<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.22542の一覧
[0] 【ネタ】エロゲ主人公から全力で逃げる少女【オリジナルギャルゲ・ヒロイン憑依】[りゅーじゅ](2010/10/24 00:37)
[2] オタク女子高生、降臨[りゅーじゅ](2010/10/16 01:24)
[3] エロゲヒロインは処女の法則[りゅーじゅ](2010/10/16 01:26)
[4] メインヒロイン=一番人気という正統[りゅーじゅ](2010/10/16 01:32)
[5] 女にモテたい?ならば前髪を伸ばせ[りゅーじゅ](2010/10/24 00:43)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[22542] オタク女子高生、降臨
Name: りゅーじゅ◆fe68845d ID:e704b190 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/16 01:24




この世に存在する物語の半分はラブストーリーである。


これは高校で古典を教えているお父さんが、宿題の相談に行ったわたしに言った一言だ。
そのときわたしは、今まで触れたことのある物語のいくつかを思い出して、大いに納得したのを覚えている。

例えば、百人一首なんて和歌の性質の問題もあるけど、半分以上がまさしく恋愛歌だ。
ゴールデンタイムに放送するドラマは、ラブストーリーを除いたら家族群像か刑事モノしか残らない。
わたしの性別向けのマンガに至っては、恋愛要素がない作品を見つける方が至難の業である。



そしてそんな物語に囲まれて生きてきた現代日本の女の子たちの間で、最も盛り上がる話題といえば当然『コイバナ』になる。
あの子は隣の席の○○君が好きだとか、あの子が先輩と一緒に帰っているのを目撃したとか。
そんな社会に出る上でまったく必要ない話題で延々と盛り上がれるのは、思春期の女の子の特権なのかもしれない。

…………だけどそれも、高校生ともなると多少話が違ってくる。
小中学生の頃は、一緒に帰ったとかあの子が好きらしいとか告白するしないといった、ある意味可愛らしい話題だけで盛り上がれたけれど。
年齢が上がっていくにつれて、女の子のコイバナには妙に生々しい話題が増えてくる。


「ねぇちょっと聞いてー。昨日アタシすげぇモン見ちゃった!
 あの駅裏の公園のベンチでさー、何かカップルがヤッてんの!」

「マジで!? さすがに嘘じゃない?」

「マジだって! 女の方スカートだったから分かんなかったけどさー、めっちゃ腰動いてたもん!
 つーか男の上に女が座ってるって有り得ねー体勢な時点で確定だって!」

「写メ撮ってないの?」

「はぁ? 撮れるわけねーじゃん! バレて変な因縁つけられたらウゼーし」


机をくっ付けてお弁当を食べながら、何とも言えない会話を交わす『わたし』を含めた女子高生。
華の女子高生が満面の笑みを浮かべながら話す話題としてはかなり微妙な、だけど最も盛り上がるのがこれ。

…………言うまでもなく、エッチの話題だ。


「そういえば今ので思い出したけどさ、この間3-Fの教室でアレした跡があったらしいよ?
 床に白いアレがべっとりくっ付いてたんだって!」

「うわっ、サイアク。つーか馬鹿じゃねヤッた奴等。掃除ぐらいしてけって話じゃん。
 アタシだって家でヤるときはシーツとかめっちゃ気ィ遣ってんのに」


そんな女の子たちのかしましい会話を聞きながら、わたしは浮かべようとした笑顔が微妙に引きつっていくのを自覚していた。
何故なら今の『わたし』にとって、彼女たちの会話はあまりにも笑えないものだったから。
そんな時、眉毛をピクピクさせながら箸を動かしていたわたしが目に入ったのか、目の前で公園ア○カンカップルの目撃談を話していた子が、わたしに振る。


「なあメグ、そんなおもしれー顔しなくてもいいんだぜ? 笑いたい時は思いっきり爆笑すりゃいーんだ!」

「バーカ。口にモノ入れて大口開けて笑えるわけないじゃん。
 メグちゃんはあんたと違っておしとやかなんだから。
 つかご飯粒飛んでるし。ウザッ」


なにおー!? とか言いながらいつものじゃれ合いに突入した少女たちを眺めながら、
わたしは苦笑いが過ぎて思いっきり引きつっているだろう表情を自覚しつつ、さっきまでの話題を反芻した。
公園でいわゆるア○カンをするカップルと、おそらく教室内でヤッただろうカップル。
普段のわたしなら『馬鹿じゃない?』の一言で切って捨てられるはずのそれらを、今のわたしは笑えない。
なぜなら。


『わたし』は、これからその二つの場所でエッチすることになる(かもしれない)運命にあるのだから…………




******




わたしの名前は、四宮めぐみ。 17歳の高校生。
趣味は読書で、特技は小さい頃から続けたエレクトーン。
学校ではわたし以外はほとんど幽霊部員という文芸部に所属してる。

これだけ書くと、ごく普通のどこにでもいそうな女子高生に思えるよね?
でも違うんだ。
すごくバカバカしいことなんだけど、わたしは『四宮めぐみ』のことを知っている。
それも、とあるエロゲーのヒロインのうちの一人として。




『8×4 Beats!』(エイトフォービーツ)




ソレが、『四宮めぐみ』がヒロインの一人として登場するエロゲーのタイトルだ。
別にどこかの制汗スプレーではなくて、単純に主人公の『八神英人(やがみえいと)』が4人のヒロインとラブコメを繰り広げることから名付けられたそうな。
学園を舞台にしたバンド活動モノで、ギタリストの主人公がバンド仲間を集め、その過程でヒロインたちと交流し、恋愛する。
ストーリーの大まかなところはそんな感じで、有体に言えば使い古された設定だけど、
シナリオ、原画、音楽といった基本的かつ不可欠な要素を手を抜くことなく丁寧に作った結果、
エロゲーとしては大成功と言ってもいい5万本を超える売り上げを達成した名作だ。
ちなみにこれでも某ステイナイトの半分にも満たないあたりあのメーカーの化け物度が分かるが、これはまあ余談である。
実際わたしもプレイしたけど、王道シナリオを丁寧なCGとこだわり抜いてつくった音楽が補完していて、大満足な作品だった。

『四宮めぐみ』は、主人公の同級生でいわゆる“いいんちょ”系キャラである。
茶髪のショートボブで、身長は女の子平均の160センチ。バストも84あって、スタイルもかなりいい。
おっとりしているもののいいんちょだけあって世話焼きで、隣の席になった主人公に部活を案内したり、他にもいろいろと世話を焼く。
また、後には主人公が結成したバンドのキーボーディストとして引き抜かれ、かなりの時間を共有することになる。
ぶっちゃけメインではないというだけで、存在感はかなりあるヒロインだ。




…………さて、そろそろ突っ込みが入るころだと思う。
何故女子高生が得意げにエロゲーを語り、しかも内容まで把握しているのか。
誤解を恐れずに言えば、原因の八割はわたしのお兄ちゃんにある。

お兄ちゃんは爽やか系イケメンで頭が良くてスポーツマン、さらにサッカー部のキャプテンで生徒会役員するくらい人望があって、
小さいときから妹のわたしをとても大事にしてくれて、し か し オ タ ク で あ る という何と言うか色々と残念な人だった。
分かりやすく言えば、“うちのお兄ちゃんがこんなにかっこいいわけがない”ってところかな。
俺が一番尊敬する人物なんだと言いながら、イングランドの某強豪フットボールクラブのカレンダーと、
某ステイナイトの赤い宝石魔術師のポスターを部屋の壁に並べて、会心の笑みで

「あかいあくま……っ!」

と呟くのが、恥ずかしながらうちのお兄ちゃんだ。


だけどわたしは、優しくてカッコいいお兄ちゃんが小さい頃から大好きだった。
だからお兄ちゃんがギャルゲーに手を出したとき、わたしはお兄ちゃんがやってるならという理由で同じものをやってみた。

―――結果、わたしも見事にオタクと化す。
元々本が好きで、真面目な文学作品以外にライトノベルとかマンガにも手を出していたわたしだったから、きっと存分に素養はあったのかもしれない。
画面の向こうでデレる女の子を見てニヤニヤする女子高生。我が事ながら不気味すぎる。


そしてわたしがオタクになって一年ほど。
高校を卒業して第一志望の国立大学に見事合格を決めたお兄ちゃんは、遂にオタク最後の牙城へと足を踏み入れた。
18禁ゲーム、いわゆるエロゲーをプレイし始めちゃったのだ。
その頃にはわたしもオタクに両足突っ込んでいるような状態だったから、むしろ嬉々としてエロゲーを借りて、自分でもプレイする。
そうなるとお兄ちゃんも心得たもので、わたしに貸してくれるタイトルは型月、鍵、八月といった安定して楽しめるメーカーの作品。
あとは、エロいの貸して!と頼んだら渡されたかぐやの作品など。
気が付けば半年も経たないうちに、エロゲーに関する議論を余裕で繰り広げることのできるダメ兄妹が完成したのだった。


『8×4 Beats!』も、そんな感じでいつものようにお兄ちゃんが貸してくれたタイトルの一つだった。
黙っていればわたしの同級生の十人中九人までは落とせそうな無駄に爽やかな笑顔で
「エロくて可愛くて萌える、いい作品だったよ」と言っていたとおり、十分に楽しめる作品だったのだけど、たった一つだけ、不満があった。



ヒロインのひとり、『四宮めぐみ』が、わたし『四宮恵』と同姓同名である、ということだ。



さすがに微妙に嫌な気分がしたので、『四宮めぐみ』を除く三人のシナリオを先にクリアしたのだけど、オタク的にCGが埋まらないのは屈辱である。
ハーレムルートは当然最後に回すとして、我慢して『四宮めぐみ』ルートを攻略していき、遂にスタッフロールまで辿り着いたところで、それは起こった。

ほとんどのギャルゲーは、スタッフロールが流れた後にエピローグとしてちょっとした後日談を挿入する。
何年か経っていて赤ちゃんがいたり、ふたり並んで卒業式の桜並木を歩いていたりするあれだ。
だけどいつまで経っても『四宮めぐみ』のエピローグが流れずに、焦れたわたしは『Ctrl+Alt+Del』を押す。
その瞬間、パソコンの画面がいきなり明滅して、わたしはまるでパソコンに吸い込まれるかのようにして、意識を失ったのだった。





******




「ねえメグ、さっきから百面相してるけど、大丈夫?」


お弁当を食べながら、意識を飛ばしていたからだろうか。
ふと気が付くと、さっきまで可愛らしい口げんかを繰り広げていた友達ふたりが、心配そうな顔でこっちを見ていた。


「えっ…………? あ、だ、大丈夫だよ!」


慌てて残っていたお弁当をかき込んで笑ってみせたけど、友達ふたりの表情は晴れるどころか疑り深そうなそれに変わっていく。
それにわたしは嫌な予感がしたけど、直後見事にそれは当たる。


「ま、まさか昨日、アタシが公園で見たのって、メグだったのか!?」

「まさかこの間の3-Fで見つかったってアレ、メグだったの!?」


ゴフッ!? 友達ふたりの言葉を聞いた瞬間、わたしは思わずむせて身体を九の字に折り曲げた。
何ともとんでもない方向に持っていく友人たちである。ありがたくて涙が出そうだ。実際むせて半泣きだけど。


「な、何言ってるの二人とも!?
 わたし彼氏なんていないよ!?」

「そ、そーだよな! メグは可愛いアタシらの天使だからな!」


そう言うや否や、席を立ってわたしの後ろに回って、わたしを抱き締めてくる友達その1、公園で野外セッ○スを目撃した千里ちゃん。
髪を金色にしていて彼氏とのエッチをぶっちゃける『イマドキ』な女子高生だけど、
何を思ったのか自分とは対極に位置する『四宮めぐみ』というおとなしい系少女を猫可愛がりする困ったさんだ。


「でもメグ、本当に最近ちょっとヘンよ?
 何か妙にあんたらしくない行動するし、今みたいに時々意識がお空の向こうに逝ってるし…………」


続いてそう言って心配そうな視線を向けてきたのは、黒髪ストレートロングで気の強い系美人の美緒ちゃん。
千里ちゃんとは小学校からの付き合いらしく、その縁でわたしとも仲が良い。
実は千里ちゃん以上にスキンシップが激しい(おっぱい揉んだり耳をはみはみしたり)ちょっと怖い一面もあったりするけど、頼りになる大事な友達だ。


だけど美緒ちゃん、その“わたしらしくない行動”
それって、当たり前なんだ。






だって、今の『四宮めぐみ』の中に居るのは、以前までの彼女じゃなくて、『四宮恵』というまったくの他人なんだから…………









前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.022932052612305