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No.22526の一覧
[0] マブラヴオルタネイティヴ『掴み取る未来』[ファントム](2013/02/19 21:25)
[1] 第1話[ファントム](2013/11/03 21:04)
[2] 第2話[ファントム](2011/08/03 13:10)
[3] 第3話[ファントム](2011/08/03 13:11)
[4] 第4話[ファントム](2011/08/03 13:12)
[5] 第5話[ファントム](2011/08/03 13:12)
[6] 第6話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[7] 第7話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[8] 第8話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[9] 第9話[ファントム](2011/08/03 13:14)
[10] 第10話[ファントム](2011/08/03 13:14)
[11] 第11話[ファントム](2011/08/03 13:15)
[12] 第12話[ファントム](2011/08/03 13:15)
[13] 第13話[ファントム](2011/08/03 13:16)
[14] 第14話[ファントム](2011/08/03 13:16)
[15] 第15話[ファントム](2011/08/03 13:17)
[16] 第16話[ファントム](2011/08/03 13:17)
[17] 第17話[ファントム](2011/08/16 12:31)
[18] 第18話[ファントム](2011/08/24 03:07)
[19] 第19話[ファントム](2011/10/14 18:34)
[20] 第20話[ファントム](2011/10/17 05:08)
[21] 第21話[ファントム](2011/10/27 16:01)
[22] 第22話[ファントム](2011/11/05 17:15)
[23] 第23話[ファントム](2011/11/17 04:24)
[24] 第24話[ファントム](2011/12/20 15:17)
[25] 第25話[ファントム](2012/02/20 15:35)
[26] 第26話[ファントム](2012/04/08 23:38)
[27] 第27話[ファントム](2012/04/28 14:27)
[28] 第28話[ファントム](2012/05/25 02:23)
[29] 第29話[ファントム](2012/07/15 11:04)
[30] 第30話[ファントム](2012/08/14 23:56)
[31] 第31話[ファントム](2012/09/18 15:27)
[32] 第32話[ファントム](2012/10/21 11:24)
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[22526] 第8話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:db366f07 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/03 13:13
エヴェンスク要塞特務大隊駐屯地


「今はBETA群の停滞を確認しているが、上は24時間後に再侵攻を開始すると判断している」

大隊所属の衛士は、仮設ブリーフィングルームで集合している。
ここへ配置されて3日、散発的にBETAの浸透があったもののソ連軍が撃退していたが、本格的に侵攻が始まると予測されていた。

「ヴェルホヤンスク要塞はすでにBETAの圧力が強まっているという情報が入っている」

戦略画面に、ソ連軍から渡された偵察衛星写真が表示される。
オリョクミンクスハイヴを上空から写している写真にはかなりの数のBETAが表示されていた。
時間が経過するたびにBETAの数が増えているのが確認できる。

このままいけば自分はBETAとの戦闘をすることになるだろう。
北条はここに来るまでの間、ずっとシミュレーターで戦術機の操縦訓練をこなしていた。
対人戦は未だメビウス11に勝つ事が出来ないが、対BETA戦ならなんとか身につける事が出来たと思う。

「メビウス12!貴様は話を聞いているのか!」
「はっ、申し訳ありません!」

反射的に立ち上がる。
相変わらず考え込んでしまう癖が出てしまった。
横にいたメビウス11に殴られ、席に着く。
国連軍司令部より、到着してすぐに作戦命令が下達されたらしい。
部隊が展開を終えてすぐに作戦会議は始まっていた。

「我々は、ヴェルホヤンスク要塞からこちらへ侵攻するBETAを迎え撃つ」

続いて表示された衛星写真は、今現在BETAの波状攻撃を受けるヴェルホヤンスク要塞上空の写真だ。
ヴェルホヤンスク山脈を利用したこの要塞は完成してから幾度もBETAを退けていた。
それも今となっては見る影もなくなっている。
戦術機、戦車などの兵器が無残にも破壊されBETAの死骸も散乱していた。
しかし、その中でも要塞周辺では未だに戦闘を継続する部隊がいるのだ。
我々の大隊を示す光点がエヴェンスク要塞から西へ進み、インディギルカ川へと前進している。
小さな集落がそこにはあった。そこで光点が止まる。

「我々は、ここで展開する。ソ連軍の戦術機甲連隊はヴェルホヤンスク要塞へ前進し戦力を増強する事になる」

戦略画面でヴェルホヤンスク要塞へと援軍が配置されこの波状攻撃を阻止しBETAを撃退する。
そう説明される。

「いつも通りだ。ヤツらを片付けて帰る」
「了解!!」
「各中隊長は残れ。他の者は解散、各自作戦まで機体調整を万全にしておけ」

北条は作戦会議を終え、機体へとすぐに戻った。
着座調整を済ませているが、ここがなぜだか落ち着く事が出来る。
最近はずっと戦術機を動かす事が出来るようになりたかった。
このままでは、自分のせいでまた誰かを失ってしまうことになる。
それが一番怖い……。

「メビウス12!またそこにいるのか」
「メビウス11……、はい。ここが落ち着くんです」

彼女には、部隊に着任して世話になりっぱなしだった。
エレメントの相棒である、特に彼女の足を引っ張らないように戦い続けなくてはいけない。

「休めるときに休んでおかないと後が困るぞ」
「はい」

インターフェイスのせいでメビウス11の表情は見れなかった。しかし、すぐに自分の機体へと去っていった。
残された自分は、機体のステータスチェックを始める。
手持ち無沙汰もまた困ったものだが、今はこれ以上何かをすることは出来ない。


インディギルカ川東大隊展開地点


あの後すぐに、大隊は担当戦域へすぐに展開する事になった。
BETAの再侵攻が予想していた時間よりも早かったためだった。
各部隊が展開する地域へは補給コンテナがすでに投下されている。
それを利用しながらこの場所での戦闘を継続しなければならない。

「最前衛、距離1200!」
「大隊は鶴翼複伍陣(ウイング・ダブル・ファイブ)で展開、メサイア隊は迂回する。BETAを引き込んだ後に楔弐型(アローヘッド2)で突撃級を片付けるぞ!」
「了解!」

浸透してきたBETAの数が少ない事が幸いし、こちらの被害を出す事なく撃退する事に成功した。
しかし、それも徐々に時間が経つにつれBETAの数が増えてきている。

ヴェルホヤンスク要塞の状況も逐一入ってきていたが、それも次第に途切れるようになる。
ローテーションを組み、大隊は小休止も挟みながらBETAとの戦闘を継続していた。

「メビウス12!後ろだ!」
「ありがとうございます!クソッタレ!数が多い!!」

後方に接近されている事に気付くのが遅れてしまった。
メビウス11がカバーに入ってくれなければやられていたかもしれない。
さっきから、トリガーを引きっぱなしである。
敵の近接範囲内から離れ、ロックオン、射撃の繰り返しだったが気が付けば大隊の前衛隊は混戦状態に持ち込まれているようだ。
前も後ろもBETA、BETAである。

「支援砲撃がこちらへまわされた。隊はこれよりポイントDへ退避!!」

いやな音と共に、砲弾が目と鼻の先に着弾する。
こちらの座標目掛けて次々に榴弾が炸裂していた。

「味方がいるってのに!」
「下がれ!!」

本当にこちらに構うことなく砲撃してきただと!?
慌てて、メビウス11と後退する。推進剤も節約したい、こんな事で消費したくなかった。

「メビウス隊!損害報告!」

どの機体も損害を受ける事は無かったが、これが今から何度も行われるなんてあり得ない。

「よし、みんな無事だな!砲撃もすぐに終わるぞ!カウントダウン10!9、8、……」

メビウス01のカウントが入る。砲撃が終わってすぐに再突撃を仕掛けるのだ。

「3、2、……0!突撃!!」

いっせいに12機のF-4Eが砲撃で未だに土煙が舞う担当区域に突っ込む。
36mm突撃砲の発砲音が響き渡る。
土煙が晴れる頃には、残存するBETAは残っていなかった。

「メサイア01とより大隊各機!報告!」

各部隊次々に損害報告と担当区域の状況を報告していく。
どの隊も今はまだ無事のようだ。
地形を利用して、1個大隊でも十分にBETAを殲滅していた。


戦闘開始から、3日後


特務大隊所属のA-10サンダーボルトの2個小隊が展開し、戦車級の赤い海を塞き止めていた。
ガーゴイル隊のF-4Eの2個小隊がこれに随伴、突撃級や要撃級を抑えている。
戦区に散らばった補給コンテナをいくつか集め、そこを急ごしらえの補給基地にして戦闘を継続していた。
友軍として、国連軍所属のMiG-27の1個戦術機甲連隊が展開していたが、ゆっくりとその数を減らし今は周囲にその影は無かった。

「グリフォン03、フォックス2!フォックス2!」
「グリフォン11です、弾薬が残り僅かです!補給に下がらせて下さい!」
「グリフォン11、小隊毎にローテーションを組んだ、順番まではなんとか持ちこたえろ」
「こちらキマイラ02、キマイラ01戦死。私が指揮権を引き継ぎます!」

激戦地を転戦する特務大隊は、衛士としても腕は確かで損害を抑えて帰還していた。
それだけでも、この特務大隊の練度は高い。しかし、エヴェンスク要塞へと到着した第17特務大隊は連日による戦闘によってすでにF-4Eの1個中隊分の損害が出ていた。
A-10による火力支援、戦線を構築しF-4Eでの中型BETAを撃破もしくは行動不能にする事で受け持つ戦区を支えていたが、ここしばらくソ連、国連の部隊が現れていない。

「メビウス01より中隊各機、損害報告」
「メビウス02以下第1小隊損害軽微」
「メビウス03だ、メビウス06が喰われました。他はまだいけます」
「メビウス11です、小隊長、メビウス10が戦死。私とメビウス12は問題ありません」

この地獄のような戦場で北条は生き残っていた。
対人戦による訓練は成績が落ちているが、BETA相手にはなんとか命を繋ぎとめる事が出来るまでの技量を得ることが出来ていた。
一ヶ月に及ぶ戦闘を繰り返し、戦術機を動かせる様になっていると思う。

「メビウス01了解、メビウス11は12と第3エリアに新たに投下された補給コンテナをグリフォン隊へ運んでくれ。その他はメサイア隊と合流、再度侵攻するBETAを横から叩いて行く!」
「こちらグリフォン01、小型種は邪魔にならなければ無視しろ。我々の担当だからな」
「了解!!」

メビウス隊のF-4E9機は補給を済ませると戦闘へ戻っていった。
正確な情報ではないが、BETAの海の中へと孤立したヴェルホヤンスク要塞が陥落したとの情報も入って来ていた。
その情報の後から、ヴェルホヤンスク要塞からだろうかこちらへ下がってくる部隊が通過していたが、それもここ数時間のうちに見なくなっていた。
反対にBETAの侵攻する数が増えて来ている。

「メビウス11よりメビウス12、補給コンテナを回収だ」

行くぞ、そう言うとメビウス11は水平噴射跳躍で進んで行く。
置いて行かれまいと、北条も後を追う。
補給コンテナへと辿り着くと、戦車級にいくつか食い荒らされていた。
WS-16C突撃砲で弾幕を張り、無事な補給コンテナへ近づけさせない。
補給コンテナへ36mm弾が直撃し戦車級を纏めて誘爆を起こす。
2機でしか補給コンテナを運べない為、今ある脅威を排除するしかないが、これ以上の所持する弾薬も消費し続ける訳にはいかない。
これ以上は諦めるしかないかと考えていた。

「メビウス11、これ以上は……」
「くぅ、諦めるしかないか」

120mmキャニスター弾が降り注ぎ、Su-27SM1個小隊が現れる。
どの機体も傷は負っているようだが、大きな損傷は見当たらない。
指揮官だろうか、無線が入る。

「そこの所属不明機、どこの隊だ?」
「援軍ですか?」

彼等はヴェルホヤンスク要塞からの最後の部隊だと言う。
指示された集結地に向かう途中ここを通過していて支援してくれたが、大隊への援軍ではなかった。

「健闘を祈る」

そう言うと、Su-27SM1個小隊はここを離れていく。
大隊長であるメサイア01へソ連軍の動きを報告。
HQからは大隊への何の指示の変更は無く、戦線の維持との事だった。

それから数時間は散らばる補給コンテナを集めては戦線の維持をするが、多勢に無勢である。
回収した補給コンテナから最後の補給を済ませた。

「うぉおおおお!!」
「グリフォン03やめろ!今そいつらを排除する!」

戦車級に取り付かれたA-10の1機が要撃級を巻き込んで自爆する。
すでにどの機体も十分な火線を構築する事が不可能になっていた。
火線を構築するA-10は5機へと減っており、無傷な機体は無かった。
ヴェルホヤンスク要塞が陥落した為だろうかBETAの数は増えるばかりである。

「メサイア01だ!!メサイア隊損害報告!」
「メサイア02です、あなたと戦えて光栄で……」

無線を通して何かがぶつかる音と機械の引きずる音を最後に途切れる。
主機を破壊された1機のF-4Eが突撃級の突進を避けきれずに潰されていた。
特務大隊の中でも精鋭のメサイア隊はこの戦闘初期から前衛を支え、その最後の部下も戦死した。

「また会おう、メサイア02。大隊、損害報告を」
「こちらメビウス01、中隊はメビウス11、12が粘ってくれています!……3機のみ健在!」
「こちらグリフォン01、キマイラ隊は全滅、これ以上は支えられません。無念です」

これ以上は戦線の維持は不可能だった。
司令部からは徹底抗戦の指示され作戦時間はとうに過ぎている。事実上の捨て駒である。
片桐は充分時間は稼いだ、と考えていた。

「これより隊を後方へ下げる。エヴェンスク要塞はすでに放棄され、その後方へ他の隊は集結地にしている。殿として時間は充分に稼いだ」

グリフォン隊を先頭に隊を下げ、メサイア、メビウス隊が殿として遅滞行動を取りここより後方の補給コンテナで推進剤を補給。
その後、一気に集結地へ下がる、とメサイア01の指示が出される。

「メサイア01、グリフォン01です。もう自分と2人しか隊はおりません、A-10乗りは決して仲間を見捨てないんですよ」

殿を勤めます、グリフォン01はそう言うと無線を切った。

グリフォン隊のA-10へ最後の弾薬補給を済ませる。メサイア、メビウス隊の予備弾倉をグリフォン隊へ渡し戦場を後にする。

どの隊員も疲れきり何も言葉にならなかった。
無線からは、どこの国の言葉だろうか、歌が聞こえていた。
いつまでも聞こえると思ったそれも電波が届かなくなり、無線は途切れた。

「グリフォン02、すまないな。こんな男について来てくれて」

すでに、グリフォン02は機体は沈黙していた。
グリフォン01をかばい、接近してきた要撃級と相打ちとなっている。

WS-16C突撃砲の最後の弾倉が空になる。

「来世があって、また会えるなら今度はもっと素直にお前さんに伝えようと思う」

その言葉に誰も答える事はなかった。
要撃級の前腕が振り下ろされ、特務大隊に所属するA-10のグリフォン、キマイラ隊は全滅した。

この日、エヴェンスク要塞で特務大隊は後方で準備されている反抗作戦への時間を稼いだ。
ソ連軍、国連軍同様に時間を稼ぎ、志半ばで散っていった者達のように、英雄としての扱いは無い。
人知れず、戦火の波に飲み込まれていったのだ。
それからも激戦は続き、必死の防衛虚しく人類はシベリアのほぼ全域を失ってしまう。


ソ連東部ゴリヤーク山脈要塞陣地


集結地へと到着した特務大隊は作戦当初は1個大隊あったが、激戦を経て1個小隊へ文字通りすり潰されていた。
どの機体もここまでたどり着く事が出来ない程ではないかと思うほどの損傷であった。
メビウス12、北条の機体は到着後に主機が爆発、主脚が吹き飛んで倒れこんでしまった。
現場は一時騒然となったが消火班が迅速に処理し救出されていた。


ソ連、国連軍合同司令部


メサイア01、片桐は部隊の所在地を確認する為に司令部へと入る。
慌ただしく人が入り乱れていて、ここが司令部になったのもつい先程のようだ。

「エヴェンスク要塞にいた部隊はすべて下がっていたのでは無いのか!?」
「あぁ、全ての隊はここへ下がらせた。しかしな、エヴェンスク要塞へはあなたの言う部隊は存在していないようだが?」

特務大隊の整備班がエヴェンスク要塞で展開していたのだが、放棄が決まりソ連軍が後退する間、特務大隊は下がれなかった。
小型種が防衛戦の穴を縫って浸透し、撤退を行える状況では無くなっていたのだ。
動ける者は固定砲台、野戦砲に応急修理の戦術機をたった少しの適性で機体を動かして戦闘を継続していたと言う。
第一波を退けた後もソ連軍隷下の1個小隊の戦術機が展開し他の部隊の殿を勤めてBETAはそこへと引きずりこむ。
要塞が巨大な囮となっていたのだ。

特務大隊の補給をしようにも、エヴェンスク要塞と共に物資も人員も失われてしまっていた。
隊が後退していると言うのを鵜呑みにするべきではなかった。悔やみきれない。

「メビウス01、いるか」
「はっ、メサイア01のお側に」

メサイア01、片桐中佐は司令部を後にする。
ここへ集結しているのは国連、ソ連両軍の戦術機機甲連隊、特科連隊、航空部隊、かなりの数が集まっていた。
部隊数の確認は今もなお増えている。
そして、極めつけはこの山脈に沿って巨大な要塞群である。
この長い防戦の間、軍はこの場所へ要塞陣地を配置していた。こうなることを予測していたと言うのか。

ここを抜かれてしまえばユーラシア大陸奪回の足場を失ってしまう。
ソ連軍はここシベリア東部へ軍の大多数を配置し、死守するつもりだ。

「それで、メビウス12の様子はどうだ?」
「怪我は特に無いようです。今はメビウス11がついています」

疲労で意識を失っていたようですが、と最後に付け加えた。

「織田と何とか連絡を取れ」
「了解」

片桐がメビウス01と別れてすぐに司令部の方が慌ただしくなっていた。
今は、多くの情報を得ておかなければならない。一度出た司令部へと向かう片桐だった。


格納庫


機体は格納庫へ運んでいたが、整備をしようにも人員も補給物資さえも無く、隅の方へF-4Eの3機が並んでいた。

「メビウス12、身体はなんとも無い?」
「身体は大丈夫です。ここまできて機体を失ってしまうとは……」
「あの損傷でここまで保ったのが奇跡でしょう」

戦力は1個小隊まで落ち込み、さらには貴重な戦力の1機を失ってしまった。
北条は力無く項垂れていた。

自分は搭乗する機体を失ってしまった。
予備機はあるのだろうか。未だに現れない整備班もおかしい、と考えながらも動けなかった。
思ったよりも疲れがあったのだろうか。

「メビウス11も今のうちに休んでいた方がいいですよ?」

座るだけでもだいぶ変わります、と声をかける。
それに従い、隣へと腰掛けるメビウス11。

「ねぇ、どうして衛士になったか聞いても良い?」
「自分ですか?」

そう、とこちらを向かずにメビウス11が質問してきた。

そう言われても困る。元々この世界で育った訳じゃない。
気が付いたら戦術機で戦っていたなんて言えるわけがない。

「これしか無いかなって思ってですかね」
「これしかない?」
「もう、理由なんて覚えてませんよ」

自分はそう笑って誤魔化した。
メビウス11へも同じ様に質問する。なぜ衛士の道を選んだのだろうか、と。

「復讐、かな」

その理由を問おうとしたところへ、片桐中佐が戻ってきた。
メビウス01は戻ってきていない。片桐中佐を追って行ったのだが、行き違いになってしまったのだろうか。

「先程の事だが、ヴェルホヤンスク地区、エヴェンスク地区でハイヴ建設を確認した」

さらに、エヴェンスク要塞陣地で展開していた大隊の後方支援部隊が全滅し隊の整備、補給の目処が立たないと片桐中佐は眈々と話す。
あまりの衝撃で、自分もメビウス11も質問をするのも忘れてしまった。
まさか、整備班までもが全滅だなんて考えられなかった。
普通はもっと早くに下がるのでは無いのか。

「……全滅」

メビウス11はそれ以上は何も言わなかった。
1個小隊分の戦力を残し、大隊が後方支援部隊も含めての損害を出している。

これから自分達はどうなるんだろうか。
ハイヴ建設が始まったという事は、暫くは時間稼ぎが出来るのだろう。
実際日本でもハイヴ建設の間はBETAの侵攻が弱まった。
この間に大隊はどうなってしまうのだろうか。
格納庫に並ぶF-4Eへ視線を移す。

自分の機体が破壊されてしまった。
これ以上戦いを続ける必要は無いのだろうか。

「特務大隊は別命があるまで待機だ」

片桐中佐はそう命令を下し、また司令部へと戻っていった。
メビウス11と2人その場に残されるが、何も話す事が出来ない。
言葉を忘れてしまってしまったように思えた。

お互いに、機体を見上げている。
また、所属する部隊が全滅してしまう事になったら、自分もここで死んでしまうのか。
いやな不安が頭を過ぎる。このままではまた考え込んでしまう、今出来る事をするんじゃなかったのか、北条!
機体の整備が出来るわけじゃない。

「メビウス11!このまま、ここにいても何か出来るわけじゃないと思います!使えるか申請しないと分かりませんが、また自分の訓練に付き合ってくれませんか?」
「なっ!?こんな状況でか?」
「こんな状況だからです!今は出撃しようにも機体もありません。整備だってしなければいけないんですよ」

メビウス11は何か考え込んでいるような素振りを見せるが、すぐにこちらへと向き直る。

「いいだろう、まずはメビウス01に許可を取る!来い、行くぞ」
「了解!」

2人、上官であるメビウス01を探しに駆け出す。
今、自分たちは出来る事と言えば己の技量を磨くことじゃないかと思う。
これが後々、どう結果が出るかはその時になればわかるだろう。
メビウス11の後を追いかける。
これまで生き残ってきたんだ、まだ会わなきゃいけない人もいる。

「遅いぞ、メビウス12!」

メビウス01を先に見つけてくれたようだ。
シミュレーターが使えるか交渉をお願いする。これで使えなければ、また何か出来る事を探せばいいだけだ。

少しずつでも前に進んでいこう、そう思った。



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