「えっと、ここはどこ?」
ナノハは戸惑っていたいきなり門が開いたと思ったら、突然知らない場所に出たのだから。
改めて周りを見る。わりと近代的な建物、その前に集団があってこっちを見てる。そして、その集団を見て、夫である相手を見つけてナノハは近づいた。
「ねえユーノくん、いきなり何がどうなってるの?」
「え? えっと、い、いきなり聞かれても」
聞かれたユーノも言葉に困窮する。よく見れば、神剣も持っていない。たぶん違う世界の同一人物らしいとナノハは判断する。
それから、彼女はかつての親友も見つけたけど、自分を知らない、もしくは覚えてないということはわかってるから少し哀しい気持ちになりながら無視しようとして、
「なのは、だよね」
と、声をかけられて振り返った。
「フェ、フェイトちゃん? 私の名前を?」
「え? う、うん」
フェイトが頷くとナノハは抱きついた。
「フェイトちゃん!!」
「わ、なのは?!」
突然のナノハの行動に慌てるフェイト。
「ありがとう、違う世界だってわかってるけど、私のこと呼んでくれてありがとう!」
親友に再び名前を呼んでもらえた。それは、ナノハの叶わない望みだったはずだった。
賢者の石で召喚されたナノハは隊舎で色々と話をすることとなった。
「ふーん、こっちの私ずいぶん面倒なことに巻き込まれてるんだ」
ナノハはうんうんと頷く。
「そうなんですよ。えっとナノハさんでいいですよね?」
「あ、そうだ、ちゃんと自己紹介しないとですね」
そう言ってこほんとナノハは咳払いする。
「私は魔王なのはです」
その言葉を聞いた瞬間、全員その場から引いた。
「なるほど、魔王というのは剣の持ち主に与えられる称号なんですね」
「そうだよ。だから、別に私は世界を滅ぼしたりしないよ?」
みんなが引いてから慌ててナノハは説明した。エターナルの存在も「永遠神剣というものの管理とそれが起こす問題を解決する集団」と嘘の交じえた説明もした。
ちょこちょこ、「本当に魔王になってた」など、「前から私怪しいと思ってた」などというささやきが聞こえたものの彼女は無視する。
「でも、どうしようかはやて、また違う人が出てきたら大変だよ?」
「うーん、そうやなあ」
どうやってこの世界のなのはを連れ戻すかを考え始める。
現状、賢者の石は一週間ほど力を貯えないと使用できないこともわかっている。
となると一週間ごとになのはが出るまで何度も賢者の石を使うということになるが、さすがに異世界から来た人間を一週間も滞在させるわけにもいかないし、なにより上からなにを言われるかわからない。
それに、これ以上は新人の訓練にも支障を来す恐れもある。
「あ、それなら、私と『不屈』が手伝いますよ。できるよね不屈」
『All Right』
本来エターナルは世界に干渉してはならないルールだが、下手に転移をさせて世界を乱すよりはと手伝う約束をするナノハ。その言葉にはやては涙を流しながらお願いした。
そして、さっそくナノハによる訓練が始まる。
「この程度でへこたれないの! ほら立って! 諦めたらそこで終わりなの!!」
『は、はい!!』
長い戦いの経験、そして、いろんな世界で得たものを少しでも叩きこもうとするナノハ。
「く! あたしも負けられねえ!!」
なぜか教官のはずのヴィータもナノハの訓練に参加していた。
そして、緊急出撃でも、
「神剣の主として命ずる! マナよ、我が声を聞け。オーラとなりて我らに不屈の力を与えよ! デターミネイト!!」
「わ、温かい」
「なんか、力が湧いてくる」
マナの加護に驚く新人たち。
「マナよ、我が声に応えよ。一条の流星となって、彼のものたちを貫く力となれ! ディバインバスター!!」
「ディバインバスター? でも、なのはさんよりでかい!」
エターナルの強大さに驚く新人。
光が収まるとガジェットたちは消し炭一つ残っていなかった。
「ん~、ヴィヴィオはかわいいねえ」
「ママだっこ~」
はいは~い、とヴィヴィオを抱きあげるナノハ。
自分の娘と違うとわかっているが、ついつい同じ感覚で甘やかしてしまうナノハ。
「そっちでもヴィヴィオがかわいいの?」
無限書庫に帰ろうとしてナノハに捕まったユーノを見ながらフェイトが苦笑気味に尋ねる。
「だって、ユーノくんとの大切な子だもん」
『……え?』
ナノハの世界ではヴィヴィオは、なのはとユーノの間にできた子であることを知ったフェイトとユーノ。
「で、聞くけどこっちの私はただ、大切な友達なの?」
「う、うん。そうだよ」
フェイトにこの世界の自分とユーノの関係を尋ねるフェイト。
「ダメなの! そんなんじゃ時深さんにキングオブヘタレって言われちゃうの!」
「そ、そんなこと言われても!」
「フェイトちゃん! こっちの私はユーノくんをどう思ってるの?!」
「……やっぱ、大切な友達なんじゃないかなあ?」
とりあえず、ナノハはユーノからアプローチするように仕向けることを心に決めた。
そして、一週間がたち、再び賢者の石が使えるようになった。
「その、楽しかったよありがとう」
ナノハは笑う。
「いや、お礼を言うのはこっちの方や」
「ありがとうナノハ」
ナノハの協力によって賢者の石は調整され、燃費は非常に効率化されていた。おかげで一週間待たず、二日程度で再使用できるほどである。
また、なのはを戻すためにも安定性も上げるのにも尽力してくれたのだ。
「ユーノくん、少し自分に自信持ってね」
「う、うん」
ユーノが頷くと、ナノハは賢者の石に歩み寄る。
「じゃあ、みんなさよなら」
そう言って賢者の石をナノハは発動させた。
そして、光が収まると。
「こんにちはなのです」
年は十歳前後で幼い、青っぽい黒髪を持った可愛らしい少女がいた。
「今度は完全になのはちゃんと違うううウウウウ!!」
「ナノハ! ちゃんと安定性上げたんだよね?!」
オヤシロさまの巫女、古手梨花が召還された。
~おまけ~
はやては学校帰りに『翠屋』と呼ばれる喫茶店に来ていた。
学校で友人がおいしいと絶賛したシュークリームがどんなものなのか興味を抱いたのだ。
「いらっしゃいませ、ご注文はって八神さん?」
席についたはやてがメニューから顔を上げると、そこに友人の友人である高町なのはがいた。
「あ、高町さん? 高町さんってここでバイトしてるんか?」
「ううん、ここの店長が私のお母さんだからお手伝いしてるんだ」
へえ、とはやては驚く。
「じゃあ、高町さんは将来このお店を継ぐんかな?」
「うーん、それはまだ未定なのですが」
それからなのはが桃子に呼ばれるまで二人は世間話を続けた。
思いのほか会話が弾み、クラスメイトの意外な一面を見れてちょっと得した気分になったはやては、それから幾度も翠屋に通うこととなる。
これが、二人の出会いだった。
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カオスエターナルのなのはさん。
続いて召喚されたのはリカちゃま。さて、次はどんななのはさんを呼ぼうかな?
感想に「はやてとどういう風に知り合ったのか」とございましたのでおまけで書きました。
おまけのストーリもちょっと続くかと思います。