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No.22526の一覧
[0] マブラヴオルタネイティヴ『掴み取る未来』[ファントム](2013/02/19 21:25)
[1] 第1話[ファントム](2013/11/03 21:04)
[2] 第2話[ファントム](2011/08/03 13:10)
[3] 第3話[ファントム](2011/08/03 13:11)
[4] 第4話[ファントム](2011/08/03 13:12)
[5] 第5話[ファントム](2011/08/03 13:12)
[6] 第6話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[7] 第7話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[8] 第8話[ファントム](2011/08/03 13:13)
[9] 第9話[ファントム](2011/08/03 13:14)
[10] 第10話[ファントム](2011/08/03 13:14)
[11] 第11話[ファントム](2011/08/03 13:15)
[12] 第12話[ファントム](2011/08/03 13:15)
[13] 第13話[ファントム](2011/08/03 13:16)
[14] 第14話[ファントム](2011/08/03 13:16)
[15] 第15話[ファントム](2011/08/03 13:17)
[16] 第16話[ファントム](2011/08/03 13:17)
[17] 第17話[ファントム](2011/08/16 12:31)
[18] 第18話[ファントム](2011/08/24 03:07)
[19] 第19話[ファントム](2011/10/14 18:34)
[20] 第20話[ファントム](2011/10/17 05:08)
[21] 第21話[ファントム](2011/10/27 16:01)
[22] 第22話[ファントム](2011/11/05 17:15)
[23] 第23話[ファントム](2011/11/17 04:24)
[24] 第24話[ファントム](2011/12/20 15:17)
[25] 第25話[ファントム](2012/02/20 15:35)
[26] 第26話[ファントム](2012/04/08 23:38)
[27] 第27話[ファントム](2012/04/28 14:27)
[28] 第28話[ファントム](2012/05/25 02:23)
[29] 第29話[ファントム](2012/07/15 11:04)
[30] 第30話[ファントム](2012/08/14 23:56)
[31] 第31話[ファントム](2012/09/18 15:27)
[32] 第32話[ファントム](2012/10/21 11:24)
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[22526] 第21話
Name: ファントム◆cd09d37e ID:db366f07 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/27 16:01
北条直人と萩村咲良が横浜基地へ着任した翌日、香月副司令からの指令で2人は朝からピアティフ中尉に招集され格納庫へと来ていた。

「新しい強化装備は、なんだか落ち着きません」

萩村の着るのは99式衛士強化装備が支給されていた。帝国陸軍では、部隊によってはまだ旧式の強化装備を装備している。
萩村に支給されていたのも、その旧式であったのだった。
早く身体に馴染ませたいのか、膝屈伸したり手を握っては開くといった行動をしている。
北条は自分の機体、塗料の匂いがまだ残る国連軍で統一された青いF-4J撃震を見上げる。
北条は機体を前にすると随分と自分の気持ちが落ち着くのが分かった。

今日の実機を使用した演習の目的は、XM3の開発の初期段階である姿勢制御、機体の制御及び実戦機動をレコーダーへ蓄積する事である。
その蓄積された動作シーケンスと予備動作を任意に操縦する衛士が任意に選択し、行動に移せるOSがXM3という物らしい。

「それでは、機体へ搭乗して下さい」

通信ウインドウが開き、ピアティフ中尉が現れる。
管制室からCPを今日から受け持ってくれる事になったのだ。
萩村へと視線を向けると彼女も同じ様にこちらを見ていた。
視線が合うとお互いどちらからでもなく頷くと、自分の機体へと乗り込む。

「ブレイド02、問題無し」

機体へ搭乗し、すぐに機体のシステムを確認する。
一度は確認を終えてはいるが、出撃前の最終チェックは欠かせない。

「ブレイド01了解。CPへ、ブレイド隊、オールグリーン。いつでもどうぞ」
「CP了解、第3演習場へ」

北条は、了解と短く返す。運搬車によって運ばれた装備を機体へ積載していく。
北条のブレイド01は、国連軍の強襲掃討の装備を選択している。
萩村、ブレイド02は突撃前衛で87式突撃砲を2門、多目的追加装甲、近接戦闘長刀を1本を積載しいた。
地上誘導員の指示に従い、格納庫の外へ誘導される。
跳躍ユニットに火が入り、主機の駆動音が耳に心地いい。

「CPよりブレイド隊、進路クリアです」
「了解。ブレイド隊、出撃するぞ」

演習場に入った直後で状況開始になりますと、ピアティフ中尉の指示が入る。
了解、と短く北条は返答を返す。ブレイド01を先頭に2機の撃震が空へと舞い上がる。

98年から99年にかけてBETAの侵攻を受けた日本、横浜基地より以西は廃墟と化している。
米軍の開発したG弾の影響もあって、ここに住んでいた人たちはどのような影響があるのかも判明していない為に、一度目はBETAによって……。
そして、同じ人類によって奪われてしまう形になっていた。
その廃墟の上空を2機の撃震が進んでいた。

指定された開始地点まで1kmを切った頃、ピアティフ中尉の姿が画面へと現れる。

「これより、演習が開始されます。市街地に侵攻したBETA群の殲滅が今作戦の目標です」

光線級の存在が確認されており、AL弾により発生した重金属雲によって通信障害は発生している。
ブレイド隊の展開する正面には光線級は確認されていないが、出現する可能性に十分注意する必要がある。
光線級出現と同時に、最優先事項は光線級排除に変更される。
そうピアティフ中尉は説明を続ける。実戦を想定している為か、新しく情報が入ったと言う想定で直前まで演習内容は伏せられており、このような説明になっていた。

「ブレイド01了解」
「ブレイド02、了解」

目の前に広がるのは廃墟と化した横浜の市街地であるが、演習場に機体が侵入するとその景色も変わる。
JIVESを使用した演習は、そこにはいないものを出現させた。

「BETA群を確認!」
(すでに、相当数のBETAが侵入しているのか……)
「いいな、ブレイド02。光線級も確認されているぞ、高度を取りすぎるなよ」
「了解!!」

2機の着地地点を確保する為に北条の持つ87式突撃砲2丁から120mmキャニスター弾が放たれる。
交差点に溢れる戦車級の赤い海にスペースが広がり、ブレイド01の撃震が跳躍ユニットの逆噴射をかけて着地する。

「ブレイド02、足元はすべるぞ、気をつけろ」

市街地に侵入した戦車級が新たな獲物を見つたとでも言うように、北条の機体へと殺到する。前方から迫る戦車級に向けて87式突撃砲から36mm砲弾を浴びせていく。
後方に迫っていた戦車級は相手にする必要は無かった。北条の後方に着地した萩村機が処理している。
北条は全周囲レーダーを呼び出し確認する。重金属雲下で行動している為に、2機で得ることの出来る情報でしか現状を把握する事は出来ない。
2機の周りには赤い海のように真っ赤に染められており、孤立した状況のようになっている。
CPも2度呼び出してみるが、反応は無かった。まずは、優先事項であるBETAの排除することに専念することにする。
何度かBETAの一団と遭遇しては、それとの戦闘を繰り返す。それの幾度目かを終えた頃には弾薬、推進剤も心元なくなってきている。

「ブレイド02、そちらは大丈夫か?」
「機体は問題ありませんが……」
「確かに……。持ってきている弾薬も無限じゃないな。まずは、補給コンテナの位置を確認する必要がある」

いくつか広域マップを呼び出すと確認する事が出来た。
突如と現れた今にも飛び掛りそうな戦車級の一団へ再度120mmキャニスター弾を放つ。

「移動する、ポイント203に補給コンテナがある」
「了解、前へ出ます」

2機の立ち位置が前衛に萩村、後衛に北条となり高度が制限された廃墟郡を進む。
直線距離にすれば、一気に跳躍ユニットで移動することが出来たが光線級がいなければである。
短距離噴射跳躍である程度の距離も稼げるが、どうしても主脚に頼った移動も必要になってしまうのだ、必要以上にBEATとの戦闘もやむを得なくなっている。
戦車級の一団が両脇へと別れると、その向こうから道路を塞ぐように突撃級の姿が現れる。

(こっち側は避ける場所は無い……、どうする)
「突撃級確認!」
「わかっている!ブレイド02は後方警戒!」

了解、と立ち位置を変える。120mmキャニスター弾の残弾を確認すると、残り4発。弾薬の消費率も心なしか多くなっていたようだ。ここに来るまでに、あまりの戦車級の数に使いすぎていたようだ。
この判断が上手くいかなければここまできた位置を下げなければいけない。
こちらへと迫る突撃級の脚部へと狙いを付ける。北条の機体の後方にも迫る戦車級を萩村がせき止めている状態だ。

「ブレイド02、合図と同時に着いてこれるか」
「ブレイド02了解、やってみせます!」

1発、2発、3発、4発、残る120mmキャニスター弾を全て放つ。
狙いを付けた突撃級はなおもこちらへ向け前進するのをやめない。

(ダメか……)

北条が、後退すると萩村へ伝えようと口を開こうとした時である。
先頭を進む突撃級の一体が横へと進路を逸らしたのだ。脚部を損傷する事に成功したのだろう、その為に前進することが出来なくなったのだ。
併走していた突撃級を巻き込んで、横に立つビルへと激突し止まっていた。後続の突撃級の数が多かったらこれの意味も薄れてしまっていたが、戦車級のみが続いていた事が幸いだった。

「ブレイド02行くぞ!!」

北条の撃震が開いたスペースを短距離噴射跳躍で進み、その後を萩村機が続く。
右腕に装備する突撃砲に異常が発生したとエラーメッセージが出る。
至近距離から戦車級に36mm砲弾を射撃した際に、戦車級の破片でも取り込んでしまったのだろうか。
右から飛び掛ってきた戦車級に87式突撃砲をぶつけて潰す。

「こちらブレイド02、残弾0です」

了解、と短く返す。ビルを崩して左から要撃級が現れると、萩村が多目的装甲で殴打するのが見えた。
すでに彼女も突撃砲は弾薬が切れ、近接戦闘長刀へと持ち替えていた。
北条も弾薬の切れた突撃砲を遺棄し、短刀へと持ち変えると邪魔をする戦車級を切り捨てる。
萩村の機体と背中合わせになる。

「このままでは埒が明かない、このまま補給コンテナへ行くぞ」
「ブレイド02了解」

新たに接近した要撃級に多目的装甲をぶつけると、その爆発でそれすらも使い物にならなくなった。
近接戦闘長刀をまた戦車級を切り伏せる。続々と戦車級も現れ始めた。

「こちらブレイド01、CPへ。光線級は確認は取れたのか?」

無線機からは何の返答も無いままである。高度を取った瞬間に撃ち落とされるのか、それとも上手く距離を稼ぐ事が出来るのか。
ここは、もう一度賭けに出るしかないだろう、このままではすり潰されてしまう。

「一気に補給コンテナまで行くぞ」
「!?高度を取れば光線級に……」
「やるしかない、行くぞ」

残る推進剤ならば、補給コンテナへたどり着けるだろう。跳躍ユニットに火がともる。
2機の撃震が空へと上がると、警戒していたレーザー照射警報も静かなままである。

「あら、あのままあそこでやられるだけだと思ったのだけれど」

管制室には戦域管制としてCPを担当するピアティフの他に計画に携わる技術部から数名がおり、レコーダーから送られてくる情報を整理していた。
そして、2機の動きを見つめる香月夕呼と国連軍の制服の胸元にウイングマークを付けた女性が佇んでいた。

「結構、BETAの出現率もあげているんでしょう」
「はい、通常なら一個中隊の演習で使用される数を展開しています」
「それなら、あの2人はかなりの実力を持っているのかしら。その辺り、どう思う?」

一方後ろへと下がって立つこの女性は衛士である。ここにいる誰よりもその実力を図り知る事が出来るだろうと考えてつれて来ていた。

「いえ、正直、この2人の動きは悪くはありませんが……」

彼女の説明を受けて、納得した。
まず、この演習の目的は『市街地に侵入したBETAの排除』なのである。
しかし、この2機の連携は目の前にいる邪魔になるBETAだけを排除し移動していた。
プログラム上ではBETAの一団と戦闘を続け、その後また2機の元へ付近のBETAの増援が現れるように組んである。
その為に移動した場所にはまだBETAが残ったまま、なのである。もちろん、彼らの前にはそれが現れてはいない。
目的としてはまだいるであろうBETAを警戒し殲滅する事は達成はしてないとも考えられる。
たった2機、CPとも連絡はつかず孤立無援の状況であそこまで動けるのは素晴らしいと褒めるべきなのだろう。

「ふぅん、確かに。撃ち漏らしているってこと?動きは悪くないんでしょう?」
「褒められる事ではありません。これは演習ですが彼らの撃ち漏らしたBETAによって別の部隊に被害が出る可能性も否定できません」

状況は刻一刻一刻と推移するのだ。可能性の一つではあるが、その万が一の可能性が残っているのなら彼らの働きは手放しで賞賛する事は出来ない。
夕呼は少しながら感心していたのも事実である、戦力比なんて考えたら2機がここまで生き残っているのもすごいのだろう。

「彼らのレーダーには周囲は全てBETAを現す光点で赤く塗りつぶされているでしょうね」
「それは理由にはなりません。同じような戦場はどこにでも当たり前のようにあるのです」

2人の会話も状況を報告するピアティフの声で中断する事になる。

「ブレイド01へのレーザー照射を確認……、ブレイド01被弾しました」

先程、高度を取り廃墟群をギリギリ飛び越えて補給コンテナへ進む2機を、そう簡単には辿り着かせる必要はないのだ。
夕呼は、それをピアティフに伝えており光線級を予定より早く出現、配置させていた。

「北条は死んだの?」
「い、いえ……。自律回避によって跳躍ユニットと主脚がダメージを負ったようです」
「なかなかしぶといわねぇ。あなたなら、アレくらい避けれるわよね」
「私でも無理です」
「失言だったかしら」

いえ、とそう首を横に振る彼女の名前は、ここ横浜基地に建設された訓練校の教導官である神宮司まりもと言う。
衛士訓練学校創設にあたり、香月夕呼に招かれて帝国軍より赴任していた。
帝国陸軍では階級は大尉であり最前線で戦う姿を見た衛士は狂犬のようだという噂もあったほどの実力の持ち主である。


「くぅぅう!!」

機体の墜落した時の衝撃が伝わる。
水平飛行に移ってから、数秒後にレーザー照射が始まった。
やはり、簡単にはいかないようである。
機体の自律回避モードが間に合ったのだろうか、機体にかかるGを身体に感じたと思ったらビルへと激突し止まっていた。
機体情報を呼び出すと、跳躍ユニットが破壊され主脚が壊されていた。

(よくもまぁ、コックピットを吹き飛ばされなかったものだ)
「北条中尉!!っ……ブレイド01、無事ですか」

北条の機体の傍に萩村の撃震が着地する。彼女の機体はレーザー照射を受ける直前に上手くビル群と光線級の対角線上に入った為に撃墜は免れていたようだ。

「問題ない、とは言えないな」
「主脚も吹き飛ばされているようです、これじゃあ……」
「ブレイド02、君の機体はまだ無事だろう?このままコンテナへと向かえ」

CPとの回線が回復したのだろうか、ピアティフ中尉の顔が現れる。

「お疲れ様です、状況終了です。ハンガーへ戻ってください」

ダメージを負い、真っ赤に染まった機体ステータスが異常を無い事を告げる。
JIVESによって、ダメージを受けたように判断されていたのが状況終了と共に回復したのだ。

「演習目的は達成していませんが?」
「機体に著しい損傷が出た為に、これ以上は必要ないと判断されました。補給後、120分の休憩を取ってください」

機体を滑走路へと着地させると、地上誘導員の指示に従って格納庫の中へと機体を進ませる。
機体のチェックを済ませ、書類を整備員に渡すと萩村もまた機体から降りるところだった。

「少尉、お疲れ様」
「北条中尉!お疲れ様です!!」

この後、ブリーフィングルームでこの演習の反省を行わなくてはならない。
特に、自分の判断で撃墜されてしまったがこれでは意味が無いのだ。

「お疲れ様でした、中尉」
「ピアティフ中尉、あれでは良い記録は取れていないですよね」
「午後にも再度ありますので、それまではしっかり休養を取っていただきます」

わかりました、と北条は頷く。午後はまた別の演習が待っているという事だろう。
今のうちに説明を受けておきたいとピアティフ中尉へ伝えるが、今回の演習のようにその時までは伏せられると言う。
実戦形式と言うのは変わらないのだろうか。北条は視線を整備班に向けると、整備員の動きは慌しく動き機体のチャックも入念に行われているようである。

「了解しました、ではピアティフ中尉、失礼します」
「はい、それではまた後ほど……」

ピアティフ中尉に敬礼し少尉に行くぞ、と先に歩き出す。
その姿を離れた場所から見ている香月、神宮司2人の姿があった。

「午後までに機体の準備は済ませておくから、お願いするわね」
「はっ、了解しました」


北条と萩村がPXへ入ると、昼の時間帯であるため人で溢れていた。

「これ、席は空いているのか?」
「中尉は座っていてください。私がご用意しますから」

そうは言ってもなと席を見渡すと、ちょうど2席空いている空いている席が見つかった。
相席になるのは別に構わないだろう。

「それじゃあ、あそこが空いているみたいだから先に行っている。適当に選んでくれていいから」
「はい、わかりました。それでは、お持ちしますね」

食事を2人で済ませると、早速だがこれからの演習に向けての作戦会議である。
午後の演習は、まずどうなるかも知らされていないのだ。

「午後はシミュレーターを使うのでしょうか?」
「いや、整備員はかなり慌しく準備していたようだから、午後も実機を使うだろう」
「それじゃあ、今度もBETAを想定した訓練でしょうか」

対人戦闘もあり得なくはないだろうと告げる。
どんな訓練内容でも万全の態勢で挑むだけである。

休憩を終えると、早速機体に搭乗し演習場の指定された場所へと到着する。
装備は午前の演習で使用した装備とまったく同じ装備だ。

「今回の演習内容は、対人戦闘を想定した演習です」
「仮想敵は、どこの部隊ですか?」

それについては、事前に説明はありませんと言う。
敵については数及び装備、機体は不明。
BETA支配地域からのレーザー照射の可能性があると想定し、飛行高度は制限。
リーダー機撃墜を以って演習は終了となる。

「CPは今回は機能していません。戦域データリンクは僚機のみに限定されます」
「ブレイド01了解」

ブレイド02了解と続く。
北条は、この横浜基地に特務大隊として来ていた頃を思い出していた。

(敵の規模も装備も不明……。そう言えば横浜基地では一度、あの部隊ともさせてもらったんだよな)

あの頃は自分が一番下っ端であり、みんながいたんだ。
撃墜されたのも自分だけだったな、と思い出して笑っていたようだ。
萩村に指摘されて気がついた。訓練の最中にすまないな、と返答する。
そうか、思い出して笑ってしまう思い出になっているんだな、と実感していた。今頃どうしているのだろうか。
頭を振って今に集中する。

「何か質問はありますか?」
「いえ、問題ありません」

機体を前進させる。北条と萩村の機体のフォーメーションは午前と変更し前衛を萩村、後衛を北条に戻していた。

「どう?機体の調子は?」
「何の問題もありません、副司令」
「あっちのリーダーなんて、不適に笑っちゃってるわよ、余裕なのかしらね」
「私は自分のすべき事をするだけです」

ピアティフの状況開始の合図で、CPとの通信が切れる。

「さて、今度は朝のデータより良いものが取れたらいいんだけれど」

ガッカリさせないでよ、と呟く夕呼であった。

廃墟を進む2機の撃震は、北条と萩村の機体である。
お互いの死角をカバーしながら全周囲を警戒し進んでいた。主脚を利用して進む。跳躍ユニットを使用すれば相手のセンサーに捕捉されてしまう可能性が大きくなってしまう。
高度も制限されているのだ、無理に動く必要もないだろうと踏んでだった。

「ブレイド02、どうだ?」
「いえ、こちらの方にも何の反応もありません」

待ってください、と続ける萩村は、機体の前面にセンサーでの警戒を向けていた為、一瞬だが熱源を感知していた。
お互いに言うわけでもなく遮蔽物へと身を隠す。この段階で相手の情報を得られれば数で負けていたとしても一矢報いる事は出来る。
正面にはT字路になっており、そこへ現れれば先手を打てると北条は考えていた。
萩村に、そちらの警戒は任せ北条自身は後方の警戒を忘れてはいなかったのだが……。

「!見つけました、機体はF-4J撃震ですっ!?」

目の前に現れた撃震は、突撃前衛の装備のようだ。萩村の87式突撃砲から36mm砲弾が相手に向かって放たれるが、敵機の軌跡を追うだけで当たらないようだ。
前に出ます、と萩村が進む。その間に北条は全周囲へセンサーへ向けるが、反応は目の前に現れた一機だけである。

(囮の可能性は高い、まさかあの一機だけではないよな)
「ブレイド02、熱くなりすぎるなよ」

了解と短く返すと、短距離噴射跳躍で相手の撃震へと迫る。
北条自身もロックするのだが、射撃へと移る頃には相手の方が動き射線をずらされていた。

萩村もまた相手の衛士はかなりの実力者だと考えていた。そし、あんな風に撃震が動けるなんて驚かされていた。
北条中尉の操縦技術も驚いた事があったのだが、それすらも凌駕している。

(遊ばれている!?)

段々と自分の機体が着いていくのに精一杯になっている事に気がつかず、焦りが出ていた。
気がつけば、北条中尉が前へ出ているのである。しかし、彼の射撃も上手く避けられているようだ。

「これならぁぁぁ!!」

多目的追加装甲を遺棄、空いた左腕に近接戦闘長刀を装備すると萩村は撃震へと一気に跳躍し距離を狭める。

北条は視覚の隅に映った萩村の機体を追った。距離を取られている相手にあんな風に動く萩村は見たことは無い。
相手の焦らす動きに惑わされてしまったのだろう。射線を定めさせないように、北条は敵機へと射撃を止めない。
相手の機体はこれで下がると考えていた北条は驚かされた。この敵機の衛士は逃げるではなく、前へ出る事を選んでいた。
北条の放った砲弾は多目的追加装甲で弾かれ有効打にはなっていないようだ。

「最初っから撃たれるのを覚悟して動くのか?!」

目の前で二機の撃震がぶつかり合う。甲高い金属のぶつかり合う音が響き、萩村の長刀はそのまま構えていた多目的追加装甲によって防がれている。
この位置からは射線が取れない、万が一このまま撃てば萩村機も被弾する。

「ブレイド02!離れろ!!」
「り、了解っ」

後方へと跳躍する萩村の機体をそのまま追随するように敵機も続く。
萩村の立ち位置さえも操っているかのように動く相手の機体に北条も困惑していた。
射線が取れたと思えば、萩村の機体がそこへ割り込むように動くのだ。

(こっちの動きが読まれているのだろうか)

焦りは禁物であるが、自分が何も出来ないもどかしさに汗が額を伝う。
通信には萩村の荒い息が聞こえてきた。いつ撃墜されてもおかしくない状況である。
そのプレッシャーがずっと抱えているのだ。
北条も自分の機体を割り込ませようとするのだが、その動きを牽制するかの様に敵機の撃震から36mm砲弾が放たれる。
まるで、邪魔をするなと言う様な動きである。

「くそっ!」

管制室では、送られてくるデータに香月は多少は満足していた。午前中の演習では、BETAとの乱戦で実戦機動をさせてはいたがあまりいいデータを取れなかった。
演習が始まる前に、彼女には簡単には落とさないでほしいとも伝えてある。
しかし、彼女はなぜ二番機へと執拗に接近しているのだろうか。
今も、萩村の撃震から長刀を振るっているのだ。それが直撃すれば、撃墜判定を受けてしまう。
この演習は彼女に全て任せているのだ、必要だからしていることなのだろう。

「ブレイド02、胴体部へ被弾。撃墜」
「あら、今までは上手く避けていたのにね」

残念ね、と残念な顔一切しない夕呼であった。
一方、北条は目の前で萩村機が撃墜されるのを見ているだけしか出来なかった。
射線を取ろうにも、こちらの動きは読まれてしまう。そしてついに萩村は操作を誤ってしまったのだろうか、それとも相手の衛士が本気を出したのかは分からないが後方に回り込まれてしまう。
それを慌てて追った萩村の撃震は転倒を防ごうと一瞬硬直してしまった。その隙を狙われたのだろう。

(強い……)

こちらの射撃は上手くかわされ、装甲で逸らされている。
ただでやられるわけにはいかない。

2機の撃震はお互いに有効打が出ずに弾薬を消耗していくだけであった。
近接戦闘長刀は北条も一つ持っているが、それを使うタイミングが計れないでいた。
そして、先に残弾が切れたのは北条だった。
やるしかない、そう考えた北条は突撃砲を遺棄し残った近接戦闘長刀へと持ち変える。
こちらの意図を汲んだのか、長刀へと相手も持ち換える。お互い、一本の刀に賭ける事にしたのだ。
二機の撃震が対峙する、どちらも動きは無く向かい合っている。
タイミングを見計らっているが、どう切り込んでも自分の方が撃墜されるイメージしか沸いて来なかった。
北条の機体が先に動き出した。水平噴射跳躍で切りかかれば先手を取った自分に有利だと判断していた。
二機の長刀が振られるその時だった。

「状況終了、状況終了!」

無線にピアティフ中尉の声が響く。二機の撃震はお互いの機体に長刀が直撃する寸前にお互いに横へと跳躍をかけていた。
その無線と同時に、基地内から警報が鳴り響く。

「新潟へBETAの一団の上陸を確認しました。数は測定中のため不明。基地要員は第……」

その後のことは耳には入ってこなかった。再起動した萩村の機体と三機連なって格納庫へと戻る。
基地の機甲大隊へも出撃要請がかかる可能性があった。



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