再び、再び新たななのは召喚が試みられる。
「さあて、今回はなのはちゃんの帰還と別人が出るを出し抜き、一番人気は別の世界のなのはちゃんだあ! 」
はやての言葉を聞いて、フェイトは後でお話する相手を捜さなければと決意する。
「では、なのはちゃんよろしくお願いします!」
「うん……」
頷いてなのはは両手を合わせ、ゲートを潜ろうとしてから、一度振り向く。
「ユーノくん、こっちの私を絶対に私のようにしないでね」
「はい……」
ユーノは申し訳なさそうに頷く。その肩をフェイトが苦笑気味に叩いた。
そして、なのははゲートを潜り……光が収まると頑丈そうなアーマーを着込んだなのはが現れる。
「来てフェイトちゃん!」
その言ってなのはは腰のベルトからカードを取り出し、裏返して黄色い面を上にして再び挿入する。
「えっ?」
するとフェイトが引っ張られて、なのはの中に入ってしまった。
『えっ?!』
『ライトニングフォーム』
驚く一同の前でなのはの姿が変わる。茶色の髪が金色に染まり、サイドポニーはツインテール、瞳も赤く。そしてアーマーも重厚なものから軽量なものへ。
そして、『変身』が終わると『なのは』は慌てだした。
「えっ? えっ? なにがどうなってるの?!」
その声と仕草は間違い無くフェイトのものだった。
『フェイトちゃんどうしたの? いつもならここで「最初に言っておきます」って決めゼリフ言うのに!』
「そ、そんなこと言われても……」
そこでやっとなのはは気づいた。自分がさっきまでいた場所と違うことに。
『あれ?』
そう呟きながらなのははベルトを外す。と、ベルトからカードが出て消滅してしまった。
「八神さん、どうなってるの?! また私にパスを無駄遣いさせたの!?」
はやてを見つけると、すぐに詰め寄るなのは。
「お、落ち着いてやなのはちゃん」
「い、一体どうしたんだよなのは?」
その言葉になのははヴィータを見て、あれっと首を捻った。
「ヴィータちゃん、いつの間に『ヴォルフラム』の外でも実体化できるようになったの?」
「はっ?」
なのはの疑問にヴィータは首を傾げるしかなかった。
「なるほど、時間を駆ける船ですか」
「そうなの。私は失われたはずの時間を航行していた『アースラ』で魔法使いゼロノスとして、私の世界の八神さんは『ヴォルフラム』で魔法使い電王になって時間を守るために戦ってました」
再び隊舎でなのはのやってきた世界の説明を受けて、頷くはやて。
「あ、そういえばなんで私はなのはの中に?」
「フェイトちゃんは私の世界では、私の契約イマジンだったからそのせいかも」
フェイトの疑問に答えるなのは。もちろん、はやての契約イマジンはヴォルケンリッターである。
そして、再びの緊急出撃に同行するなのは。
「贅沢は言ってられないの!」
なのはは腰に装着したベルトにカードを入れる。
『スターズフォーム』
魔法使いゼロノスに変身するなのは。
「最初に言っておきます、私はかーなーり強い!」
腰のレイジングハートを組み立てガジェットに立ち向かうなのは。
バスターモード、ザンバーモードを的確に使ってガジェットを打ち倒す。
『Full Charge』
そして、バックル左上のスイッチを押してからカードを取りだす。それを、レイジングハートに装填すると、先端にエネルギーが集中する。
それは、スターズフォームのなのは最大技、ディバインバスターEX。
「いっけえ!!」
なのはが引き金を引く。
集中したエネルギーが解放され、ガジェットは跡形もなく粉砕された。
変身を解き、カードが消滅する。
「ただいま戻りました」
そして、全員が六課に戻って、
「あれ? なのはさん?」
「いつ賢者の石使いましたっけ?」
ルキノとシャーリーが首を捻る。
『へっ?!』
はやてたちが驚き調べたところ、六課の一部の人間が、今朝行われたなのは召喚を忘れていた。
「どうなっとるんや?」
なのはは話さなかったが魔法使いゼロノスは変身するたびに、他者から装着者の記憶を奪うものなのである。
「こんにちはヴィヴィオちゃん」
なのはがヴィヴィオに笑いかける。
「こんにちは」
ぺこっとヴィヴィオが頭を下げる。そんなヴィヴィオになのはは笑う。
「こっちでは小さいんだねえ。私の世界では同い年くらいだったのに、いきなり小さくなっちゃって」
しんみりと思いだす。時間の影響と聞くけど、どうしてだろうと考えるなのは。
「今度こそ、今度こそなのはちゃん帰ってきとくれよ」
「はやての頑張りは無駄にならないよ。きっと」
未だに賢者の石を使えるのは上に掛け合っているはやての努力の成果である。
ユーノにシャーリーやマリーもその努力に報いるため、懸命に賢者の石の研究を続けている。
「じゃあ、みんながんばってねえ!」
ぶんぶん手を振ってなのははゲートをくぐる。
新たに召喚されたなのはは、真っ黒の装束、背中側の腰に二振りの小太刀を差して、タバコ……いや、シガーチョコをくわえていた。
「だー! なのはちゃんってなんなんや?! 何者なんやー!!」
「は、はやて、落ち着いて」
錯乱するはやてを宥めるフェイト。一方のなのはは状況を把握しきれないのか目を白黒させていた。
「えっと、高町なのは……さんですよね?」
「あっ、はい。そうです。あの、ここはどこなんですか? それになにがどうなってるんですか?」
なのはの問いにユーノは頷く。
「簡単にですが今の状況を説明させていただきます」
そして、ユーノは簡潔にここが異世界であること。この世界のなのはが事故で別の世界に飛ばされて自分たちはなのはを連れ戻そうとしていることを説明した。
「はあ、そうなんですか」
なのはは平静に頷き、そのリアクションの薄さに説明いらないかと考え、
「異世界!? そんなのあるんですか?!」
なのはは大声で驚く。そのワンテンポ遅いリアクションに全員が滑った。
「魔法ですか……霊能力があるくらいだからあってもおかしくはないけど、びっくりです」
はやてたちの説明を受けて目を丸くするなのは。
そんななのはにはやては満足げに頷いた。
「そのリアクション嬉しいよなのはちゃん」
「だからなんか違うってはやて」
はやてにつっこむユーノ。
「なのは、さんはなにをしてる方なんですか?」
ちょっと興味を抱きフェイトは尋ねた。
「えっと、ボディーガードをしてます」
意外な役職に驚く一同。
「へえ、ボディーガードなんだ」
「うん、お兄ちゃん直伝の御神の剣でがんばってるの!」
そういってなのはは胸を張った。実際、恭也並みに表裏問わず有名なのである。
そして、なのはの体さばきに興味を持つシグナム
「高町、一手手合わせ願えるか?」
「え? いいですけど……」
そうしてなのはが承諾し、二人の模擬戦が決定した。
なにもないフィールドで二人が向きあい、お互いに武器を構える。なのはは訓練用の模造刀。シグナムは殺傷力を落としたレヴァンティ。
「永全不動八門が一派、御神真刀流小太刀二刀術表、高町なのは参ります」
「ヴォルケン・リッターが烈火の将シグナム、参る!!」
二人の剣がぶつかり合う。
火花を散らす剣と剣。めまぐるしく動く攻防。
激しく、早く、そしてどこか美しい剣舞に誰もが目を奪われていた。
「うわあ、なのはママすごおい」
目をキラキラさせながらヴィヴィオは呟く。
「すごい……」
「あのなのはさん魔法使ってないんですよね?」
御神を知らない純粋な魔法世界出身者たちは、純粋な体術だけで戦うなのはの動きに圧倒される。
そして、一瞬のようで長い攻防の均衡が崩れ、ぎんとシグナムによって刃を弾かれなのはがバックステップで離れる。
「ふ、やるな高町。以前お前の兄と手合わせしたが、互角、いやそれ以上だ」
「にゃはは、ありがとうございます。シグナムさんも烈火の名の通りすごく強い剣です」
お互いの称賛の言葉にお互い笑う。剣士同士通じ合うものがあるのだろう。
「だが、次で最後にしよう」
「ええ」
そう言ってお互いに構える。なのはは奥義を使うために刀を鞘に納める。対してシグナムは最も信頼する技、紫電一閃の構え。
誰もが固唾を飲む中で二人は動いた。
なのはは動く。神速を使い、誰も追いつけない領域に踏み込む。
速さは力。届かない速度に力は意味をなさず、そして、速度は如何なるものにも届かせる力になる。
傍から見れば瞬間移動。だが、シグナムとて歴戦の剣士。その動きに反応しレヴァンティを振るう。
「紫電……一閃!!」
シグナムも最高の技の冴えと自負できる一撃。
だが、なのはの動きはそれを超えた。
憧れの兄から受け継いだ奥義之六『薙旋』の四連撃。
一刀目で軌道を逸らさせつつ、シグナムの背中からの一刀、さらにそこから二連撃を叩きこむ。
なのはの剣に弾かれるシグナム。派手にシグナムは地面へ叩きつけられた。
慌てて駆け寄るなのは。
「あ、あの大丈夫ですか? 手加減し忘れちゃったんですけど……」
心配そうになのははシグナムを見る。だが、シグナムはふっと小さく笑う。
「大丈夫、ではないな。将としてのプライドはボロボロだ」
シグナムの言葉になのはは苦笑を浮かべる。
「だが、いい勝負だった。礼を言うなのは」
シグナムが手を差し伸べると、なのはも笑顔を浮かべる。
「あ、いえ、こちらこそありがとうございました!」
お互いの力を認め合った剣士同士の姿に戦いを見ていた全員が拍手した。
「すっごかったよ、なのはママ!!」
「にゃはは、まだいないはずの娘に会うなんてちょっと複雑」
なのははぽりぽりと頬をかいて苦笑する。なお、このなのはに子供ができるのはもう少し後、依頼で運命の相手と出会ってすぐである。
「えっとね、シグナムさんがこうずばーって来たら、ママはこうすぱーって」
ヴィヴィオが一生懸命なのはの動きを真似して見せる。
最初は微笑ましくそんなヴィヴィオを見つめて、なのはは一つ気づいた。
「ヴィ、ヴィヴィオちゃん、もう一度今のお願いできる?!」
「なのは?」
なのはは慌ててヴィヴィオに頼む。フェイトがいぶかしげに首を傾げるが、なのはにとってこれは重要なことであった。
なにせ、ヴィヴィオが今した動きはなのはが神速を使っていた時の動きであったのだから。
「はーい」
ヴィヴィオは頷くと、再びなのはの動きを模倣して見せる。ところどこと間違いはあるが、それは確かにあの時なのはがした動きだった。
そして、なのははがしっとヴィヴィオの肩を掴んだ。
「ヴィヴィオちゃん、私のところで修行しないかな? きっと誰よりも強い剣士になれるから!!」
「ちょっとなのは」
フェイトが止めるが、なのはは気にしない。そんなことで今の彼女は止められない。
「ママより?」
「うん」
なのはは頷く。目の前の原石はきっと自分を超える輝きを見せるはずだと確信が持てた。
「じゃあ、やってみるー!」
そして、なのはは元の世界に帰るまで、できる限りヴィヴィオに簡単で基本的な指導を、そして、自分がいなくなってからも大丈夫なように、ノートでヴィヴィオに教えることをこの世界の自分に残したのだった。
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今回はゼロノスななのはさんと御神のなのはさんでした。
ゼロノスな世界では電王ははやて、イマジンたちはヴォルケンズです。ただし、僕の中では一人だけ違うのが混ざっています。それはそのうち明かす予定。
そして御神のなのはさん。
シグナムと名勝負は出す時から考えていたこと。楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、また。コメント楽しみにしています。