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No.22116の一覧
[0] 【ネタ】こんなネギも絶対居るよね(シリアス ネギ改変)[ホットケーキ](2010/09/23 17:09)
[1] 「孤独」 [ホットケーキ](2010/09/28 11:36)
[2] 「無視」[ホットケーキ](2010/10/03 14:10)
[3] 「夢想」[ホットケーキ](2010/10/06 14:33)
[4] 「同類」[ホットケーキ](2010/10/24 10:38)
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[22116] 【ネタ】こんなネギも絶対居るよね(シリアス ネギ改変)
Name: ホットケーキ◆60293ed9 ID:10285d3b 次を表示する
Date: 2010/09/23 17:09














何処かの誰かは言った。
世の中には幸せな者が居れば、不幸な者が居ると。

まるで、光と闇。カードの表と裏の様に。

そして、そういった幸福な人間が幸福であればあるほど、












その世界の犠牲者とも言える不幸な人間の不幸は、増す。

















燃え盛る村。
僕はただ泣くだけしか出来なかった。
魔法の射手の一つすら放てず、瓦礫をどかすだけの力も無く、紅い炎を消し去る手段を思いつくだけの知恵も無い。


ただただ、目の前の事に流されて行くだけの、無力な子供。


ココロの底から絶望した。
無慈悲な現実にも、現実に立ち向かえない弱い自分にも。
三歳だったのだから当たり前だろう。
だけどそんな理由で見逃してくれる程現実は甘く無いし、自己嫌悪も収まらない。

石になった、僕の大切な人達。
世話をしてくれたおじさん。幼馴染の両親。村の人達。




そんな地獄から助けれてくれたのは、一人の魔法使いだった。
それも只の魔法使いでは無い。

世界を救った英雄と呼ばれ、死んだと周りから言われた、僕のお父さんだった。


父さんの力は凄まじかった。
膨大な魔力による魔法は魔族達を数十単位で薙ぎ払い、拳と足は、たやすく魔族の肉体を壊す。
それは圧倒的で、まるで人じゃない様だった。




父さんは暫くして、僕とお姉ちゃんを助けて何処かへ行ってしまった。
僕は遠くへ行ってしまうその背中を必死に追いかけたけど、追い付けなかった。

僕の手に残ったのは、一本の大きな杖。
自分の体に対して余りにも大き過ぎる、魔法を使うための媒介。


僕はこの時、父さん(ヒーロー)の様になろうと決心した。











四歳になった頃。
深夜、僕は学校の書庫に居た。
本来なら一人で、しかも子供がこんな夜遅くに入るなど問題以外の何ものでも無い。
でも、僕は早く強くなりたかった。知恵を得たかった。

早く、父さんの背中に追い付きたかった。


「……ネギ」


「!?」


ビクッ!と肩が震える。
思わず手に持っていた古い魔導書を落としてしまった。
恐る恐る、後ろを振り替える。
書庫入り口の扉の前、そこに自分の姉が立っていた。
自分で言うのもアレだが、ネカネお姉ちゃんは美人だ。
薄暗い書庫の中でも、その美しさはハッキリと分かる。
……後、怒っている事も。


「お、お姉ちゃん……」


「ネギ、ダメじゃない。こんな夜遅くにこんな所に居ちゃ。それに、ここは立ち入り禁止よ」


「ご、ごめんなさい……で、でも……」


僕は慌てて言い訳しようとして、


「……?」


「?どうしたの、ネギ?」


「えっと……」


言葉に詰まる。
金色の髪。瞳の色。顔。背の高さ。
全てがネカネお姉ちゃんだ。

だけど、何処か表情がおかしい気がする。


「ネギ?」


首を傾げながら、お姉ちゃんは此方に向かって一歩を踏み出す。


反射的に、僕は一歩下がっていた。


「ネギ、どうしたの?」


「……」


僕は答えない。
言い様の無い緊張感と悪寒が身を包み、体から冷や汗を流させる。
ネカネお姉ちゃんはもう一歩踏み出す。

僕も、一歩下がる。


「あうっ!?」


ドンッ!と、本棚の壁に背中がぶつかる。
バサバサ!と反対側に積まれていた本が落ちる音がするが、僕の耳には入らない。
下がれない僕を余所に、お姉ちゃんは一歩一歩、ゆっくりと此方へやってくる。

コツ、コツ、とお姉ちゃんの靴が立てる音が、やけに響いて聞こえる。
机の上に置いてあるランタンの灯りが、一瞬強くなった。




揺らめくオレンジの色の光に照らされたお姉ちゃんの顔は、酷く歪んでいた。


「ネェ。ネギ、ドウカシタノ?」


「あ、あぁぁぁ……ッ!!」


これは、なんだ。
こんな歪んだ表情を、僕の知っているお姉ちゃんはしない。
こんな背筋に悪寒を走らせる様な声を、お姉ちゃんは発しない。


目の前の“コレ”は、自分の姉では無い。


「クスクス……ネギ、ドウカシタノ?」


「ぁ……ぁぁぁぁあああああああっ!!?」


僕は叫んだ。
だが恐怖に縛られ、体は動かない。
だから泣き叫んだ。

あの、雪の日の時の様に。


気がつけば、目の前の誰かは右手にナイフを握っていた。
禍々しい、紫色のナイフ。
所々魔法の術式が見えるので、マジックアイテムなのだろう。

そのナイフを僕の方向に向ける。
何時の間にか、後一歩の所まで距離を詰められていた。


もう、逃げられない。


「……シネ」


ポツリと、一言だけ呟いた後、僕の姉に化けた誰かはナイフを僕に向けて突き出した。

ザシュッ!!と、ナイフは切り裂いた。


僕を横に突き飛ばしたアーニャの肩を。


「……えっ?」


僕はゆっくりと床に倒れ込みながら、思わず呟いた。
何故?
何故アーニャが?

何故、僕じゃなくてアーニャが?


「チッ。人払イノ結界ヲ張ルベキダッタカ」


「うっ……」


ナイフを引きつつ舌打ちする誰か。
その言葉の間に、苦し気に呻いてアーニャは膝を付いた。


「アーニャ!!」


僕は慌てて立ち上がり、倒れそうになったアーニャを支える。
倒れ掛かって来たアーニャの体は少し重い。
体から完璧に力が抜けている様だった。
息が荒く、顔は汗が大量に流れており、青い。


「毒ノナイフダ……マァ、処理ハ後デ雇イ主ニ任セレバイイカ」


ナイフで空を薙ぎ、アーニャのローブの切れ端を落としながら誰かは言う。
その言葉をアーニャを支えたまま、ボーとした表情で聞く。

訳が分からなかった。
何でこんなことになっているのか。
何でこんな目に合わなければならないのか。


何で、自分はこんなにも不幸なのか。


「サウザントマスターノ息子……村ノ時ハ殺シ損ナッタガ、今回ハ確実ニ殺ス」


そのセリフを最後に、僕は自分の中で何かが変わるのを感じながら意識を闇に落とした。























次に目覚めたのは、病院のベットの上だった。
大人に話を聞くと、どうやら丸二日も経っていたそうだ。
体がズキズキ痛むのに疑問を感じつつ、更に詳しい話を聞く。

あの日、見回りの教師が轟音を耳にし駆けつけた。
そこで見たのはボロボロになって倒れる僕と、苦し気に呻くアーニャ。


そして、半解し瓦礫と化した書庫だった。


恐らく、自分の魔力が暴走し、その結果こうなったのでは無いかという話だった。


暫く経って病院を退院し、アーニャも問題無く退院した。


だが、僕の心はそう簡単には行かなかった。

目に付くモノ、全てが信じられない。

化けているのでは無いか、もしや猫を被っているのでは無いか。

ふとした拍子に、自分を殺そうとするのでは無いか?

もしくは、自分の名声や力を利用しているのでは無いか?

ネカネお姉ちゃんも、アーニャも信じられなくなった。赤の他人など論外だ。

物も、世界も、家族も、夢も。何一つ信じられない。

信じられない。

信じられない。

信じられない。

信じられない。








信じられない。






本当ニ信ジテモイイノカ?








僕は、全てを拒絶した。

















日本、麻帆良学園。
太陽が白い光を放つ朝、駅から学校までの大通りは登校中の生徒達で埋まっていた。
生徒達がそれぞれダッシュしたりスケボーに乗ったり電車に捕まったりしているため、正しく登校ラッシュと言える風景だった。

それもその筈。
何せ今の時間帯は遅刻ギリギリなのだ。
当然、誰もが急いで学校に向かう。




だが、そんな登校風景の中に一つだけ異様な光景が有った。


人によって産め尽くされている筈の通学路に、一つだけポッカリと空白地帯が生まれていたのだ。
十メートル程の円状に、人の居ない空間。
普通なら遅刻しないために、誰も居ないそこを駆け抜ける人間が居る筈だ。


しかし、通る人間は居ない。
皆、顔を少し青くしながらその円を迂回するように走って行く。
いや、正確には円の中心たる“少年”を避けるように、だ。

少年は身長からしてまだ子供。
十歳程度と言った所か。
赤と黒の髪はボサボサで手入れも全く施されておらず、肩までかかっている。
身に纏う白いローブもかなり擦り切れており、年季を感じさせる。
その背中には一本の杖。
木製の巨大な杖は包帯によって包まれていた。
肩には一つだけバックをかけている。


確かに、日本から見ればかなり異様な少年だが、麻帆良の生徒はその程度で離れようとするほど人見知りばかりでは無い。
では何故少年は避けられているのか?
答えは簡単。


避けられているのでは無く、避けさせているからだ。


少年から放たれる、常人すら理解出来る殺気。
とてつもなく巨大な、拒絶の波動。
背中から放たれるそれに生徒は冷や汗を垂らして迂回し、少年の横顔を見る。


横顔を見た百人の内、半分以上が絶句し、半分以上が視線を反らした。


普通なら美少年と言われておかしく無い筈の表情は、無。
何の感情も現さず、何の思いも映さない。
そして、黒い黒曜石の様な瞳にはただただ、絶望だけが映っていた。
この世界全てを憎み、この世界全てに絶望した目。


そんな、余りにも“異常”過ぎる少年は、周りの反応もお構いなしにゆっくりと歩を進める。


「日本で先生をやること、か……」


ポツリと、少年は日本に来て始めて呟いた。
彼が呟いたのは、学校での最終課題だ。

それに対し、少年は正直どうでもいいと思っていた。
学校を卒業したのは力が欲しかったからだし、もはや力を得た以上、自分のやりたいことも分からない。
昔、何か目的、夢が有った気がするが思い出せない。
別に思い出せなくていいとさえ思う。
今更、夢など追いかける積もりにもなれない。


そんな風に、全てを拒絶しながら彼はゆっくりと歩く。
色(希望)の無い白黒(絶望)だけの世界を。


















だが、彼にも光(希望)は存在する。


タッタッタッ、と、誰かの足音が近付くのが聞こえた。それと同時に若干戸惑いの声も。
少年は勿論無視。
気にもとめず、ただ歩き続ける。


「ちょっとアンタ!」


その声が後ろの気配からして自分に向けられていると知り、ゆっくりと彼は顔を動かす。
動かした際、目に入った周りの生徒達は少年では無く、空白地帯に入った誰かを、驚きの表情で見ていた。

少年もその人物を光が無い目で見る。


居たのは、一人の少女。
オレンジ色の髪を鈴が付いたリボンでツインテールにし、女子中学の制服に身を包んでいる。表情は若干怒りを滲ませた不機嫌な顔。少年を見る瞳は左右で違った色をしていた。




そして、その瞳からは少年と正反対の、溢れんばかりの光が垣間見えた。

少女は若干下から、絶望のみで構成された瞳で見られても全く物怖じしない。
真剣に、その瞳を見返す。

今までに無かったことに、少年、ネギ・スプリングフィールドは、少しだけ表情を変えた。




目の前の少女、神楽坂明日菜と同じ、不機嫌そうな顔へと。












誰かは言った。
「どれだけ暗い闇の中でも、必ず一筋の希望の光がある」と。





















後書き
タイトルを付けるなら「拒絶先生ネギま」かな?

少しでも面白く思ってもらえたら幸いです……一人称久しぶりなので。



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