そして、梨花ちゃまは首を傾げる。
「みぃ、ここはどこなのですか?」
「ああ、ここはな」
はやてが慌てて現れた梨花ちゃまに事情を説明する。
「そうなのですか~。では、二日間よろしくお願いします」
「え、えらいあっさり納得したなあ」
あまりに呑みこみの早い梨花ちゃまに首を捻るはやて。
「だって、僕はオヤシロさまの巫女さんなのです。それに、二日ならリミットぎりぎりだから問題ないしね」
後半はよく聞こえなかったが、よくわからない理由で胸を張る梨花ちゃん。その姿に……ツンデレガンナーが鼻血を吹いた。
「はう~っ、かぁいいよ~!お持ち帰り~!!」
「ティ、ティア?!」
突然の相棒の奇行にスバルは驚きの声をあげるしかなかった。
「みんなで遊ぶのですよ」
と、訓練の合間にフォワードメンバーに提案する梨花ちゃま。
率先してティアナが参加して、それから他のメンバーも参加する。
次々とその萌落としと、実は堅実かつ狡猾な策略で勝利を掴む梨花ちゃま。
「また、上がりなのですよ。にぱ~☆」
「はう~、梨花ちゃんじょうずじょうず」
鼻血を流しながら梨花ちゃんに恍惚の顔を向けるティアナ。
「ティア……」
あまりの相棒の変貌に涙を流すスバル。
そして、出動になぜかついてきた梨花ちゃま。
「あう~、僕がなにかしたのですか? こわいですよぅ……」
涙目でぷるぷる震えながら敵を見つめる梨花ちゃまに敵は「萌~!!」と吐血、もしくは涙を流して「俺、なにやってるんだろ?」 と泣きだすものまでいた。
「ええい、こんな餓鬼にお前らなにしてんだ!」
だが、その精神攻撃(?)を耐え、梨花ちゃまに攻撃しようものなら……
「はう~、ダメだよぉ、そんなことしちゃあ」
「ぐああああ!!」
神速の『レナぱん』もとい『ティアぱん』が顎を打ち抜く!
「私よりも早い……」
相棒の神速の攻撃に自分の存在意義を見失いかけるスバル。
そして、その隙に、
「これが私の全力全壊!!」
「えええええ?!」
掴んだキャロを『超級覇王沙都子弾』改め『超級覇王キャロ弾』の弾として撃ちだす梨花ちゃま。それでほぼ敵を制圧してしまった。
以後、キャロはなのはに微妙な距離を取る様になったとか。
「やっぱりなのはちゃんなんやな……」
梨花ちゃまの決め台詞を聞いて独白する部隊長。
そして、再び賢者の石を使いなのはの召喚を試みる六課。
「せめて『なのはちゃん』が出てくれればいいんやけど」
「そうだね……」
半分投げやり気味にはやてが呟く。
「ではさよならなのです!」
ぺこっとお辞儀するりかちゃま。
「じゃあね梨花ちゃん!」
「ううう、梨花ちゃん」
ヴィヴィオはブンブン手を振り、ティアナは相棒たちに押さえられながら涙を流す。
ティアナがお持ち帰りしようとして、召喚の邪魔をさせないため、スバルやヴィータたちに阻まれているのだ。
そして、賢者の石が発動し、梨花ちゃんが光の中に消え、新たな少女が現れた。それは、綺麗なブロンドの髪に、翡翠と紅の虹彩異色の少女。
『ヴィヴィオ?!』
全員が驚く中、女の子はきょとんとしていた。
そして、きょろきょろと一同を見まわしてから、ぱあっと笑った。
「パパ~」
そして、とてとて走ってユーノに抱きついた。
『パパあ?!』
全員が素っ頓狂な声を上げる。
「……もしかして、なのはとユーノが結婚した世界から来たその子供とか?」
「……ありえるわな。でも、それだと目が説明できないわ」
こそこそと黒いオーラを出しながらフェイトとはやては相談する。
そのオーラに当てられ少し背筋が冷たくなるユーノ。
「こんにちは。お名前は?」
とりあえず黒いオーラをねじ伏せたフェイト。
困惑するユーノに変わって話しかける。すると、
「あれ? フェイトおばあちゃん?」
女の子の言葉にピシッと空気が固まった。
「君のお名前は?」
しくしくと隅で泣き始めたフェイトを置いといて、はやてができる限り優しく問いかける。
その頬は今にも吹き出しそうにピクピク動いていた。
「なのは・スクライアです!」
元気にピシッと手を挙げながら答えるなのはちゃん。
だが、その名前に全員困惑する。なのはの名前とスクライアのファミリーネーム、どのような経緯の子か想像できないのだ。
「えっと、なのはちゃんのパパとママは誰かな?」
はやてが念の為聞いてみる。
「ユーノパパとヴィヴィオママです!」
それを聞いた瞬間、はやてと、いつの間にか気を取り直したフェイトがユーノの肩を掴んだ。
「さあ、キリキリ吐いてなユーノくん」
「えっ?!」
「流石に犯罪だよユーノ……」
ドロドロとした情念混じりの目を向けるフェイト。
痛い、掴まれてる肩がすごく痛い。
「ちょっと待って! 僕じゃない! 僕じゃないんだあ!!」
そしてユーノは二人に連行されてしまった。
げっそりとなったユーノとフェイトたちが戻ってからなのはちゃんにみんなは色々お話を聞く。
「パパとママはすっごい仲がいいんです! 近所でも評判のおしどり夫婦で、特にパパは周りから『ロリコン』なんて言われてるんです!」
「なのはちゃん、それ褒め言葉やない」
とりあえず、小学生の勘違いを突っ込むはやて。
なのはちゃんはどうやら普段の定位置であるらしいユーノの膝の上に座っている。
一応、この世界がなのはちゃんのところのユーノと違うことは説明したもののパパはパパということらしい。
すると、くいくいとヴィヴィオがユーノの袖を引っ張る。
「ヴィヴィオってユーノくんとけっこんするの?」
「ヴィヴィオ……」
無邪気な笑顔を向けてくるヴィヴィオに、なんとなく泣きたくなったユーノだった。
『まあ、しますね』
と、なのはちゃんの首にかけられていたレイジングハートがちかちか光った。
『レイジングハート?』
『はい』
全員の注目を浴びながら答えるレイジングハート。ほとんどの人間がいたんだという顔をしている。
『それでは、マスターが何者なのかは私から説明させていただきます』
そして、レイジングハートは語った。なのはちゃんがやってきた世界で、高町なのははある事件で帰らぬ人となってしまったこと。
その事件の後、ユーノがヴィヴィオを引き取り、フェイトやはやての助力を得ながら必死に育てたこと。
そして、ヴィヴィオは十八歳の誕生日に、ユーノに告白し、その一年後、二人は結婚。生まれた子供に二人の大切な人の名を贈ったことを語った。
「そうなんだ……」
ユーノはしんみりと将来の娘になるかもしれないなのはちゃんを見つめる。
『もちろん周りからロリコン司書長、犯罪者と罵られ、『ヴィヴィオちゃんをVividに愛する会』に命を狙われましたが』
「そうなんだ……」
今度は涙を流しながらユーノは答えた。
「ママのほうがちいさい~」
「えへへ~、なのは~」
親子というよりは姉妹のように遊ぶ二人。
特に二人はザフィーラの背に乗るのが好きなようで、一緒にのっかる姿があった。ザフィーラも嫌がらず、むしろ率先して二人を背にのせていた。
そのほのぼのした姿に、
「はう~っ、かぁいいよ~!今度こそお持ち帰り~!!」
と、再びツインテールが暴走しかけ、『ティアぱん』で何人も沈められながらも、他の六課メンバーに取り押さえられる一幕もあった。
そして、フェイトは……
「あの、レイジングハート」
『なんですか、サーフェイト』
それから、意を決して聞くフェイト。
「その、私ってそっちではどうなったの?」
『ユーノに幾度もアプローチをかけたものの、友達としか認識されず、最近、孤児院を開き、そこの院長になりました』
「……そう」
その後、出撃したフェイトは……
「プラズマザンバーブレイカー!!」
リミットは外さない範囲で大技を使い、八つ当たり気味にガジェットを薙ぎ掃う。
「ユーノのバカヤロおおおおおお!!」
乙女の叫びにライトニングだけでなく六課の全員が涙を流した。ただ、ユーノだけはなんで自分が罵られたか理解できないでいた。
~おまけ~
白い空間に彼女はいた。目の前に資料で見せてもらった高町なのは。ただ、あちこちがぼろぼろで少し背が伸びてるように見える。
さらに、聞いた話よりもずっと大人っぽい雰囲気が漂っていた。
「運命なんてこの手で撃ち抜けるの」
なのはが、梨花とすれ違う時に一言呟いた。梨花は足を止める。
「そうなのですか。私は何度も運命に倒れました。そして、本心では誰よりも希望を信じていませんでした。では、あなたは?」
かつて羽生に指摘された事を話す。その言葉になのはは微笑みながら答える。
「諦めないよ。不屈の心で絶対に元の世界に帰るから」
なのはの答えに梨花も笑う。
「わかりました。それでは」
そして、二人はお互いに扉をくぐった。
「梨花!」
「羽入、どうしたの?」
戻ってきて早々、興奮した羽入が詰め寄ってきた。
「どうしたのじゃないのですよ! 僕は驚きました! いったいいつの間にあんな力を手に入れたのですか?!」
梨花は羽入の言葉に、もしかしてと思った。
「あの『山狗』どもを一人で殲滅するなんて!! それに、たった一ヶ月の間に圭一を導きこの村に新しい風を吹かせた! 本当は諦めてなかったのですね!!」
ああ、と思ったと同時になのはが行った数々の事象が梨花の中に流れ込む。と、同時に喜びがこみ上げる。
もう、あんな地獄のような運命はないのだと。
(ありがとうです。なのは)
そして、梨花は心の中でなのはにお礼を言うのだった。
だが、羽入の言葉に一つだけひっかかった。
「……一ヶ月? 二日じゃなくて?」
「なにいってるんですか? 何日もしっかりと準備を行ってから動いたじゃないですか」
その時、梨花は理解した、あのなのはがどんな目にあっているのかを。
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どうも、梨花ちゃまと並行世界ななのはちゃんです。
なお、梨花ちゃんの発言からもわかりますが、現在のなのはさんは……
次回はリクエストにあったキャラの誰かを出そうかと思っています。