第0話【魔法の言葉はりりかるまじかる、幸せになーれ!】
高町なのはの幼少期を一言で言うなら、文学少女。一家の大黒柱が大怪我を負い、家族がそれぞれの出来る事に精一杯だった時、なのはは独りぼっちだった。そんななのはに、姉の高町美由希は寂しくないように自分が集めていた絵本をなのはに読み聞かせた。それ以来、なのはは本を読み始める。
そのジャンルは【魔法少女】いわゆる魔女っ娘に分類するものである、美由希の細やかな趣味だ。女の子なら魔法少女に一度は憧れるものだろう、美由希もそうだった。そして、その本に熱中したなのはもまた魔法少女に憧れる。その中でなのはが気に入ったものは、カラフルな服を着て箒で空を飛び魔法の杖を持った女の子――魔女っ娘と呼ばれる話。
絵本の中の魔女っ娘たちは箒に乗って空を飛び、手にした可愛い杖で呪文を唱え人々を幸せにしていた。それは幸福な物語で奇跡の物語、結末はハッピーエンド。その本を読んでなのはは思う、じゅもんをとなえたらおとうさんのけがもなおってみんながしあわせになれるかな?と。
幼いなのはが願った【まほう】本当に使えたら、どんなに幸せなことか。勿論なのはは知っている、絵本は空想で現実にはない。それでも願った、魔法の言葉を唱えたら奇跡が起こせそうな気がして。呪文を一生懸命、紙に書いてこれだと思った言葉を言ってみる。
「りりかるまじかる、おとうさんのけががなおーれ!」
何も起きない、一人家で留守番していたなのははちょっぴり泣いた。諦めず何度も何度も唱えて疲れて、テーブルに突っ伏すように眠る。せめて夢の中では魔女っ娘として皆を幸せにできるように。
なのはが家で魔法の呪文を唱えた時、偶然か必然か父の高町士郎の怪我が回復に向かう。世界は不思議な事がたくさんある、そういう事もあるのだろう。父の回復、自分があのじゅもんをとなえたからかなと思ったなのはは更に魔女っ娘に憧れた、こうして幼い心に刻まれた呪文【りりかるまじかる】それが後に本当に成る事は知らない。
あれから時は流れ、なのはが私立聖祥大附属小学校に入学した三年後物語は始まる。
これは、一人の魔女っ娘の物語。魔法少女ではなく、魔女っ娘に変身する高町なのはの物語である。海鳴市、箒で空を飛ぶ少女が舞う時はすぐそこまで迫っていた。
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第1話【魔法の国からやってきた男の子】