こんにちは空の狐です。
この度『裏切られたなのはさん』の再掲載をさせていただきました。
多くの方からの再掲載を望む声が上がりとても嬉しかったです。ありがとうございました。
これからも僕の作品を読んでいただければ嬉しいです。それでは!
高町なのははその日、六課の仲間とロストロギアの回収任務についていた。
回収対象のロストロギアは『賢者の石』という赤い小さなエネルギー結晶。詳しい能力については現在ユーノが調べているところだった。
そして、なのはたちは問題なく、その石を発見した。
「あったこれだね」
なのはは遺跡の奥に安置されていたその石を取り上げる。
「でも、賢者の石って本当にあるんだね」
「なのは知ってるの?」
「うん。地球では魔法関係のお話によく出るよ。こう手と手を合わせて」
そして、なのはが手をパンと合わせると……眩い光が当たりを覆った!
「きゃっ!」
あまりの光になのはと石が見えなくなる。
「なのは!」
「なのはさん!?」
そして、光が収まるとそこに……エプロンを付たなのはがそこにいた。
「……なのは?」
いきなり親友の服装が変わったことに驚きながらもフェイトはなのはに声をかける。
だが、かけられた方のなのははきょとんと首を傾げた。
「……あなたは誰?」
その一言にフェイトたちは固まった。
とりあえず、なのは(?)を連れて六課に戻った前線メンバー。
なのは(?)は突然の事態を飲み込めず頭の上に大量の?マークを浮かべているように見えた。
「あー、なのは、さん?」
「あ、はやてさん、なにがどうなってるんですか?」
「はやてはわかるんだ……」
複雑そうにフェイトは呟く。
「一応確認しますけど高町なのはさんであっとりますよね?」
「? うん。そうだけど、どうしたのはやてさん?」
はやては質問してから悩む。
まずはなにを聞くべきか。目の前の相手が自分の知る親友でないとはわかたっが……
『はやて、少しいいかな?』
そこでモニターにユーノが映る。
「にゃ?!」
なのはが目を丸くする。
『例のロストロギアの効果がわかったんだけど……』
「ほんまかい! いったいどんなのや?」
そして、言いにくそうにユーノはその効果を告げた。
『門ていうのを開けて、使用した人物に別の世界の知識を与えたりパラレルワールドの同一人物と入れ替えるって効果らしい』
沈黙が部隊長室を支配する。
「なんやてーーーー!?」
ひとしきり叫んでからやっとはやては落ち着いた。
『……じゃあ、僕はもう少し詳しく調べてみるから』
「あ、逃げるなユーノくん!」
はやてが呼び止めようとするがさっさと消えるユーノ。
このへたれ! 淫獣! となにもない虚空を罵るはやてを尻目にフェイトはなのは(パラレル.ver)に向き直る。
「えっと、なのは、さん」
「あ、はい。えっと」
ああ、そういえば名乗るのを忘れてたと今更ながらフェイトは思い出した。
「フェイト・T・ハラオウンです。こっちのなのはとは幼なじみの友達です」
「あ、はい。フェイトさん、私は高町なのはです。って、ハラオウン?」
なのは(パラレル.ver)が首を傾げる。
「どうしたの?」
なのはにさん付けされたことに苦笑を浮かべてから問い掛ける。
「あ、知り合いに同じ名字の人がいて」
その言葉にフェイトとはやてはピクリと反応する。
「もしかして、リンディかクロノって名前?」
「あ、はい。クロノくんたちもこっちにもいるんですか?」
「うん。私の母さんとお兄ちゃん」
その言葉になのは(パラレル.ver)が目を丸くする。
「でも、なのはさん随分冷静だね」
ふとフェイトが呟く。
いきなり異世界に放り出されたにしては反応が薄い。
「あの、その、信じられないかもしれないけど昔魔法の力に関わったことがありまして」
その言葉にフェイトはまた少し驚く。意外と近い世界かもしれない。
「なのはさんってなにをしてる人なのかな?」
「えっと、今は調理師学校通いながらお母さんに色々教わってます」
「へえ、翠屋を継ぐのが目標かな?」
「はい。って翠屋もあるんですか?!」
「うん。たまに私も遊びに行くよ」
なのは(パラレル.ver)が驚いていると、はやてがはあとわざとらしく息をつく。
「なあ、そろそろ私しゃべってええ?」
「あ、ごめんはやて」
慌てて謝るフェイトにいいよといいつつはやてはなのは(パラレル.ver)に向き直った。
「なのはさん、まだ詳しいことがわかってないんでいきなり異世界に放り出されて気の毒やけど、しばらく私らの保護下にいてもらいます」
「あ、はい。わかりました」
そこではやては一息切る。
「それでは、そちらとこっちの違いを確認させてもらいます。ちょっと話してもらえへんかな」
「イデアシードにレイジングハート」
「似てるようで微妙に違うね」
こっちはジュエルシードだしとフェイトは呟く。
割と近いみたいだと確認してから細かい確認をする。はやてを知っているのなのは(パラレル.ver)以下なのちゃんの世界のはやてが妹のヴィータとともに翠屋の常連だからだそうだった。
一方なのちゃんはフェイトと自分の胸を見比べて、手でお椀を作ってなにか頻りに頷いていた。
「なのはさんは現在魔法の力はないんですね?」
「あ、うん……だから教官さんはできないよ? 私、その……戦いかたなんて知らないから」
わかってますとはやてはなのちゃんに頷く。
「あと、対人関係なんやけど、さっきクロノくん知ってるみたいやったけど、どういう関係ですか?」
「にゃ? そ、その……です」
「えっ?」
「その、恋人です」
なのちゃんの言葉にフェイトとはやては唖然とした。
「さ、先聞いといてよかったわ」
「うん。なにも知らずに会わせてたら大変だったね」
二人はうんうんと頷きあう。
「あ、あの、なにか問題が?」
「ああ、そのな……こっちではクロノくんとなのはちゃんはただの友達なんよ」
えっとなのちゃんが零す。
「その、お兄ちゃんは姉さん……エイミィって人と結婚してるんだ」
「そう、なんだ」
哀しそうになのちゃんが顔を伏せる。やはり異世界とはいえ自分の恋人が他の女と結婚してると聞くのは辛いのだろう。
はやては気まずそうに頬をかく。
「えっと、じゃあこっちのなのはちゃんの交友関係なんやけど、さっきモニターに写ってたユーノくんっていう人からなんやけど」
「はい」
その瞬間、はやての目が光った。
「こっちのなのはちゃんの恋人や」
その発言にフェイトがはやてに振り向く。
「そ、そうなんですか?」
「そうや、もうそばで見てると恥ずかしくなるくらいアツアツでな、近いうちに家族三人で同じ家に」
「はやて、嘘はダメだよ」
フェイトの言葉にちぇーっとつまらなそうに口を尖らせるはやて。
「確かにユーノと距離は近いけどまだ友達だから。まだ、ね」
暗く笑うフェイトになのちゃんはこっちの私って大丈夫なのかなと少し不安になった。
「そう、まだ二人はくっついてないまだチャンスはある」
その言葉に、なのちゃんはこっちの自分に会ったら絶対に色々お話しようと決意する。
とにかく身近にライバルがいることだけでも知らせないとと。
そして、簡単にこっちについて説明してからなのちゃんを隊舎に案内することとなった。
「ここが、私たちが使ってる隊舎です。しばらくの間はここにいてもらいます」
「はい」
三人が向かうのは隊舎に入ると、そこで多くのメンバーが三人を出迎えた。
「えっと、高町なのはです。少しの間ですがよろしくお願いします」
頭を下げるなのちゃん。
「なのはさん、本当に別人なんだ」
そこで、とてとてと一人の女の子がなのちゃんに近づく。
「ママ、大丈夫?」
その一言になのちゃんは固まった。
「ママ?」
ぎぎぎと首を傾げながら聞き返す。
「フェイトママ、なのはママどうしたの?」
「えっとね、なのはママはね」
その会話になのちゃんの視界は真っ白に染まった。
「そ、そうですか! こっちの私がこの子の保護者なんですね!」
「そうやそうや、さすがに女の子同士はないよ!」
はやての説明になのちゃんが胸をなでおろす。
それから、ヴィヴィオに向き直るなのちゃん。
「ごめんねヴィヴィオちゃん、私はあなたのママとは違う人なの」
「そうなの?」
「うん、でも、ヴィヴィオちゃんのママはすぐに帰ってくると思うから、それまで我慢できるかな?」
「あい……」
頷くヴィヴィオにいい子だねと頭を撫でるなのちゃん。その姿は確かにみんなが知る『高町なのは』だった。
「お、おいしい」
「うまいわこのシュークリーム」
「ギ、ギガうめえ」
なのちゃんのシュークリームの美味しさに驚く前線メンバー。
「まだまだなんだけど、そう言ってもらえたら嬉しいな」
嬉しそうになのちゃんは給仕をする。
数日も経つとなのちゃんは隊舎で料理を振る舞うようになっていた。
「えっと、クロノくん……なんだよね?」
「ああ、君が他の世界のなのはか」
「はい」
対峙する平行世界での恋人。そして、
「よりにもよってハーヴェイか……」
実はハーヴェイは、こっちのクロノが昔使った即席の偽名でいわゆる黒歴史だったりする。
「まーまー。ハーヴェイくん」
平行世界の自分の話を聞いて落ち込むクロノを慰めるエイミィ。その姿は年期の入った夫婦そのものだった。
「えっと、はじめましてユーノ・スクライアです。って、なんか変な気分だな」
「高町なのはです。そうなんですか。一応知ってる相手なはずですもんね」
ユーノと会うなのちゃん。
「あの、ユーノさんってこっちの私どう思ってるんですか?」
「え? それは、大切な友達だよ」
その返答に本格的にこっちの私と話さねばと誓うなのちゃん。
そして、ユーノの調査によってロストロギアの使い方が判明、なのちゃんを元の世界に戻すこととなった。
「あの、短い間ですがお世話になりました」
隊舎前に集まった六課のメンバーに頭を下げるなのちゃん。
「ええよ、ええよ。こっちも楽しかったしな」
「頑張ってねなのは」
なのちゃんに微笑むフェイトとはやて。
「シュークリームおいしかったです!」
「その、色々ありがとうございました」
「楽しかったです!」
フォワード陣もなのちゃんにお礼を言う。
「その、あっちの僕に頑張れと伝えてくれ」
「はい」
クロノも恥ずかしそうになのちゃんに頼む。
「なのちゃんママ」
いつの間にかそういうふうに呼ぶようになったヴィヴィオがなのちゃんの足に抱きつく。
「ヴィヴィオちゃん。ちゃんとママの言うこと聞くんだよ? ピーマンとか好き嫌いしちゃだめだからね」
「あい」
しゃがんで頭を撫でてあげながら、一つ一つ確かめるようにヴィヴィオに言い聞かせるなのちゃん。
そして、立ち上がってヴィヴィオから離れる。
「それでは、お世話になりました!! みなさんのこと忘れません!」
そして、なのちゃんは賢者の石の正しい使い方。戻る世界をしっかり思い描きながら両手を合す。その動作に反応して石が光を放ち……
なのちゃんは扉以外なにもない場所に足を付けた。そこに、服以外同じ顔のなのはが立っていた。
「こんにちは私」
「にゃはは、やっと戻れるんだ」
ふうとため息をつくなのは。なのちゃんはふふふと笑う。
「私の世界どうだった?」
「うん、いい世界だったよ。なんか、ずっといてもいいかなって思ったのですが」
そう言って笑うなのは。
「やっぱり私の世界はこっちだなって思えた」
そっかと頷くなのちゃん。
「頑張ってね」
「そっちもね」
そうやり取りを交わし、お互い前に歩きして、相手の後ろにある扉に向かいすれ違う二人。
「あ、そうだ」
思い出したように扉に入る前になのちゃんが振り向く。
「告白するなら、早くした方がいいよ?」
ぶっと吹きだすなのは。
「にゃあ、善処します」
引きつった笑みを浮かべながらのなのはの返答に満足そうに頷くなのちゃん。そうして、二人は同時に扉へと飛び込んだ。
数日後、なのちゃんはクロノと一緒に兄恭也が率いるFC翠屋の応援に来ていた。
「そっか、そんな世界だったんだ」
「うん、ヴィヴィオちゃんかわいかったんだ。私も子供欲しくなっちゃった」
その発言に苦笑するクロノ。
仲睦まじく二人はグラウンドにやってきたすると、
『おはようございます、なのはさん!!』
一糸乱れず並んだFC翠屋のメンバーが二人を出迎えた。
「にゃあ!? お、おはようみんな……今日はがんばってね」
『はい、ありがとうございます!!』
そして、百点中百点を上げたくなるほど綺麗な礼をしてからメンバーは自分たちのポジションに散って行った。
「こ、これどうなってるの?」
「なんだなのは覚えてないのか?」
そう言って近づいてきたのは、最近奥さまである忍との間に二人目のお子様ができた恭也お兄さん。
「少しばらばら気味だったメンバーに喝を入れてから熱心に指導してたじゃないか」
その一言になのちゃんは頭を抱える。
(あっちの私なにをしたのおおおお?!)
一方、六課。
「法皇テムオリン! ここであったが三周期目え!! あれ? ここどこ?!」
光の中から飛び出したのは、白を基調にした戦闘衣装を着こみ、赤い宝玉の付いた杖を持った少女。
「また違う子が出てきたあああああ!!」
「どうすればいい? どうしたらなのはが戻ってくるの?!」
慌てふためく六課メンバー、その様子にきょとんとする第二位永遠神剣『不屈』を持った魔王なのはだった。
そして、どっかの世界。
「ふえええええ! どこ? ここどこなのお?!」
「あれ? なの、は?」
「ママ? でもなんか違う……」
周りに今まで感じたこともないような力を持つ存在に囲まれて慌てるなのは。ユーノとヴィヴィオも普段のなのはとの違いに困惑している。
エースオブエース高町なのはの平行世界旅行が終わるのは…………今しばらくかかるようである。
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勢いで作った今は反省しているが後悔はちょっとだけ。
ただ、なのちゃんの口調とかが、少し不安。
最後らへんでなのはがにゃあとか使ったのは、なのちゃん世界でなのちゃんの振りをするために癖を付けたためです。