜け出して街をふらふらするわ昼間っから酒を呑むわのダメ王で眼鏡さんがいっつも尻拭いをしてるってワケでさぁ」
「いや、大変だね。……大変だけど『死ね』はちょっと衝撃だったかな」
「ほんご……少年、それは言葉のあやでだな。私達は断金の誓いを交した仲、言ってみればこれも私の愛だ。愛すべきゆえの『死ね』だ。そもそも本気で思ってたら『死ね』なんて言葉は出ないのであって……」

 しどろもどろになって弁明をする眼鏡さん。 
 もはや普段の理知的で冷静な部分は欠片も残っていなかった。
 まあ無印や真で言ったら洒落になってないし、萌将伝準拠だから言える彼女一流のジョークであると無理やり納得しておこうと少年は自分に言い聞かせる。というか、そうしないとこの異様な場を乗り切れそうにない。

 そうこうしているとまた新しい客がやってきた。

「親父、邪魔するぞ」
「ヘイらっしゃい。おや、姉御。ここのところ連日ですね」
「ここで呑む酒はうまいからのぉ。おお今日は盛況じゃな。では皆にも周家のご令嬢の話でも聞いてもらおうかの」

 機嫌よく入って来た姉御は笑いながら二人の客の顔を確認し、

「………」

 一気に凍りついた。

「……ちと用を思い出した。親父、また寄らせてもら」
「おや折角来たのですから一杯くらいよろしいでしょう。で主人、件のご令嬢の話とは?」

 逃げ出そうとした姉御の腕を掴み無理やり座らせる。一瞬で知的で冷静な軍師様復活である。このあたりの切り替えの早さはさすがだった。

「いや儂の話はいいじゃろ。つまらんはな」
「眼鏡さんも大変ですけど姉御もまた気苦労が多くてねぇ。目下の悩みは年下なのに生意気な女がいることらしいんですよ。顔を合わせればやれ酒を呑むなだのと小言をグチグチと。まったくお前は姑かってくらいでさぁ。その件のご令嬢も小さい頃は姉御にたいそう世話になったらしいんですが、ちょっと立場が偉くなったら掌返すように態度を変えたそうですよ。まったく義理人情を理解しない輩ってのはイヤだねぇ。ご令嬢も姉御の何が気に入らないんでしょう。こんないい人滅多にいないってのに」
 
 親父が喋った分だけ眼鏡さんに青筋が浮かび、青筋が浮かぶ度に姉御が冷や汗を流す。見事な連鎖反応である。

「ほぅ、それはまた大変ですな?」
「いや、あの、それはじゃの」 

 今度は姉御がしどろもどろ。……まあ怒った眼鏡さんを前にした時はいつもそうだと言えなくもないが。

「親父、看板を出せ看板を。ホレ三番目をよく見い。いいか、知り合いに会っても知らぬフリをしてください、じゃ。店の規則は守らんと」
「もちろん私達は他人です。……ああ、急に思い付いたのですが。私の職場には酒好きの方がいるのです。しかし呑み過ぎは体によくありませんし、健康のためにも三カ月ほど禁酒をしてもらいましょう」
「な、それは少しやり過ぎじゃろ!もうちいとばかり手心があっても……」
「おや、私達は他人なのでしょう?それにこれはあくまで私の職場での話。姉御殿にはあまり関係がないのでは?」
「ぐっ、この、ええい可愛げのない!」

 言い争う、というか姉御が一方的に眼鏡さんに責められる中、また新たな客が暖簾をくぐった。

「今日はずいぶん人が多いのね」
 
 現れたのは薄い桃色の髪をした少女。胸元からへその辺りまで見事に開いた赤い衣装を纏っておりとても扇情的だ。それでも下品さを感じられないのは、彼女の高貴な生まれ故だろうか。
 と言うか、王族が何で庶人の屋台に来ますか。
 
「……………」

 二人も争いを止めて沈黙する。孫呉の系譜に名を連ねる彼女がこんなところに来るなどとは正直誰も思っていなかったのである。

「おや姫さん、らっしゃい。相変わらずいいケツしてるね」
「……その挨拶はどうにかならないの?」
「いやあ、やっぱり姫さんを見るとどうしても言いたくなるというか」

 確かに彼女は国宝級の美尻の持ち主である。少年には親父の気持ちが痛いほど理解できた。
 悪びれない親父に溜息をつきながら、結局姫さんは何も言わなかった。受け入れたというか諦めたのだろう。

「隣失礼するわね」
「ど、どうぞ」
 
 姫さんはわざわざ少年の隣に腰を下ろした。普段なら彼女が隣にいれば心が浮き立つのに、少年は思わず身を固くする。何故か今日は少女から妙な圧迫感が感じられるのだ。

「あの、姫さんは結構ここに来てるのか?随分親しそうだけど」
「まあこんなところですかね」
  
 親父がすっと人差し指を立てる。

「ああ一回か、じゃあそんなには」
「一日一回来てまさぁ」
「それ毎日ってことじゃねぇか!」
 
 この娘は一体どれだけストレスをためているのか。
 というか彼女に限らず呉国の重鎮がぐちり屋に揃い踏みである。呉は大丈夫なんだろか。少年はそう思わざるを得なかった。

「主人。蓮……こほん、彼女はいったいどんなグチを?」
「皆さんは仕事関係のグチですがこっちのお嬢ちゃんは恋愛がらみでして。この娘の恋人は浮気癖があるらしくてねェ。目を離せばあっちにフラフラこっちにフラフラ。そりゃあもうひどいもんなんでさ」
「ああ、なんとなく想像がつくな。有能なのは間違いないが女と見れば見境のない種馬なのだろう?」
「うむ、きっと老若拘らず女であれば食べ尽す豪の者じゃな」

 先程の争いはどこに行ったのか、仲良くなっている二人。いつの世もいがみ合う者を仲良くさせるのは共通の敵の存在である。

「ま、ある意味仕方無いことですけどね。男なんてなぁ奇麗な女性を見たらそっちについてっちまう生き物なんですから。ねえ兄ちゃん?」
「……えぇ、まあ」
 
 話をふらないでほしい。少年は心の中で親父を恨んだ。
 姉御も眼鏡さんもにやにや笑っている。肩身が狭いを超えて、肩身が万力で無理やり潰されてるような気分だった。
 
「で、その恋人の浮気癖をどうにかできねーかって、そんなグチばかりでねェ。最近はグチっていうか計画になってきてますけどね」
「え、なにそれ。ちょっとあぶない感じになってるけど」
「前回来た時は―――ああ、そうだ。やっぱりそういう男は鎖かなんかで繋ぎ止めとかなきゃダメですよって言ったんですが、そしたらすぐに帰っちゃって」
「ええ。店主がそう言うから、首輪と鎖を用意してみたの。これであの人を繋ごうと思って」
「比喩じゃなく物理的にっ!?」 
「ちゃんと城の地下に部屋も用意したのよ。鉄格子の」

 それは部屋ではなく、一般的には牢屋と呼ばれるものである。
 恋人をそこに閉じ込める時を想像しているのか、周りを気にせずうふふあははと笑う少女。
その様子はもうきっちり境界を踏み越えてしっかり対岸に渡ってしまっていた。

「あー眼鏡さん、どこかで呑み直さんか?」
「それは良い案です姉御殿。主人、勘定はここに置いておくぞ」
「ヘイどうも。またいらしてくだせえ」

 流石は乱世を戦い抜いた歴戦の勇士である。引き際を心得ているとでもいうのか、撤退を決めたら一瞬の躊躇いもない。まあ恐れをなして一目散に逃げ出したとも言うが。
 
「ちょっと二人とも待って、俺も」
「あら、どこに行くの?」
 
 逃げようとするが後ろからがしっと肩を掴まれる。いや掴むなんて可愛らしいものではない。もういっそ骨を砕かんばかりの力である。

「こっちを向いて」

 振り返ってはいけない。少年の本能が警笛を鳴らす。
 だって、そこには見てはいけないモノがある。
 古今東西如何なる寓話においても見てはいけないモノを見てしまった者は無残な最期を遂げる。
 だから振り返ってはいけない。

 ああ、それなのに。
 頭では分かっているはずなのに、少年は操られるように後ろを向いてしまう。
 そこには、

「サア、ワタシト楽シイ所ニ行キマショウ、カ・ズ・ト?」

 ―――壊れた笑みを浮かべる少女が。

「いやああああああああああああああああああああ!?」

 この後、監禁された少年が牢屋からの脱出を図る地愚蔵~天の御使い編~が始まるのだがそれはまた別のお話。







<後書き>

 初投稿がこんなのでいいのかと思いましたが衝動を抑えきれずやってしまいました。一応恋姫SSなのに一刀しか名前が出でない……。分かりにくいかもしれませんが眼鏡さん=冥琳、姉御=祭、姫さん=蓮華です。



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