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No.21743の一覧
[0] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!【現実転生→林トモアキ作品・第二部】IFEND UP[VISP](2012/01/10 16:44)
[1] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!嘘予告[VISP](2011/09/07 13:41)
[2] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第一話[VISP](2011/09/07 13:41)
[3] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第二話[VISP](2011/09/07 13:42)
[4] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第三話[VISP](2011/09/07 13:42)
[6] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第四話 改訂版[VISP](2011/09/07 13:42)
[7] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第五話[VISP](2011/09/07 13:42)
[8] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第六話[VISP](2011/09/07 13:42)
[9] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!番外編プロローグ[VISP](2011/09/07 13:42)
[10] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第七話[VISP](2011/09/07 13:43)
[11] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第八話 一部修正[VISP](2011/09/07 13:43)
[12] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第九話[VISP](2011/09/07 13:43)
[13] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十話[VISP](2011/09/07 13:43)
[14] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十一話[VISP](2011/09/07 13:43)
[15] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十二話[VISP](2011/09/07 13:43)
[16] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十三話 修正[VISP](2011/09/07 13:44)
[17] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十四話[VISP](2011/09/07 13:45)
[18] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十五話[VISP](2011/09/19 21:25)
[19] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十六話[VISP](2011/09/24 12:25)
[20] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十七話[VISP](2011/09/25 21:19)
[22] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十八話[VISP](2011/12/31 21:39)
[24] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十九話[VISP](2012/01/01 00:30)
[25] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第二十話[VISP](2012/01/08 23:12)
[26] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第二十一話UP[VISP](2012/01/10 16:05)
[27] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!特別編IFEND UP[VISP](2012/01/10 16:06)
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[21743] 【ネタ】それいけぼくらのまがんおう!第十四話
Name: VISP◆773ede7b ID:b5aa4df9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/07 13:45
それいけぼくらのまがんおう第14話
 「凄惨!森の中からこんにちわ!」



 「ウィル子、林道もいけるな?」
 「え、あ、はい!確かにこの車は元軍事用ですから地雷でも無い限りはいけます!」

 このまま道を進んでいては遅れを取り戻せない。
 なら、道など無視すればいい。

 そう判断したひでおは、コースの外を進み、ショートカットする事を選んだ。

 「等高線の最も緩やかな、高低差の無い場所を進め。」
 「了解です!」

 そして、電子の精霊は最善解の道を見出した。

 「これです!このルートなら追い付ける…!」
 「なら、行こう。」

 相棒の言葉に全幅の信頼を以て返す。
 命を賭けているのだ、こころは既に預けている。

 「一度だけ…マスター、すいません!」
 「構わん…!」

 次いで、ガードレールに向けて加速、同時にひでおの身体への負担が増す。
 
 「………ッ…!」

 ギリ、と奥歯を噛み締めて、負担に耐える。
 この程度、二度目で崩落した書類の山に比べれば屁でも無い。

 「電子武装壱号、イージス開放!!」

 そして、緋色の盾が車の正面に展開され、ガードレールをぶち破り、そのまま2人を乗せたMNK-Eは森の闇へと堕ちていった。




 「あいつら何考えてるんだ!?」
 「自分から落ちたんだから何か勝算があるんでしょ!それより、今はあの婦警に追い付くのが先よ!」

 残された2人、エルシア・翔希ペアは動揺しつつも、他の二台と同様に必死にトップを直走る美奈子へと喰らいついていく。

「くそ!死んでたら恨むからな!」

 吐き捨てた直後、翔希は意識をレースに集中した。






 「トップ集団に追い付ける時間は?」
 「後7分32秒後です!」

 一方、森の中を突き進むひでお&ウィル子ペアは道無き道に苦戦しながらも、確実にトップへと近づいていた。
 通常の乗用車ならパンクしかねないこの状況だが、乗っているのは生憎と元軍事用の高級車。
 生半可な悪路ではパンクしないし、場合によっては地雷にも耐え得る。
 
 「このまま進む。コースに復帰する場合は天候に注意しろ。」
 「了解です!」

 




『ヒデオくん!?ウィル子ちゃん!?おーい、返事してー!!』

鈴蘭が必死に通信機に呼びかけるが、応答は無い。
もしかしたらアンテナが破損したのかもしれないが、今となっては確かめる術は無い。

「社長さんよ、主催者側として止まって確認するべきじゃないのかい!?」
『ぬかせ!あの男がこの程度でくたばるか!』
「だよな!」

あの男、ひでおは簡単にくたばるような軟弱ではない。
何の問題もないと傍らに電子の少女を連れて、あの無表情でまた姿を現す事だろう。

「あいつとは決勝で会うって約束してんだよ!!」

リュータのAMGは眼前を走行する貴瀬のディアブロを猛烈に追い上げていく。
喰らいつき、離され、追い抜き、追い抜かれる。
3番手、4番手を常に入れ替えながらのデットヒートを繰り広げた。

その時
 
 「降ってきやがった…。」

 ぽつぽつとフロントを叩く雨音に、リュータは天候が崩れた事にようやく気付いた。
 仮にも軍人、天候の変化には敏感な筈なのだが、貴瀬とのデッドヒートに夢中で気付かなかったらしい。

 「……屋根。」
 「何だってエルシア!?」

 そこで、今まで沈黙を保っていたエルシアが口を開いた。

 「濡れるの、好きじゃないの。」
 「悪いが、今は止まって屋根閉めてる場合じゃねぇ!」
 「……そう。」

 すると、エルシアは自前の外套のフードを被った。

 「…………。」

 獣耳にも似たデザインが、どこか可愛かった。
 
リュータ・サリンジャー。
 この日、彼は獣娘萌えを心で理解した。






 「こんな時に雨だなんて……っと!?」

 十分に余裕を持った速度であったにも関わらず、思いの外ラインから外れた美奈子の背に冷や汗が浮かぶ。
 即座にバランスを立てなおしたが、現状では何時までもつ事か。

 『大丈夫でござるか?』
 「不味いわね……前半飛ばし過ぎたみたい。」

 30分の遅れを取り戻すために、美奈子は存分にドリフトを活用した。し続けた。
 結果として、もうタイヤには殆ど溝が残っていない程に擦り切れていた。
 今はまだ小降りだが、本降りになればそれで終わり。
 そうでなくても水たまりの一つでもあれば、ハイドロプレーンで何処にすっ飛んで行くか解らない。

 『連中には思い知らせたでござるよ。』
 「ん、まぁ、そうなんだけどね…。」

 ラジオではひでお達が事故を起こしたと言っていた。
 なら、一応自分は勝ちたい相手に勝つ事はできたのだ。
 でも少し、釈然としない。
 なんというか、こう……すっきりしないのだ。

 『おい!聞こえてるか、前の婦警さん!』
 「はえ!?」

 背後のバイク、焦りを滲ませた翔希の声が美奈子を考え事から引き上げる。

 『あんたの車はもうヤバい!左のリアタイヤ、ワイヤーが見えてるぞ!右の方も丸くなってる!』
 「え、えぇえ!?」

 マズイ。
 タイヤの溝が無いというのは、タイヤの摩擦係数が減り、滑り易くなっていると言う事。
 それはこの状況下では即座に致命傷となるというのに、よりにもよってワイヤーの露出?
 はっきり言おう、洒落にならない。

 「取り敢えず、少しずつ減速していきましょう。」
 
 果たして、この選択が正しかったのか間違いだったのか。
 答えはすぐに来た。

 「あ?」

 唐突に車体が横滑りを始める。
 遅かったか、と気付くが既に時遅し。
 必死に立てなおそうとするが、こうなれば後は運を天に任せるしかない。
 そこに、彼らが来た。

 『抜けた~~!!』
 「んなぁ!?」

 傷だらけのMNK-Eが車道脇の森から突然飛び出てきた。
 無論、空中を行くMNK-Eと横滑りしているトレノでは互いに回避動作なぞできはしない。
 直後、派手な衝突音が響き渡った。


 
 「ちょ!? あの2人大丈夫なの!?」
 「解らん!」

 流石にこれは助けねばならない。
 元勇者である翔希だけでなく、根が善良なエリーゼすらもそう思わせる程の惨状だった。
 辛うじて道路からレール下の森への墜落をしていないものの車体の損傷、特に美奈子のトレノが酷い。
 幸いとも言うべきか、空席であるMNK―Eの左側にトレノは突っ込んだため、即死・重傷者はいない。
 しかし、軍用車両であるMNK―Eは兎も角、一般的な乗用車であるトレノでは最早レース続行は不可能だろう。

 「死ぬかと思った……。」
 「ぷはっ! 激ヤバだったのですよー!!」
 「っ、2人とも無事だったか!?」
 
 で、ぴんぴんしている2人はあっさりと車から出てきた。
 
 「身を守ったからな。」
 「にょほほほほほほ、ウィル子は日々進化しているのですよー♪」

 原理は単純で、ひでおが美奈子のトレノの運動エネルギーを可能な限り相殺、ウィル子が障壁で車体を守ったのだ。

 「長谷部翔希、美奈子の方を確認してくれ。可能な限り被害が及ばないようにしたが、意識が無いのかもしれん。」
「わ、解った!」
 「あー待ちなさい。あんたはこのままとっととゴール目指しなさい。私はここで婦警を救助しとくから。ここからなら徒歩でも時間内で行けるし。」
 「ん、あー…解った、任せる。」

 そして、翔希は走り去っていった。

 「…ったく、あんたらも迂闊過ぎるのよ。」
 「そう言ってくれるエリーゼは良い先輩なのですよー。」
 「取り合えす、ドアを切断するから道具をくれ。ウィル子、君は一先ず情報収集を。」
 「解ったのですよー。」
 「はいはい。」

 そして各々が行動を開始し、ひでおは美奈子の救助作業が始まった。

 

 「ううぅ……酷い目に会いました…。」
 「傷は浅いが、もうレースは無理だな…。」
 「次からはもう少し自分の分を弁える事ね。」
 「面目次第も御座いません、はい…。」

 ドアが歪んだトレノから美奈子を救出するのには10分程掛かった。
 道具がエリーゼ特製ミスリルチェーンソーだったためか、作業は速やかに行われた。
 幸いにもトレノ自体も特殊な素材を使っていないし、ガソリン漏れも無いのでドアの切断作業自体はひでおからすれば簡単なものだった。

 「痛!?」
 「フロントに座れるか? 足を見せてくれ。」

 ようやく車から脱出した美奈子だが、足を地面につけた途端に痛みを訴えた。
 そこに空かさずできる男ことひでおが美奈子をMNK―Eのフロントに座らせて足首を見る。

 「…骨は折れていない…捻挫だな。これでは歩けまい。」
 「ひ、冷やせば歩けます!これ以上ご迷惑をお掛けする訳には!」
 「雨に当たって冷やす訳にもいかん。君は女性なんだ。」
 「はぅぅぅぅ……。」
 (婦警の恥じらう写真、いくらで売れますかね?)

 テキパキと診断と応急処置を続けるひでお。
ひでおに足を触られて顔が真っ赤な美奈子。
 で、それをニヤニヤしながら記録し、後の利益を考えるウィル子。

 「…何かもう大丈夫そうだから、私は行くわよ?」
 
 妙にげんなりとしながらエリーゼは去っていった。



 「…これで応急処置は終わりだ。痛むか?」
 「えぇ、少し…。」
 「ウィル子、乗せられるか?」
 「えぇ、はい。バランス配分に気を使いますが、できない事はありません。」
 「なら頼む。これ以上雨に打たれては悪化しかねん。早く
 
 その時だった。



 くすくすくすくすくすくす、くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす♪
 あははははははははははは、あはははははははははははははははははははははははははははっははははははははははあっはあははっはははっははははははははははははははははははは あはははははははははははははははははははっははははっはは あはははははははははははあっははははははははははははははははははははははははあははっは♪


 
 ぞっと総毛立つ。
 2000年の苦労とワーカーホリックと痴情の縺れで鍛えられたひでおの危機察知能力が最大警報を鳴らした。

 「伏せろ!!」

 全身を叩く悪寒に、ひでおは咄嗟に叫んでいた
 直後、森の中から再び車が飛び出してきた。


 高速で突っ込んでくる車に対し、瞬時に状況分析を終えたひでおの判断は的確だった。
 
 車は自分を狙っている。
 大破状態のトレノのフロントに座る美奈子と自分。
 他の2人、ウィル子とエリーゼは車の通過経路にはいない事から明らかだ。
 そして何よりも

 (この覚えのある魔導力とプレッシャー!!)

 何やってんだあの2人。
 ひでおは並列思考の中の一つで思わず突っ込みを入れてしまう。
 しかし、身体の方はしっかりと状況に対処していた。

 「すまん!」
 「きゃぁあッ!」

 トレノ目掛けて突っ込んでくる白い車体に対し、ひでおは美奈子を抱えて空中に身を投げ出す。
 直後、トレノを崖下に追い落とす様に白い車体が突っ込み、先程以上の派手な衝突音を響き渡った。




突っ込んできた純白のカラーリングを施したBW-ⅡC。
 元は軍用車両として設計されていた、学術都市製8WDのハイブリットカーである。
 本来ならそのまま軍用車両として輸出される予定だった代物だが、高コストに整備性・生産性、何より操作性の低さから不採用になった。
その型番から良くも悪くもブラックウィドウ(同名の米空軍試作戦闘機)の名を頂いた不遇の名機である。
 しかし、軍用装備のオミット、燃費の向上とややコストの低下した試作二号機を元に、完全受注制で民間向けに生産する事となった(無論、技術情報が流出しない様に配慮されてだが)。
 その装甲はひでお達が乗っているMNK-E程ではないものの、その分MNKシリーズを超える高い安定性と加速力・走破性を持ちながら、更には最大時速480kmを誇るというモンスターマシンである。
 その余りの加速力に試作型の試験時にはブレーキを始めとした安全装置の損傷が続くという凄まじい事態に発展、新型の安全装置とリミッターを装備するまでこの事態は続いた。
 この事から開発陣からはウィドーメーカーの名を頂戴する羽目になり、完全受注制の今もその生産数は少ない。
 しかし、その市販車には有り得ない加速力から、海外の好事家達からはそれなりの受注が来ている。
 マリーが運転しているのは、その数少なく生産されたBW-Ⅱのカスタム版であり、軽量化と操作性を重視したチェーンを成されている(それでも有り得ない程のじゃじゃ馬だが)。
 
 なお、この車は並行世界におけるマリーチが気に入り、愛車にしてしまったものとほぼ同じ仕様だったりする(主に運転するのは旦那の役目だが)。


さておき


「ますたー!?」

MNK―Eから、ウィル子が必死に手を伸ばしながら叫ぶ。
明らかにこの事態は想定外。
如何に信頼している相棒と言えど、これは危険すぎる。
しかし、自分では既にどうしようもないのだ。
新種の精霊と言えど、所詮自分はまだ成りたて。
確固たる武力を行使してくる相手には、自分は抗する術を持たない。
だから、こうして叫ぶ事しかできない。
けれども

「オレを……ッ…」

森へと宙を落ち行く彼女の相棒はしっかりと彼女の瞳を見つめ、彼女にできる事を頼んだ。

 「殺すつもりで走れッ!!!」

 己の事など気にするな。
 否、気にする位なら走り続けろ。
 そう言い残して、美奈子を抱えたままひでおは森の中に消えた。






 「ごほ!こほっこほっ…!」
 「ひ、ヒデオさん!大丈夫ですか!?」
 「っ、あぁ、何とか、な…。」

 宙にいながらも、ひでおは平静だった。
 素早く両足を用いて空中でありながらある程度体勢を立て直すと、坂に両足を立てて滑るように落ち続け、減速していった。
 幸いにもトレノの破片やBW―Ⅱが落ちているが、直撃コースは無いため気にする必要は無い。
 しかし、それでもあくまで鍛えた常人程度の彼には、この負担は大きいものがあった。
 
 (負担を考えないのなら神器級なら2回。大口径砲撃級なら9回と言った所か。)

 足りない。
 嘗て戦術核程度ならあっさりと相殺した魔族としてのアドバンテージと「危急の十字」を併せた「完全相殺」には程遠い。
 
 「…美奈子、立てるか?」
 「え、あ、はい!」

 ぎしぎしと音を立てる身体を無視し、地面に倒れ込んでいた身体を起こす。
 その間も視線は一つの方向だけ。
その先には、駆け去る白の未亡人から降り立った修道女。
 
 「…狙いはオレだけか。」
 「はい、あなただけです。」
 
 既に神聖具現改を展開し、戦闘態勢を取っている嘗ての教え子に、内心で苦笑する。
 簡潔かつ速やかに。
 目標を達成するための指針として、自らが嘗て彼女に教えた数々の、その一つだ。
 美奈子を巻き込んだ事はマイナスだが、それ以外はかねがね及第点を上げられる。
 自分の性格ならウィル子達を先に行かせるだろうし、無関係の人間を巻き込む事も良しとしない。
 更に今現在の自分は二度目に比べて大いに弱体化している。
 あちらは少し自分を周囲と分断するだけで、殆ど目的を達成した事になるのだ。
 強いて言えば、何故このタイミングを選んだ理由だが………これは彼女の背中から迸るプレッシャーが語っている。

 「何故この時を?」
 「昨日、魔殺商会からの帰りに。」

 ズバリ、嫉妬である。
 昨日ひでおがトラウマを抉られてうっかり錯乱した時、ウィル子は気付けのためとは言え、熱いベーゼをかました。
 そりゃもうブチューっと。
 その事が彼女達の逆鱗を無理矢理引き千切らせたのだ。
 あの時、ひでおは自分から死刑執行所に楷書でサインし、誰に言われるでもなく遺書&遺言をしたため、自分から十三階段を登り、自分から飛び降りたに等しいのだ。
 
 「貰います。」
 その輝く魂を。

 まるで死神の宣告の様に告げると、マリア・プレスティージは愛用の神器を片手に一歩踏み出した。






 「ますたあぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 森の中に落ちたひでおとの「繋がり」から感じるのは、危機と焦燥。
 明らかに窮地にある。
 しかし、それが解っているというのに手が出せない。

 「やめなさい新入り!あんたが行った所で足手纏いよ!」
 「エリーゼ止めないでほしいのですよ!」
 「ヒデオはあんたに走れって言ったんでしょ!なら、あんたはこんな所でうだうだ言ってないで走りなさい!!」
 「でもこうしてる内にますたーは!」
 「あぁもう!!」
 「げふぅっ!?」

 ずごん!
エリーゼはウィル子をMNK―Eの中へと蹴り込んだ。

 「あいつと婦警は私が面倒見るからあんたはレースに戻りなさい!ひでおが無事でもあんたがレースで負けてちゃ世話ないでしょうが!」
 「うぅぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!……エリーゼ、ますたーを頼んだのですよー!」

 そしてMNK―Eは林道を走り去っていった。
 
 「…ったく、どいつもこいつも赤の他人を信用し過ぎだっつーの。」

 それでも客や従業員の信頼を裏切るのは商人として失格だし、聖銀の精霊としての信頼を裏切るのはもっとダメだ。
 道路から森の中、戦場の匂いがする場所へ目を向ける。
 恐らくひでおの相手は大会のルールなぞ知ったこっちゃないという輩なのだろう。
 濃密な負の想念がこちらにまで届いてくる事からエリーゼはそう判断する。
 これ程の密度は紛争地帯、それも以前潜り抜けたカムダニアのそれに匹敵する。

 「死んでんじゃないわよヒデオ!!」

 しかし、ミスリル銀の精霊たる者が、邪悪を前にして引き下がる訳が無い。
 神になる。
ただそれだけを胸にここまで歩いてきた彼女にとって、助けられる命を助けないのは堕落でしかない。
 
 こうしてエリーゼ・ミスリライトは戦場へ足を踏み入れた。











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