「アンタ誰よ」
「は?」
なんだコレ?なんで目の前に外国人の女の子がいるんだ?
…………というか色々おかしい。
まず場所がおかしい。何だこのだだっ広い草原は。
こんなとこ近所にあったっけ。
……いやいや、その前に俺はアパートの自分の部屋から出ただけだぞ……。
そんなことを考えながら大の字状態だった体を起こして辺りを見回す。
「ミスタ・コルベール!召喚をやり直させてください!」
「ミス・ヴァリエール、それはできない。この使い魔召喚は神聖な儀式なのだ。やり直しは認められない。」
「でも人間を使い魔にするなんて聞いたこと有りません!」
「はははっ!平民を召喚するなんて、さすがはゼロのルイズだ」
「ちがうわよっ!ちょっと間違っただけよ!!!!ミスタ・コルベール!もう一度だけ!」
「ミス・ヴァリエール。使い魔を選り好みすることはできない。それに彼が生きてる以上サモン・サーヴァントを唱えても彼の前にゲートが開くだけだ。それとも気に入る使い魔が召喚されるまで召喚された生き物を殺していくかね?」
なんか向こうで勝手に話が進んでる。
物騒なことも言ってるし……。
それにしても状況がわからん。
よく見りゃ周りにいるのは外国人の子供ばっかりだ。
先生らしき人もいるが……。
ということはなんかの学校か?インターナショナル・スクール?
しかし、みんなマントなんか羽織ってカッコがおかしい。
召喚とか使い魔ってのも気になる。
日本語の勉強で劇かなんかやってるのかな。
そういえば俺も中学で英語劇やったなぁ。あの頃に戻りてーな……。
……。
まあ劇だとしても俺が参加させられてる状況が良くわからん。
結局この状況全くわからん。
気づいたら外国人しかいないって心細いってレベルじゃねーぞ。
「さあコントラクト・サーヴァントをしなさい」
「…………わかりました……」
女の子が近づいてくる。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
っていうか近っ!
「光栄に思いなさい。貴族にこんなことされるなんて普通は一生ありえないんだからね!」
「んっ!!」
いきなりキスされた……。初めてのキスが外国人とは。やっぱり欧米では挨拶みたいなもんなのかな?
って!!!!
「ぐぅ!あっづうう!!!!」
「使い魔のルーンが刻まれてるだけよ。すぐ収まるわ」
そういう問題じゃねーだろ!いきなり何なんだ!左手あっつ!
「ぐっ!」
…・…・……っふーー。おさまった。
「コントラクト・サーヴァントは1回で成功したようですね。おめでとう、ミス・ヴァリエール。ふむ、珍しいルーンですね」
とか言いながらハゲた人は俺の左手の模様をスケッチしてる。
ここの人たち勝手すぎるだろ……。
俺への説明一切ないよ……。
「さあ、みなさん教室に戻りますよ」
「ルイズ。お前は、その平民と一緒に歩いて来いよ」
はははははっー。なんて笑いながら外国人の子供たちは先生のあとについて飛んでいった。
なんだコレ?
ワケ分からん。
こうなると、さっきから見ないふりしてたモンスターっぽい生き物たちも本物っぽく見える。
いや、初めからハンパないリアリティを放ってるんだけどね。
もういい加減コッチから聞いてみるか。
一段落付いたようだし。
「ねえ、アンタ」
だけど俺人見知りなんだよなー。
その上、最近は引きこもって他人との会話なんて数カ月ぶりだし。
日本語でおkとはいえ、いきなり外国人。
しかも女の子かよ。
この年代の女の子となんて数えるほどしか会話したことねぇよ。
やっぱり共学の高校行けばよかったなー。
行ったところで、だけどな……。
「ちょっと!!聞いてるの!!?」
「っ!ああ……」コクコク
「私たちも行くわよ。ついてきなさい」
あー。
自分のアタマの中に篭る癖がー。
長い間、引きこもってたからなー。
「アンタ名前は?」
「平賀才人……。いやサイト・ヒラガかな?」
「ヘンな名前ね。サイトがファースト・ネームなの?」
「……」コクコク
「ちゃんと返事しなさいよ!」
……この癖もあったな。とっさに声が出ない。とっさじゃなくても喋るの得意じゃないけども。
つい首振りで答えちゃうんだよな。
「ああ、はい。サイトがファースト・ネームです」
怒られたので年下の女の子に敬語で返してしまった。