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No.22526の一覧
[0] マブラヴオルタネイティヴ『掴み取る未来』[ファントム](2013/02/19 21:25)
[1] 第1話[ファントム](2013/11/03 21:04)
[2] 第2話[ファントム](2011/08/03 13:10)
[3] 第3話[ファントム](2011/08/03 13:11)
[4] 第4話[ファントム](2011/08/03 13:12)
[5] 第5話[ファントム](2011/08/03 13:12)
[6] 第6話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[7] 第7話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[8] 第8話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[9] 第9話[ファントム](2011/08/03 13:14)
[10] 第10話[ファントム](2011/08/03 13:14)
[11] 第11話[ファントム](2011/08/03 13:15)
[12] 第12話[ファントム](2011/08/03 13:15)
[13] 第13話[ファントム](2011/08/03 13:16)
[14] 第14話[ファントム](2011/08/03 13:16)
[15] 第15話[ファントム](2011/08/03 13:17)
[16] 第16話[ファントム](2011/08/03 13:17)
[17] 第17話[ファントム](2011/08/16 12:31)
[18] 第18話[ファントム](2011/08/24 03:07)
[19] 第19話[ファントム](2011/10/14 18:34)
[20] 第20話[ファントム](2011/10/17 05:08)
[21] 第21話[ファントム](2011/10/27 16:01)
[22] 第22話[ファントム](2011/11/05 17:15)
[23] 第23話[ファントム](2011/11/17 04:24)
[24] 第24話[ファントム](2011/12/20 15:17)
[25] 第25話[ファントム](2012/02/20 15:35)
[26] 第26話[ファントム](2012/04/08 23:38)
[27] 第27話[ファントム](2012/04/28 14:27)
[28] 第28話[ファントム](2012/05/25 02:23)
[29] 第29話[ファントム](2012/07/15 11:04)
[30] 第30話[ファントム](2012/08/14 23:56)
[31] 第31話[ファントム](2012/09/18 15:27)
[32] 第32話[ファントム](2012/10/21 11:24)
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[22526] 第23話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:db366f07 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/17 04:24
第23話

気が付けば空は雨雲に覆われ、小雨が降り始めていた。
鉄原ハイヴからのBETA群の移動が確認されてから横浜基地はすぐに防衛基準を最高レベルへと引き上げらている。
帝国軍西部方面隊、国連軍及び大東亜連合軍は予測される上陸地点へと戦力を集結させていた。海上、軌道上からの爆撃はすでに始まっていると言う。
新潟方面を防衛する第12師団、澤田中佐は部隊をよく指揮しており再編成された第41戦術機甲大隊を戦線へと投入、上陸を続けるBETA群の殲滅を図っている。
第14師団もまた、持てる戦力を投入し長野方面へと展開、南下を図ろうとするBETA群をせき止めていた。
そして、ここ国連軍横浜基地では1個戦車大隊及びAH-64を保有するヘリコプター部隊、定員割れはしているものの第2戦術機甲大隊、北条の所属する第8戦術機甲大隊が出撃命令を待っていた。

(これで何度目のチェックだろうか)

待機中ではあるが、手持ち無沙汰でありつい無意識に機体ステータスを呼び出し、北条はコックピットで機体のチェックを行っていた。万全の態勢で挑まなくてはならないのだ。
前線の情報は随時更新され、緊張状態が長く続いている。
ブレイド02、萩村とたった2機のF-4J撃震が北条の所属する第8戦術機甲大隊は1個分隊2機の戦力のみだが、必要であればすぐにでも新潟もしくはどこかBETA群の突破を許してしまった場所へと向かう必要があるだろう。
ふと、自分の事ばかり気にしていた北条は部下である萩村に気を回す余裕が無かった事に気が付いた。
指揮官である自分に許可された各隊員の状態を確認できるのだ。
始めて使用する機能ではあるが、隊を預かる身であり説明は受けており、早速萩村を確認する為に呼び出す。
萩村はかなり緊張しているようだ。実戦形式に近いJIVESを使用した演習をこなしていても、これは本物の実戦なのだ。
無理もないだろう、あの時の自分、この世界で初めて気が付いた時はよく戦う事が出来たなと思い出していた。
そうするしか、戦わねばならない状況だったとしてもだ。側に佐藤中尉がいてくれたお陰もあったのだろうか。
彼女は、自分の事をしっかりと見守っていてくれた。それを自分が今する番である。

「萩村少尉、大丈夫か?」
「はっ、はい! 中尉、問題ありません」
「もう少し肩の力を抜いた方がいいぞ」

はい、と威勢良く返事をする萩村だがそう簡単にはいかないだろう。
表情も心なしか強張っているようである。

「程良い緊張なら自分にとっていいが、過ぎると失敗もあり得るぞ」

脅しすぎたか不安そうな顔をする萩村を見て、自分もそんな顔をしていたのだろうかと思い出して北条は笑った。
それを見た萩村は不思議そうな顔をした。それもそうだろう、出撃するであろうこの緊張状態で自分の上官が笑ったのだ。

「中尉?」
「いや、なんでもないよ。少尉、君は君の出来る事を一つ一つやっていけばいい」
「出来る事、ですか」

そうだと北条は頷いた。お互いを守りながら戦う、それしかまだ自分達にはこの戦場では出来なだろう。

「無理を続ければ、知らないうちに溜めてしまうだろう。だからこそだ」
「私は戦えるでしょうか……」
「君にはF-4J撃震と言う鎧と剣があるんだ。戦えるさ」
「はい!!」

こんな事しか言えないが先程より緊張も解けたのだろうか、萩村の表情も和らいだように見える。
そして今の言葉は、萩村だけではなく自分にも言い聞かせていた。自分もまた緊張しているのだ。
いくら激戦を潜り抜けたと言っても自分だけの実力では無い、あの頃はまだ凄い人達の下にいたのだ。
それで生き残れてきたようなものだった。

「各隊へ通達。帝国海軍第2艦隊がソ連極東方面軍との共同作戦を終え新潟、佐渡海域へと急行中」

ピアティフ中尉が新しく状況が変わったことを報告してくれる。
新潟を映し出す戦域マップは上越、柏崎、新井地区がBETAの上陸を受けてそれを現す赤い光点で埋め尽くされている。
それでもなお、前進を許さないのは防衛線で奮闘する将兵の働きが大きいのだろう。

「日本帝国より、出動要請!各隊は出撃、繰り返す……」

いよいよ、こちらの出番である。思った以上にBETAの上陸が多いようだ。
このまま何も無く出撃する必要もなければいいと思っていたのだが……。

「ブレイド隊了解!」

暖機運転ですでに跳躍ユニット、機体の主機が準備万端とでも言うような唸り声をあげる。
車両部隊も次々と発進して行くのが見える。

「CPよりブレイド隊へ、ブレイド隊は第2大隊指揮下で指示を受けて下さい」
「ブレイド隊、こちら第2大隊ランサー01。第2中隊だ、君達を歓迎する」
「ブレイド隊は指揮下へ入ります。よろしくお願いします」

今はどこも猫の手も借りたいほどだな、と皮肉を言うと通信が切れた。
誘導員に従い、先に大隊長の指揮する第1中隊が滑走路へと進み自分の前を待つ。
12機の撃震が空へと飛び立ち、続いて第2中隊、そして自分の隊の番が回ってくる。
フットペダルをゆっくりと踏み込み、機体を前進させる。


新潟県旧十日町市

太陽が水平線の向こうへと沈んでもなお、BETAの侵攻は止まらない。
戦場に在る光は、人類側が未だに戦っている証拠の様に輝いていた。
機体に打ち付ける雨もまた強くなっているようだ。

「これが戦場……」

初めて人類とBETAとの戦争を直接自分の目で見て、萩村はそう漏らしていた。

「無茶はするなよ、ブレイド02」
「了解です」

戦場の空気と言うのだろうか、それに圧倒されているのだろう。いつもの彼女ではなく口数は減っていた。
車両部隊の足はどうしても遅く、ヘリ隊が車両隊の直援の為に戦術機を保有する第2大隊と共に新潟県旧十日町市へと先行、光線級の確認はされていないが高度によっては佐渡島からのレーザー照射の可能性もある為、低空を匍匐飛行での移動を強いられている。
今作戦では、旧小千谷市に展開する戦車隊を支援する命令が下されていた。
南魚沼市に展開する帝国軍の砲兵隊も旺盛に砲撃を続けていて、かなりの数のBETA群に対して打撃を与えているようだ。
正面からの砲撃では有効打を与えにくい突撃級をしらみつぶしに、第12師団の戦術機部隊が遊撃しているようだ。

「第41大隊が補給に下がるようだ、我々はその穴を埋める」
「ブレイド隊は第3小隊長ランサー04指揮下に入れ」

第3小隊は女性衛士が隊長を勤めているようだ。横浜基地にいた時に見た覚えの無い顔である。
再編されて来たばかりなのだろうか。

「ランサー04です、よろしく」
「ブレイド01、了解」

北条は萩村と2機、第3小隊の所属の撃震4機の後方へ配置につく。
大隊長の遠藤少佐は第1中隊を引き連れ旧小千谷市より西に進んだ地域を確保に向かった。そこを拠点に第41戦術機甲大隊と同じ事を行っていく。
第2中隊は旧小千谷市へ進むBETA群の側面から攻撃し、戦車隊と共同作戦となった。
魚沼丘陵に配置されていた第12師団司令部の指揮下へと一時的に入ったのだ。
新潟に到着して3時間は経っただろうか、その間、部隊は2度の補給と戦闘を継続していた。1度侵攻が緩んだ際にローテーションを組んで小休止を取れた事が幸いだった。

『CPより各隊へ、帝国海軍第2艦隊が所定の位置に到着。佐渡島への砲撃を開始した。現在、佐渡島からのBETA上陸は未だ継続中』
「魚沼指揮所の放棄が決定した。第41戦術機甲大隊が援護に向かう。我々はこの場を確保しBETA群に対して攻撃を続ける」

各隊が了解と返す。それほどまでにBETAの圧力は強まっているようだった。
第2中隊からも損傷を受ける機体が出ているのが現状である。広く、ここ旧小千谷市に展開して対処していた。
戦車級以下小型種さえもここを通したくは無かったがそれも難しく、後方に展開する戦車隊に任せるしかなかった。
萩村もまたよく動いてくれており、ブレイド隊には被害は出ておらずそれが萩村にも、また自分の自信となっていた。
まだ、戦えると誰もが思っていることだろう。第3小隊と連携し戦闘を継続しているところへ最悪な一団が現れた。
稀に要撃級の一群がBETAの群れの中に現れるのだ。高度を制限されているこの場では対処しようにもかなり厳しい状況である。
戦車級もそこにはおり、大きく回避をする必要があった。

「ブレイド02、大丈夫か?」
「問題ありません!」

お互いに背中を併せて死角を補うようにして接地する。先に撃破していた戦車級の死骸に足が取られそうになるが、なんとか踏ん張ってくれた。
すぐにマップを確認すると第3小隊と分断されてしまった。距離はそう遠く無いが、BETAの厚い層に阻まれて合流出来ないでいた。

『ブレイド隊、無事か?』
「こちらブレイド01、僚機とも健在。そちらは?」

こちらは1機喰われたと返答が返ってくる。その機体は動けなくなっているのだろうか、第3小隊の3機が円陣を組む様にその周囲に展開している。
お互いに健在なのは確認できたが、その間も両隊へBETAは攻撃の手を緩めてはくれない。
接近する戦車級に対して、突撃砲の銃口から36mm砲弾を吐き出し続け、異常な加熱が感知されたと警報が鳴り響く。

「くそっ、破片が入り込んだのか」

使えなくなった突撃砲を遺棄し、新たに突撃砲を持ち変え射撃を途切れない様に撃ち続ける。たった2機相手にでもこれだけの数のBETAが群がるのは悪夢としか言いようが無い。
戦車級に気を取られていると、要撃級が至近距離まで迫り2つの腕を駆使してこちらを捕らえようとする。
その個体へブレイド02が多目的追加装甲で殴打、装甲に仕込んだ爆薬が爆発し吹き飛ばす。
お互いに背中を守っている。

『ブレイド隊、合流出来ないか?』

衛士を脱出させたい、とランサー04が続ける。高度を取ればいけなくはないが、光線級の存在が未確認な今の状況では簡単にはいかないだろう。
もし、高度を取った矢先に光線級が現れでもしたらと頭を過る。しかし、このまま分断されていては各個撃破されるだろう。

「ブレイド01了解!突破次第に向かいます。2分、待ってください」
『ランサー04、頼む』

跳躍して要撃級の攻撃を避けたのか、斜め後方に萩村の撃震が着地する。
返り血を浴びたかのように、BETAの破片を滴らせた撃震は一瞬、ゾッとするほどのものである。

「ブレイド02!まだいけるな」
「はっ!着いて行きます!!」

再度マップを確認、かなりBETAによって離されていたようだ。
直接邪魔になる個体だけを潰して進む事を選ぶ。それしかすぐに合流するのは無理だろう。
突破する為には、BETAの隙間を縫う様に短距離噴射跳躍、また主脚を使って進み場合によっては邪魔なBETAを時には着地する為の場所を作って進む。
萩村もまた自分の後ろをしっかりと着いてきており、それが自分を前に意識を集中させるに至る。道を選んで進むために距離を一気に稼ぐ事は出来ない、小刻みに機体を動かし続けている。その分負担がかかり軋む音が響くような気がする。
やっと目の前からBETAが消え、第3小隊の撃震が視界に入った。

『なんて無茶を……』

ランサー09だろう、今の動きを横で見れば無茶のなんでもない。進む為にBETAの群れに割って入っていくのだ。
支援砲撃も無く、2機の持つ突撃砲が最大火力である。その2機の機動を見た第3小隊の衛士は有り得ない動き見たとでも言うような顔をしていた。


「ブレイド隊2機、損傷は軽微。戦闘継続に支障は無し」
『ランサー04了解、良く来てくれた』
「少し、連れがいますがすみません」

自分たち2機を追い、BETAの一団が接近していた。
それを第3小隊とブレイド隊の5機で迎え撃つ。これを撃破するのはそんなに時間がかかる事ではなかった。
一部BETAはそのままこちらへと向かうこと無く進んでいったらしい。
第2小隊の受け持つ地区だ、任せるしかない。

「ランサー04、回収にヘリ隊を送れないんですか?」
『山間部へ展開する機械化歩兵隊の直援に向かっており、時間が掛かるとの事だ』
『このままだと、マズイです。一刻も早く治療をしなければ命に関わります』

このままでは衛士の命が危ない、しかし、戦力を割く必要が出てくる為にランサー04は決めあぐねているようだ。
再度、司令部へと後送の為のヘリの出動要請を出すもののこちらへと向かわせる事が出来ないとの返答が返ってくる。

『こちら第1中隊レイピア01!沿岸部に要塞級上陸』

突如、今まで連絡の無かった第1中隊、大隊長であるレイピア01の無線が入る。
しかも、その無線は最悪な知らせであった。
同時とでも言うタイミングでレーザー照射の危険性が高まった危険区域であると警報が鳴り響く。
第3小隊と展開している地点では地形の関係上、高度を必要以上に取らなければ照射を受けずに済むのが幸いである。

『HQより各隊へ、前回の上陸では要塞級上陸と同時に腹部付近から光線級多数が出現している。警戒を厳にせよ!』

ウインドウが開き、萩村の心拍数が異常を感知した事を示していた。
出撃前に使用して待機状態のままでいたのを忘れており、それが無ければ彼女の事を失念したままだっただろう。

「ブレイド02、この場所はまだ照射を受ける場所じゃない!基本を忘れるなよ」
「はっ、はい!!」

今はまだ周囲に集まるBETAの数は段々と減っているように感じているのだが……。

『ブレイド隊、君の分隊にランサー12を後送してもらえないか?』
「し、しかし、2機も減れば作戦に支障が……」
『ランサー12は、僚機のランサー08に任せるつもりだったがBETAの中を突き進む必要がある。たった1機では突破も難しい』

しかし、君たち2人のあの機動を見たら任せたくなったと彼女は言った。
周囲には離れてはいるが第1、第3小隊も戦っているから数は心配ないと笑う。

『我々の任務は、旧小千谷市の戦車連隊の支援任務だ。連携の取れる第3小隊で行く方が確実だろう』
『すみませんが、彼女をよろしくお願いします』

了解、そうランサー04へ返す。萩村へ衛士を救出するように指示を出し、その間は被弾機を囲む円陣をさらに小さくし、お互いの死角を減らし接近するBETAを寄せ付けない。
コックピットから引きずり出される衛士は女性のようで、ぐったりと動かない。

「これが最後の弾倉だ」

ランサー04から36mm砲弾の弾倉を受け取る。
機体もこのままに捨て置けるわけも無く引きずって行きたいが、状況がそれを許さない。

「こちらブレイド02、衛士の救出しました!いつでも動けます!」
『よろしく頼む。後送を完了したら、HQの指示に従ってくれ』

被弾機から残された弾倉、装備を剥ぎ取り第3小隊の3機で分けていく。

「また後で会おう。第3小隊、続けぇぇ!!」

短距離噴射跳躍で接近するBETA群へと突撃していく後姿を見送る。

浸透するBETAの数が減ってきたのか、たまたまこの場所が移動経路に当たらないのか数が減ってきている。
移動するなら今のうちだろう。

「ブレイド02、衛士の様子は?」
「詳しくは分かりませんが、腹部からの出血が酷いです」

萩村は彼女をハーネスを使って身体を固定しましたと言う。
只でさえ負傷している衛士を乗せて戦闘機動を取れば、負担は大きくなるだろう。
なんとか戦闘する回数も減らしたいものだが……。

「HQ、こちらブレイド01。負傷者を後送する。どこか回収出来る地点は無いか?」

ちょっと待て、とオペレーターの返答が有りしばし無音が続く。

『こちらCP、野戦病院も移動を余儀なくされた。南魚沼陣地ならまだ抑えている。そこにヘリを送る』
「了解。ブレイド02、移動する。……どうした?」

返事の無い萩村に不安を覚えカメラを向ける。理由はすぐに分かった。幾つもの光が空へと放たれいる。この光景だけは見慣れるものではない。
あれだけで幾つの砲弾が落とされたか考えたくも無くなる。今まで以上に沿岸部を浸透突破するBETAの数が増えるのだ。

「上陸してないわけないな。行くぞ、ブレイド02!」
「りっ、了解!」

それからは、ランサー12の容態を気にしながら進む道のりであった。
先程、第3小隊と合流した時のようなかなり無茶な機動をして進むわけには行かない。
停まっては進み、進んでは停まりの繰り返しである。
また、ランサー12だけではない。それを身体で支えている萩村の体力の消耗も激しいはずである。

「この弾倉で最後だ!」

突撃砲の弾薬が切れたと警報が鳴り響く。弾の切れた突撃砲はこれで2つ。残るは最後の弾倉へと変えたこの1つである。
萩村の機体に接近する要撃級に反応が遅れてしまった。背後に迫った要撃級に萩村も気付いていないのだ。

「萩村!!」

自分の反応よりも早く、別方向からの砲撃によって事なきを得た。
砲弾の放たれた方へカメラを向ける。1両の帝国陸軍の90式戦車の姿が見えた。
何とか、合流地点である旧南魚沼市へと到着していたのだった。

「よく連れ戻したよ、ありがとう!」

もう大丈夫だと、そうランサー12を安心させるように担架へ乗せ衛生兵が語りかけている。
UH-60ブラックホークが何時でも飛び立てると言う様に待機していて、彼女を含めた負傷者を乗せると飛び立って行く。
レーザー照射を受けない事を祈るばかりだ。
弾薬と推進剤が心許ないのを報告していたおかげで、補給車も到着し待っていてくれた。萩村と共に補給へと向かう。

「CPへ、こちらブレイド01。無事に送り届けた」

CPから待てと返答が返ってくると同時に、展開していた90式戦車の砲が旺盛に火を噴く。

『突撃級を前衛に中隊規模のBETA群の突破を許してしまった』
「了解、現在地で戦車隊と協力し撃破します」

数は先の戦闘と比べれば対した程ではない。こちらには戦車隊に歩兵隊がこちらにはいるのだ。

「萩村、すまんが仕事だ。いけるな」
「はいっ、補給も完了しました」

操縦幹を握る手には力が入り、フットペダルを踏み込んでいく。戦う為の意思を宿した巨大な鎧であり剣でもある撃震が動き出した時だった。


『国連軍機へ告ぐ、動くなよ!』
『フォックス3、フォックス3!』

突如として南から幾つもの尾を引いてミサイルが飛んでいく。低空で飛来したそれらミサイル群は大小幾つもの爆発を起こし、BETAを火の海へと沈めていった。

『待たせたな、よく今まで持ちこたえていた。ここからは我々に任せてもらおう!』

光線級のレーザー照射を避けて高度を下げていた為に、レーダーに映らなかったのだ。
1つ、2つと友軍を示す光点が増えていく。そのマーカーには見慣れない文字。

「USMC!?米軍じゃないか!」

一体、何機の戦術機がいるんだろうか。自分と萩村の周りに次々と着地していく。
この機体は、確かF-18E/F『スーパーホーネット』と言う機体のはずだ。

『アメリカ合衆国第7艦隊所属第366戦術機甲隊ブラックスパローだ』

ここは確保する、君たちは今は休んでおくんだと言うと1個中隊をこの場に残すと言い次々と前線へと飛び立っていく。
帝国軍の方もまた困惑しているのだろうか、無線が慌しくなっている。

「なぜ、ここにあなた方が……」
『日本帝国から正式な要請です、それがなくても我々はこの場へと駆けつけていたでしょう』

小隊長を名乗った衛士は、今は少しですが休んでください。これから働いてもらいますと告げると小隊を率いて離れていった。

「中尉、なんで今更彼らが日本へ」

怒りを隠せないのか、萩村の声は震えている。
心拍数も多少乱れているようだ。

「落ち着いてくれ、ブレイド02。彼らは今目の前でこの国の為に戦ってくれているんだ。目の前の事を信じないでどうする」

彼らの言う通りに休んでおけと言う。
納得は出来ないのだろうか、了解と応答があって無線は切れた。
このままBETAを撃退する事が出来るなら、いいのだが。そう考えていた。



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