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No.22278の一覧
[0] 〔習作〕 平凡を望む (現実→リリカルなのは)  <完結>[クロ](2010/10/06 20:18)
[1] 1話 目覚め[クロ](2010/10/01 20:43)
[2] 2話 魔法[クロ](2010/10/02 17:41)
[3] 3話 仲間[クロ](2010/10/02 18:09)
[4] 4話 任務1[クロ](2010/10/05 17:46)
[5] 5話 決意[クロ](2010/10/06 00:00)
[6] 6話 不同[クロ](2010/10/06 04:52)
[7] 最終話 最高[クロ](2010/10/06 20:17)
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[22278] 最終話 最高
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9 前を表示する
Date: 2010/10/06 20:17
月日は流れ、俺は管理局の魔導師になっていた。
俺は働き続けた。ただ、がむしゃらに働き続けた。
それこそいつ死んでもおかしくないような無茶をし続けた。
ちなみに、俺と一緒に研究施設から保護を受け、
魔導師になった者でも、今生きているのは数人だけだ。
戦闘で死んだ者も多くいるが、
元々、量産型のクローンには欠陥がいくつかあった。
例えば一つ挙げれば、普通の人間よりは長生きは出来ないなどだ。
ただ俺はそれを聞いても何も感じなかった。


俺はいつものように仕事へ向かう。
今回の任務はクローン研究をしていると思われる違法研究施設の制圧だった。
いつもこんな任務の時は昔を思い出し、苛立ちが募る。

「管理局だ。大人しく投降しろ」

感情のない声でセリフを吐き捨てる。
しかし、頭に血が上っているのか、一人の魔導師が攻撃を開始し、すぐさま戦闘になる。
高速飛行から勢いをつけ、まずは先頭の魔導師を一撃で葬り去る。

その時、正面から声が聞こえた。

「久しぶりだな」

昔、一緒に研究施設で訓練した仲間だった。まだ生き残りがいたか…。

「お前達が管理局に保護された後、お前のせいで俺まで処分されるとこだったぜ。
今はこうして何とか生き残ってるけどな」

敵の魔導師から魔力が放たれる。
魔力込めた一振りで全て打ち消す。

「お前が少し羨ましく思った事があったが…。アア、悲劇の対決ってか!
ハハハ。動きが鈍いぞ。本気で来い!俺達にはそれしかないんだからよ!」

俺の一振りで敵の魔導師を地面に叩きつける。舞空術のように、ゆっくりと
地面に近づき、敵を見据える。

「死にたくない…。アーニ…」

アーニとは大切な人の名前だろうか…。死にたくない…。
何故死にたくないと、そう思えるのだろうか。 
聞こうにも聞く事は叶わない。当り前だろう。もう死んでいるのだから…。

俺は歩き出す。ふと人影が目に入る。

「先輩…」

かつてと変わらない姿で俺が昔、先輩と呼んでいた人物が現れた。

「その名で呼ばれると懐かしくなるな。俺はお前を何故か気に入っていたんだがな。
懐かしんでるどころじゃないか…。早くしないとお前と同じようなクローンを助けられないぞ」

俺達は戦い合う。そうするしか…。
俺の一振りで先輩を地面に叩きつける。舞空術のように、ゆっくりと
地面に近づき、先輩を見据える。

「お前は変わってないな…」

俺は変わってない…。あの頃と何も…。でも、俺が変わったとすれば…。

「いえ、変わりました。俺はあなたのおかげで変わったのかもしれない。
そうでなければ俺は行動を何もしないままだった…」

「そうか…。それなら…。俺は…」

そのまま先輩は息を引き取る。
本当は変わってないのかもしれない。でもあの時は確かに変わったはずだ。
自ら行動起こして、自分の意思で動いた。覚悟を決めた日だ。研究所から逃げ出そうとした決めた日。
それが正しかったかどうかは別としても…。
でも今の俺はどうだろうか…。
俺はまた、いつの日からか停滞してしまったのかもしれない…。
今まで人の死は何度も見てきた。慣れてきた…。先輩がかつて言ったように。俺も慣れたはずだった…。
何故今になってこんなに心が乱れる…。

何故だろう。俺は久しぶりに悲しい気分になった。いや悲しい気分になったことは何度もある。
でも自分自身を悲しいと思う。何で俺は…。

何故だか、俺は研究施設の先輩と仲間を殺して、管理局の同じ境遇の仲間と話しをしたくなった。
電話を掛けて、かつて一緒だった仲間を呼び出す。
待っていると、カレンが最初に来る。

「久しぶりだね。シオンから電話をかけるなんて珍しいね」

「そうだな…。他の皆は?」

「皆、急に仕事で来れなくなったって…」

「そうか…」

「今日、昔の仲間に会ったんだ。先輩ともう一人に…。そして殺した…」

「……」

「先輩を覚えてるか?俺はあの人のおかげで助かった時が何回かあったんだ」

「シオンとはよく一緒にいたね…」

俺はただ先輩に八つ当たりで感情をぶつけて…。先輩から見れば俺はただのクソガキだっただろう。
でもそれが何故かいい思い出に思える。何故だろうか。
何故俺が、こんな事を口走ったかは分からない。俺は勝手に口が動いていた。

「俺はここが夢なんじゃないかと思う時が何度もあるんだ。
ホントの俺はいなくて、俺は死んでいて…」

「シオンは生きてるよ。今私の目の前で」

「違う!そういうことじゃない!!」

俺は何を言っているんだ?何故こんなに感情が止められない。これじゃあの時と同じじゃないか…。 
先輩に八つ当たりをした。あの時と…。

「シオンが何に悩んでいるか正直分からない…。自分を考えず死ぬような無茶ばかりして…
今ままで一人で無茶ばかして…あなたの悩みは私には分からないかもしれない。
それでも一緒に悩みを背負うぐらなら…」

糞っ。何も分かってないくせに…。

「あぁー、ちょっと悩みを聞いてくれて、助かったよ。」

俺は少し笑いそう言い、軽く流す。俺の悩みなんて誰も分かるはずないか。
俺は一度死んでるんだ。自殺という罪を犯して。
そして、こんなありえない世界に飛ばされ、人が平気で死ぬような世界へ。
本当に俺が生きてるかも分からないこの世界で。

「起こってしまった事は仕方ないよ。何かを背負ってても…今を生きるしか…」

もういいって…。俺は笑って誤魔化す。

「そうだな」

沈黙が続く。カノンがその沈黙を破る。

「シオンは逃げてるだけじゃないの?何もかもを拒絶して!」

「逃げてない!何も知らないくせにふざけるな!」

ついに俺は耐え切れず声を荒げてしまう。

「もういい。悪いが帰ってくれ」

俺は冷たく、そう言い放った。

「話してくれないと分からないよ!私は…知りたいから…」

「じゃあ、教えてやるよ!俺は異世界から自殺して気付いたら、この世界にいたんだよ!」

今まで、この事は、この世界に来て誰にも言った事のない…。普通の人から見れば馬鹿丸出しの
精神病患者みたいなことを言って、しかもこんな夢の世界かもしれない世界でこんな事
を言っても仕方ない。俺は激しく後悔した…。

カノンは呆けたような顔をして無言になった…。

「冗談だ…帰ってくれ…」

俺はそういって背を向ける。

「異世界…。仮に異世界からして自殺して、それでこの世界にいたとして、それがどうしたの!」

いきなりカノンの様子が変わる。

「だから冗談だって!」

「今も自殺と変わらないじゃない!」

「同じじゃない!生きてるだろ!」

「さっきは自分のことを死んでるって言ったわよね?ホント同じだわ!死んでるのと!ただ生きてるだけ!」

カノンに俺は掴みかかる。

「矛盾しているわよ。ホントは分かっているんじゃないの?」

いや俺は死んで…。本当はこの世界は…。頭が混乱してきた。
本当は分かっていた?いや本当に分からない…。俺は…。

「私はあなたに生きてて欲しい!生きて…。もう…私は…生きて欲しいから…」

今度は泣きじゃくりながらカノンは言う。

「生きていいのか…生きてるのか…生きている意味が…」

「私のために生きて欲しい…私は…」

カノンは唇をそっと重ねる。
考えても見てくれ。忘れている人に説明するとカノンはフェイトのクローンなわけだ…。
グラマラスでそれでいて…。そして……俺は一晩中、濃厚な夜を過ごした。
胸のうちを吐き出し、ベットで語り合いながら…。
そうして、この時の大量の子種が大当たりした。

時が経ち、俺は今、家族と一緒に幸せに暮らしている。
今でも俺は管理局員だ。昇進も断り、今でもずっと現場にいる。上に立つと人の死を多く見る事になる。
そして責任も…。それが怖かったからだ。根本的な俺の臆病な部分は変わってないかもしれない。
でもそれでも俺は変わった。死ぬのが怖いと思い、生きたいと。しかし、たとえ俺は今死んでも幸せだと感じるだろう。
抗って生きたと胸を張って言えるからだ。もちろん死ぬつもりもないし、死にたくはない。
俺は抗い続ける。生きるために!俺は今を生きてるんだ!幸せになるために!


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