ミッドチルダ クラナガン 新アピート国際空港数年前に、ストラグルによるテロ行為で破壊された空港は、修復及び増築され、今日も各地から飛行機を向かい入れていた。人々が行き交うロビーに、2人の女性が佇んでいた。金髪の女性--聖王教会聖女カリム・グラシア--と白い制服の女性--白虹騎士団聖女護焔騎士シャッハ・ヌエラ--である。「流石は、クラナガンの空の玄関口。賑やかですね。」「はい。そのようですね。…この制服、目立って仕方がないですよ。」「ふふ、後で着替えなさい。まったく、態々制服で来なくても良かったでしょうに。」「で、ですが、私はカリムの護衛ですし…威厳も一応は必要かと思いまして…。」とりあえず、照れた顔をしている時点で威厳も何も無い、と思ったもののカリムは口に出さず、クスクスと笑うだけにした。自分の友人兼護衛役の彼女は、こう見えても騎士団有数の使い手だ。…最も、暗銀の騎士、ガル・ヴィンランドや白虹騎士筆頭の1人、クリアリア・バイアステン等には勝てないが…。まぁ、彼らが人外レベルで強いだけなので、気にしないで置こう。少し注目されながらも、2人がロビーから出て、空港の入り口に行くと、スリーヘッズアロー--ISAFのエンブレム--が施された迎えの車が待っていた。運転手らしき部隊員はカリム達を見つけると、慌てて敬礼を行うと、ドアを開けた。「グラシア理事官、騎士ヌエラ、お待ちしておりました。ランスロット総隊長の命により迎えに参りました。どうぞ、お乗りください。」「お迎えご苦労様です。しかし、総隊長、自らの命…ですか。」「はい、丁重にお迎えせよとの厳命です。お荷物はこちらに。先にホテルに向かいますか?」「いえ、直接ISAF本部に向かってください。ランスロット総隊長に挨拶もしたいので。」「了解しました。シートベルトを締めてください。…では、出発します。」カリム達が乗る間に2人の荷物を受け取り、トランクに仕舞うと運転手も席に座り、シートベルト等を確認すると静かに車を発進させる。どうやら、メビウスの命令で迎えに来たようだ。車窓から流れる町並みを眺めつつ、総隊長--メビウスと始めてであった時の事を思い出していた。あれは、随分と前の出来事だ。まだ聖女となる前の事。自室で読書を楽しんでいたカリムを、両親が呼んだのだ。来客があると言われ、邪魔しないようにしていたのだが、自分に何か関係あるのだろうか?と首を傾げつつ、本を仕舞うと居間に向かう。「来客があると言ったのに…。ま、まさかまたお見合いの話…?」両親が頻繁に見合いの話を持ってくることを思い出し、カリムは若干げんなりしながら、居間に入ると、予想とは違う人物達が待っていた。「やあ、カリム。久しぶりだね。」「は、ハーリング提督!?い、入らしていたのですね。」「ははは、そんな畏まらなくても良いじゃないか。それに、提督も止してくれないかね。君と私の仲じゃないか。」ソファに座り、にこやかな笑顔でカリムに手を上げるのは、ビンセント・ハーリングその人だ。彼女の両親もハーリングの向かいに座り、紅茶を楽しんでいる。ふと、両親の座っている方のソファ見ると、誰か間に座っているではないか。「ふふ、メビウス君、紅茶のお代わりはどうかね?庭で取れた、自家製の茶葉なんだよ。」「あなたばかり話して、ズルイですわ。メビウスちゃん、このクッキーはどうかしら。私の手作りなのよ。」「は、はい。凄く美味しいですよ。紅茶も、良い匂いで、とても落ち着きます。」どうやら、両親は間に座っている子供に夢中のようだ。その様子を見ながら、ハーリングもニコニコと笑っていた。察するに、ハーリングが連れてきたのだろうが…彼の子供だろうか。と疑問に思いながら、カリムも開いているソファに座る事にした。まぁ、開いているソファと言っても、ハーリングと両親が対面に座っているので、テーブル横なのだが。静かに座り、改めて両親の間に居る子供を見ようとしたカリムだが、顔を見た瞬間に驚きの表情を浮かべた。「え、ゼロ…姉様…?」「ゼロネエサマ?…あ、カリム・グラシアさんですよね。っと、座ってじゃなくて、立ってしないといけませんよね。始めまして、メビウス・ランスロットと申します。」蒼髪の子供は、あどけない外見に似合わぬ言葉遣いで、深々と頭を下げた。その態度にも驚くが、彼女が一番驚いたのは子供の外見。多少の違いはあれど、幼い頃のゼロ--サイファー--とそっくりではないか。蒼髪にリボンもまったく同じ。混乱して、あ、とか、え、等しか言葉を発せないカリムを見て、彼女の母親が助け舟を出してくれた。「この子はゼ…サイファーさんの息子なのよ。本当に、あの人の小さい頃にそっくりよね。ほら、貴女も挨拶なさい。」「あ、はい。始めまして、メビウス…さん。カリム・グラシアです。よろしくお願いします。」「はい、こちらこそよろしくお願いします。…あぁ、そっか。私が母と似ていたから、驚いたんですね。」「そうみたいだね。私達でさえ、驚いたくらいだ。カリムもさぞビックリした事だろう。しかし、本当にそっくりだよ。」そう言いながら、カリムの両親は、2人して笑顔でメビウスの頭を撫でていた。その笑顔は、本当に嬉しそうで…泣き出しそうなもの。義理とは言え愛している娘の子供、彼らにとっては孫なのだ。始めてみる孫の可愛い事可愛い事。そして、離れ離れになった娘とそっくり。本当ならば、自分達が祖父祖母と言いたいが、言えない悲しさ。「けど、いきなり来てどうなさったのです、ハーリングおじさま?」「あぁ、実は……ふむ、やはり具体的な話は後日にしようか。なに、今日はメビウス君と挨拶に来ただけだよ。」「はい。これから迷惑をかける事があるかもしれないので、そのことで挨拶に来ました。」「そうそう、ハーリング。この後の予定はなにかあるのか?無いのならば、ゆっくりお茶を楽しんでもらいたいのだが。」「すまないね、グラシア。メビウス君の希望で、B7Rに行く事になって居るんだ。」「ほほう、円卓にか。」ベルカ絶対防衛戦略空域B7R--通称、円卓。直径400kmの隆起地形が広がる円形の地域であり、膨大な資源埋蔵量を誇る鉱山地帯でもある。かつてのベルカ公国の政治的、軍事的、産業的にも象徴的な地域・空域。地下に眠る資源が原因で、通信傷害が多発する地域であり、撃墜されて助かったとしても、救助が難しいため、多数の魔導師達にとっては、己の実力が試される戦場であった。ベルカ戦争時、管理局・ミッドチルダ政府・ウスティオ連合軍の魔導師たちの間で、ここで戦うときに言われている言葉あった。【当空域の交戦規定は唯一つ、生き残れ】円形の空域であり、階級も生まれも関係がなく実力だけが求められる事から、上座も下座も無い円形のテーブル、ベルカの騎士達にかけて、何時しか【円卓】と呼ばれるようになった。「よし、すぐに自家用機を手配しよう。それならば、直ぐに着けるだろうからね。」「え!?あ、そこまでしていただかなくても…。それに、私のわがままですから。」「良いのだよ、メビウス君。 君のお願いならば、どんな事でも叶えよう。」「はは、ここはグラシアの言葉に甘えようか。車だと、着く頃には真夜中になってしまってたからね。ふむ、私達は一度ホテルに戻っているよ。」「うむ、そうしてくれ。準備が出来たら、迎えを寄越そう。…ではね、メビウス君。何時でも遊びに着て良いのだからね。」「そうよ、メビウスちゃん。ふふ、そうよメビウスちゃん。今度は、妹のフェイトちゃんとレヴィちゃんも連れてきてね。」「はい、分かりました!!」ハーリングとメビウスを玄関まで見送り終えて、リビングに戻ってくると、グラシア夫妻はメビウスが座っていた場所を見つめて、小さく言葉を漏らす。「本当にそっくりでしたわね。本当に…ゼロと…そっくりで…!!」「泣くな。確かに、メビウス君は私達の孫だ。だから…泣くな。」「えぇ、そうです。私達の孫なのです。なのに…なのにどうして言っては駄目なのですか…!!私がお祖母ちゃんだと、貴方は私の孫なのよと…!!」夫人がポロポロと涙を流すのを、夫が慰めているが…その夫の方も貰い泣きしそうだ。それを後ろで見ていたカリムもポツリと言葉を漏らす。「…ゼロ姉様の子供…なんですよね、本当に…。」「あぁ、そうだよ。…彼は、メビウス君は本当にゼロの息子だ。…目元や、笑う仕草がそっくりだろう?…それに、あの空の様な瞳。本当にゼロと同じだよ。」「はい。…あの、ランスロット…と名乗っていましたが、もしかして、アナトリアの…?」「そう、ゼロの夫は、アナトリアの伝説、スカーフェイス・ランスロットだよ。まったく、あの娘は…。」やれやれと言った様子で首を振る父親に、カリムは少し笑みがこぼれる。口ではそう言っていても、表情は綻んでいる。「どうして、名乗ってはいけないのですか?もう戦争は終わっているのですよ?」「ゼロはグラシアを出て、ゼロフィリアスと言う名も捨て、サイファーと名乗っているのだ。今更、彼に名乗れまい。…ましてや、私達はゼロの事を…助けれなかったのだ。」「…以前から、気になっていたのですが、どうしてゼロ姉様は家を出て行ったのですか、お父様。グラシア家は戦争に否定的でしたし、軍部にも眼を付けられていたかもしれません。それでも、危害は何も無かった筈です。どうして、姉様は…!!」「すまないカリム…それはまだ言えないのだ。…良いかね、カリム。メビウス君は、これから部隊を作るらしいのだ。具体的な話はされていないが、私達はそれに協力するつもりだ。…できれば、お前も協力してあげなさい。」「…・はい、分かりました。お父様、出来れば円卓への案内をしたいのですが。」「そうか、分かった。メビウス君とゆっくり話してみると言い。」円卓「わぁ…。ここが円卓…!!」「め、メビウスさん、そんなに走ったら危ないですよ!」赤茶けた大地とその上には、透き通るほどの青空が広がっていた。吹きぬける風は冷たいが、メビウスはそんなのお構い無しで、丘を駆け上がっていく。その後ろを、風で乱れそうになる髪を押さえながら、カリムが追いかけていた。時々、石につまずきそうになる彼女とは反対に、メビウスはどんどん先に行ってしまう。丘の上で、ようやくカリムが追いつくが…少し息が切れている。どうやら、体力が無いようだ。「凄い凄い、空が広くて…大きくて透き通ってます!!凄いなぁ、こんな空、初めて見ました…。」「ふふ、そんなにはしゃぐくらい、楽しいですか?」「はい!!ベルカに来る前から、楽しみにしてたんです。父さんや母さん達から聞いてた通りです。澄み切った空で凄く綺麗です。」カリムの目の前で、メビウスは両手を広げてクルクルと踊るように回りだした。大人びた少年だと思っていたが、こうしてみるとまだまだ子供だ。「…ここで沢山の騎士が戦っていた事を聞きました。沢山の人が堕ちた事も聞いていました。それでも、ここに来たかった。」「ベルカの騎士達はみな勇敢ですからね。…けど、堕ちた話も聞いてるのならば、気味が悪く感じるのでは?」「そんな事は無いですよ。きっと、ここで戦った人達は、恨みも何もなかったんですよ。…こんな大空で戦えて、本当に本望だったと思います。ほら、空が歌っていますよ。」そう言うと、メビウスの周りに蒼い光が集まり零れ落ちる。彼のソラノカケラが反応しているのだろう。その光を纏い、再びメビウスはクルクルと回りだす。幼い頃、こうして彼の母も、クルクルと踊っていたものだと…カリムは思い出すのであった。「グラシア理事官、ISAF本部が見えましたよ。グラシア理事官?どうかされましたか?」「あ、いえ。なんでもありません。」物思いに耽っていると、何時の間にか車は王様橋を渡るところだったようだ。運転手の声で、我に返ったカリムは王様橋から見える景色を眺め始めた。「けど、この王様橋、本当に大きな橋ですね。こんな大きな橋は、ベルカにはないですよ。」「そうでしょ、騎士ヌエラ。この橋は、我々クラナガン市民の自慢ですから。自分も子供の頃は、この橋を見て育ちました。」橋の立派さに感心するシャッハの言葉を聞いて、運転手は嬉しそうに、誇らしそうな笑みを浮かべている。クラナガン市民にとって、身近であり大きな王様橋は皆が見て育つほどなのだ。それを褒められて嬉しいのだろう。「けど、これからの子供達は、違うかもしれませんね。…きっと、この王様橋と、ここから見えるISAF本部やマリーゴールドを見て育つんでしょう。」「確かに、ここからなら、本部も良く見えますし、航行艦が停泊しているのも見えますね。」「えぇ、我等がISAFの旗艦、マリーゴールドです。本部に到着しましたら、そちらの方も視察していただく事になっていますが。」「はい、事前に資料を渡されてますので、大丈夫です。」「それは良かった。後30分ほどで付きますので、それまで景色を眺めてて居てください。」王様橋からは、旧市街地に立っているISAF本部と港に停泊しているマリーゴールドも、見渡す事が出来た。少し遠いかもしれないが、ここからなら2つを写真の中に収める事もできるだろう。「あ、恐らくですが、今日はリフォー社の帝代表も着ていらっしゃるかと。」「帝代表もいらっしゃるのですか。それなら、挨拶をしなければいけませんね。」「他にもいらっしゃるかもしれませんね。今日は新型装備の受理が予定されていますから。」「新しいSFSですか?」「いえ、今回は歩兵用特殊シールドですよ。陸戦部隊の生存率を上げるために開発された装備です。現物は、本部でご覧下さい。」ISAFは様々な環境で活動を行い、その環境・状況下で必要となる装備などを本部と企業連に提案し開発を行っているのだ。本来は、企業連に直接依頼したほうが、早くに開発されるのだが…本部の許可なしでそんな事をすれば、今まで以上に眼の敵にされてしまう。クロノやレジアス、ハーリングが後ろ盾にいるお陰で、開発案は通るが、やはり一言二言は難癖を付けられるのだ。その度にメビウスやブレイズが「命を張ってるのは部下達だ。その部下の命を捨てれるか」と言っているのだが、一部の上層部はやはり気に食わないようだ。最近、ISAFは勢力を拡大しており、それにあわせてハーリング派も力を強めてきている。恐らく妨害しているのは、ハーリング派を敵視している政敵達であろう。何処の世界でも、政治家や官僚達は自分の地位が大事のようだ。「ランスロット総隊長も苦労されてるのですね。」「はい。それでも、自分達の為に矢面に立ってくれてます。ですから、我々は総隊長を信じているのですよ。なんたって総隊長は、我々の英雄ですから。」ヒーロー・オブ・ヒーロー。英雄の中の英雄に憧れるのは子供だけではない。こうして、彼を信じる者達がISAFには集っているのだあとがきこれは着たか、なんかフィーバーモードが来そうで来ない様な…微妙な状態です。寒くなりましたね。雪が降りましたね。ストーブの季節ですね。ひび割れが凄まじいですね。手の指10本中、8本くらい絆創膏張ってますよ。キーボード押すときに、違うところが押ささるのなんのって。ただでさえ誤字多いのには、笑えない状況です。季節ネタはクリスマスを予定しています。…今回は灯火&烈火の夫婦ネタでいってみますかねぇ。これから寒くなってきますので、皆様も体調には充分お気をつけ下さいさぁ、雪かき&ストーブの灯油補給のお仕事が始まるぜぃ。