№13「考察」
帝国、連合からも追われる私達は各地を転々としながらも、
アリカ王女の幽閉されている『夜の迷宮』へと救出に向かう。
その間も各地での戦火には首を突っ込むのだが、救出に向かう事を優先する為、最大戦力で一瞬で片付けていく。
こりゃ戦死者続出では?まあ向かってくるのが悪いのか?
戦争だからな…其処に議論を挟んでは堂々巡りになるし、収集がつかない。
ここまで、ハイペースで進行しているが、
休憩なし!では彼らが持たない。勿論強行軍に変わりないが、彼らの体力も無限ではない。
私は後衛の為、こうして夜の見回りや見張り番をしているが。
私は寝なくても問題ないため、こうやって考え事するには夜の見張りの時間が丁度良い。
では…疑問に思った事、何故そう思ったか…だが
まず私の旅の目的について整理しようか。
簡単に言うと、全ては造物主に帰する。
造物主の力が原作通りならば、この世界は奴によって創られた。
そして、この世界を襲う危機、それをいち早く察知した奴は、この世界の崩壊が免れない事を悟り、魔法世界に終止符を打つ決心をし、
その成就の為、行動に移す。まず完全なる世界を結成する、又は既に結成されていた戦力、信者を、
各連合、帝国、メガロの中枢部まで浸透させるのだが…。
いや、この世界が完成した時から、元々からそうだったのかも知れないな。
まあ、下準備が済んだ所に、戦争を開始、出来るだけ戦争を継続させ互いを消耗、
さらに憎しみの連鎖によって互いを憎しみ合わせ、戦争を泥沼化させ魔法世界を滅亡に導く。
これがこの戦争の概要。
この戦争は紅き翼の活躍も有り終結。その後、事なきを得たように見えるがその実、問題は遣り残したままだ。
原作の知識が確かなら、この世界の魔力が枯渇するのも時間の問題、現実世界の環境汚染のような物だとフェイトは言っていたはず。
フェイト達が語るに、彼らは20年後もその問題の為に行動を起こすも、
完全なる世界の規模は、再三のタカミチ達による襲撃によって縮小の一途を辿ったらしい。
それでも、造物主の道理を信じ、その為に行動に起こしていた彼らのその忠誠心には驚嘆に値する。流石は人形、人形師には逆らえないか。
さて、大まかな整理はできた、まずは造物主についてだが、
仮想世界でも“世界を創れる力”を私は一人だけ心当たりがある。
そうレナス、レナス・ヴァルキュリアその人…神である。
その神でない事は確認済みだ、北欧神話を調べて安心した理由はそこにある。
勿論、私でも勝てないだろう、彼女だけなら話は別かも知れないが、神々や英霊達を相手に生き残れる戦力は生憎持ち合わせていない。
そしてその力と同じ、という訳ではないだろうが、似たような力を使う造物主を警戒するに越した事はない。
本物でないからと言って、本物を創らなかっただけ、という可能性も捨て難いからな。
できる。という事実が其処にある限り、これが限界と思うのは悪手だ、それは単なる思い込みでしかない。
そしてその力を手に入れるチャンスがあるという事。
『造物主の掟』グレートグランドマスターキーと呼ばれるそれはこの世界の創造主と同じ力を持てるらしい。
この世界の創造主、それが造物主とイコールで結ばれるか不明だが、ほぼ間違いないだろう。
この戦争で疑問に思った事の前に、
その力は、いったいどういう物か?其処に論点を置こうか。
この世界の鍵と言う迄の力を持ったそれは、
只の劣化品のマスターキーでさえ、魔法世界人では手も足もでない力で、何でもかんでもリライトされ、
皆、完全なる世界に移り住んでしまうらしい。
そこから戻るのは極めて困難、『こうあったら良い未来、最善の未来』を見せ、甘い夢の中を生きる事となる。
そして何故か、現実世界の人間であるネギの生徒がその魔法受けても無傷という結果に終わる。
故に、
造物主の掟は極めて限定された場所での、最有力のアーティファクトだと思っていた…。
が、
果して魔法世界限定なのだろうか、という疑問を持った。
私も始めは、魔法世界で圧倒的優位に立つ為等、その力が欲しいと思ったが、
考えれば、オカシイ所に行き着く。
まずは、何故魔法世界限定なのだろうか?
その宝具が劣化品だから?現実世界の人間が特別な力を持っているから?
違う、そうじゃない。
あのアーティファクトは原作でネギ達が魔法世界に旅をしていた時に登場し、猛威を振るったが、
その力は、誰に当たっても効力を発揮しただろうか?誰の攻撃も防ぎきったか?
――ビーと呼ばれていた少女がいた。
ベアトリクス・モンロー?だったか?うろ覚えだから名前に自信はないが、彼女の事で考察してみよう。
彼女は魔法学術都市アリアドネーのクラス委員長に付きっ切りだった少女。
彼女は脇役と言っても過言ではないキャラクターだったが、魔法世界の戦闘に巻き込まれる内に、おかしな現象が起きた。
彼女とユエの魔法は、敵の使い魔のような存在を相手に一騎当千の働きをしたのだ。魔法世界人の魔法が効かない中でだ。
――宮崎のどかという少女がいた。
魔法世界で冒険者として成長し、デュナミスという敵に、圧倒的上位者に対して賞賛に値する働きを見せた。
その時に使ったのだ、造物主の掟を。その場から仲間である朝倉をその力で助け、仲間の元に情報を届けるまで到る。
心を読むという読心術士の彼女だからできた所業だが、これでまた謎が一つ解けた。
現実世界の人間でも、造物主の掟を使えるという事実。
あれは、造物主の掟は、本当に魔法世界人だけに対して効果があるのか?
次に―
思い出せ、リライトの効果を。
一、魔法世界人はリライトをレジストできない。
二、現実世界人には効果を示さない。
三、原子分解魔法のような効力。
四、現実世界人の体を貫通し、服を破り効果を発揮した。
…服を破る。これだ。
この効果を、私は知っている。
漫画の中での話だが。
そう、神楽坂明日菜の能力だ。
彼女は魔法をレジストできても、その効果は服にまで到らず、半裸になる格好が目立つキャラと成り果てた。
リライトは、それに似ている。
――こうは考えられないだろうか?
あの魔法、リライトは魔法無効化能力を砲弾に変えたものに近く、
もしくはそれを扱う事のできる魔法だと。
そうすればマスターキーを大量に生産できる事にも納得できる。
無効化能力を鍵に移し変えただけなのだから。
そうすれば魔法世界人には、所謂魔法生命体である人々には致死性の高い弾丸になり、
現実世界の人間には何の効果も発揮しない事にも納得できる。
被害は服を破るに過ぎず、大した被害ではない。
故に原子分解魔法は勘違い、ミスリードとも取れるが無理も無い。
何せ、自分達が幻想だとは知らないのだから。
無効化した魔法世界人がどのように“完全なる世界”に移り住むのかは謎ではあるが。
それも含めてのリライトという魔法なのか?
まずは“疑問1”ここで保留。
次に、この戦争で疑問に思った事である。
気づいたのは、あの時、ナギが不意打ちを食らった時だ。
あれは敵の力量からしてあの程度のダメージで済む物じゃない、ナギが分身を使った?…いや、あの時のナギは本物だった。
現にあの現場から無傷に近い体で生還したのだから。
そこでまたまた思い出す。再三、敵である完全なる世界が原作でも言っていた言葉だ。
『人間は殺さない。』
特に現実世界の人間であれば、それは顕著だ、たとえ、敵であろうとも。
“それがたとえナギ・スプリングフィールドであろうとも”だ。
そこから考えられる、最高と最悪がある。
最高は、ナギの生存は確定したと言う事、死んだ訳ではなく。
いや、この場合、行方不明にされたと言ったほうが正しいか?その方法はいくらでもある。
唐突にネギの話になるが、無力化する為に、フェイトはわざわざ最高級アーティファクトを用いて邪魔をさせないようにした。
それは結局は失敗に終わるが、その後、ネギとデュナミスの戦いで、デュナミスは「目的は達成された」という内容を言っていた気がする。
そう、ネギの無力化に成功した。という事だ殺すのではなく。
彼らは『人間を殺す』といった事を絶対の不問律、破ってはいけないルールに置いている。
次に最悪だが…。
今までの考察でわかるが、彼らは現実の人間に対して“手加減”している。
それに気づかせてくれたのが、敵なのだからやるせない。
そう手加減だ、何を手加減していると言えば、最後の戦い、アルが絶対に勝てないと言わしめる相手に何故ナギが勝てたのか?
考えるまでもない、造物主の手加減あればこそだ。
これが最悪だと言わず何だと言うのだ…。ナギは造物主に勝ちを譲ってもらったに過ぎない。
勿論、造物主に迫る力が有ったからこその勝利だが、あれが造物主の全力ではないのだろう。
人間に対し手加減している。これが“疑問2”。
この疑問1と疑問2を組み合わせよう…組み合わせるまでも無いか?
造物主の掟の劣化品達や完全なる世界の面々は“現実世界の人間”に対してその威力や力を抑えている可能性があり、
造物主の掟は現実世界の人間や物にも効果がある可能性が浮上する。
…これは不味い、はっきり言ってこの考察が確かなら、グレートグランドマスターキーはありえないアーティファクトだ。
VP世界の四宝レベルに匹敵するかも知れない。
…どうする?手に入れたメリットは計り知れないが、デメリットも比例して跳ね上がった。
一筋縄ではいかないか…ふふふ、面白い。
レナスに勝てる見込みはないが、造物主に対しては幾許かの可能性がある。
目の前に可能性があるなら、見過ごす訳には行かない。
…方針に変更はナシだ、頂こうじゃないか、グレートグランドマスターキー。
今現在は存在しなくとも、将来、その存在は明らかになるはず。
ふふふ、楽しくなってきた。
そういえば、グールの存在は…グールパウダーの物なのか?
確認が必要だな。
――夜の迷宮。
そこで今頃、アリカ姫を助ける為にナギ達は奔走している所だろう、
私はそれに着いて行かない。ナギ達には不寝の番で疲れたと言って休ませて貰った。
無論、休むつもりなど更々ない。私は私で確かめなければならない事がある。
グールの存在だ。
この世界のグールは誰かの肉体を寄り代に自然発生的にグールが発生するものなのか、
この世界の死霊術士による物なのか、
私がこの世界に来た事で、どこかに次元の穴が開いているのか、
それとも――
考えられるパターンはいくらでも存在するし、確証はない。
今わかっている事はグールが存在し、それが敵国で使われている可能性があるという事実のみ。
調べなくてはならないが、あれはたとえガトウでさえ只の悪魔として処理するだろう。
協力を仰ごうにしても、あの存在について詳しく説明などして、ガトウに怪しまれるなど言語道断だ。
彼に怪しまれ、私の出自について調べられたくない。
故に、これは私一人で調査し、私一人でケリをつける。
無視しても構わないのだが、調査するくらいなら問題ないだろう。
帝国について詳しい人物は今の所、あのじゃじゃ馬第三皇女ぐらいだ、しかも
彼女は死霊術という魔法使いでも禁忌に近い術を、帝国が行うなど信じないだろうし。
情報としては可能性は薄いし何より紅き翼と立場が近すぎる。
そこから漏洩する事も無いわけではない。
帝国からの情報は手に入れ難いか。
ならば元締めから、締め上げれば良い。
完全なる世界の下っ端から当たれば良い。
それから完全なる世界の組織を何軒か回り、ついでに組織を潰しながら、終に―
「な、なんだ貴様は!」
「私の事など、どうでもいいでしょう?貴方自身の心配でもしたらどう?」
「!! ヒイッ、い、命だけは…。」
「無様ね、まあいいわ。命乞いするのならば、聞きたい事があるの。」
「な、何かな?金か?そ、それとも奴隷か?なんでも聞いてくれ。」
屑が…、まあ細かい事は気にしないでおこう。今は。
「貴方はグールパウダーという物をご存知かしら?」
「!!」
「知っているのね、ああ喋らないでいいわ、
これ以上貴方の汚い口から、この空間を汚す言葉を吐いて欲しくないの。」
「な、なんの。」
「ちょっと強制的に記憶を見るだけよ、痛いけど我慢してね?」
「やめろ!やめてくれ!」
「黙って。記憶探査。」
杖をこの男の額にあて、記憶探査の魔法を使う。
夢見の魔法などと違うのは、強制的に他人の記憶を除くという禁術指定の魔法だ。
拷問の部類に含まれるこれは、使用者された者に激痛を伴うもので、この世界の補助系の古代語魔法に含まれる。
倫理的観念から、全世界で使用を禁止されているが、そんなものを守っている国など有るものか。
これほど簡単に記憶を見れる魔法が廃れていくわけなど無く、現に執務官や元老議員ならばこの魔法を知らぬ者などいないだろう。
まあ、お優しい正義の魔法使い様は、こんな横暴許さないのだろうが、上層部は普通に使うだろうな。
そんな事より、見えてきた、
「…この薬は何なのですかな?」
「実験を行ったときの副産物として生み出された薬ですよ、
その効力は凄まじく、人を不死の化け物に変貌させます。
その名をグールパウダー、変貌した化け物をグールと呼んでいます。」
…この男がこの薬を、グールパウダーを作った男か。
「すばらしい!これさえあれば戦争をどちらの勝利で終わらすかも可能と言う事ですな!」
「ええ、是非、軍部での使用を推進して頂きたい。」
「ふふふ、わかりました、すぐに実戦配備しましょう。」
「お願いしますよ。」
男の特徴はローブを目深に被り、顔を出していない。
声も魔法によって変えているのか、違和感が付き纏う。
しかしこれで少しは情報を手に入れられた、名前の一致、作り出された物、そして作る者が居るという事。
この世界の死霊術士か、もしくは…、
あの世界の人間なのか…。
今はわからない、だがこの世界で猛威を奮うことは確実なようだ、
グールパウダーか、厄介な。
できるだけ早くあの男を捕まえなければならない。
その前に、
「ありがとう有意義な情報だったわ。って聞いてないか。」
「あががが…。」
痛みで自我を失ったか?まあ念には念を。
「ストーントウチ。」
ふむ、確かに石化って便利だな、フェイトが多用するのも納得だ。
永遠に石化しているならば、それは殺さずに口封じ出来ている。
死ではないが、死に等しい。
言葉遊びのようだが、死と言うものを禁忌として扱っている完全なる世界には、丁度良い魔法なのだろう。
フェイトが良く働く訳だ。案外苦労人なのか?
…そんな事人形には関係ないか。
さて、引き続き調査は続けるが、これ以上の情報は手に入れられないだろうな、
完全なる世界の幹部の記憶でも見なければ。
今はまだ、そこまで動けない。
せめてこの戦争が終わるまで。
一旦保留か…何、もうすぐ終わるさこの戦争も。
帰るとしますか、掘っ立て小屋に。
あとがき
作者の戯言お楽しみいただけたでしょうか?
考察はまだあるのですが、それらは漠然と考えている物も有る為、ネタ帳に封印されています。
そんなわけねーだろと言う方々、赤松先生の話を聞いたわけではないので、これ等は独自設定の域をでません。
こいつ馬鹿じゃねーの程度に思って置いてください。お目汚しすいませんでした。
PS記憶探査の魔法はオリジナルです。これくらい有るんじゃない?と思い作りました。
えぇ、おっさんとおでこをくっ付けて記憶見るなんて絵柄は見たくないからです。