【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十八話
今回はウィル子&ひでおは出ません!
後前回の様な真似は2度としないように注意しますが、何かヤバイと思ったらどしどし感想板に意見ください。お騒がせしました。
隔離空間都市内某所、「リトルチップス」店内にて
「う~ぃ…ひっく!」
シスター姿の女性が飲んだくれていた。
言わずもがな、マリアである。
事の始まりは昨日、ひでおが退院した直後に遡る。
ひでお(&ウィル子)の住居である安アパートにマリアはアポ無し突撃を敢行、鍵が仕舞っていたドアを吹き飛ばし、室内に侵入した。
『ひでおさーん!…あれいない?』
代わりにアパートには置き手紙が一つ。
『暫く修業しにいきます。探さないでください。ひでお
PS.もし追ってきたら縁を切ります。』
マリアの受けた衝撃たるや、文字で言い表せない程のものだった。
何せ漸く後顧の憂い無しに甘えられる!と思ってたのに本人は留守、しかも「来んな」の一言。
更には自業自得と言えど、大家であるミッシェルに雷を落とされ、ドアを修理する破目になった。
で、丁度ここに来る寸前に一応相方のマリーも別行動を取ると言っていない上に先日のレースの事もあり、マリアはひでお不在の理由をどんどんどんどんどんどんネガティブな方向へと考えていき…
「ひっく!」
あら不思議、自棄酒中の酔っ払いができました。
「お嬢ちゃん、何をそんなに荒れてるかは知らねぇが…そんな飲み方してちゃ身体を壊すぜ?」
「ぃいんれすっ!どうぜ、どうぜわだしなんが…っ!!」
渋いおじさまのマスターが見かねて声をかけるが、マリアは彼の気遣いに気付く事も無く更に泣きわめき、手元のグラスを一気に飲み干す。
常にある程度の身体強化・障壁・感覚強化・並列思考・薬物無効化を行使している彼女にとってアルコールで酔う事はできても、身体を壊す事は有り得ない。
その点ではマスターの気遣いは無用なのだが、それ以前に今のマリアは人としてアレであった。
「えぐっえぐっ……。」
「こりゃ処置無しだなぁ。」
マスターが困った様に呟く中、不意にマリアの耳に酒場の喧騒を貫いて、とても流麗な歌声が届いた。
「んん?」
むっくり、と熊の様に顔を上げて歌声の主を探すと、そこには酒場の向こう側で歌声を披露する美女の姿があった。
「ありゃはせーれーんでふか~?」
「おや、詳しいのかい?」
セイレーンは御存じ歌で船乗りを惑わせる海の魔物だ。
上半身は女だが、下半身が鳥というが定説である。
しかし元々は人魚をルーツとしている。
人魚は初期が鳥と女と魚の特徴を併せ持った生き物とされ、美しい歌声や人を惑わせるなどは共通している。
そこから魚としての性質を継いだのが人魚、鳥としての性質を継いだのがセイレーンと思われる。
閑話休題
上記の様な特徴を持つセイレーンだが、何故よりにもよって陸地で活動しているのだろうか?
酔った頭でもその知性を失わないマリアの桃色の脳細胞は思考を続けるが、さっぱり答えは出ない。
「わらしもちょっとうたってきまふ~。」
「へ?な、ちょっとやめときなって!?」
マスターの忠告も耳に入っていないのか、マリアはふらふら~っとステージの方向へと向かっていく。
「おじゃましますよ~。」
「え?あ、あなた!レースで準優勝だったマリアさんよね!」
「あい~?」
そして、あれよあれよと言う間に、数分後にマリアは彼女の望み通りにステージへと立つ事となった。
取り敢えず、歌う事になった。
でも、何を歌おう?
そこで思い出すのは、先程の美女の歌。
あっちは悲しみとか切なさが出てなぁ。
なら自分は、以前よく歌っていたアレによう。
酒の場でもよく歌っていたから大丈夫。
この酒場にいる者は知らなかった。
マリアはかつてイスカリオテと神殿協会にて、その美声を生かしてよく歌っていた事を。
聖歌からポップ、ロックその他諸々。
その過半数がアニソンだったのはイスカリオテの面々だけでなく、悪乗りした神殿協会(の男性陣)の仕業であったが、しかし、上手いのは確かであった。
しかも魔法を使って1人照明や1人デュエットまでこなす万能ぶり。
更にはセイレーンたるレミーナと言えどもやはり魔物、神聖属性を付加されたマリアの歌にはどうしても抗い辛い事を。
この酒場にいる者は知らなかった。
呼吸を整え、体内のアルコールを急速分解・吸収。
反動で頭痛がするが、幼少時から宴会で鍛えられたアルコール耐性はそれを無視できる。
既にステージ回りにいた者達には演奏を頼み、準備は万端。
さぁ行こうか。
「私の歌を聞けぇぇッ!!」
そう言えば、これを教えてくれた司祭は「お約束」と言っていたけど、どう言う意味でしょうか?
疑問を余所に開始される演奏、リズムに合わせて歌い出す。
この夜、この酒場でもう一人の「歌姫」が生まれる事になるとは、今はまだ誰も知らない。
魔殺商会傘下の某ファミリーレストランにて
その日、その店の一席に予約が入った。
それはたった1人の、しかし世界を相手取れる女性と聖魔王一派との会談のためだった。
「はぁい皆。待たせちゃったかしら?」
「いえいえ、こっちもさっき着いたばかりですよ。」
「数分程度、待ったとは言わぬよ。」
「ふん、どうせこちらが来る時間を視ていたのだろう。」
「御主人様~もう少し喧嘩腰良くない良くない~。」
「何事も、平和が一番なの。」
家族向けの席に今座っているのは6人。
名古屋河鈴蘭、伊織貴瀬、魔人VZ、みーこ、初代魔王リップルラップル、そしてマリーことマリーチ。
誰もが世界に名だたる存在だ。
「にしても、意外とすぐに気付いたのね?もう少し掛かると思ってたわ。」
「冗談。マリーチさんこそ、全然隠す気無いじゃないですか。」
「うふふ…くすくす!」
上品そうに笑うマリーに、鈴蘭はジト目を向ける。
正直、鈴蘭がマリーを本来の名で呼んだのは、勘に近いものだった。
姿形は幼くとも彼女は確かにあの片翼の堕天使なのだと、力を失ってもそれを操作する感覚だけは残った鈴蘭は見抜いたのだ。
それは先程も言った様にマリーが殆ど隠そうともしないのが原因だが、それでも他人に言い触らさない、「言い触らす必要を感じない」様にする程度の意識操作は行っている。
しかし何はともあれ腹ごしらえである。
「私はスパゲッティミートソースと緑茶で。…それでマリーチさんはどうして此処にいるんですか?私の知っている貴方は神殿教団にいる筈ですけど…。」
「くすくす!いきなり本題から入るのね?でも少し待って。あ、私はシーフードグラタンね?後オレンジジュース一つ。」
「わしはメニューの2ページから3ページ全部頼もうかの。」
「オレとして貴様にはとっとと教団に戻って欲しいのだがな…。ふむ、Tボーンステーキセットを一つ。ドリンクは烏龍茶で。」
「私としては~ヒデオ君の方が気になるかな~?あ、私はサラダパスタで~。」
「ふふふ…死にたい?」
「怖!?マリーチ様むっちゃ怖!?」
「私は、この超☆豪華!グレートフライセットに挑戦するの。エビ、チキン、メンチに豚にヒレにタラ。テラ盛りなの。」
ワイワイガヤガヤ
各々が注文しつつ、それぞれに騒がしく言葉を交わし、食事する。
その様子は何時ぞやのバカンスの様子にも似ていた。
「で、実の所どうなんです?」
「わしとしても気になるの。マリーチや、そなたが男に現を抜かすなど、今まで無かった事。是非教えてもらいたいの。」
「まぁみーこと鈴蘭の頼みだし、仕方ないわねぇ。」
とは言いつつマリーは楽しそうに笑みを浮かべると、くるん、と指を廻した。
そして、鈴蘭、みーこ、貴瀬、VZ、リップルラップルは揃って同じ夢を見た。
それは不器用な魔族の王子様と片翼の堕天使の愛と苦労の夢物語。☜一部誇張があり
2000年に渡る物語りを編集したそれは、しかし現実時間にしては1分にも満たぬものだった。
「うわー、何か物凄いリアルな映画を見せられた気分ー…。」
「もう頭が知恵熱出るー…。」
頭の出来がそれ程良くない鈴蘭とVZがプスプスを頭から煙を吐き出すが、その他の面々は至って冷静…否、リップルラップルとみーこに至ってるんるんと機嫌の良いマリーを視ては冷や汗をかいていた。
ちなみに貴瀬は頭痛を堪えつつ、思案中だ。
「…マリーチや。」
「あら何みーこ?そんなに顔を青くしてどうしたの?」
「これは、真か?」
「9割程。」
「…1割誇張か捏造でも、これは大したものなの。魔族と天使と人間の痴情の縺れなの。」
そんなー、ラブストーリーって言ってほしいわーとか赤く染まった頬を抑えて抜かすマリー(実年齢約< ◎ ◎ >ウボァー)にリップルラップルは増加した冷や汗をナプキンでぬぐう。
「…ほんに変わったの、ぬしは。」
「あら?みーこだってたーくんをペットにした時は大体こんな感じだったわよ?」
「カハァッ!?」
あ、傍観してた貴瀬がストレスで吐血した。
なお、この後は恙無く宴会状態に突入し、毎度のことながらみーこが店の食材が尽きる程食い荒らす事となる。
先日は誠にすみませんでした。
今後某所から苦情が来るようでしたら、悔やんでも悔やみきれません。
管理人の舞様にはこの場で借りて謝罪します。本当にすみませんでした。
当初は全面撤退も考慮しましたが、今暫くは執筆活動を続けたいと思いますので何とぞ御容赦を。