ランスロット家、リビング。「ここを…こう折って…。」「フェイトも、上手になったな。」「そうね~。…ああもう、折り紙するフェイトちゃん、かわいいわぁ。」夕食も終わり、入浴を済ませたフェイトがリビングのテーブルで、折り紙で鶴を作っているところだ。サイファーは向かいに座り、スカーフェイスはソファに座りながら、愛する娘の可愛らしい行動に頬を緩めていた。メビウスの為に、千羽鶴を作りたい。だから、作り方を教えて欲しい。数日前の夕食の時にフェイトが提案してきた事だ。最初こそ、不安げな手つきだったが、今では慣れた手つきで一羽ずつ、丁寧に鶴を折り作っている。愛する息子が重体で、辛いのは親である彼らも同じこと。だが、愛する娘であるフェイトのこの行動が、どれだけ心を癒し、救われたのか。小さく笑みを浮かべながら、フェイトを眺めていたスカーフェイスだが、ふとある事に気が付き、笑みを更に深くする。「…なぁ、フェイト。少し聞いても良いか?」「なに、お父さん?」小さく笑みを浮かべ、声をかけるスカーフェイスに気が付き、フェイトは手を止めて、首をかしげる。そんな娘の可愛らしい仕草に、更に笑みを深める2人と、なんで笑顔になっているのか今一わからずに、フェイトはキョトンとしていた。「俺の気のせいで無ければ、青い折り紙だけ外してないか?」「あ…えっと、後で折ろうって…。」「…なんでだ?」「その…うんと…」「…ふふ。」何故か顔を赤くして、モジモジし始めるフェイトを見て、サイファーは堪え切れずに、小さく笑い声をもらした。実は、鶴の作り方を教えた時にサイファーは、何故フェイトが青い折り紙を残しているのかの、理由も聞いていたのだ。その理由すら、可愛らしくて、笑いがこぼれる内容である。「…青は…お兄ちゃんの色だから。…大切に折ろうって決めたんだ。」「なるほど。…まぁ、そんな事だとは思ったがね。」「良いわね~。本当にフェイトちゃんは可愛いんだから~。」「お、お母さん、苦しい…。」笑顔で抱きしめて、頬擦りをしてくるサイファーに驚きながら、フェイトも嬉しそうに笑顔を浮かべる。例え義理だろうが…彼女にとってサイファーはもう1人の母親であり、サイファーにとってもフェイトは愛すべき娘なのだ。そんな2人をスカーフェイスは、優しい眼差しで見守りながら、傍らにおいてある籠の中身に視線を向ける。そこにはフェイトが今まだ作った300羽近くの折鶴が収められていた。恐らくは、あと少しで自分のノルマを達成するところだろう。「はぁ、いい湯だった。…って、サイファーは…なにしてんだい?」「見ての通り。フェイトとのスキンシップ中だ。」長い髪をタオルで拭きながら、リビングに入ってきたアルフの眼に映ったのは、頬擦りされているフェイトの姿。アルフはスカーフェイスの一言で、納得しながら、冷蔵庫からドリンクを取り出して、風呂上りの一杯を楽しみだす。「ぷはぁ。風呂上りの後の冷たいのは最高だね。」「まったく…。ガルムが居たら、小言が飛んできてるぞ?」「そう言うフェイスだって、何か言うんじゃないのかい?」「そうかもな。だが、その前に…とりあえず、フェイトの事を助けてやれ。」「フェイトちゃ~ん♪」「お…お母さん、鶴折れない…。ひゃっ!?何処触ってるの!?」「よいではないか、よいではないか~♪」「サイファー、いい加減しな…よっ!!」何故かフェイトのパジャマを脱がしにかかるサイファーの後頭部を、新聞紙を丸めた棒でアルフが引っ叩くと、パコンといい音が響く。最近では、こうして彼女がサイファーの暴走を止める役割にあるらしく、手馴れたものである。「あ…アルフ…!!」「大丈夫かい、フェイト?」「う…うん。何時もの事だから…。」何時もの事で良いのか、何時もの事で…。と心の中で苦笑しながら、自分のほうに逃げてきたフェイトを背中に庇うアルフであった。ランスロット家の暖かく穏やかで…少し寂しい夜は、今日もすぎていく…。帝家、閃の自室。「はい、13連鎖です♪」『ば…馬鹿なぁぁぁ!!!』「え…えげつねぇ…。8連鎖の次に13連鎖とか…。」落ち物ゲームで遊んでいるリリンの相手をするのは、閃のデバイスであるナイトレーベン。閃がナイトレーベンと、コードを繋げて操作を出来るようにゲーム機を改造していたのだ。テレビ画面には、ナイトレーベンの枠が全て、埋まり負けているところだった。『うおおお…。リリン嬢、もう一回勝負!!』「良いですわよ。けど、負けませんわ!!」「レーベン、諦めろって…。10連敗中だろう…。」『てやんでぇい!!ここで諦めたら江戸っ子魂がすたらぁぁ!!』「江戸っ子ってどこがだよ…」異様に燃えているナイトレーベンに呆れながら、閃はため息をつき、リリンに緯線を移す。ようやくリリンの転入手続きも終わり、春から閃と一緒に聖祥に通う事になったのだ。しかし、流石にミッドから通うのは些か問題が在る為、リリンたっての希望で帝家に居候することなった。既に入浴も済ませ、パジャマ姿で遊ぶ彼女の姿は、年相応の少女である。「はい、20連鎖です!!」『に…逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…』「すでに積んでるぞ…。」『……乱数調整…』「やめろアホ!!」『割れるぅぅぅぅ!!!』10分後『も…燃え尽きたぜ…真っ白に…燃え尽きたぜ…。』「とりあえず…寝てろ。」弱弱しく点滅するナイトレーベンを、調整装置につなげると閃はベッドに腰掛けている、リリンの隣に座る。彼女の膝の上には童話の絵本が開いておいてあった。「へぇ、リリンも童話なんて読むんだな。」「はい。私だって、難しい本ばかりじゃないんですよ?」笑顔で閃に寄り添いながら、リリンは絵本のページをめくって読み進めていく。手持ち無沙汰の閃も適当においてあった雑誌を手に取ると、パラパラと流し読みを始めていた。ページをめくる音が部屋に響くが、2人にとっては心地よい沈黙の時間。10分ほどたった頃だろうか、閃が肩に僅かな重みを感じ、リリンの方を見ると…「すぅ・・すぅ…」「寝ちゃってるな。…まぁ、そんな時間だしな。」先ほどまではしゃいでいたからか、何時の間にか眠りの国に旅立っているリリンに苦笑しながら、閃はそっと自分のベットに寝かしつける。リリンの部屋も用意されているのだが、そこまで起こさずに連れて行くのは無理だろうし、起こすのも可哀想だ。そのまま、ソファで寝ようとした閃だったが、よく見るとリリンが彼の手を掴んで離さない。「ん…お兄様…行っちゃ…やだ…。」「…おいおい。一緒に寝ろっか…?」ホンの少し赤面しながら、閃はため息をつき、リリンの隣に横になる。そうすると、リリンは満足そうな寝顔を浮かべ、彼に擦り寄ると再び、寝息を立てる。流石の閃も緊張するらしく、最初こそ硬かったが、リリンの安心しきった寝息を聞くと、身体の力を抜き、ソッと頭を撫でて、自分も眼を閉じる。転生者であり、導き手となる決意をした少年と…天才と呼ばれる幼き少女の寝顔は…とても可愛らしいものだった…。八神家、リビング。「出来た!!」「沢山作りましたね。…主、これを繋げれば?」「そうやよ。ん~…疲れたなぁ。」テーブルの上には、色とりどりの鶴が積み重なっておいてあった。作った本人であるはやては背伸びしながら、自分の成果を笑顔で見つめている。シグナムも若干、笑顔で鶴を1羽1羽丁寧に紐でつなげて、置いてあった籠の中にしまっていく。「しかし、これは何に使うのです?」「千羽鶴って言うを作ってたんよ。」「なぁ、はやて。千羽鶴ってなんだ?」キッチンからシャマルと一緒にお茶を持ってきたヴィータがはやての隣に座りながら、鶴の山を指差す。シグナムも千羽鶴という言葉がわからずに、首をかしげていると、何処からかザフィーラが辞典を持ってきて、意味を調べ始めていた。「千羽鶴、病気快癒・長寿がかなうという説があるらしい。」「へぇ。てか、ザフィーラ、その辞典何処から持ってきたんだ?」「そうやよ。まぁ、自分の為やないんやけどね。」「あれ、そうだったんですか?」首をかしげるシャマルに笑顔で返しながら、はやては作っていた理由を教える事にした。実は今まで、秘密にしていたのだ。理由は…少しの恥かしさから。「んとな、私の大切な友達が大怪我したそうなんよ。…それで、早くよくなりますようにって…想いをこめて作ってたん。」「そうだったのですか。…そのお友達も怪我が早く直ると良いですね。」「そうやねぇ。…まだみんなに紹介とかしてなかったもんなぁ。」「どんな奴なんだ?」「んとな…。やさしくて…かっこよくて…凄くいい人なんよ。」笑顔でヴィータの質問に答えるはやての頬はホンの少し赤くなっていた。流石のシグナムやシャマルねその友達に、はやてがどんな感情を抱いているのか理解したらしく、顔を見合わせて笑っている。「あとな、蒼くて綺麗な髪をしてるんよ。」「…蒼い…髪…!?」はやての言葉を聞いて、シグナムの脳裏に浮かぶのは…神社で蒐集した少年と工事現場で戦った女性の姿。…はやての言葉からして…友達とは少年の事を指しているのだろう。突然、驚いた事に「どうしたん?」と心配するはやてに気が付き、なんでもないとシグナムは答えると、何事も無かったかのように、鶴を紐で繋げていく。(まさか…あの少年が…主の友達…!?…蒼い髪など、そんなに居るわけでもない。そう考えるのが…当然か…。ならば、私は…主になんと…詫びれば…!!)少年、メビウスに大怪我させたのは、決してシグナムではない。だが、彼と戦ったのは…確かに彼女だ。その戦いが原因で…あの妙な魔導師にメビウスが殺されかけた。そして…魔力も自分が奪った。その事が、シグナムの心に影を落としていた…。深夜 八神家リビング。「あと少しで、全て埋まるな。」「そうね。…これが埋まったら…お別れなんでしょうね…。」闇の書のページをめくりながら、シャマルは寂しそうに微笑む。自分達が消えるのは覚悟のうえだった。だが…その時が近づくと…やはり、はやてとの生活の楽しさを思い出す。4人にとって、彼女との生活は…何よりも掛替えの無い満ち足りた生活だった。「だが、これが主を救う為だ。…我等はその為に動いてきた。」「ザフィーラ…。えぇ、そうね…。」壁に寄りかかりながら、ザフィーラが蒐集の目的を今一度、思い出させる。闇の書に侵食されていたはやてを、助けるための魔力の蒐集。闇の書の項を全て埋めれば、侵食は止まり、はやての足も、発作も完治する。だが…それで本当に良いのかと…思っている人物が居る。「なぁ、あたし達のやってることって…正しいのか?」「ヴィータちゃん?」「本当に、はやてを助ける事になってるのか…?これって…本当にはやてが望んでた事なのか…?」うつむき加減のヴィータの口からこぼれるのは…今まで自分が感じていて、押し殺してきた疑問。昼間のオメガとの出会いで…感じた事を全て…吐き出してみる事にしたのだ。「闇の書の蒐集が終われば、侵食も止まり、新たに転生する。それが主を救う事になる。お前だって、最初は納得してただろう?」「だけど、最近じゃ、はやても発作を起こさなくなってきてるし…侵食だって殆ど止まってるんだろ?なら、もうこんな事しなくても…」「ヴィータちゃん。…それでも私達が闇の書を完成させないと…はやてちゃんは一生歩けないままなのよ?」「それに何れは主が誰なのか…管理局に突き止められる。その前に…我等が消えれば、主はやてに害は及ばない。」シャマルとザフィーラが諭す様に、ヴィータを止める。シグナムだけは…ヴィータに言われた事をホンの少し考え始めていた。「確かに…主の発作と、コアへの侵食が止まっているのは事実。……そうか…あの少年…。」「シグナム、どうしたの?」「いや……実は…主の言っていた友達。…恐らくだが、私が蒐集した…魔導師の事だろう…。」「魔導師って…どういうことだ?」シグナムは以前に蒐集した少年の事、吸収し終えたコアの魔力が一瞬で回復し、闇の書が勝手に吸収しようとした事等を3人に話し出した。「無限のリンカーコア…って事か…?」「なんだよそれ…。反則じゃないか…?」「けど、闇の書が勝手に吸収したりするのは…異常ね。それに…1人から吸収できるのは、1回だけの筈よ。」「だが…その少年の魔力を蒐集してから、主の発作も治まっている。」無限のリンカーコア、闇の書の異常な行動、発作がおさまったはやて。それが何を意味するのか……次の日。キサラギ公園。「あ、2人とも、おはよう!!」「はやてちゃん、おはようなの。」「はやて、おはよう。」待ち合わせの公園にはやてが到着すると、先になのはとフェイトは2人は、折鶴が入った籠を持って待っていた。ここでそれぞれが作った鶴を合わせて、メビウスの所に持っていく事になったのだ。「遅れてごめんなぁ。ちょっと、持ってくるのに手間取ったんよ。」「あ、大丈夫だよ。私達も今来たところだから。ね、フェイトちゃん。」「うん。…わ、はやても沢山作ってきたんだね。」「そう言う2人かて、沢山作ってきとるやないの。」2人がベンチにおいていた籠の中を見ると、確かに沢山の鶴が紐でつながれて入っていた。もっとも、はやての持ってきた籠の中も負けないくらい、沢山入っているのだが。「後は全部つなげて、メビウス君の所に持っていけば、大丈夫やね。」「うん。…メビウス君…よくなるよね…?」「当然やって。みんなで一生懸命作ったんやからね!!」不安がるなのはを元気付けるようにして、笑顔で答えるはやて。それを見て、なのはも弱弱しくだが、笑顔を浮かべ、信じようとしていた。だが…フェイトは2人を庇うようにして…何故か入り口をにらんでいた。「フェイトちゃん、どうしたの?」「なのは…。はやてを守ってあげて。」「え…?」「…居るのはわかってるよ。…出て来い。」何時でもバルデッシュを使えるようにして、入り口に居るであろう…彼女が大嫌いな人物に声をかける。すると…入り口の空間が僅かに揺らめき…1人の人物が姿を現す。「ふん…。兄妹そろって、礼儀がなってないな。」「黙れ…!!私達に近づくなって…言われてる筈!!」「シルヴァリアス…君…!?」現れたのは…下卑た笑みを浮かべる少年、シルヴァリアス。その手には、アスカロンと似た様な2対の剣型のデバイスが握られていた。(今のは何…。空間転移とも違うし…。まさか…ステルス…!?)「へぇ、勘付いたか。…お前の思っている通り、ステルスさ。…僕の新型のデバイス、フェンリア・プロヴィデンスの力さ。」「な…なぁ、なのはちゃん、フェイトちゃん…誰なん?」突然現れたシルヴァリアスと、そんな彼を警戒する2人に驚きながら、はやては2人を見つめる。だが、そんなはやてを見たシルヴァリアスは愉快そうに笑い…彼女を指差す。「これはこれは…闇の書の主の八神はやてじゃないか…!!」「…え…?」「っ!?」「なのは…今度こそ、君は騙されているんだ。…君が探していた闇の書の主、それこそが…そいつなんだよ!!」はやてを指差し声高々に、彼女が主である…と言ってのけるシルヴァリアスの眼は…酷く濁り…淀んでいた。「う…嘘…だよね?はやてちゃんが闇の書の…。」「わ…私…は。」「嘘をつくな。…メビウスだったか…あいつも貴様の為に…あんな怪我をしたんだったなぁ。」「メビウス…君…?」「はやて、見ちゃだめ!!」メビウスの名に反応して、はやてが伏せていた顔を上げるが…フェイトが必死に止める。彼女の言うとおり…上げない方が…よかったのかもしれない。空中にモニターが映し出され…そこにはシグナムが、メビウスを貫いている映像が映されていた。(実際には…僕がやったが。まぁ、映像なんて幾らでも改ざんできる。)「し…シグナムがメビウス君を…。わ…私のせい…なん…?」「はやて、落ち着いて!!あいつの言う事なんて信じちゃだめ!!」「…シルヴァリアス君…どういうこと…!?」フェイトがはやての耳をふさぎ庇い、なのはもシルヴァリアスをにらむ。温厚で優しい彼女でも…シルヴァリアスは大嫌いな人物であった。「どうもこうも…そいつがメビウスの魔力を狙わせたって事だよ、なのは。…君に近づいたのだって、魔力を狙ってのことさ。」「ち…違う!!私はそんな事…。」「何が違う、どう違う?現にお前と知り合いだったメビウスは…こうして蒐集されてるじゃないか!!」俯くはやてに何度も何度も同じ映像を再生し、見せ付けるシルヴァリアス。「違う…違う違う違う違う…!!」「なにをどういっても無駄か。…まぁ、良い。さぁ、なのはそこをどいて…僕がそいつを片付けてあげるから。」「片付けるって…だ…駄目だよ!!」「はやては…私達の友達…。お前なんかに触らせない!!」2人にとって、シルヴァリアスの言葉など信じるに値せず、大切な友達であるはやての言葉を信じるのは当然である。だが…シルヴァリアスにとって…なのは以外はどうでもいい存在。ゆえに…フェイト諸共、斬れば良いという思考に達するのだ。「なら…人形ごと死ね…!!」「っつ…バルディッシュ!!」「ちぃ…メビウスと良い、貴様と良い…本当にむかつく兄妹だな!!」「お前なんかが…お兄ちゃんの名前を口にするな…!!」咄嗟にバルディッシュで斬撃を受け止めて、憎悪の眼をフェイトは向ける。彼女にとって…最愛の人物であるメビウスの名を…シルヴァリアスが口にするだけでも許せないのだ。舌打ちをして、フェイトから離れると、シルヴァリアスは別な魔法を仕掛けようとするが…それより早く上と右から接近してくる反応があった。「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」「なに…。上か…!?」「あたしも…居るんだよ!!」「がふっ!?」上空からの斬撃、シグナムのレヴァンティンの一撃をフェンリアで受け止めるが、右から接近していたヴィータの横殴りのアイゼンの一撃をまともに胴体に受けて吹き飛ばされる。どうやら、はやてが狙われているのに気が付いて、駆けつけてきたようだ。「無事ですか、主!?」「主って…それじゃ…本当に…。」なのはが戸惑うようにして、駆け寄るシグナムとはやてを交互に見つめる。ヴィータとフェイトはお互いに若干、けん制しながらもシルヴァリアスの吹き飛んだ方向を警戒していた。「な…なぁ、シグナム…。うそやろ?シグナムがメビウス君に大怪我させたって…嘘やろ…?」「…………いいえ、本当の…ことです。」「うそや…うそや嘘や嘘や…嘘やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」シグナムが後悔の念を浮かべながら…苦々しくはやての質問に答える。一度言ったが、彼女が大怪我をさせたわけではない、だが…騎士として…己の責任だと…感じているのだ。その言葉を聞いた瞬間に…はやては糸が切れた人形のように…車椅子の上に崩れた。シグナムがあわてて、助け起こそうとするが…それを遮る様にして…闇の書が転移してきた。「闇の書…!?なぜここに!?…あ…主!?」シグナムの驚きの声とともに…はやてが浮き上がり、突然現れた奇妙な球体に吸い込まれていく。そして…周囲に響き渡る不気味な声。「はははは…。ようやくだ…ようやく…時が満ちた…。」「誰だ、貴様!!闇の書の意思ではないな!?」「いいや…。我らは闇の書の意思だ。…太古より寄生している存在ではあるがな…。礼を言うぞ、守護騎士どもよ。お前らのお陰で…我らは再び目覚めれた。」「目覚めただと…何者だ!!」「我らは…ダイモン。時空世界を真に支配すべき存在よ…!!」あとがきさて急展開を見せた今回。そして登場、全ての元凶のダイモン。物語に付き物の…悪役です!!うまく行けば4~3話で終わる予定です。