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No.22507の一覧
[0] 機動戦士がんだむちーと【多重クロス】[Graf](2014/07/27 19:00)
[1] 第02話[Graf](2010/11/08 12:16)
[2] 第03話[Graf](2010/10/18 06:59)
[3] 第04話[Graf](2010/11/08 12:16)
[4] 第05話[Graf](2010/11/21 08:24)
[5] 第06話[Graf](2010/10/21 09:52)
[6] 第07話[Graf](2010/10/23 23:30)
[7] 第08話[Graf](2010/11/08 12:17)
[8] 第09話[Graf](2010/10/23 08:33)
[9] 第10話[Graf](2010/10/23 17:06)
[10] 設定集など(00-10話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[11] 第11話[Graf](2010/10/27 05:15)
[12] 第12話[R15?][Graf](2010/10/27 05:16)
[13] 第13話[Graf](2010/10/25 21:22)
[14] 第14話[ネタ][Graf](2010/11/08 12:17)
[15] 第15話[Graf](2010/11/08 12:17)
[16] 第16話[Graf](2010/10/30 21:19)
[17] 第17話[Graf](2010/10/30 15:05)
[18] 第18話[R15][Graf](2010/10/30 21:24)
[19] 第19話[Graf](2010/10/30 21:21)
[20] 第20話[Graf](2010/10/31 14:30)
[21] 設定集など(11-20話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[22] 第21話[Graf](2010/10/31 14:31)
[23] 第22話[R15][Graf](2010/11/12 11:21)
[24] 第23話[Graf](2010/11/12 11:21)
[25] 第24話[R15?][Graf](2010/11/08 12:18)
[26] 第25話[Graf](2010/11/02 16:55)
[27] 第26話[Graf](2010/11/06 10:59)
[28] 第27話[Graf](2010/11/08 12:18)
[29] 第28話[Graf](2010/11/06 11:01)
[30] 第29話[R15?][Graf](2010/11/03 12:00)
[31] 第30話[Graf](2010/11/08 12:19)
[32] 設定集など(21-30話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[33] 第31話[Graf](2010/11/06 11:08)
[34] 第32話[Graf](2010/11/06 21:39)
[35] 第33話[Graf](2010/11/07 16:59)
[36] 第34話[Graf](2010/11/08 02:01)
[37] 第35話[Graf](2010/11/09 05:33)
[38] 第36話[Graf](2010/11/09 05:32)
[39] 第37話(R15 一年戦争終了)[Graf](2010/11/10 21:11)
[40] 設定集など(31-37話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[41] 第38話(R15 戦間期前半)[Graf](2010/11/12 11:25)
[42] 第39話(R15)[Graf](2010/11/11 10:20)
[43] 第40話[Graf](2010/11/11 23:02)
[44] 第41話[Graf](2010/11/12 11:41)
[45] 第42話[Graf](2010/11/15 04:51)
[46] 第43話[Graf](2010/11/14 12:40)
[47] 第44話[Graf](2010/11/15 04:52)
[48] 第45話[Graf](2014/07/29 19:39)
[49] 第46話[Graf](2010/11/15 04:53)
[50] 第47話[Graf](2010/11/14 12:44)
[51] 第48話[Graf](2010/11/15 21:23)
[52] 第49話[Graf](2010/11/17 12:03)
[53] 第50話[Graf](2014/07/29 19:39)
[54] 設定集など(38-50話まで)[Graf](2014/07/27 07:35)
[55] 第51話[Graf](2010/11/20 12:13)
[56] 第52話[Graf](2010/11/19 21:13)
[57] 第53話[Graf](2010/11/20 12:18)
[58] 第54話[Graf](2010/11/20 18:20)
[59] 第55話[Graf](2010/11/23 16:11)
[60] 第56話[Graf](2014/07/29 19:39)
[61] 第57話[Graf](2010/11/23 16:12)
[62] 第58話[Graf](2010/11/25 23:37)
[63] 第59話[Graf](2010/11/27 14:09)
[64] 第60話[Graf](2010/12/02 03:42)
[65] 第61話[Graf](2010/12/05 19:08)
[66] 第62話[Graf](2010/12/05 20:11)
[67] 第63話[Graf](2010/12/09 23:45)
[68] 第64話[Graf](2010/12/20 04:54)
[69] 第65話[Graf](2010/12/20 06:47)
[70] 第66話[Graf](2011/02/09 20:31)
[71] 第67話[Graf](2011/02/24 22:50)
[87] 第68話[Graf](2014/07/27 03:12)
[88] 第69話[Graf](2014/07/27 07:31)
[89] 第70話[Graf](2014/07/27 07:31)
[90] 第71話[Graf](2014/07/27 07:32)
[91] 第72話[Graf](2014/07/27 07:32)
[92] 第73話[Graf](2014/07/27 07:33)
[93] 第74話[Graf](2014/07/27 18:50)
[94] 第75話[Graf](2014/07/27 18:51)
[95] 第76話[Graf](2014/07/27 18:52)
[96] 第77話[Graf](2014/07/29 19:40)
[97] 第78話[Graf](2014/07/29 19:40)
[98] 第79話[Graf](2014/07/27 18:53)
[99] 第80話[Graf](2014/07/27 19:00)
[100] 設定集(51-80話)[Graf](2014/07/27 07:36)
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[22507] 第73話
Name: Graf◆36dfa97e ID:75164fd2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/07/27 07:33

「閣下!?」

 ガトーの言葉が聞こえるが気にも留めずに、進路を塞ぐように立ちふさがっているGP03に向けて切りかかった。即座にアポジモーターを点火して距離をとるGP03。そんなことは織り込み済みだ。更にヴァイサーガを増速させて距離を詰めると五大剣を振るう。手ごたえ。

「なんでこんなところに"ア・バオア・クーの騎士"が!?……まさかっ!?」

 接触したことでつながった通信回線からウラキ中尉の言葉が漏れてくる。どうやらこちらの正体にうすうす感づき始めたらしい。まぁそうだろう。アルビオン陸戦隊に虚偽の報告をさせるだけの権力を持ち、戦闘の状況を把握した上でコロニーをコントロールするために部隊を送り込めるものなど早々いない。ウラキ中尉が情報からこちらの正体に気付き始めたとしても無理はない。

 しかし、今の段階でそれが明らかになるのはまずい。こちらの正体はまだばれて良い段階ではない。少なくともグリプス。連邦軍の大半がデブリ回収業者に堕するまでは。

「墜ちろ、ガンダム!」

 五大剣をヒートモードに設定して接触面から熱で切り裂く。右側コンテナに接触していた五大剣が熱を帯び、装甲を融解させ始めた。このまま内蔵してある武装の弾薬に引火してくれればそれで良い。しかし、ウラキもこちらの狙いは悟ったようだ。五大剣がヒートモードに変わるということは色が熱を帯びオレンジ色に変わり始めるということ。そして気の利いたパイロットらしく、こちらの機体を離そうとするのではなく、機体下面の大型ビームサーベルをこちらに向けて動かし始めた。機体の損傷にもかまわずこちらを撃墜するつもりらしい。

「させん!」

 ガトーの声。声と共に放たれた有線クローアームが今まさにビームを出そうとしていた左側のサーベルアームを捉えるとその握力で押しつぶす。ちぃ!ウラキの反応が早い。ガトーがアームを潰した瞬間、無事な左側コンテナからフォールディングバズーカを取り出した。こちらに向けて近距離では放つつもりだ。

 流石に直撃を受けてはまずいため、五大剣のヒートモードを停止させ、コンテナをけりつけてGP03と距離をとる。コンテナの装甲が厚く、弾薬の誘爆までには至っていない。アルビオン隊はまだどうにかなる。問題はジオン側だ。目撃者は少なければ少ないほど良い。下手にガトーがこちらを助ければ関係を疑われる。それに、このガンダムは私の獲物だ。

「ガトー、手を出すな。デラーズのところへ行くのだろう。そこのドムの小隊をつれて早く行け」

「……すみません、閣下!」

 ガトーが機体を翻す。カリウスのドム小隊は一体何が起こっているのかわからない様子だ。仕方が無いだろう。いきなりガトーと年来の敵である"ア・バオア・クーの騎士"が一緒に現れただけではなく、ガンダムに撃墜されようとしていた"騎士"を助けたのだから。

「ガトー少佐!どうして!?奴は我々ジオンの!?それに、デラーズ閣下から作戦中止命令が出ました!アクシズ艦隊に向けて……」

「カリウス!今は良い、付いて来い!」

 ガトーはそういうとコロニー前方に展開して接近する連邦艦隊に向けて砲撃を開始しているグワデンへ向かう。少しの間逡巡したカリウス小隊も後に続いた。GP03がその後を追おうとするがその進路を塞ぐ。

「ガンダム、貴様の相手はこちらだ」

「……あなたは、もしかして……」

 これ以上しゃべらせるわけには行かない。さっさと墜とさせてもらおう。殺すとまでは行かなくとも、ハマーンの受けた苦痛に見合うものは感じてもらう。既にコロニー破壊の手は充分に打った。ここでガンダム一機相手にしていても問題はない。キットが先ほどから心配そうに声を―――通信に捉えられては困るため、コンソール脇に文字表示で"落ち着いて"と表記しているだけだが―――かけてくれているが落ち着けない。許せないのだ。撃ったウラキも、それを許した自分自身も。

「その問に答えて欲しいのならば私を撃墜してみせろ。それとも、抵抗できない女性は後ろから撃てても、"ア・バオア・クーの騎士"は相手として不足とでも?とんだエースパイロットだ」

 通信回線から聞こえる歯軋りの音。そうだ、もっと怒れ。操縦の腕は上がってもまだ精神的には未熟。退き時がわからないのであれば向かってくるはず。予想通り、ガンダムはこちらを射線に捉えて次々にミサイルを放ってくる。マイクロミサイルでこちらの動きを封じるつもりらしい。木っ端相手の装備とはいえ、惜しみなく弾をばら撒くとは良い勘をしている。

「ウラキ!今はガトーを!」

「バニング大尉!こいつは墜さなくちゃいけない敵だ!」





 第73話




「ガトー少佐!何故、奴を!"ア・バオア・クーの騎士"は我らが閣下の仇!」

「カリウス!デラーズ閣下のグワデンは前進しているのだな!他の隊の撤退状況は!?」

 質問を許さないガトーの口調に一瞬のまれかけたカリウスは押し黙り、ガトーの口調から何事かを察して報告を始めた。

「現在、グワデンはコロニー前方1万3000!後退を始めた部隊はグラードル隊が撃沈された空域から後退を始めていますが、追撃してくる木馬型の援護らしい巡洋艦2隻と交戦しています!」

「コースはコロニーから見て右翼にとれ。連邦軍の動きからして、ミラーの展開が終了しているらしいこちらから見ての右翼側の部隊が動くはずだ。……今連邦軍と交戦している部隊には盾になってもらうしかないな。……やはり、か」

 ガトーは友軍と交戦している二隻の巡洋艦―――月艦隊のものだという事はすぐにわかった―――の位置を確認してからつぶやいた。必要以上にコロニーからの距離を取り始めている。こちらを誘うと見せかけると同時に、後方の警戒線に穴を開けて其処からジオン軍の脱出を図らせるつもり、か。やはり閣下はジオン軍の?いや、であるならば……

 だんだんとグワデンの後部ハッチの姿が近づく。通信可能領域に入ったと確信したガトーはグワデンへの通信回線を開いた。すぐにデラーズの姿がモニターに移る。

「閣下!……伝言は届きましたでしょうか?」

 デラーズは力なく頷いた。一瞬、ガトーはトールの行動を裏切りと考えてショックを受けていると考えたが、すぐにデラーズが苦笑したことで気を抜かされてしまった。

「……閣下?」

「今回の作戦が問題なく行っていた場合の被害人口は直接的には餓死10億。食料移送などの混乱で更に5億近くが被害を受けるだろう。経済的に困窮している階層から被害を受け、地球、宇宙を関係なく死者を出す。そして持てるものたる地球連邦の上層部はなんら痛痒を感じまい。結局のところ、いつの時代も被害を受けるのは持たざるものよ」

 ガトーはデラーズがこの作戦のもたらす直接的・間接的な被害を十二分に知っていたことに改めて驚く。コロニー内、及び脱出する際にトールから尋ねた作戦のもたらす被害のあり様を正確にデラーズは知っている。ならば何故。ガトーはこの作戦が地球に宇宙に対する食糧依存の体勢を作らせ、ドズル率いるアクシズ艦隊の帰還の際にジオンに好意的な世論を醸成するための作戦だと聞かされていたし、そのように信じてもいた。

「閣下、コロニーの侵入コースプログラムに変更が行われていました。我々の当初の作戦予定であるフロリダからの侵入コースではなく、カナダ側からの侵入コースを取り、吹き上げられた塵がヨーロッパ、ロシアを襲う設定に。設定変更は閣下が!?」

「やはり変更されていたか。わしではないが、そのように設定されるであろうことは予測していた。変更する気はなかったがな」

 デラーズはため息を吐きながら言った。やはり設定は変えられ、作戦の初期設定から外されていた?しかも、デラーズ閣下はそれを予測していた?しかも、変更するつもりはない!?閣下は15億の人間を餓死させるつもりだった!?

「……今回の作戦内容に失敗時のアクシズ脱出を盛り込んだ結果、艦隊内部の強硬派が何らかの行為を行う可能性はあった。ふふ、トールの奴がア・バオア・クーから戦力的に整った部隊をほとんどアクシズに脱出させただろう。そのため、地球圏に残ったジオン残党で軍として体裁を整えているのは我々ぐらいよ。作戦前にも言ったろう、良くて宇宙海賊だ、と」

 ガトーは絶句する。これでは軍隊ではない。それこそ、本当のテロリストではないか。我らジオン残党は其処まで堕していたのか?

「今となってはそれが誰の手によるものかは解らん。撤退命令に従わず、連邦軍と交戦を続けている艦もあれば、撤退命令が出た瞬間に算を乱して撤退した部隊もある。……ガトー、お前も撤退せよ。アクシズ艦隊へ回収を願うもよし、お前が見つけたヨナのところに向かうもよし」

「閣下!」

 デラーズは力なく笑うと司令官席に深く腰掛けた。

「ジオンの理想、それはスペースノイドの独立と平和にあったはず。しかし、地球圏の人口からして、この作戦は地球への攻撃と言うだけではなく、今も平和に暮らしているスペースノイドの生活も乱すものだ。わしは、今のジオンが其処まで周りが見えなくなっていると言うことに気付いて仕舞ったのだよ、ガトー。既にサイド1と月が独立し、一年戦争の結果、スペースノイドの一部とはいえ独立を迎えている。ジオンの為そうとした理想の一部が既に為されているが、奴らにとっては自らの独立が達成されなかった時点で如何でも良いのだろうな。われらの言うスペースノイドはジオン国民……いや、ジオン国民ではなく、我々自身でしかなかったのだ。ギレン閣下の毒が効き過ぎたな。"優良種"を心底信じているらしい」

 デラーズは其処まで言うと少しの間瞑目し、息を大きく吐き出すと改まった表情でガトーに向き直った。ガトーはその表情を見ると息を呑んだ。覚悟を決めた表情だ。デラーズの体には先ほどの言葉のときに感じられた静かな絶望は微塵もない。

「閣下!……"ヨナ"閣下は地球圏からのジオン残党のアクシズへの脱出に手を貸す、とお約束くださいました!閣下も!」

「それも予想はしておった。奴が生き残っているのであれば、全ての決着はドズル閣下が帰還された際になる。となれば、そこで奴がどのように動くかは知らぬが、地球圏をジオンと連邦、二つに明確に色分けをしてからの話になるだろうからな。お前が約束をせずとも、奴はジオン残党の地球圏脱出には手を貸すだろう。……別にお前を揶揄している訳ではない。お前がそう願うのと同様に、奴にもそうするだけの理由があるのだ」

 デラーズは自分の言葉に一瞬ガトーが表情を歪ませたのを見ると言葉を添えた。この男は純粋に過ぎる。悪く言えば誰かの影響を受けやすい人間であり、そこに自分がガトーを上手く使っていたのかと言う疑いを感じた。結局のところ、私はガトーを理想と言う言葉で使い倒していたのではなかったか。いや、今更だな。

「……それでは、ガラハウ閣下の考えられている理想とは!?」

「それは奴に聞け。ドズル閣下はアクシズに、デギン閣下は今も尚地球にて御存命であらせられる。奴はドズル、デギン閣下の命で動いているのやも知れぬし、奴自身の考えで動いているのやも知れぬ。どちらにせよ、"ジオン"ではなく"スペースノイド"を考えれば、奴の動きはそれなりに理に適っておる。結果論であるし、"ジオンの理想"とやらに囚われた者達からすれば噴飯物も良いところだろうがな。ガトー、奴の行く道は辛いぞ。常に蝙蝠である事を自らの罪とせねばならぬ。最も良い行動をとるという言葉しか拠るものは無く、旗幟を鮮明に、とその実、自らの意志を他者に預けているものから裏切りと罵られるのを覚悟して歩んでおる。其処までの覚悟だけはある」

 ガトーは絶句する。トールの行動に感じられた裏切りの臭い。どうしても気になるその臭いは、自らの意志をジオンに預けきり、自らの意志を捨て去ったからこそ感じられるのではないか。いや。我々はジオン軍人。軍人は自ら考える頭を持たず、国の求めに応じてその力を振るうことこそが役目。其処まで考えた後にまた煩悶がガトーを捉える。ならば、国が敗れなくなった後でさえ力を振るう我々は一体何なのか、と。

 しかしガラハウ閣下はおっしゃった。我々の為していることは、被害を受け死ぬ人々の命に見合うものなのか、と。ジオンの理想を第一に考えていたときには感じられなかった命の重みが、今はなぜか身近に感じられる。思い浮かぶのは少女の負傷に狼狽し、怒りに震える男の姿。自分には、あそこまで思える守るべき人間がいただろうか。

「ガトー、生きよ。生きて己が為すべき事を為せ。わしは為す。ここでドズル閣下の理想に全てをつなげる。地球圏から脱出するジオン残党を閣下の下に集わせる。ドズル閣下が地球に帰るその日こそ、そしてドズル閣下が率いる軍にこそと信じるが故に。お前は己が信ずるべきものを信じよ」

 ガトーは涙を滂沱と流していた。デラーズは死すべき場所を見つけたのだ。ならば。

「ならば閣下、露払いだけはさせていただきます」

「止めよ」

 ガトーは微笑むとその言葉を拒絶した。

「私は私が信じる道を行きます。まずは閣下の死出の旅路の露払いを。その後は……そうですな。我らが"ヨナ"閣下にお任せいたします。どうも、私は自分の頭を使うのは苦手のようでありますので」

 デラーズは瞑目し、最後につぶやくように何事かを言った。ガトーはその言葉を背景に機体をソーラ・システムの方向に向ける。システムの破壊までは狙わない。但し、安穏と陣形を組んでいる連邦艦隊の心胆は寒からしめてくれる。デラーズ・フリートの姿を焼き付けるために。連邦に抗し戦った戦士達の名誉のために。

「繰り返し、心に聞こえる戦士達の名誉のために……ジーク・ジオン!」

 

「なんだと!?"ア・バオア・クーの騎士"!?」

 アルビオン艦橋、シナプス大佐は肘掛を強く叩いた。一年戦争最後の局面、アムロ少尉のガンダムがジオンの造反機をジオンのゲルググと共に(後にそれがトール・ガラハウ少将機である事を知ったが)撃墜した後に出現し、そのゲルググを撃墜した機体。コリニー艦隊の投入したガンダムタイプ三機を撃破し、マントを翻して宇宙に去った機体。

 三年ぶりにモニターに映るその機体をシナプスは苦々しげに見つめた。無理もない。ジャミトフ、コリニーが投入したガンダムタイプの改造機を撃退しただけの機体ではあるし、一年戦争時の動きからしても乗っているのはエースパイロットであることは間違いない。しかも、ウラキ中尉のガンダムに対する攻撃の様子を見ると、一年戦争のときから更に強化されているらしい。

「ベイト中尉の小隊まだか!?ガンダムを援護し後退!陸戦隊の任務は果たした!MS部隊を回収し、戦線を離脱するぞ!」

「第一軌道艦隊より連絡!ソーラ・システム照射準備開始!第一次照射まで後360秒!」

「なんだと!?」

 シナプスは艦橋右側のモニター、ソーラ・システム照射状況を映しているモニターに目を向けた。中央部のミラーが動いていないから気付かなかったが、上下左右部分のミラーが動き、焦点をコロニーの中央部に向けている。回転しているコロニーのちょうど中心部分を狙って照射するつもりのようだ。

「コロニーが回転しているため、重心部分に照射を行いコロニーを二分!同時に陸戦隊の仕掛けた爆薬を起動させ、コロニーを寸断せよ!です!」

 スコット軍曹が第一軌道艦隊よりの命令を読み上げる。

「!?ヴォルガ、パナマ大尉より入電!ジオン艦隊の一部がコロニー左翼方向から離脱を開始!アクシズ艦隊との合流コースを取っています!」

「ほうっておけ!今はコロニーとMS部隊の回収が最優先だ!シモン、両舷のメガ粒子砲は撃てるか!?」

「無理です!下手に打てばバニング小隊を巻き込みます!……艦長!第32戦闘中隊が戦闘に参入!MS隊の離脱を援護するとのことです!……ウラキ中尉!ソーラ・システムの攻撃が始まる!ウラキ中尉!後退を!」

 艦橋の中は退かないウラキにだんだんと苛立ちを募らせ始める。しかし、通信を受けたウラキにも退けない理由はあった。ここで引いてしまえば、自分が考え付いたこの疑念の答えを見出すことが出来なくなる。勿論帰還したとしても、疑念が正しいのならば自分はどこかに左遷されるだろう事は推測が付いていた。であるならば、ここで疑念を追求した方が彼の考えには適っていた。

 ウラキはコンテナの中の装備を確認すると爆導索を選択し、こちらに砲撃を仕掛けてきたムサイに向けて放つ。勿論彼の主敵は"ア・バオア・クーの騎士"―――ヴァイサーガだ。爆導索の展開範囲は追撃してくるヴァイサーガを巻き込む形で放っている。回避されるだろうが、動きは止められる。狙いは動きが止まった時!

「!そこだ!」

 爆導索の爆発でムサイが連鎖爆発を起こした瞬間、爆風に押される形でヴァイサーガの動きが一瞬止まる。其処を狙って対艦ミサイルを放った。機動性、特に細かい動きの正確性が高いことが最初の戦いで理解できたから、最初の戦いではマイクロミサイルしか放てなかったが、マイクロミサイルでは奴の装甲に対抗しようが無いことはわかっていた。

「動きを止めて、対艦ミサイルなら!」

 槍のように構えたメガビーム砲がマントらしきものによって遮られたのは確認している。あのマントらしき布は、ビームと自身を相殺出来るようだ。まだいくらか残っている可能性があるから、防がれるかもしれないメガビーム砲では相手を倒すことが出来ない可能性が残る。しかし、ミサイルならば。

 そして放たれた三発の対艦ミサイルが命中するかに思われた瞬間。緑の光を残して騎士は消えた。

「何処へ!?」

「ここだ」

 一瞬であの距離をどうして、どうやって!?命中したと確信した瞬間の隙を狙って、何らかの手段で機体上面に取り付いたヴァイサーガが片手でコンテナ部分を掴み、もう片方の手に五大剣を握っている。まずい!取り付かれた!振り落とそうと操縦桿を掴むが即座に何かが機体を切りつける音が聞こえた。カメラが赤く光る剣を逆手に持ち、機体に突き刺すヴァイサーガの姿を捉える。

「墜ちろ!」

「三年前の機体なんだ、ガンダムなら!」

 ウラキはコンテナに五大剣を突き刺すヴァイサーガをそのままにデブリに向かう。デブリにヴァイサーガをぶつけて機体から振り落とすつもりだ。しかしヴァイサーガはデブリ激突寸前に五大剣を残したままオルゴン・クラウドで転移するとデブリから離れた瞬間にサイド出現し、更に力を加えて剣を突き刺す。

 充分以上の熱量を加えて突き刺しているにもかかわらず、コンテナ部分の装甲の厚さに刃が中々貫き通せず、コンテナの弾薬にも引火しない(この時、五大剣を突き刺した右コンテナは実弾系武装は殆ど空で、ビームライフルが収納されているだけだった)。苛付いたのか、ヴァイサーガは五大剣を抜くと腰にしまい、代わってもう一本の剣を抜く。

「墜ちろ、ガンダム!」

「まずい!」

 コンテナからビームライフルを取り出しヴァイサーガに向かって放つGP03。しかし、直撃したビームを装甲とマントの残りかすで霧散させたヴァイサーガはそのままGP03の機体下面に取り付くとオルゴンソードを振り上げた。コンテナの厚みがある上では駄目だと悟ったらしい。御丁寧に大型ビームサーベルの稼動を片足で抑え、スラスターを全力で噴射させて圧力を下から加えている。

「圧力で分離が出来ない!?墜ちる!?」

 振り上げた緑色のクリスタルに着弾。クリスタル状に固められたオルゴン・クラウドが霧散し、ヴァイサーガが衝撃でガンダムから離れる。更に続く射撃。直撃こそ喰らわなかったものの、装甲すれすれに飛び去ったビームのおかげか、一部装甲が融解している。邪魔をしたものを探しに周囲に視線を走らせるヴァイサーガ。それと共にガンダム三号機に通信が入った。

「アルビオン所属、試作ガンダム三号機だな。こちらは第32戦闘中隊、ウィザード隊ジョシュア・ブリストーだ。これより援護に入る!」

「ウィザード隊、ジョシュア・ブリストーだと!?オーシアの部隊が何故!?」

 ウラキにはわからない内容の通信が続く。なんだ、こいつらは互いの所属を知っているのか?連邦軍の中にも"ア・バオア・クーの騎士"とつながっている部隊がいるのか?ウラキは突然の出来事に事態の把握が出来なかった。無理も無いだろう。システムに呼び出されたもの同士という関係は、彼には考えも付かない。ブリストーと呼ばれた男が率いる部隊は2機ずつ4群に展開すると、次々にビームキャノンを打ち、ヴァイサーガを射線に捉える。ブリストーの続く言葉は、ウラキに拭い難い更なる疑問を付け加えることとなった。

「これも"整合"の一環と言うわけだ、"候補者"。残念だよ、私の好みから言えば、君の方に立ちたくあったがね」










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