「要するに、ルイズがキュルケと魔法の対決をすることになって、サイト君を塔に吊り下げただか」
「はい...そうですジョルジュ、いやジョルジュ様」
「ジョルジュでいいだよ。そんで、キュルケがサイト君を吊下げていたロープをファイヤーボールで焼き切った」
「そ、そういうことなのジョルジュ、いやマスター・ジョルジュ」
「だからジョルジュでいいってば。んで、タバサがサイト君に『レビテーション』を掛けたにはいいけど、落したところがオラの花壇だったと」
「・・・・私はこの二人の付き添い。むしろ被害者の方。だから」
「ああ゙っ!?」
「なんでもないジョルジュ殿下」
「いやジョルジュでいいって。なんでさっきからオラを変な肩書で呼ぶんだか?」
(...空気が重い)
馬車の荷台に仰向けの体勢で寝ているフーケは、自分の上を飛び交う黒いオーラを見ると、ハァっとため息を吐いた。
上に広がる空は青く澄み渡っている。
両端には木の緑が額縁の様に空を彩り、所々に点在する雲が一層空の青さを引き立てている。
馬車に吹く風は心地よい感触を顔や体に吹きつけ、疲弊した彼女の心も体も冷ましてくれる。
このまま目を閉じれば眠ってしまいそうだと、ボーっとする頭が考えている。
しかし、それもフーケの右側から漂う黒いモノと、左で脂汗を垂らして座る学生+使い魔の存在が邪魔をしているため、素直に楽しめないのだが。
使い魔の少年から花壇の花が見つかり、結局ジョルジュはデビル化した。
そこからはトントン拍子に話は進む。
初めに使い魔の少年が主人に話を振り、
次にルイズがキュルケとの関連を暴露すると、
キュルケが誤魔化そうとしたが、事の真相をうっかり口から出してしまった。
途中、タバサがシルフィードに乗って逃げようとしたが、ジョルジュの魔法によってあえなく捕縛、そのまま4人は馬車の片側に集められた。
先程の爆弾ゴーレムの生成した後の所為か、ジョルジュの周りを漂うオーラは朝見た時よりはるかに少ない。
声や口調も本来の彼なのだが、足を折りたたんで座る少女たちには十分なプレッシャーになっている様だ。
(そりゃそうだろ...あんな爆弾ゴーレムを作るメイジと対峙するなんて。命がいくつあっても足りないよ)
フーケは横に転がっている「破壊の杖」に頬を当てた。
森の影の中を通った為か、それとも何かの金属で出来ている為か、筒状の宝物はひんやりとしており、少しほてっていた彼女の顔から熱を奪っていく。
(ああ゛~気持ちいい...結局これの使い方が分かんなかったけど、こういう風に使うのかい?)
フーケは破壊の杖を顔の横に近づけながら、頭上で説教をするジョルジュの声に耳を傾けた。
「んで?4人ともフーケが花壇をメチャクチャにしたのをイイことに、自分達のやったことを誤魔化そうとしたんだなぁ~......フフフフッ」
ジョルジュは4人の顔をそれぞれ見ると、少しの間黙った後に口から笑い声を漏らし始めた。
ただでさえ奇妙な彼の行動に加え、普段の彼からは想像しがたい笑い声が出ているために余計怖い。
少年から漂ってくるプレッシャーに負けたのか、顔に冷汗を浮かび上がらせながらルイズ達が口を開いた。
「聞いてジョルジュ!!確かにあなたの花壇を壊したのは私たちよ!!でもそれはキュルケが買ってきた偽物の剣をサイトに押し付けてきた所為で...」
「ちょっとルイズ!!私に振らないで頂戴!!元はといえばあなたがあんな決闘方法考えた所為でしょ!?」
「いやいやいや!!!その前にオレを的にしたコトが問題だろ!!なんでよりによって人間で!?危うく死ぬトコだったんだぜ!?」
「ジョルジュ・・・3人も悪気があったワケじゃない」
「タバサ!!!なんであなただけ許された的な感じで...」
「ちょっと静かにするだよ」
「「「「ハイ」」」」
なすりつけ合うように喋っていた4人であったが、ジョルジュの一言でその声もピタッと止んだ。
上空ではタバサのシルフィードが馬車の上をクルクルと回っており、時折「キュイキュイ...ップ」と泣き声が聞こえてくる。
ジョルジュは一つ溜息を吐くと、縮こまって座る4人をジッと見据えると、まるで子供を諭す父親のように口を開いた。
「言い訳なんて貴族らしくねぇだよ4人とも。自分達が悪いって思うなら、言うことは一つだろ?」
「あの、オレ貴族じゃなくて使い...」
「あ゛あ゛ッ?」
「何でもナイデス...」
ジョルジュがサイトに一睨みした後、ギロリとルイズ達を見ると、
「悪いことしたらなんて言うだ?」
「「「「花壇を壊してごめんなさい!!!!」」」」
ジョルジュの質問に、4人は大声でジョルジュに謝った。
別に打ち合わせはしてないのだが、不思議と声が揃った。
ルイズは不安げにジョルジュを見つめるが、ジョルジュの周りのオーラは晴れてきており、彼は先ほどとは別人のように思える普段の雰囲気で、
「ん。じゃあもうやっちゃだめだよ」
そう言うとジョルジュは一つ溜息を吐き、上空を回っているシルフィードを見上げた。
余りの変貌に一同はキョトンとしていたが、ルイズが何か言おうとすると頭の中にルーナの声が響いてきた。
―マスターだって、ルイズ様達が‘悪意’を持ってやったかどうか分かりますわ。只、マスターはルイズ様達にちゃんと謝って欲しかったのですよ―
ルーナのその声に、ルイズ達はジョルジュの気持ちを理解した。
緊張の糸が張り詰めていたのがプツンと途切れ、ルイズやキュルケはヘナヘナと肩を下げた。
キュルケは顔に張り付いた髪を後ろに流すと、ジョルジュの方を見て再度謝った。
「ゴメンなさいジョルジュ。あなたの言うとおりだったわ。隠さずにちゃんとアナタに言うべきだったわ。ホントゴメンなさいね」
それに続くかの様にルイズも口を開く。
「わ、私もごめんなさい!!ジョルジュが大事にしている花壇を壊しちゃったのにそれを隠すなんて...貴族にあるまじき行為だったわ」
「あのオレ言ったじゃん? 『やっぱりちゃんと謝るのが一番』って」
「うっさいバカ犬」
「!!!!!?」
サイトとルイズの言い争いが起こったその間では、タバサがウンウンと首をうなずかせていた。
「これでいい・・・・これで問題解決」
「タバサ...言っとくけどあなたも『コッチ側』なんだからね?」
サイトとルイズがギャーギャーと騒ぐ中、ジョルジュは4人の方を再び向くと、ニッコリと笑い顔を向けた。
「まあでも、悪いことした時にはバツが必要だよ。だから4人とも学院に戻るまでみんなさっきの座り方でいるだよ」
ジョルジュの声に4人の体がぴくっとして止まる。
さっきまで言い争っていたサイトとルイズもピタッと止まり、ぎこちない声がサイトから出てきた。
「あのジョルジュさん?さっきの座り方ってアレ?『正座』のこと?」
サイトの質問にジョルジュは顔を向けると、
「そうそう。まあサイト君は楽だろうけど一応連帯責任ってコトで」
「いやいやいやいやいや。オレ正座は苦手で...ってなんで正座を知ってんの!?アンタホントに何も...」
「あ”あ゛ッ?」
「一生正座してマス」
学院へと続く道を馬車がゆっくりと進む。
アルルーナが手綱を引くその後ろでは、スヤスヤと眠る大盗賊一人と歌を口ずさむメイジが一人。
片方の席では珍しい座り方をしながら、この世の終わりのような顔を浮かべて座るメイジ3人と使い魔1匹の、何とも奇妙な光景がそこにあった。
「ちょ、ジョルジュ!?これ不味いわ!!なんか下半身の感覚が無くなってきたわよ!?」
「やばいやばいやばい!!あのルーナさん?馬車がさっきよりゆっくりになってる気がするんだけど!?もっと早くしてくれません!?」
「サイト声出さないで!!!声の振動だけで足が...ってタバサァ!!!杖でつっ突くなぁ!!」
「み・・・道連れ・・・・・みんな死ねばいい」
大きな叫び声が脇に生える木々の中に吸い込まれていった。
結局この光景は魔法学院に着くまで続いた。
途中、上空から「キュイキュイ...ザマァ」と聞こえてきたのはルーナしか知らない。
学院に戻った後、ジョルジュ達は破壊の杖を持って学院長室へと足を進めた。
長時間正座をしていたからか、皆膝がガクガクと震えている。
オスマンは足をさする4人の少年少女をいぶかしげに見ながら、すっかり元通りになったジョルジュの報告を聞いていた。
「フム・・・要するにフーケには逃げられたが破壊の杖はこうして取り戻して来たワケじゃのってありゃ?ミス・ロングビルは?」
「ミス・ロングビルなら『私は具合が悪いのですみませんが部屋で休ませていただきます』って部屋に行っただよ」
「なんですと!!?それはちゃ...心配です!!オスマン校長!!ちょっとミス・ロングビルを見てきます!!」
オスマンの隣に立っていたコルベールは唾をオスマンに飛ばすほど大きな声を出すと、慌てるように部屋の扉を開いて消えていった。
オスマンはハンカチを取り出して顔を拭き始めた。
「あのハゲ...絶対給料減らす...っとンホンッ!!とにかく、フーケを取り逃がしたのは残念じゃが、破壊の杖がこうして戻ってきただけでも素晴らしいコトじゃし一安心じゃ。
君達の今回の活躍には後で何かしら褒賞を出すとしよう」
オスマンはニコッと笑い椅子を立つと、5人の頭を撫でた。
ルイズ達は互いに顔を見合わせ笑うと、それを見ていたオスマンは手を合わせて軽く擦った。
「さて!今夜はフリッグの舞踏会じゃ。今夜の主役は君らであろう。思いっきり楽しむがよい」
オスマンの言葉にキュルケはアッと口を開くと、目を輝かせた。
「そうだわ!!フーケの件ですっかり忘れてたけど今日フリッグの舞踏会じゃない!!こうしちゃいられないわ。タバサ行くわよ!!」
先程まで足の痺れに苦しんでたのが嘘のように、キュルケはタバサの腕をつかむとドアを勢いよく開き、あっという間に消えてしまった。
ルイズとオスマン、そしてサイトが口をあんぐりと開けている中、ジョルジュがん~っと背伸びをすると、
「じゃあオラも花壇を直さなきゃならないから失礼するだよ。んじゃあなルイズにサイト君。オスマン校長失礼しますた」
ジョルジュはオスマンに軽くお辞儀をすると、ドアを静かに開いて廊下へと出て行った。
取り残されたルイズも目の前に立つオスマンにお辞儀すると、
「じゃあ私も失礼します。サイト!!行くわよ!!」
ルイズはサイトの手を引っ張るが、サイトはルイズの方に真剣な顔を向けた。
「ルイズ、オレちょっとオスマン校長に聞きたいことがあるから先に戻ってくれよ」
ルイズは納得がいかないのか少し渋るが、「すぐ来なさいよ!!」とだけ言うと部屋から出て行った。
サイトはルイズが部屋から出たのを確認すると、オスマンの方へと振り返った。
既にオスマンは元の椅子へと腰掛けようとしていた。
「それで、何かわしに聞きたいことがおありのようじゃな」
オスマンは顎に手をやりながらサイトへと尋ねた。
サイトは少しためらうかのように黙っていたが、やがて意を決したように話し始めた。
「信じてもらえないかも知れませんけど...オレ、この世界の人間じゃないんです」
サイトの言葉にオスマンは「フム」っと目を細めた。
その時、ガチャッと扉が開くと部屋の中にコルベールが入ってきた。
先程までのギラギラした目つきとは違い、遠い目をしている姿は周りから見ても気落ちしていることが分かる。
サイトとオスマンはコルベールの変わり具合にビビるが、恐る恐るオスマンが尋ねた。
「コ、コルヴェールくん?ミス・ロングビルの部屋に行ったんじゃなかったのかね?随分と早いようじゃが...」
オスマンが尋ねてきたのに気づいたのか、コルベールはオスマンの方に顔を向けながらフフフと笑うと、か細い声で答えた。
「...部屋に入ろうとノックをして呼んだんですがね...ドアノブに触れた瞬間に鍵掛けられてしまいましてね...」
サイトとオスマンはもう何も言えなかった。
それを知ってか知らずか、ガックリと肩を落とし、窓の外を眺めながらフフフと笑うコルベールこそ、まさしく『この世界』からいなくなっていた。
「まずこの破壊の杖ですけど、これはオレの世界で『ロケットランチャー』と呼ばれているモノです。これをどこで手に入れたのですか?」
「いくら何でもあれはないですよ...そりゃ私も少し下心があったのは認めますがね?だけど...」
「フム、実はその破壊の杖はワシの友人から貰ったものでな。30年も前になるかの。森を散策していた時に、ワイバーンに襲われての。そのとき、ひとりの男が私を救ってくれたんじゃ」
「男?」
「会話すらせずに鍵を閉めるなんて酷過ぎる...私の心の扉が閉ざされてしまいますぞ...」
「・・・・フム。彼は見たことのない武器を二本持っていた。その一本でワイバーンを吹き飛ばすと、その場に倒れてしまったんじゃ。ひどい怪我をしておった。ワシは彼を学院に運び込み、手厚く看護した」
「・・・・そ、それで!その人は今どこに!?」
「地味にダメージを喰らいましたぞ今回のは...アアアミス・ロングビルゥ...」
「残念じゃが治療の甲斐なく亡くなって...ってさっきからブツブツ煩いんじゃコルビャール!!相手にされんだからってヒトの部屋で愚痴るな!!」
オスマンは部屋の隅で、壁の方を向きながらブツブツと嘆くコルベールに大声で怒鳴った。
サイトもオスマンの話を真剣に聞いていたのだが、コルベールの所為で気が散ってしょうがなかった。
コルベールはぐるっとオスマン達がいる方へと顔を振り向けた。
どうやら相当堪えたらしく、目元は涙の跡が出来ており、鼻水が少し出ている。
てっぺんの輝きも普段よりも少し鈍い。
「し、しかしオールド・オスマン...いくらなんでもすぐに鍵をかけるなんて酷過ぎますぞ。私の心に「ウィンディ・アイシクル」が突き刺さりましたぞ」
「そうか。明日にでもワシが直接突き刺してやるから部屋から出ておれコッパゲール。っと、どこまで話したかな?そう、それでワシは亡くなった彼の遺体を墓に埋めてな、彼が持っていたもう一本のそれを『破壊の杖』と名づけ、宝物庫にしまいこんだ。命の恩人の形見としてな…」
「そうですか...」
サイトはオスマンの答えに肩を落とした。
破壊の杖を見た時、自分の世界への手がかりが掴めたと思ったのだがそれが無くなってしまったのだ。
思ったよりもショックだったサイトであったが、すぐに気を取り直してオスマンに自分の左手を伸ばした。
「あと、このへんてこりんな記号...ルーンでしたっけ?なんか剣を握ったりすると急に力が出たりするんすけどこれは一体...」
「それは『ガンダールヴ』のルーンですぞ!!」
いつの間に立ち直ったのか、コルベールがサイトの顔の横で大きな声を出して答えた。
声が鼓膜にジンジンと響くが、コルベールは構わず喋り続ける。
「ガンダールブとは昔始祖ヴリミルに仕えてたといわれる伝説の使い魔の一人ですぞ!!ガンダールヴはあらゆる武器を使いこなすと言われているのですが、恐らくサイト君が言う『急に力が出る』とはそのガンダールブの力が働いているからだと思うのですが!!!!」
「そうですか。オレは今武器持ってないんですけど、顔に汁飛ばしてくるアナタに殺意が沸いてきます」
コルベールは「あいや!!失礼!!」と言ってオスマンの横へと戻った。
オスマンは眉をひそめると、顔にかかった汁を拭くサイトに向かって言った。
「まあ、そう言うことじゃ。なぜ君にそのようなルーンが刻まれたのかは不明じゃが、もしかしたら君がこの世界にやって来たのと、何か関係があるのかも知れん」
サイトは左手の甲に刻まれたルーンをジッと見た。
伝説の使い魔「ガンダールヴ」のルーン。
それがなんでオレに刻まれたのか?そもそもなんでオレがこの世界に召喚されたのか。
サイトの頭ではそれがグルグルと回るが、その内訳が分からなくなり、考えるのはやめにした。
サイトは頬をポリポリと掻くと、オスマンに最後の質問をした。
「あと、これで最後なんですけど...あの赤い髪のメイジ、ジョルジュさんだっけ?あの人は何者なんですか?」
意外な質問をされた所為か、水煙草を吸おうとパイプを用意していたオスマンは、目をキョトンとさせてサイトの方を見た。
隣にいるコルベールも驚いた表情をしている。
「ミス・ドニエプルのことか?お主なんでそんなコトを聞きたがるんじゃ?」
「いや、なんだか気になって...というか今朝の姿見たらそりゃ誰だって気になりますよ」
オスマンはん~っと唸ると、水煙草のパイプを口に加えて煙を吐き出した。
白い煙が天井を僅かに白く染めるがすぐに消えた。
「まあ、少し変わっとるが、至って優秀な生徒じゃよ。あの子の家はドニエプルといっての、この国...トリステインの西に位置する土地を代々請けもっとる貴族の息子じゃ」
そこまで言うとオスマンは再びパイプに口を付ける。
今度はパイプを加えながら話を始めた。
「ミス・ドニエプルの兄弟たちもこの学院におっての。ホレ、お主がグラモンと決闘した時に乱入してきたのも彼の妹じゃ」
え?あのルイズが泣くくらい毒を吐いてた女の子が妹?まじで?
サイトは頭のなかでジョルジュとステラが二人して鬼○者化しているのを想像し、血の気が引いた。
「それに同学年と上の学年に一人づつ兄妹がおるしの」
サイトの頭の中の鬼武○が2人追加された。
オスマンはパイプを口から外すと、息を少し吸い込んだ後に煙を吐いた。
頭の中で○武者が踊るサイトはハッとしてオスマンを見た。
「まあそんな所じゃ。ワシが教えられるのはココまでじゃ。後は直接本人に聞いた方が良いじゃろて」
オスマンはフォッフォッフォと笑うと、机にパイプを置いた。
「まあお主もいろいろ思う事はあるじゃろうが、事を急いても上手くいかんぞ?それよりも今夜はフリッグの舞踏会じゃ。今夜は思い切り楽しみなさい。ご主人さまも『扉の外』で待たせっぱなしじゃ寒かろうて」
「扉の...外?って」
気づいたのか、サイトが素早く振り返って部屋のドアを開けると、ドアの傍で片膝をついているルイズがいた。
ルイズは慌てて立ちあがると、
「な、何よ?遅いから待ちくたびれちゃったじゃない!!」
「イヤイヤ...ルイズ、もしかして今までの話ずっと聞いてたの?」
「う、そんなコトどうでもいいじゃない!!ホラもう話は終わったんでしょ。早く行くわよ!!」
「ちょ、待ってウワッ!!」
サイトが何かを言う前に、ルイズはサイトの裾をつかむと、慌てて自分の部屋へと走って行った。
ドタドタと廊下から響く音に、オスマンはニッコリとほほ笑んだ。
「フォッフォッフォ♪若いとはエエのぉ」
オスマンは水煙草のパイプを再び手に取ると、ゆっくりと吸い始めた。
外は薄暗くなってきており、フリッグの舞踏会の始まりは近づきつつあった。
「あ、そういえばオールド・オスマン」
「なんじゃねタコベル君」
「コルベールです。先程話してたミスタ・ドニエプルの妹のミス・サティが学校見学に近々来ると連絡があったそうですぞ」
「・・・・マジで?」