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No.22542の一覧
[0] 【ネタ】エロゲ主人公から全力で逃げる少女【オリジナルギャルゲ・ヒロイン憑依】[りゅーじゅ](2010/10/24 00:37)
[2] オタク女子高生、降臨[りゅーじゅ](2010/10/16 01:24)
[3] エロゲヒロインは処女の法則[りゅーじゅ](2010/10/16 01:26)
[4] メインヒロイン=一番人気という正統[りゅーじゅ](2010/10/16 01:32)
[5] 女にモテたい?ならば前髪を伸ばせ[りゅーじゅ](2010/10/24 00:43)
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[22542] 女にモテたい?ならば前髪を伸ばせ
Name: りゅーじゅ◆fe68845d ID:bbf5cbec 前を表示する
Date: 2010/10/24 00:43




―――『8×4 Beats!』本編―――



「茨城から転校してきました、八神英人です。
 これから一年間、よろしくお願いします」


そう言って頭を下げると、ポツポツと拍手が湧き起こる。
転校するのは初めての経験だけど、こんなものか、とそれは案外あっさりしたものだった。
前の学校のこととか、部活のこととか質問されまくると思って身構えていたけど、どうやら取り越し苦労だったらしい。
とはいっても興味津々な目で見つめられ続けると、さすがに少しばかり居心地が悪いものだ。
そんな俺の空気を察したのか、担任となる八十島教諭(36)が咳払いを一つして、俺の席を指し示す。


「あー、それじゃあ八神は窓側、あの一番後ろから三番目の席が空いてるな?
 そこに座ってくれ。
 それと…………四宮!」

「へ? は、はい!」


先生が一人の女生徒を名指しすると、まるで居眠りを叩き起こされたような慌てた声で、
俺が今し方指示された席の、隣に座っていた女の子が立ち上がった。
ふんわりした茶髪のショートボブが似合う、かわいい女の子だ。
少しだけ得をした気分になる。


「八神はこっちに来たばかりで教科書がまだ揃っていない。
 すまないが教科書を見せてやってくれないか?」

「わ、分かりました!」


緊張しているのか、妙にビクビクした声で返事をする四宮?さん。
…………どうも警戒させちまったかな。
けど俺の目標である『平凡な学生生活』のためには、少なくとも嫌われないようにしないと。


「四宮さん、でいいのか? 悪いけど、よろしく頼む」

「あ、こちらこそ…………」


俺が軽く頭を下げて見せると、四宮さんもつられたようにお辞儀を返してきた。
とそこで、俺は自分と四宮さんだけが立ち上がって、他の全員が座っている中お互いペコペコしている、という間抜けな構図に気付く。
四宮さんも気付いたのだろう、彼女は緊張からか赤くなっていた顔をさらに真っ赤にして、ガタッと椅子に座り込んでしまった。
途端に微妙な空気に包まれる教室。
それは、合同ライブで前のバンドが失敗し、その嫌な雰囲気を残したままステージに立たされた時に似ていた。

 
「…………とまあ、ときどき空気読めずにこんなことするアホですけど、どうかよろしくっ!」


その雰囲気に耐えられず、俺はついライブのMCのノリで大声を上げてしまったが、結果的にそれがよかったらしい。
途端にクラス中から笑い声が上がる。
けどそれは少なくとも馬鹿にしたようなものじゃなくて、俺はホッと胸を撫で下ろした。
そのまま照れたように頭を掻きながら担任に指示された席まで行くと、さっきの四宮さんが微妙に恨みがましい目でこっちを見てるのに気付く。
うーん、さすがにさっきのは恥ずかしかったか。


「ごめんな、恥をかかせるつもりはなかったんだけど…………」


小声で謝ると、彼女は最初の表情に戻ってあたふたしながら大丈夫と連呼し始めた。
それが小動物みたいで妙に可愛らしく、俺はしばらく観察していたけど、やがて彼女が涙目になりかける。
途端に俺の周囲から、膨れ上がる殺気。
あ、これはヤバイ。
と思ったとき、いつの間にいたのか四宮さんの後ろに何人かの女子が集まっていた。


「あーはいはい。ほら、転校生君も謝ってるし、いいんちょも気にしないの。謝んなかったらぶっ飛ばしてたけど」

「ビビんなってメグ! コイツが何かしたらアタシらできちんと〆るからな!」


所々に何やら不穏当な言葉を混ぜながら、何人かの女子が四宮さんをなだめている。
それを見て、俺はこのクラスで絶対に敵に回してはいけない人間を一人、はっきりと認識した。
俺の目標である穏やかな高校生活のために、この隣の席の四宮さんには絶対に嫌われないようにしないと。
そんな風に決心していると、当の四宮さんがこっちを見て苦笑いしていることに気付く。
その表情が何だかごめんなさい、と言っているように見えて、俺も思わず苦笑いを返してしまった。
と、そこで、今度はお互いにペコペコしているんじゃなく、苦笑いを交し合っているという状況に気が付く。
そのまま俺達の苦笑いは本物の笑いとなって、いつの間にか俺と四宮さんは、ふたりで声を上げて笑ってしまっていた。
良かった、彼女とはいい関係が築けそうだ。


「あの、あらためて自己紹介します。わたしは四宮めぐみ。クラス委員してます」

「こちらこそ。転校したのは初めてだから、慣れないことも多いと思うけど、よろしく。いいんちょってのは…………?」

「うっ!? そ、それは、わたしがクラス委員だから、いつの間にか付けられていたあだ名です。
 できれば、いいんちょじゃなくて四宮さんか、メグって呼んでもらいたいんですけど…………」

「かわいいあだ名だと思うけど」

「ダメですっ! いいんちょの名前は、東鳩の愛○ちゃんにのみ許されるんです!」

「東ハト? よく分からんけど、それなら四宮さんで」


どこからともなく、四宮さんの声にピーという小さな音が混じって、一部のセリフが聞き取れなかったけど、
とりあえず彼女の呼び方は四宮さんで決まった。
キャラメルコーンとかハバネロの会社に何かあるのかは多少気になるけど、突っ込んではいけないっぽい。
まあそれはともかく、どうやら俺は四宮さんとは、それなりにいい関係を築けそうな気がしていた。
このまま上手に立ち回れば、変に目を付けられることもないだろう。
そんな風に考えていた俺に、さっきから少し考え込むような素振りを見せていた四宮さんが、不意に声を掛けてきた。


「あの、八神君。もしよければ、今日の放課後時間をつくってもらえませんか?」



―――『8×4 Beats!』本編side out―――









(…………イケメンね)


それが、担任の八十島教諭(独身)に連れられて入ってきた転校生に対する、わたしの最初の感想だった。
180センチ近い長身に、引き締まったスタイル。
微妙にパーマのかかった髪をふわりと前にたらした、きちんと美容室に通っていると分かるモテメンな髪形。
そしてその身長には微妙に不釣合いな幼い雰囲気の残る美少年顔。
それが、わたしがこの世界では初めての邂逅となる、八神英人の第一印象だった。
最近流行りらしい、いわゆる『リア充』主人公の最たるものが、そこにあった。
弟系草食男子の皮をかぶった喰いまくりのリア充野郎と言われたRPGの主人公がいるらしいが、まさにそんな印象を受ける少年だ。


さて、またまた関係ない話になってしまうけど、少しだけお付き合い願いたい。
四宮恵が語るエロゲ講座、第3回講義の時間だ。
元々エロゲとかギャルゲの主人公っていうのは、極限まで個性を殺すことが求められていた。
特に主人公の一人称で進むタイプのエロゲでは、いわゆる“長い前髪で目元が隠れる”のが基本だった。
これは記号となり得るものを徹底的に排除して、プレイヤーが主人公に感情移入しやすくするための措置だという。
攻略するヒロインの数だけストーリーがあって、下手をすればそれぞれのストーリーでまったく違った一面を見せることもある主人公は、
プレイヤー次第でどんなキャラクターにもなり得るし、そしてそれは様々なプレイヤーが感情移入する上で非常に役に立った。

この成功例がいわゆる“U-1”や“KYOUYA”であり、彼らは時にどんなモノでも殺す魔眼を持っていたり、SSSランクの魔導師だったりする。
何とも香ばしい匂いが漂ってくるけど、それは別に悪いことじゃない。
プレイヤーの感情移入によってキャラ付けされるのは、まさしく製作者サイドの狙ったことだし、
二次創作がたくさん作られるのも、それだけ主人公が評価されて、またヒロインたちも魅力的だということの証明になるのだから。


ただし最近は、最初から主人公の容姿などがきっちり設定されているエロゲが増えてきた。
それも、あくまでも主人公の一人称で進むはずのオーソドックスなエロゲで、だ。
これはエロゲ原作のアニメなどが増えて、主人公に顔や声が付くのが当たり前になってきたということもあるけど、
なにより“長い前髪で目元が隠れる”ような没個性的な主人公が飽きられてきたことが大きいだろう。
没個性は話が作りやすいという点では優秀だが、平面的な『よくあるエロゲ』になりがちだ。
市場が成熟してきた今、エロゲのストーリーは『どこかで見たことのある話』に陥りがちになっている。
だからこそ、主人公の性格付けをあえて固めてしまって、そこから話を掘り下げていって個性を付ける。
他社との差別化は、販売戦略の基本中の基本。よってこうした方策が採られるようになってきたのだろうと思われる。


『8×4 Beats!』も、最近の流れである立ち絵のある主人公だ。
ただしこればっかりは仕方がない側面もある。
『8×4 Beats!』はバンド活動を舞台にしているから、必然的に演奏シーンのCGが増える。
ロックバンドの魅力の根幹は、演奏者一人一人の個性が織り成すハーモニーだ。
個性が単純にぶつかり合うんじゃなくて、それぞれが調和して高めあうからこそ観客は熱狂するわけだし、
だからこそそこに没個性的な人間が混じっていてはハーモニーもへったくれもない。

そういった意味では、某ガールズバンドアニメなんかは成功例として挙げられる。
主要メンバー全員がそれぞれ個性的で、燃えるようなストーリー展開もカタルシスもないのに、
彼女たちのキャラクター性だけで1+2クールのアニメを乗り切ってしまえるほどに。
ちなみにわたしはエレクトーンをやっているという理由でムギちゃんのファンで、澪ちゃん派のお兄ちゃんとは日々激論を繰り広げていた。
それでも最終的に『ロングヘア巨乳美少女は正義』で和解案が成立したあたりこの兄妹は本当にダメだと思うが、これは余談。



ともかく、そんな理由でわたしは八神英人の容姿、性格などをあらかじめ掴んでいる。
彼が教室に入ってきた最初こそ戸惑って、先生に呼ばれたとき思わず間抜けな声を上げてしまったけど、
それ以降は冷静さを取り戻して、おおむね原作どおりに事を進めることに成功した。

…………わたしは基本的にお兄ちゃんの影響で男言葉が時折混じるタイプだから、いいんちょキャラの口調って疲れるわぁ。


原作ではこの転校シーンでは、主人公たる八神君は、四宮めぐみはクラスの女子に大きな影響力を持っているということを理解する。
あとはある程度親しく会話できるようになれば、この時点でのミッションはほぼコンプリートとなる。
残るは。


「あの、八神くん。もしよければ、今日の放課後時間をつくってもらえませんか?」


わたしのこの発言に少しだけ面食らった様子の主人公くん。
理由を訊こうとして…………わたしの後ろで般若の表情を浮かべているだろう友達にビビったのか、少し表情を引きつらせている。
どうもこっちのわたしに彼氏が居ない理由は、友達連中のこの過保護さも一因としてありそうだ。
ちなみに向こうのわたしがモテなかったのは、特に髪や化粧に気を遣わず、適当に日々を過ごしていたからだと思われる。


「別に俺はかまわないけど…………」


そう言って、彼はチラチラとわたしの後ろを見る。
うん、無理もないね。わたしですら感じられるほどの殺気が背中からビュンビュン来てるもん。
真正面から受け止めて表情が引きつるくらいで済んでる主人公くんは、さすが場合によってはハーレム築く男だ。
肝の据わり方が半端じゃない。


「八神くん、この学校まだ不案内でしょ? よかったら校舎を案内するついでに、部活を見て回るのもどうかと思って」

「部活は…………いや、何でもない。それじゃあ、頼んで良いかな?」


部活、という単語が出た瞬間に一瞬だけ彼の表情が変わる。
本編中で詳しく語られることはあるルートを除いてなかったけど、彼は前の学校で軽音楽部に入っていたわけではなかった。
むしろ大人のバンドに腕前を認められて最年少メンバーとして入っていて、その関係で部活はやっていなかったはずだ。
それでも放課後の活動、という点では彼の中で同じなんだろう。
社交辞令もあってこの場で断ることはなかったけど、部活に入る気は現時点でほとんどないと言っていい。
でも、原作ストーリー的にはそれでいいのだ。
じゃないと、放課後の時間が削られてバンド結成に向けての余計な障害が発生し、ハッピーエンドへの道程が遠ざかることになってしまう。
わたしは原作を踏み外さずに持っていけたことの喜びで、つい満面の笑みになって声を上げてしまった。


「よかった! それじゃあまた後で声を掛けるから、一応帰る準備して待ってて!」

「あ…………ああ、分かった。よろしく」


少し照れたようにそそくさとカバンを片付ける主人公くん。
その姿を横目に見ながら、わたしはこみ上げてくる笑いを抑えることが出来なかった。
これで後は彼をカラオケに誘って、部活案内でいくつかのフラグを立てれば、あとは彼とヒロインとの物語だ。
物語はそこから、それこそ予定調和のようにさくさくと進んで行く。

『8×4 Beats!』はゲームと銘打っていながら、いわゆるバッドエンドに向かう選択肢はほぼないと言っていい。
よっぽど意識して嫌われそうな選択肢を選ばない限り、何人ものヒロインにフラフラしない限り、意中のヒロインとゴールインすることは難しくない。
現にわたしは、元の『四宮恵』だったときにプレイしたこのゲームで、攻略サイトは一切参考にせず、リトライなしでクリアしたほどだ。
だからあとは、彼がどのヒロイン狙いかを見極めて、適当に煽りながら過ごせばいい。



――――――このときわたしは、ストーリーが巧く運んだことに単純に喜んでいて気付かなかったけど、
後々になって考えると、割と危険なミスを二つほどやらかしていた。
まず、基本的に奥手でオドオドしがちという、わたしの性格を半ば無視してしまったこと。
このせいでわたしが転校生の、しかも初対面の男の子に対して最初から妙に友好的なことに、千里ちゃんや美緒ちゃんなど何人かの友達が疑念をもったみたい。
おかげで妙な勘違いをされ、その勘違いのまま一部の友達から『こっくはく! 告白!』などと応援されまくって、危うく踏み外すところだった。
でもこっちはまだ何とかなった方だ。
なぜなら、わたしは“いいんちょ”四宮めぐみと比較すればそれほど内気じゃないので、男子と話すのにもそれほど抵抗感はない。
だから主人公くん以外にも大宮くんやその他のクラスメイトとも話すようになって、そのため最初はあった違和感もやがて消えていったらしい。
消極的だったいいんちょが一生懸命頑張っている、ということでむしろ好意的に見られるようになった。
けど、もう一つはかなり問題だった。
一つめがそれほど原作ストーリー上問題にはならないのに対し、もう一つは露骨に原作の根幹を揺るがす事態に発展しかねない爆弾だ。
いや、ハッピーエンドに向かうということ自体で言えば問題ないのだけど、『わたし』にとっては致命的なまでの大問題。
よく考えれば当たり前で、でもあえて目をそらしていたそれを、わたしはこれから数日後に訪れる“最初の選択肢”で思い知らされることになる。





わたし『四宮めぐみ』も、主人公の攻略対象、いわゆるヒロインのうちの一人で、
主人公に選ばれる可能性も他のヒロインに比べ、何ら劣るものではないということを。






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