ちるのに憑依 そのいち
目が覚めると天井がない。綺麗な青空が広がっている。あ、まぶしい。
オレは昔から室内育ちで普段から建物の中で生活し睡眠もそこでとっているのだが、なぜか今オレは外で目覚めた。
「ん。というかここどこ?」
周りを見回してみる。でっかい水たまり?の中心にいるのが分かった。水溜まりなんて規模では多分ないと思うが。多分、沼か池とか、湖あたりだと思う。自分にはその違いはわからないけど・・・。
自分の足場を見てみると何かの結晶?みたいなものの上に乗っているみたい。ぱっとみ氷みたいなんだけど、こんなに暖かい気温で尚且つ水に浸かってるにもかかわらず溶けていない所を見ると、プラスチックかガラスか何かだと思う。触ってても冷たくないし。
自分の知らない溶けない結晶かもしれないけど、そこのところはどうでもいいので考えないことにする。
あと今頃気づいたけど、オレ・・・
「ワンピース着てら・・・」
なんか手がいつもよりちっちゃくて肌が白いなぁと思ってたけど、服も変わってた。というか女ものだった。グスン
おかしい、自分にはそんな趣味はないはずだが。しかも服装をよく見てみる。青を基調としたワンピースみたいで子供向けっぽい感じ。さらに背中にガラスの羽根みたいな装飾品。
よけいに犯罪くさくなってきた。
・・・そろそろ現実逃避はやめようと思う。
違う体の大きさ、違う肌の色、違う臭い、違う服装、総合すると明らかに自分の身体じゃない。後は自分の顔を確認するだけだ。鏡はないが、周りには綺麗に反射する水面があるので問題無い。あとはそこをのぞきこむだけ。問題無い・・・問題無いのだが、少し勇気がいる。
自分の顔が変わるなんてイベントにあうほど自分の顔に困ってなかったし、そんな金もなかった。せいぜいビューティーコロシアムをみて笑ってたぐらいだ。
「わッ、かわいい」
やっぱり普通に女の子でした(笑)。こんな子が妹だったらいいなと思うような可愛い子。水色の髪のショートヘアみたいで目の色も一緒。
うーん・・・。かわいいけど、かわいいけど、体がかわるんなら男の子の方が良かったなやっぱり。勝手が勝手がわからないし。男だったらかつての息子を確認しようとして女の子に触ってしまって頬を紅潮させるころもなくなる。
やっぱり男が一番。男最高。
・・・あれ?なんか変。
*
何故女の子になったのかなどの疑問は後回しにして、取り敢えずこの水たまりから脱出しようと思う。
周りは全部水たまり(多分湖)なので、岸まで泳ぐしかない。岸まで50メートルもないのでたぶん泳げるはずだ。
そうと決まれば早速飛び込もうと思い、足をのばす。
(・・・てッまずい!今服着てるんだった!)
今の格好がとても泳ぐことに向いていないことを思い出す。ワンピースに大きな羽の装飾、溺れる気満々である。しかも今は違う体まともに泳げるかどうかも怪しい。
しかし、すでに踏み出した足に重心を傾けているため、止めることができる訳も無く、体は慣性に従いゆっくりと水面に向かう。
足が水面に着く。
・・・しかし一行に身体が水の中に落ちる気配はない。むしろ足からは今までいた足場と同じ無機質な硬い感触。
あれ?おかしい。さっきまで水面だった所が足場と同じ結晶みたいなものに成ってる。
もう一度水面に足を踏み出してみる。今度は自分の踏み出した水面を見ながら。
「・・・お?おぉーー!?」
思わず声に出して驚いてしまった。声に出すほど驚いたのは久しぶりだ。
オレの踏み出した足が水面についた瞬間、水が一瞬で凍てついていったからだ。しかも綺麗に花の結晶の形をしながら。
しかし、さわってみるが全然冷たくない。おそらく氷のはずなのに触っても冷たくないってどういうことだ?
再度足を踏み出してみる。
凍てつく水面
触ってみる。
やっぱり冷たくない。
「うーん、ぎょせぬ・・・」
もしかしてこの湖?何か仕掛けでもあるのか?
オレの足に反応するなにかとか。手品とかそう言うのにはあまり詳しくないけど。
とりあえず新たに増えた疑問にフタをして、思ったより楽に行けるようになった岸に向かう。一歩踏み出すごとに凍てつく水面、振り返ると、さっきまで立っていた足場の方は溶け始めていた。便利な作りだなー。
・・・もしかしてオレがもの凄い冷たいとか・・・?て、そんなわけないか。というか水を一瞬で凍てつかせる生き物ってなんだよ。
岸に着いた。おかしなことに足元の土で出来た地面も表面だけ白っぽくなって凍ってる・・・。強くふむとパリパリなる。
・・・まさか本当に俺が冷たいわけではないんだよな?