あの後、ハマーンが不満そうで、ミツコさんの落雷が怖かったものの二人とも意外に何とかなってしまった。
何を考えているかと思ってリーディングしてみれば、ハマーンは不満そうな顔の裏側で泣きそうになっていたのでかなりへこんだ。しかし、同時にあと三年とか考えているところに恐怖。僕は20歳前の女性には二度と手を出さないんですよ!とか考えていると、日本の法律ではとか言い出し始めた。……其処まで深く読まれていたのかよ。
ミツコさんのほうは二人の技術的能力がもはや切り離せない段階まで来ているし、そもそも利益目的ではないから良い、と言ってさえくれた。この2年、NT能力がハマーンのおかげか高まっているため、かなりミツコさんの内心を読めるようになったのだが、本気でそう思っているから困る。
詳しく話してみると、戦場での手助けが出来ないことがもどかしくてしょうがないそうだ。自分に出来るのが金銭面や政治面など、戦争に直接的に関わる分野ではないため、生命そのものがかかる戦場での手助けをハマーンやセニア、テューディに任せている現状が、口惜しくてしょうがないらしい。
勿論彼女もPTなどの操縦技術は持っているが、実戦で役に立つほどではない。それを自覚しているからこそ、戦場で戦う兵士が戦場での信頼できる異性の人間と、そうした行為に走るのも当然だと考えているらしい。
もっとも、月から地球に戻った際とか、自分で決めた日には絶対に手出しを許さないから、ツンデレかとか思ったのは内緒だ。しかし、同時に自分が何かを言い出すことで今の関係が崩れる事を怖がってもいる。どうやら、彼女にとっては現在の位置である、トール・ミューゼルの経済的後援者にして妻、という立場が守られることが必要らしい。
だから、利益関連という自分と似た人間は嫌だったのか。自分の今の居場所が取られるかも知れないから。……セイラを嫌がるのはそのせいか。これを知った時には不覚にもじーんと来てしまった。ちなみに、その事を知った日にミツコさんと激しく致してしまったのは反省だ。リアルに一線越えたナナとカオル状態である。喜んでくれたのは良かったが、抜け出せない沼地に嵌ったような気がしてならない。あれ?
さて、リオンシリーズの売れ行きがよく、地上ではGMⅡ以上に活用されているため、連邦軍での月面駐留軍の立場や私の立場がどんどん強化されていくのが怖い。昇進こそ身動きが取れなくなるために断っているが、ついにアフリカの残党討伐軍までリオンの運用を開始して成果を上げ始めた。戦闘ヘリ的な運用がされており、リアルに「逃げる奴はジオンだ!! 逃げない奴はよく訓練されたジオンだ!!」をやりやがったバカ(どうやらバスクらしい)まで登場する始末。何処のベトナムだ。
なにか雲行きが怪しい感じがしてきたのでミツコさんとレンジ・イスルギの居場所を交代させた所、交代させた3日後にジャミトフ系の治安機関が捜査の手を入れてきた。即座に樺太基地から部隊を出したところ退却していったが、リオンシリーズの独自生産を考えているらしい。設計関連のデータも全部移して置いて良かった。
レンジ・イスルギからの報告によると、ジャミトフは現在、必死に後ろ盾となってくれる企業を探していると言うこと。アナハイムはどうかと考えてみたら、メラニー・カーバインとの対立が理由のようで、アナハイムに強気に出られる理由がない限り踏み込めないそうだ。
……ビスト財団関係か?いや、ジャミトフとカーバインの関係はどこかで読んだことがある。となると、背景企業を探してジオニックに手を回す可能性もあるか。いかんな、サイコミュ関係の書類は廃棄させたから出回る心配はないが、科学者の行き先でもたどられると厄介だ。レンジに手を回させて裏から手繰ったほうが良いな。
ティターンズに供給する宇宙用量産型か、どうしよう。コスモリオンぐらいしか適当なのが浮かばないが……
第39話
「ふふ、楽しかったぞ」
「わたくしは疲れましたわ……まだ体が少し痛いですわ」
返事をする気力もおきずにベッドにうつぶせになっている私は半分夢見心地でそばの会話を聞いていた。なんだ、なんの波状効果だこれ?
最初、ミツコさんと二人で飲んでいて鍵をかけてことに及ぼうとしたんだよな。そしたら鍵をかけたはずのドアが開いて「ロックハッカーを作ってみた。後悔はしていない」などと口に出してテューディが入ってきた、と。それメタルマックスの技術じゃとか言う間もなく赤い旋風が巻き起こり、この結果だ。
首筋のひやりとした感覚にぼうっとしていた頭が覚めた。テューディがキスをしてきたのだ。いや、キスじゃなくてどちらかと言えば舐めてきたのだが、いままでゲームの中でしかお目にかかったことのない光景にまで発展した昨日の行為を思い出す。……えがった。
「おっ、早速元気になった。なんだ、もう一ラウンドか?」
「……ちょっと待ってテューディ、わたくしの体が持ちまわせんわ。顎と腰が痛くて……」
「ならばもらった」
こんな桃色空間、頭が焼けてしょうがないと思った私は近づいてきたテューディを抱き寄せると一瞬力を抜いた瞬間を使ってシーツに包んで袋詰めにした。所謂茶巾状態だが、今日は予定があり、流石に時間的に危なくなってきたのだ。それに、先ほどから隣室に不快気な思考を感じる。そして呪文のように聞こえるあと3年の合唱。勿論、包んだシーツから聞こえる抗議の声は無視する。
そのハマーンを慰めているらしいもう一つの思考からはやはり胸かコンチクショウの叫びが聞こえてくる。いや、胸とか胸じゃないとかの話じゃないんだけどなぁなどと考えてしまう。いや、あんまり大きいとこっちも大変なんですよ?それに、色々な楽しみがないじゃないですか。それに、テューディはウェンディに比べればそんなにでかい方じゃ……グヘッ。
お、ハマーンとセニアの間で今度は何か始まったらしい。更に出て行くのが嫌になった。あれ?これシャアより酷くない?でも流石に時間が厳しいよ?……本格的に駄目人間への道を歩みかけたところで正気に戻るのはお約束。気を取り直して……無理だった。セニアとハマーンが乱入。それに乗じてテューディも這い出した来た。
ため息を吐くと初めて自分の為にポーテーション機能を使った。パンツのみの姿で。
「……ずいぶんと個性的な格好ですね、トール。あなたにストリーキングの趣味があるとは全く知りませんでした」
「……やめてくれ、泣きたくなってくる」
ヴァイサーガのコクピットで私は泣いた。NT能力を使って部屋を探知し、部屋からいなくなるのを待つ。あれ……使い方を盛大に間違っているような?当然のようにその後、ほかならぬキットに売られてドナドナの音楽を背景に連れ去られた。
「申し訳ありませんトール。私もこの基地の力関係は存じておりますので。流石に分解は避けたいのです」
「……裏切り者」
「ずいぶんとお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
なんやかんやの後に、待たせていたセイラ・マスの声が優しく響く。現在地は月のNシスターズ1。セイラ・マスは現在、ウィナー家所属のエージェントとして働いている。会うのは実に半年ぶりだ。
「いや、大丈夫だ。大分表情から硬さが消えたね」
ありがとうございます、とセイラは頭を下げた。
「まだお兄さんと会う気にはなれない?」
「……正直、会ってよいものかどうか迷います。どういう理由にせよ、兄が周囲の人に大きな迷惑をかけたのは違いありません。それを、私に会うことで、気持ちを楽にさせてしまうかと考えると、そうした人たちに申し訳が立ちませんから」
私はため息を吐いた。結局、この女性の暗さ加減は生まれつきのものらしい。基本的に物事をネガティブに捉えてしまうのだろう。
「アムロ君たちはどうしている?」
「ホワイトベースのみんなは普通の生活に戻りつつあります。ただ、アムロだけは地球連邦の軟禁施設に。今は確か、アメリカに移されているはずです」
もう一度ため息を吐く。一年戦争後半で活躍した第13独立艦隊は、ジオン側の資料からニュータイプ部隊と考えられていたことが発覚し、その乗員の取り扱い、特に戦果著しいアムロ・レイの扱いは特別なもの、連邦政府の監視下に置かれるものとされた。
おかげで指揮を取っていたはずのこちらには情報が回ってこない。話を聞くと、一応北米オーガスタ基地のニュータイプ研究所に送られ検査を受けているそうだが、取り扱いに関しては終戦協定とともに退役したレビル大将や依然として作戦本部長を務めるシトレ大将以下の強い要請もあり、医学倫理を著しく脱するものではなくなっている。
何しろ、MS開発で一年戦争を勝利に導いた立役者の一人、ミューゼル少将の指揮下の部隊出身で、そのミューゼル少将が連邦軍内部の大派閥、レビル派の金庫番、ゴップ大将の懐刀である事を知らぬものはいない。私は何とか月で確保しようと動いたが、連邦内部のニュータイプに対する反感はジャミトフらの煽りもあって根強く、軟禁状態に持っていくのがやっとだった。史実と変わらないが、やはり連邦の反ニュータイプ感情は強い。
もっとも、本人は公式には家族と一緒にオーガスタの連邦軍基地に士官教育に出向いていると言うことになっているのであまり気にしていないらしい。こちらの苦労も知らずに良い身分だな、と思ったのは秘密である。だってなぁ、本当ならララァの死に苛まれてどんどん退化していく時代だからなぁ。やはりアムロ正ヒロインはベルチカだろうか。
セイラによると、基本的にホワイトベース所属の乗員たちは、歴史どおりの戦後を送っているとのこと。ハヤト・コバヤシは戦争博物館の館長をしているし、カイ・シデンはジャーナリストとなった。私が把握していたのは、まずブライト・ノア。少佐に昇進して月第一艦隊所属の新造艦を待っている状態で、ミライ・ヤシマはミライ・ノアとなった。スレッガーは死んでいないが、結ばれはしなかったようだ。
ヤザン・ゲーブルとライラ・ミラ・ライラは恋人以上夫婦未満の関係を続けてながらNシスターズ基地所属のMS隊員としてジム・カスタムを運用しているし、リュウ・ホセイもジム・コマンドに乗って同隊に所属している。フラウ・ボゥは来年、フラウ・コバヤシとなるとのことだった。
さて、そんな中でセイラ・マスはアムロとの友人以上恋人未満(アムロ視点)、親しい友人(セイラ視点)な関係を持っていたが、アムロの軟禁でその関係は自然消滅し、セイラは連邦軍からの給料および年金と口止め金で小さいながらも資産運用会社を始め、それがウィナー家傘下となったことで、地球圏のそれなりの金持ちの仲間入りを果たしていた。
半年前、ガーティ・ルー艦内で兄との再会は果たしたが、兄に同行してアンブロシア民間区へ移住することは断り、一人、地球に降りたのである。アムロとは、手紙で連絡は取ったらしい。
「……みんな、大分落ち着きましたわ。本当にありがとうございます」
「まぁ、何もしなくともこうなったとは思うけどね。さて、今日のお話はそれだけかな?」
話の矛先を向けてみると、経済的なお話を持ち込んできたようだった。投資関係で株を購入することになった運送会社関連で、特にA.E社関係の株価がこのところ下がり気味なのに対し、A.Eグループの中心企業であるアナハイム・エレクトロニクスの株価が徐々に上昇してきていることについてだった。
当然私もその報告は受けており、デラーズ・フリートが海賊に偽装してアナハイム運送の貨物船を襲撃―――実は襲撃に見せかけた物資の横流し―――し、それによってデラーズが物資を受け取ると共に、宇宙空間の治安維持を名目にジャミトフ関係の部隊が創設される準備に、MSの生産がアナハイムで始まっているらしいとのことだった。
特に後者、アナハイムでのMS生産の話は初耳だった。今あいつらはジオン系企業からの技術吸収で忙しいはずだろうと思っていたからだ。ジムⅡの生産はともかく、地上用MS市場をリオンシリーズの登場で駆逐される事を恐れて、ティターンズに近寄ったと見るのが正しいだろう。ジオン系の技術者がZIMAD社、MIP社系で流れているから、その方面でジオン系のMSを配備するのか、それとも、ジム・クゥエルのように改修機とするのかは調べておく必要がある。
貴重な情報だった。流石にGP社ではそちらの情報を捉えられていないし、今は地上で必要とされるリオンシリーズの生産にかかりきりになっているようだから、余裕もないだろう。ジオニック社のMS製造開始許可は議会を通過するそぶりもないから、まだ我慢しなくてはならないが、そろそろ0083年の戦闘を考えて、こちらも新型量産機の導入を図るべきなのかもしれない。
その後、セイラとは四方山話のみをしてから別れた。また地球、ダカールの事務所に戻るとの事。連絡はそちらに、ということだった。正直、彼女から微妙な感じがしないでもなかったが、ミツコさんを悲しませるわけにはいかない。セイラかミツコさんかと言われれば、どちらを選ぶかなど言うまでもない。
セイラに礼を言って別れると、N1工廠区画のドックに入る。一年戦争時に使っていたホワイトベースとブランリヴァルがアフリカの残党鎮圧隊に取られてしまった結果、月面第一艦隊はまたトロッター1隻に戻ってしまうことになった。しかし、一年戦争時から建造している改ペガサス級の7,8番艦がそろそろ樺太での建造を終了するので、それらを合わせて運用をする予定となっている。また、トロッターも既に数十年運用しているため各所にガタが来ており、現在改修の真っ只中である。
それに、0083でのコロニー落としを考えるとジャミトフたちの性格上、軌道上でのソーラ・システムの使用にこだわって色々と邪魔をしてくることは明らかで、それを援護(流石に落ちるのはまずい)するためにも、一週間戦争でコロニー破砕に活躍したユグドラシル級砲艦を確保しておいた。公式には損傷・投棄されたことになっているので当然事があるまで表には出せない。
これに加えてガンダム00よりヴォルガ級宇宙巡洋艦を数合わせに試作艦として2隻配備し、サラミス級の生産隻数がまとまり次第もらう予定である。と、これでとりあえずMSを運用する母艦戦力としておいてある。
さて、MSの方だが、現在運用している量産機はジム・カスタムで0083でも通用する戦力だが、一年戦争が終了したことで戦力の大半が抜けてしまった。第一小隊はレイヤー中尉しか残っていないし、第二小隊はカジマ中尉以外退役と、二個小隊が隊長以外いないのだ。仕方がないため、一年戦争で連邦軍に入隊させたバイオロイド兵を使って小隊兵員を維持している。勿論、基本はジム・カスタムだ。
しかし、アナハイムのデラーズ・フリートに対する入れ込み具合を見ると、デラーズ・フリートの戦力は強化されていると見て間違いないだろう。一部、合併したZIMAD社製のMSについてはレプリカを作成の上で譲渡しているという話もジオン残党から流れてきた。
……だからあんなにリック・ドムⅡばっかり多いのか、と頭が痛くなってきた。茨の園の状況を偵察するべく、デラーズのところへアステリオンとベガリオンの偵察隊を定期的に出しているが、その際に明らかにア・バオア・クーから持ち出した以上のリック・ドムⅡや作業用モビルワーカーを保有していたのだ。
プロペラントの予備もかなりあるから、艦艇の外に係留するなんていう無茶な運用もするかもしれない。普通、デプリによる損傷を考えて絶対にしないが、乾坤一擲の作戦ともなれば話は別だ。それに、一年戦争でムサイ用カーゴなんて装備を作り出したから、それに載せて運用するのもアリ。……思えばアレも無茶な装備だ。3機の搭載が三倍+だものな。
などと考え事をしながら工廠に入ると、聞きなれた声が響いてきた。テューディとセニアの声だ。何事かと耳を向けてみると、どうやら同じ事を考えていたようで、次の量産機をどうするかを考えていたらしい。セニアがPT系列からのものを考えているのに対して、テューディは魔装機からの量産を考えているらしい。
「素直に量産型ゲシュペンストの全体配備を考えるべきよ!わざわざ開発したのにもったいないじゃない!」
「PTを採用すれば援護射撃を行う戦力が不足する!それに、数を用意できないんだからここは魔装機の運用別配備を考えるべき!」
話の内容がよくわかる喧嘩だ。確かにPT系列の量産型を配備すれば個体性能が高いからジムやザクなど圧倒できる。一年戦争時に運用していた量産型ゲシュペンストを全体配備すれば、技術的にも問題がない。しかし、支援戦力が不足する。OGの主人公たちであれば、R-2もありシュッツバルトもヴァイスもあるからそうした戦力に不足はないが、長距離射撃が効かない点は、まさにリオンに数で敗れた背景にあるだろう。
だからといって魔装機に問題がないわけではない。ジェネレーターという危険なエンジンを密閉世界と言う環境で運用せざるを得ないラ・ギアスでは、融合炉系の技術が使えない。爆発の大きさで世界に悪影響を及ぼしかねないからだ。だから、融合炉の反応を結界で抑えるし、低出力のジェネレーター出力を精霊との契約で補完する必要があった。でも宇宙世紀に精霊はいないのだ。
「喧嘩しているところを悪いが、同じ悩みで来たんだけど」
そう話しかけると二人が一斉にこちらを向き、同時に表情を変える。最終的な決定権がこちらにある事を知っているから、如何にかして篭絡しようとでも考えているのだろう。あのねぇ、情実で戦力決めるって論外じゃない?まぁ、まずはテューディの方から行くか。突っ込みやすいし。
「確かにゲシュペンストに支援用の大火力が不足していることはわかるけど、魔装機も精霊と契約できないでしょ?」
「その点はラ・ギアスで用いれなかった融合炉系のジェネレーターが使えるから問題ない。精霊との契約で補う必要はなくなる」
ふむ、そりゃそうだ。一番の問題が解決されるわけだからな。
「じゃあテューディは何を採用しようと考えているわけ?」
力強く頷くと、テューディは自説を開陳した。
「近・中距離でガディフォール、中・遠距離でブローウェルだ」
「ガディフォールは機動性高いけど装甲薄いよね?風系の魔装機だから仕方ないけど。それに、両方とも砲撃戦主体の機体だから、戦線に壁を作れないよ?優れた機体だから、ガディフォールを遊撃戦用の機体として使う、と言うならわかるけど」
むぅ、とテューディは黙る。数を集めれば砲撃戦で押しつぶせるが、数が無い様であれば機動性と機動防御でしのぐしかない。でも、どこかで敵を拘束する必要が出るから、装甲厚をそれなりにもった機体を用意する必要がある。
「だったらデュラク……」
「はいセニア」
とりあえず無視無視。気持ちわかるけど、そういう事をやるのはもっと後。量産型デュラクシール軍団とかないだろ。こっちが使っている分にはチートだが、ティターンズが使い始めたら目も当てられない。
「ゲシュペンスト用の支援火器を作る!」
「あんまり強いのはまだだめだよ?ビーム系も基本、まだまだ発展途上なんだから。本格投入するならグリプス戦役まで待たないと。でも、現状でもバズーカなどの運用も可能だから、そういうのであればアリだね」
その答えに満足するセニア。悔しそうな顔をテューディがするが、仕方がない。元々この時点で量産型として用いるのを考えていたのはゲシュペンストだ。しかし、確かにテューディの意見も捨てがたい。ゲシュペンストは基本近接格闘の気が強い。砲撃戦を考えた機体は考慮に入れておくべきだろう。
「テューディ、ブローウェルの改造案を今度頂戴。支援用のMSとして生産できないか検討するから。あのリニアレールガンの長射程は欲しい。可能ならディアブロでもおっけー」
そういうと、やっと私の言うことが解ったか、とドヤ顔になる。こういうところさえなければ良いんだけど。まぁ、良い。今回はそれだけじゃない。
「で、それは後に回すとして、テューディ、私とハマーンの専用機の件はどうなっているの?」
テューディは顔を直すと頷いた。
「うん、セニアとも話し合ったが、基本連邦で動かす場合にはヒュッケバイン系の機体で行こうと思っている。だからセニア任せだな。あのデザインは連邦側で、出所を隠しながら運用するにはちょうど良い。今は候補を探しているところだ。あたしとしては、トールの安全を考えるとデュラクシールを使いたいんだけどな。……でも、過剰戦力だろう?影響も怖いし」
うんうんと頷く。ここまでは予想通りだ。
「しかし、ジオン側で運用するとなると、ヴァイサーガが使えないのは痛い。翻ってアシュセイヴァーという手もあるが、アレはデザインが連邦系だろう?装備の件もあるし、ジオンが使うには少し問題がある。……だから、少し悩んでいるんだ」
確かに。基本スパロボで使うにしても主人公の乗る機体としてデザインされているおかげか、ガンダム顔が基本だ。ヴァルキュリアシリーズは珍しくダグラム顔だが、アレは樺太でのミツコさんの件があるから、連邦系、と考えられてしまうだろう。それに、現在の低い操縦経験で、ファンネルを動かしながら機体を動かせるとは思わない。キットに頼るも良いが、使う以上、そのダブルスキルはこなせるようになっておくべきだろう。
テューディとの話はまだ続く。セニアは量産型の主力と連邦側の専用機がPT系になることでそちらの作業にもどって行った。場所が場所で立ち話もなんなので、自室に戻ることにする。前方からハマーンが走りより、こちらに抱きついてきた。
「戻ってきたなら連絡!」
「……解るでしょ、ハマーン」
NTとしての能力に不足ないハマーンなら、セイラが帰ったことも簡単に察知できるはずなのだが、どうも察知しても呼ばれることが重要らしい。テューディにまで、「お前はそういう心配りが足らない」とか言われてしまった。配るどころか乗っ取ろうとした人に言われたので流石にへこんだ。
ちょうど良いのでハマーンも交えて専用機の相談を開始する。プルサモールも影響強すぎるので、ジオン色を薄れさせるために何かを考えなくてはならないのはハマーンも同じだ。少なくとも、ドズル閣下が戻ってくるはずのグリプス戦役まではジオン色を出さないように活動したい。ただ、必要になるのはまだ後だから、ゆっくり検討することとしよう。
そろそろ修行も始めないと。東方不敗という選択は怖いから、黒いブルーダーさんに頼もう。GFなら格闘とMS両方あがるだろうし。