「出遅れてしまったぞ、増速急げ!第11任務部隊が本格的に敵と接触する前に追い越すのだ!"騎士"は今回、なんとしても捕獲、もしくは撃墜せよ!」
ソーラ・システム右翼側ミラーの展開を担当していた第9艦隊、バスク・オム大佐率いる部隊は照射が始まるや否や部隊の再編成を実施すると15分間続いた照射が終わると同時に前進を開始した。前面に送り込まれた第32戦闘中隊から"ア・バオア・クーの騎士"が確認されたという報告が彼の動きの原因となっている。
一年戦争最後の瞬間、ア・バオア・クー攻略戦で新型ガンダム3機を投入し、"騎士"を逃したことはバスクの戦術指揮に対するジャミトフに拭い難い不信感を産んだ。彼がバスクに代わる実戦指揮官を求めるようになったのもそれからであるし、ジャミトフ陣営に入ったばかりのトレーズにジャミトフがあそこまで肩入れする理由も、バスクが実は実戦では力押しの指揮しか出来ない可能性を危惧したからだ。
勿論、力押しによる指揮が悪いとはいえない。敵よりも優勢な戦力をそろえた段階では指揮官の勇猛さは兵士の士気を維持するための重要な要因の一つとなりうる。バスクは一年戦争中、その勇猛さでともすればジオンに押されがちだった部隊の士気を立て直し、武勲を挙げていた。しかし、其処にも限界がある。敗勢から立ち直り、軍隊としての体裁を整えなおした連邦軍から見れば、作戦には綿密なスケジュール調整が必要であり、バスクのよく言えば臨機応変、悪く言えばその場の状況次第という作戦指揮のあり方は危険そのものだった。
しかし、軍としての良識を何とか一年戦争以来保っている連邦軍に居場所がなくなっても、軍としての体裁を何とか整えて組織を発足させたいティターンズにはバスクは必要な人材だった。バスクの勇猛果敢さは、何よりも戦場を知らない人間に軍の強さを見せ付ける広告塔としての役割があったからだ。
だからこそジャミトフもバスクを完全に斬り捨てられないし、ティターンズのスポンサーたちも頭の良い、どこか柔弱そうな指揮官よりは、見た目とその勇猛さで軍人らしいと感じられるバスクは外せない鍵となった。一年戦争以来、地球に攻撃を加え続けてきたジオンに対する反感は根強く、ともすれば人道や戦時条約に違反した、しかし一般大衆の面からすれば当然の復讐行為をやってのけるバスクは強硬派世論の後押しを受けているティターンズにとっては重要な存在だった。
「第一軌道艦隊司令部より入電!こちらの命令違反を問い詰める内容です!」
「ミノフスキー粒子が濃く通信内容が判然としないと伝えろ!ジャマイカン、あいつらは乗せてあるのだろうな!?」
現在は第9艦隊旗艦"モスクワ"艦長となっているジャマイカン少佐はそんなバスクを冷ややかに見つめていた。一年戦争時代には助けであったその勇猛さも、ジャミトフが対抗馬としてトレーズを持ち出してからは粗暴さが目立つようになってきている。自分の進退を考えた場合、このままバスクに付き合っていて果たしてよいものか迷いつつある。しかし、現在第9艦隊、後にティターンズの中核となる艦隊を率いているのはバスクであり、いまだMS部隊司令でしかないトレーズに鞍替えするのも不安があった。
ともかく、今はまだ付き合うしかないと判断したジャマイカンは内心でため息を吐きつつバスクに対応した。
「現在乗せているのはゼロ・ムラサメのフルアーマー・ガンダムNT1だけです。ファントム・システムの開発にBM-002を完全に回しましたから。大佐、一年戦争時にガンダムタイプ三機でも取り逃がした"騎士"ですが、果たしてNT1で大丈夫でしょうか?少々不安があります」
ジャマイカンの意見にバスクは鼻を鳴らすことで答えた。苛立たしげだ。先ほどから申告を殆どすべてベーダーに却下されているため、憤懣の行き場が無いからだろう。ここでの活躍がティターンズ内部での自分の立場を決めるとなればなおさらだ。新型MS部隊を指揮するトレーズは追撃の先鋒。このまま座してみていれば立場がない。
「既に接触しているガンダム三号機と試験部隊をうまく使えばよい!やつだけは一撃せねば収まらん!」
「投降したジオン艦隊の扱いは?」
バスクはジャマイカンの問に再度鼻を鳴らした。デラーズ・フリートやジオン残党を裏切って連邦軍に"星の屑"作戦の情報を流したジオン残党も第9艦隊には組み込まれている。それらの世話を押し付けられたのが更にバスクをいらだたせている。ジャミトフは爾後のMS開発にジオン系の技術、それもMSの実機を欲していたから受け入れたが、兵員の入れ替えまでは済まず、戦力の不足もあって急遽参加させている。
「知るか!後続の艦艇に任せる、わしは忙しい!」
「はっ」
バスクの命令に返事を返しつつ、ジャマイカンは本格的に鞍替えを考え始めていた。
第75話
0083年11月12日午後8時04分(地球落着まで530分、阻止限界点まで220分)、減速したコロニーに対するソーラ・システムⅡの照射が終了した。およそ10分近くにわたって行われた照射はコロニーの質量全体の65%を蒸発・ガス化させ、元はコロニーを構成していたものを周囲に金属製のガスとして拡散させた。
10分近く照射できるならばもっと照射を行って完全に焼却してしまえばよいようなものだが、地球静止軌道上に展開しているソーラ・システムは地球の自転に従って移動しており、第二次照射が可能になるのはおよそ4時間後である。35%まで質量を減衰させられたことにより、コロニーは阻止限界点前であるにもかかわらず地球の重力に従う形で円運動を始めている為、これだけの長時間が発生することとなった。
しかし作戦はそれだけでは終わらない。質量が35%まで減少したとはいえ、それは一つの塊ではなくある程度固まって浮遊する構造物の群れだ。当然、一つ一つの大きさは大気圏上層部で燃え尽きる程度のものから、地表に落ちれば甚大な被害を与えるものまで様々にあり、更に比重の軽い構造物から遠心力によって拡散しつつある。
プラズマ・レーザー砲艦と連邦艦隊の射撃はこの時点で開始された。メガ粒子砲及びレーザーの熱量によって漂う構造物を破砕し、デプリと呼べる程度の小ささにまで分解する。其処までの小ささに破砕してしまえば、大気圏に突入しても燃え尽きるだけで終わるからだ。
第一軌道艦隊の主力がこの任務に振り分けられていたが、当然それを優先させてこの事態を引き起こしたデラーズ・フリートを放って置く訳には行かない。そのためにベーダーは第11任務部隊とトレーズの部隊を追撃に送り出したのだが、第9艦隊突出の報告を聞いた際には諦め顔で手を振っていた。勿論、その横でジャミトフが苦虫を噛み潰したような表情をしていたのであるが。
しかし、其処に更なる事態の迷走が重なる。
「それが渡された装置か?」
暗闇、空気が存在しないから音波であるはずが無いが、其処には確かに言語が存在した。光の明滅で語られる言語は当然人間のものではない。しゃべっているのはアンドロイド。先ほど前部航行管制室でハマーンを撃ち、ウラキの潜入を間接的に助けた者たちの生き残りだ。
「そうだ、提督からはコロニーの質量が一定以下になったときに起動しろってさ」
「了解、了解」
アンドロイド特有のイントネーションの強い発音―――音かどうかは微妙なところだが―――で語っているその二つは、間にちょうど何らかの球状の物体を囲んでいる。持ち運びできるほどには小さいが、かといってポケットに入るほどではない。この二体、装置が一体何かまでは知らされていない。知っていたとしてもアンドロイドである以上、命令には逆らえなかったろうが。
装置は局所性人口ブラックホール発生装置。基底重量を重力波で吸い込んだ後は自己崩壊する、有用な使い方をするならば、アステロイドベルトの拡大を阻止するために使えそうな装置だった。
「スイッチはここかな?」
「あ、バカ!押すな!……うわわわわっ!?」
二体のアンドロイドが装置のスイッチを入れると重力波が発生し、周囲の物体が装置が発生させる重力波によってひきつけられる。凄まじい圧力によって二体のアンドロイド―――コロニーに投入された最後の二体―――は押しつぶされスクラップと化し、コロニーだった物体の中央部に周囲の残骸が吸い寄せられていく。軌道上に漂うデプリをもひきつけるそれは、周囲に明らかな影響を及ぼし、コロニーだった物体を一つの塊へと変化させた。
その塊が、第三の問題を生む。
「コロニー中央部より重力が発生!コロニーの構造物が全体的に中央部へ寄り集まり、一つの塊を形成していきます!」
第一軌道艦隊にもたらされた報告が、最初、何を意味するのかは不明だった。しかし何事かに気づいたらしい砲術参謀がオペレーターの一人をイスから退かさせ、月第二任務群と交信を開始した段階で重要性が知れた。司令官席で指揮を執っているため動けないベーダーに代わり、ジャミトフが参謀に近づく。
「一体どうなっている!?コロニーの中心で発生した重力といっても、こちらの航行に問題があるわけではあるまい。コロニーの地球落着阻止にはまだ500分……」
そのジャミトフの言葉に何を言っているのかと参謀はジャミトフを見た。
「違います!コロニーの中心部に重力が発生したことにより、コロニーの残骸の密度が高まって大気圏にかなりの大きさと密度で突入することになります。作戦ではソーラ・システムの第二次照射まで、プラズマ・レーザー砲艦によってコロニーの残骸を可能な限り寸断・減衰し、第二次照射でガス化する予定でしたが、密度が高まった場合、寸断や減衰に時間がかかる可能性が生まれ、寸断した残骸の大きさが一定以上のものとなってしまった場合、第二次照射でも照射に耐え切る可能性が出てきました。これではまだ、地表に落着する可能性が高いと言うことです!……第二次照射は第一次ほど長い時間出来ないんですよ!」
「減衰したといってもあれほどの大きさの物体だぞ!時間は延ばせるだろう!?」
「こっちだって地球に沿って動いているんですから!第一、コロニーの中心に重力波が発生して密度が高まるなんて、如何予測すれば良いんですか!?」
ジャミトフはその言葉に一瞬呆けた表情となり、ついで表情を一変させると参謀に詰め寄った。
「と言うことは地球に落着して何らかの被害を及ぼすということか!?」
「重力のおかげで金属性の穴あき隕石、と言うぐらいにまで密度が上昇しています。仮に金属……鉄・ニッケル中心の隕石とした場合、最低でも100m程度にまで分解・融解させる必要があります。そうでなければ地表に激突した際、最低でも10-20ギガトン級の爆発が生じます。勿論連邦空軍の防空網がありますが、完全ではない以上、まずこちらがやれる事をやらない限り、地上での被害は避けえません!」
ジャミトフは大きくため息を吐き、言った。
「海に落せば問題は無いはずだ!」
「大陸棚に落ちた場合、津波が広範囲を襲うことになります。外海に落ちた場合でも落着地点の海底に海底火山があった場合には地震、及び津波の被害を考慮されるべきです。それでも北米に落下するよりはマシな事態ですが、現在の落着予想地点は北米、カナダのサスカチュワン州アサバスカ。そんなところにあんなのが落ちた場合、北米東海岸とヨーロッパはウランに汚染された塵に覆われます!ロシアは質量が減ったことで発生する塵の量が抑えられましたからなんとか無事になりましたがね!」
脇で聞いていたベーダーの決断は早い。即座に命令を下し始めた。
「ジャミトフ、第9艦隊にコロニー迎撃を命令。艦艇の砲装備で可能な限り質量の減衰を試みさせろ。デラーズ・フリートの追撃はトレーズのMS隊と、現在交戦中のイオージマ、アルビオン隊に任せる。バスクのバカが前に出るのはかまわんが、艦艇を持っていくなと伝えろ。行きたいのなら自身がMSに乗っていけ、とな。ノア中佐に連絡。プラズマ・レーザー砲艦は即時砲撃を開始せよ!」
「はっ」
クソッ、まただ。連携が上手すぎる。回避した先に常に1機は射撃準備を整えた機体がいるから回避のし通しだ。……ん?またか?
先ほどからずっとだ。アレだけ派手に名乗りを上げて攻撃をしてきたくせにこちらを撃墜するような行動は見せない。むしろ、ガンダムの射線を上手く逸らしてこちらをこの場に縛り続けている。縛り付けるだけが限度かと思って抜け出す動きをしてみれば、動き方を柔軟に変えてこちらに向かってくる。むしろ、今までの動きではなくそちらの方の動きが彼らの本当の実力なのだろう。やはり、目的は時間稼ぎだ。狙いは他にある。
「キット、回避パターン覚えたな。オートパイロット作動。同時並行で量子通信システムのリアルタイム通信。ジャマーがきつい場合にはガミラス式で。あいつらが整合性側なら、姉さんの部隊か連邦軍の迎撃のどちらか、もしくは両方に手を打っているはずだ。コロニーの質量が増したしな。まだプラズマ・レーザーでどうにかなる範囲だろうが、そんなことはあちらにも解っているはず。警告を出しておく」
「……ガミラス式通信システムの回線遮断を確認。量子通信システムはジャミングなし。データリンク開始……バージニアに襲撃部隊、ソーサラー隊です、トール」
顔色が変わる。奴らの狙いがバージニアにあったということは、こちらを拘束している間か!?
「大丈夫です、トール。無断帰還された東方先生がソーサラー隊を撃破、こちらに向かっています」
ほっ、と息が抜けた。しかし先生、ガトーを如何するんですか。あの突進止められるの先生だけしかいないから配置したんですけど。……人のいう事を聞く人じゃないことは承知していたんだけど……はぁ。結果的には良かったから良いのか?いや、姉さんたちは助かったが、その分ソーラ・システム側の防備が薄くなっている。ガトーだけならまだしも、奴らの友軍でも現れた場合……
また一発ビーム。難なく避けるとコロニーから剥離したらしいミラーの破片に身を隠す。重力波は収まったらしく、圧縮しきれなかった破片がまたコロニーだった物体から離れて周囲に拡散していっている。あの重力波もやはり"整合性"のものだろう。コロニーの質量を纏めて、隕石のように地上に落すつもりだ。
しかし気になる。敵がこちらの動きを知り尽くしているかのように部隊を配置している?ウィザード隊はまだしも、ソーサラー隊の動きはバージニアの戦力を知った上での動きだ。バージニアに東方先生が命令違反でいたから良いものの、そうでなければアクセルがドメル提督のところに行ってしまった以上、絶対にバージニア、つまりシーマ姉さんの部隊に被害が出ていた。歴史どおり、姉さんやコッセルが犠牲になっていた可能性は高い。
"整合性"の動きは大体予測が付くが、何故こうもこちらの動きに追随できる?俺と条件が同じなら、まず敵の動きを知ろうと勤めるのが先で、防諜にも気を使っているから知れてブライト中佐の部隊が解るくらいだ。そもそも、バージニアの出撃はギリギリまで待った上にブースターを使っている。出てくることが予想できても待ち伏せは不可能だ。
「でも待ち伏せられたってことは、……だろうな」
「その可能性は高いですよ、トール。我々は疑いを持つべきです」
考えたくは無いけれど、しかし考えておく必要があるし、調べる必要も当然ある。システムによれば呼び出した人間はこちらに従うらしいからそれ以外、宇宙世紀の人間だ。システムが嘘をついていない以上、そうなる。疑うしかないのだ。
誰か、裏切り者がいる。その可能性を。
「ふん、奴もなれてきたようだな。……エヴァン、パーマーと連絡は付いたか」
「観測していた"アーティスト"ジーグラーから連絡。全機撃墜された、と」
ウィザード5、前衛隊長エヴァン・キャリー中尉はそう答えた。感情の感じられない平板な口調だ。信頼できる副長エヴァンとパーマーの仲の悪さを思い出し、ブリストーは苦笑を浮かべたがすぐに消す。まだあの男に戦力があった?ジム・カスタムとはいえ、8機のソーサラーが揃って撃墜?あの女海賊、其処までの腕だったか?
「東方不敗マスターアジアが存在した模様。マスターガンダムを使用しています。現在こちらに接近中」
報告に無いぞ。奴らの計画ではマスターアジアはソーラ・システムコントロール艦の護衛だったはず。だからこそソーサラー隊には所属をごまかす意味も含めてジム・カスタムで行かせたが……こちらの動きを読んだ?いや、東方不敗の独断の可能性もある。しかしまずい。あの男まで加わっては抑えきれない。もう少し足止めしたいものだが。
「時間は?」
「ゼーゴック、フライトサポートタイプを用いていますので30分ほどで到着します。リファイン・ドルメルに乗ったシーマ・ガラハウが随行」
クソ、"候補者"め。手持ちの戦力で使えそうなものは根こそぎ積んできたか。準備が過ぎるほどにやってくれるところは味方ならばうれしいが敵ならば厄介。それに、呼び出した人間を自由にさせすぎだ。おかげで動きが読めない場合も考慮しなくてはならない。しかも、ソロモンの悪夢があそこで何もいないとは、予想外だった。このままではまずい。厄介な相手が向かってくる。
「現状で東方不敗に対抗できる戦力は無いな。それにあの男、この短時間で回避をパターン化させている。あの学習能力は脅威だ」
「隊長!奴じゃなくて積んでいるコンピューターでしょう!?キットとか言う!」
通信に割り込みがはいる。列機であるウィザード2、カルロス・フォアキン少尉。ラテン系の陽気な奴だが、余計な言葉が多すぎる。
「黙れカルロス。奴だろうがコンピューターだろうが戦場で動けるなら大して変わらん。コロニーの質量・密度の増幅措置は終わったようだな。エヴァン、ゴルトの移動は予定通りか?」
「イエス・サー。連邦軍に内通したジオン残党艦艇のうち一隻を占拠。第9艦隊に紛れ込んでいます。先ほど第9艦隊の艦艇にコロニー迎撃命令が下されましたから、位置はギリギリですが。なんとか間に合うかと。懸案事項の御貴族閣下は前線に移動しています」
「安心は出来んな、トールギスの速度は脅威だ。出来るならばもう少し時間を稼ぎたいところだが……。よし」
ブリストーはそういうと信号弾を打ち上げ、中隊に新たな命令を下す。それと共にガンダム三号機へ通信をつなげた。
「ウラキ中尉。こちらブリストーだ。敵の増援をキャッチした。"騎士"のお仲間で、しかもガンダムタイプと来ている。流石にこれ以上は無理だ。我々も試作機なのでね。そこで、申し訳ないが主力のコロニー攻撃の時間を稼ぐため、最後の攻撃を増援到来後5分間仕掛ける。君の機体にも援護を御願いする」
「了解しました!」
良い返事だ。連邦軍純正の士官らしい。他者を疑う戦場を知らない若造の声。かわいそうに。この戦場で全てのものに裏切られていると知れば、この若者はどういう感情になるだろう。所属部隊の長と劣勢に現れた友軍騎兵隊が実は、ふっ。ブリストーは通信をきるとつぶやいた。
「そして末は強化人間というのが通り相場か。まぁ、兵士ならばともかく士官はそういうことをされても文句は言えない。其処を解らず、避ける努力もせずに士官になった自分を恨むことだがな」