嘘予告「それいけぼくらのまがんおう」バージョン2
マリーチと教皇の暴走に巻き込まれ、死亡したオレはいい加減に慣れてしまった3度目の生で、自分が嘗てし損ねてきた事をしながら、人生を謳歌していた。
今度は魔族の王族で魔王の息子等と言う珍妙な生まれではなく、日本の極一般的な中流家庭の一般的な男子(勿論魔力なんて無い)に生まれた。
以前なら同じような人生か、とも思ったかも知れないが、散々騒動を味わった身としてはこれ以上ない程の幸運と思えた。
この生ではもうあちら側に関わる事無く、平凡な人生を過ごそうと心に決めたオレは先ずイスカリオテや神殿協会に関わらないように決めた。
何故かって?
ただの人間の身体で、以前のような激務に耐えられる訳が無いだろう?
やったら数年で過労死に至るのは目に見えている。
そういう訳で、オレは情報収集と並行して、彼らの拠点がある地域には出来るだけ近づかないように努めた。
そうこうしていく内に、どうやらこの世界が自分がいた世界とは異なるらしい事を突き止めた。
この世界ではエルシオンはゼピルム総長の地位に就いており、側近Aはアルハザン総長、側近Bはゼピルム副長でありながら、アルハザンと繋がっているという妙な事になっていた………しかも、それで何故か学術都市とマルホランドはあるというカオスぶり。
恐らく、こちらのエルシオンは「魔王の息子」らしい生き方を選択したのだろう。
自分という異物がなければ、前のえるしおんもそうだったのだろうか?
それはさておき
イスカリオテが無いという事はマリーチの神殿協会に気を付ければ問題は無いという事だった。
しかし、マリーチもオレがいなければ恐らく挫折したままか、大幅に能力を衰えさせた状態であるため、迂闊な事は出来ないがそこまで危険視はしなくとも良いだろう。
となれば、後はあちらに関わらないように気をつけながら生活していけばよい。
生まれてから高校生までは、常人並に友人との遊びや恋愛、勉学で過ごした。
出来るだけ平凡な生活をしようと試みた……ヤクザどころかヒットマン並の目付きの悪さに女性や子供には少し怯えられてしまった事もあったが。
それ以外は平平凡凡とした生活をおくれたと思う。
高校卒業後、独立して上京した後は親からの仕送りを株に使い、嘗て培ったノウハウを利用して巧みに稼ぎ、凡そ1年程で1000万円近くを稼ぎ出した。
その後、それを足がかりに更に稼ぎ、今度は投資家としてあちこちの企業に出資する等して稼いだ。
ノウハウの他にも不況や大まかなスキャンダルは覚えていたため、これは意外と上手くいった。
その後、かなりの資金を稼いだオレは旅に出た。
今まで薄暗い魔王城や地下のイスカリオテ機関の執務室でじっとしていたために出来なかった多くの事を見たい・したいと思ったからだ。
日本中をバスや電車、自転車、時には徒歩で旅を続ける。
途中、ネットカフェや携帯で株価の動向などの経済状況は確認していたし、資金は問題無い。
適度に身体を動かしつつ、色んなものを食べ歩き(時には材料買って自炊)、色んな人と出会い、別れる。
まさに旅の醍醐味だ。
時折、こちらの家族にも連絡を入れる。
両親と妹とも元気であり、偶には里帰りしろとも言ってくるが、人が健康でいられる時間は短いのでそうも言ってられない。
旅先の特産物や名物を手紙と共に郵便で送りつつ、気ままに旅を続ける。
後数年程で国内の旅も終えるため、海外に出る予定だ。
語学は元々20カ国語を話せるし、紛争地帯やら何やらは把握しているため、1人旅でも問題無いだろう。
そして、偶には(一応の)自宅であるアパートに帰ろうとした日の事だった。
オレは登山服姿で近所の道を歩いていた。
すると、その途中のゴミ捨て場に殆ど無傷のノートPCを見つけた。
気まぐれを起こしたオレはリサイクルできるだろうか?と考え、それを拾い、自宅に帰った。
……これが、この人生における分岐点とは知らぬままに。
帰宅後、何となくダルさを感じながら、入浴して旅の垢を落とした後。
買ってきた缶ビールと材料一式を用いて遅めの昼食を作る。
食べ終わった後、食器を洗い終えると食後の眠気とダルさで拾ったPCを起動させるのも億劫だったため、そのまま布団を敷いて就眠。
しかし、その眠りは直ぐに妨げられた。
その時、オレはまた騒動の火種を拾ったのだと知った。
「…って、PCを拾ったのなら電源位入れなさーい!!」
PCから出てきたのは自称超愉快型極悪感染コンピューターウィルス、愛称ウィル子。
この出会いが、オレの新しい人生における大きな火種となるのは簡単に予想がついた。
「その眼光、明らかに犯罪者ですね!逮捕します!」
「…開始前からこれか。」
「ま、マスター?何だか悪いオーラが出てますよ。」
「ふむ……見覚えの無い神器だの。」
「やはり、正攻法では勝てないか。」
「マスター、その杖は…?」
「これで、まぁ何とかなるだろう。」
「ウィル子、前に言ったな。もしもの時はオレを喰えと。」
「…嫌です、嫌です!!どうしてマスターがそこまでしなければならないのですかッ!?あなたがそこまでする義理なんて何処にも「いや、義理はある。ただ、それから目を反らしていただけだ。」…ッ!!?」
「20年以上積もった利子込みでこの位の代価なら……まぁ、安いものだろう。」
「で、でも…。」
「オレを喰え、ウィル子。喰って、君は神になれ。この世界で最新の、これからの世界を、21世紀を願う神になれ。」
「あなたを喰らえば、彼女にそれが出来るとでも?無理ですよ、ヒデオ君。その程度では暗黒神は止まりません。そして、あなたを殺せばそれも出来ない。」
「耄碌したな、バーチェス。」
「…どういう意味ですか?」
「もう詰んでるんだよ、お前は。」
何故にプロローグが後から?
ども、VISPです。
ちょっと感想欄でツッコミ貰ったので、嘘予告をプロローグ代わりに上げました。
賛否両論あるでしょうが、今後ともよろしくお願いします。