私たちが結婚して一年ほどが経ちました。
ゆったりと私たちはは平穏な日々を謳歌していたら、
「ママー、お腹の音聞いていい?」
と、ヴィヴィオが頼んできました。
「ん? いいけど、まだ大きくなってないし、なにも聞こえないと思うよ?」
「でも、おねがい」
仕方ないなあと、私はお腹に耳を当てやすいように座り直す。
そして、ヴィヴィオがお腹に耳を当てる。
「どう? なにか聞こえたかな?」
「んーん」
少し残念そうにヴィヴィオが耳を離す。
「なら、フェイトママに聞かせてもらったら?」
と、煎れたてのコーヒーを持ってきてくれたユーノくんがだいぶお腹が目立つようになったフェイトちゃんを見る。
「あ、フェイトママ、また赤ちゃんの音聞かせて!」
いいよーとヴィヴィオの頼みにフェイトちゃんはヴィヴィオを迎える。
はあ、いいなあフェイトちゃん、私より早かったんだもんね。いや、勝ち負けなんてないけど、なんとなく。
「にしても子供の名前どうしよっか? 私の子は女の子だから、私とユーノくんの名前を取って、ユーナかな……ってどうしたのフェイトちゃん?」
私がユーナって言った途端にちょっとフェイトちゃんとユーノくんの表情は引きつった。
「あ、その、ちょっと思い出してね……」
フェイトちゃんが誰を言いたいのか考える。
うーん、ユーナって名前はたくさんいたし……
「その、ユーノが私と不倫していたって世界」
ああ! と私は納得しました。
「どうなったのかなあの世界?」
「すごく心配なんだけど……」
と、途端に暗くなる二人。まあ、それしか二人は知らないからね。
うーん、どうしよう?
……そうだ!
「なら、会いに行ってみる?」
『へ?』
二人がぽかんと口を開けるのでした。
私は『隙間』からそれを出します。とある世界で手に入れた巨大ロボット『アストラナガン』を。
それを、フェイトちゃんとユーノくんはあんぐり口を開けて、ヴィヴィオはわーっと目をキラキラさせながら見ています。
黒を基調とした細身のフォルム。大きな翼。そして、血のように赤い双眼を有する鋭角的な頭部。うん、正直、機械で作られた堕天使っていうのがぴったりだもんね。
「久しぶりにお願いねアストラナガン」
と、私が声をかけると、答えるようにセンサーが光った気がしました。
機体に乗りこんで各種チェック……問題なし。よし!
まあ、本来はこういう使い方はいけないんでしょうけど、今まで頑張ったからこれくらいは許してくれるよね?
「じゃあ、いくよみんな!」
と、本来一人乗りのコクピットに頑張って乗り込んだユーノくんとフェイトちゃんとヴィヴィオに声をかけてから私は転移を実行しました。
転移は成功しました。ミッドの郊外でステルス機能を全開にして降り立ち、すぐに隙間へとアストラナガンを仕舞い、私たちはそこから歩きでこの世界の『スクライア家』に向かいました。
そして、『スクライア』の表札のある家に着きました。
道中、この家の住人そっくりな四人がいるからなのか、周りからじろじろ見られています。
フェイトちゃんとユーノくんは恥ずかしそうだけど、こんなの気にしてたら他の世界を旅するなんてできないの。
ピンポーンとチャイムを押すと、はーいと返事がすぐに返ってきました。
「はい、どちらさまですか? って、あなたは……」
少し待つと、ドアが開いて『私』が出てきました。
「久しぶり。私」
と、私は久しぶりにあった彼女に笑顔を返しました。
家に上がって、私たちはお茶を出してもらいました。
「その節はどうもありがとうございました」
と『私』が頭を下げてきます。
「ううん、どうってことないよ。で、あれからどうなったの?」
と、私が聞くと、『私』は笑顔を浮かべました。
「おかげでみんなと幸せに暮らせてるの! ユーノくんとフェイトちゃんとも仲直りして、一緒に暮らせるようになったし、ユーナとユートの問題も解決したからね」
そっか、よかった。と、思ったら俄かに騒がしくなりました。
「ただいま、なのは母さん、誰か来てるんですか? え?」
と、入ってきたのは、ユーナとユート。そのユーナの腕にはかわいらしい赤ちゃん。
「い゛? なのは義母さんが二人いる?!」
と、ユートが顔を引きつらせる。
ふーん、その反応どういうことなのかなあ?
それから、二人も入れてOHANASHIすることになりました。
「ああ、なるほど、あの時入れ替わったなのは母さんでしたか」
と、ユーナがすぐに納得してくれた。
ユートもすぐに理解したけど、居心地が悪そうだった。
「なあ、母さん……といっても違うんだっけ? でも、とりあえず母さんって呼ばせてもらうから。同じ顔が二つっていうのびっくりじゃないか?」
「うーん、少しわかるね」
と、異世界の息子と話すフェイトちゃん。
それから、ユーナの腕の中で寝る女の子を見つめるフェイト。
「その子って」
ああ、とユートが嬉しそうに笑う。
「俺とユーナの娘。名前はアリス」
「いい名前だね」
フェイトちゃんは嬉しそうにほほ笑んで、
「って、ちょっと待って。二人は兄妹なんでしょ? その、結婚とかは無理だったんじゃ……」
と、ユーノくんがつっこみを入れた。
しーんと静まる部屋。そして、
「いったい誰のせいで苦労したと……」
「ほんと、空気読めないよなうちの父さんは」
ゆらりとアリスを『私』に預けたユーナとユートが立ち上がる。その手にはデバイス『ルシフェリオン』と『グラム』が……
「ま、まあまあ、落ち着いてこのユーノくんは二人のお父さんとは別の世界の同一人物だから。それに大丈夫だよユーノくん!」
ぐっと私は親指を立てる。
「二人に邪魔な障害は私が排除しといたから」
そう、二人が結婚できるように私は……この世界の管理局のデータベースを改竄したんです!!
いやあ、苦労しました。レイジングハートや願いにアストラナガンにとにかくその時使える手全てを使ってユートのDNAデータを始めとした各種データを改竄。その上で、もしなんらかの理由で修正された時のために、自動で書き換えるプログラムまで入れたんです。
さらに精神ケアを始めに、身近な人に口裏を合わせてもらったり、考えうる限りの問題の対処法などを置いていったんですから。
まあ、二人が無事に結婚したならちゃんとそれらは機能してるんだね。
「そ、そうなんだ」
と、ユーノくんがちょっと表情を引きつらせながら納得してくれました。
そして、私たちが帰る時、三人が見送りに来てくれました。
「ちょっと心配だったけど、よかった」
とフェイトちゃんが笑います。
「うん、僕も少し安心した」
とユーノくんが苦笑気味に笑います。
「じゃあね、こっちのなのはママとユーナさん、ユートさん!」
と、ヴィヴィオが手を振る。
「それでは、ヴィヴィオ姉さん」
「じゃあ、ありがとうなのは義母さん。俺たちがこうしてられるのもあなたのお陰です」
ありがとうユート。そう言ってくれて私もうれしいよ。
「じゃあね!!」
そして、私たちは元の世界に転移した。
四人が巨大ロボットとともに消えるのを確認してから私たちは家に戻りました。
「まさか遊びに来るとは思わなかったね」
と、私は二人に笑いかけます。
「ええ、おかげでお礼を言うこともできました」
と、少しユーナが嬉しそうに笑う。
「だな、今の俺たちがいるのもあの人のおかげだし」
そうだね。
あの私のおかげで、私はまたあったユーノくんとフェイトちゃんを許すことができた。
そして、今ではみんなで幸せに暮らしている。
まあ、ちょっと問題の解決法がどうなのかとも思ったけど、私の大切な娘が幸せでいてくれるなら、そんな些細なことは目をつぶっていいし。
「ただいまなのは」
と、ユーノくんがちょうど帰ってきました。
「みんなただいま」
と、フェイトちゃんも。
「おかえりなさいユーノくん、フェイトちゃん!」
私は大切な人たちに微笑みました。
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一応、あの世界がどうなったのかということで。
他にも気が向いたら別の世界の話書こうかな?
実はアストラナガンを駆るなのはさんを書きたいからっていう部分もあったりして。
アリシアは僕は彼女の代わりに幸せになってくれたらって思ってつけたんですけどね……指摘された通り、よく考えると不吉なんで変更しました。