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No.21072の一覧
[0] (習作)メタルマックス3 練習短編[白色粉末](2013/01/06 02:33)
[1] ドミンゲスちょっと前[白色粉末](2010/09/04 13:37)
[2] 俺に命令するんじゃねェ[白色粉末](2010/10/04 02:14)
[3] VSドミンゲス1[白色粉末](2010/11/13 09:13)
[4] VSドミンゲス2[白色粉末](2010/12/12 12:38)
[6] VSサルモネラス[白色粉末](2011/05/07 08:23)
[7] VSヨージンボーグ[白色粉末](2012/06/03 07:48)
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[21072] VSドミンゲス1
Name: 白色粉末◆f2c1f8ca ID:ce30744b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/11/13 09:13
 崩れかけた教会の石壁に、イービーは左手をついている
 一見しただけではそれと解らないその建築物には、酒や火薬の言いようもない臭いが染みついていた。嫌な臭いだ。ここを根城にする冷血党どもの生活臭だろう。どんな生活だ

 突如、イービーは石壁に張り付けた五指を絞る。驚異的な握力は、石壁が決して“握る”と言うことが不可能である筈の平面であるという事実や、その硬度を無視して、イービーに砂礫を掴ませた

 壁を千切り取って、しかも粉々に握りつぶしたのである。流石のサラもゾッとした

 次の瞬間、イービーは右の拳を石壁に叩きつけた。轟音と共に石壁が砕けて貫通する。陥没ではなく、貫通。外の風が入ってくる

 ノックだ。イービー式のノックはどうやら随分と荒っぽいようだった

 「邪魔するぜ、カウボーイ! 大事な話があるんだ、ダージリンティーの準備をしな!」

 教会の奥、壇上の上で、何者かが寝そべっている。イービーの突然の怒声にも動じる事無く、煙草を咥えてニヤニヤと笑っていた

 コイツが、ドミンゲス。サラは無感動にその姿を見詰めた。特徴的な逆立った長髪に眼が行く。壁にはハンター、一般人を問わず数多を引き裂いてきたチェーンソーが立てかけてあった

 外見的特徴と武装。相違ない。コイツがドミンゲス

 「…………来ると思ってたぜぇ、絶対によぉ。随分と待たせやがって」
 「済まんな。やっぱり、余所様の所に御邪魔するんだ。おめかししなきゃ駄目だろう?」

 ドミンゲスが大きく目を開いて立ち上がった。チェーンソーを引っ手繰るように手に取り、一度、ギャウンと鳴らす。独特の音がする

 「コレがなんだか解るかぁ~?」

 教会据え付けの椅子、イービー達から死角になるそれの一つに、ドミンゲスは手を這わせる

 ドミンゲスが手を持ち上げた時、そこには少女が一人ぶら下がっていた
 衣服は擦り切れ、汚れているが、目立って怪我をしている様子はない。手足を縛られた上、古びれた細いベルトのような物で猿轡を噛まされ、はらはらと泣いている

 どる、どる、と鼓動のようなエンジン音を響かせるチェーンソーを、少女の頬へと近づけたドミンゲスは低い声を発した

 「俺はしくじっちゃいけねぇ所でしくじっちまった。御蔭であの人はカンカンさ。テメェが生きてた事は報告したが、どうせ疑われたままだ。このドミンゲス様が、勢い余ってギンスキーの娘を殺しちまったってな」
 「事実だろ?」
 「くっくっく、その方が都合がいいんだろうなぁ、テメェらは」

 サラは苛々しはじめた。腰元のウージーの直ぐ傍で、右手を握ったり開いたり

 「イービー、何だよ、随分親しそうじゃねぇか。ん? それに、今の口ぶりじゃ、ギンスキーの娘が生きてるって……」
 「さてね」
 「……解ってんだろうな。お喋りしに来た訳じゃねーんだぜ」

 イービーは肩を竦めるだけだ

 「もう俺にゃ目はねぇ。くくく、ぐははは、この俺が、この期に及んで」
 「その子を……どうするんだ? オイ、ドミンゲス」
 「スカしてんじゃねぇ、テメェのせいだ、ブレドトゥースぅぅ!!」

 サラとあてなが、同時にびく、と身動ぎした
 顔は動かさず、視線だけイービーに向ける。ブレードトゥース。その名だけが何度も頭の中を行ったり来たりする

 ブレードトゥース。クラン・コールドブラッドのナンバー3。ライオンのミュータントで、幾人も、幾人も、ハンターだろうがソルジャーだろうが、戦えるものだろうがそうでないものだろうが関係なく、散々殺しまくった化物だ

 冷血党序列第三位でありながら、二位、一位よりも高額の賞金を掛けられていた所からもその強さと危険性が窺える。本当に洒落にならない賞金首なのである

 「何言ってんだコラ。手前目玉イカレてんのか? イービーの何処がライオンに見えるんだ?」
 「さっきからよぅ、誰が喋って良いっつったんだ……? 俺が話してんのはテメェみてぇなゴミじゃねぇ! ブレードトゥースだ! あんまりキャインキャイン五月蝿ぇとずたずたに引き裂いて荒野に埋めるぞ!!」
 「何ィ!」

 サラは怒髪天を衝く勢いで激昂した。予想通りの展開にあてなは思わず天を仰ぐ
 ドミンゲスが少女を人質にとっていなければ、サラは既に飛び掛かっていただろう

 イービーがサラを手で制し、一歩前に出る。もう一度、同じ言葉を口にする

 「その子を、どうするんだ、ドミンゲス」

 ドミンゲスは目に次いで口も大きく開き、声を出さずに呼気だけで笑った

 カハ、と笑ったのだ。そしてチェーンソーを回転させ、少女に振り下ろした

 「俺ぁドミンゲスだ!」

 サラは歯を食いしばった。あてなは固く目を瞑った。イービーだけが、決して動揺せず全てを受け入れている

 少女に傷は、無い。腕を縛っていた縄が切り裂かれ、床に落ちる

 「ドミンゲスだぞ! クラン・コールドブラッド遊撃隊長、ドミンゲスだ!」

 もう一振り。矢張り少女に傷は無かった。足を縛っていた縄が床に落ち、少女は自由になる

 余りの恐怖に、少女は失禁した。ドミンゲスは目もくれずに少女を放り出す

 解放したのだ。サラは瞠目した。冷血党が、態々とった人質を解放したのだ

 「俺は俺の力でのし上がってきた。この荒野を! 誰の力も借りねぇで! クランでだってそうだ!」
 「……ブレードトゥースじゃねぇ。俺はイービーだ。ドミンゲス、お前を殺す」
 「カカカ、掛かってこいやイービーとゴミども! 殺してやる! 俺は負けねぇ!!」


――


 「洒落臭いんだよ冷血党がァー!!」

 サラとドミンゲスが銃口を向けあったのはほぼ同時であった。互いに弾丸をばら撒きながら、身を低くして一直線に走る

 前に、だ。ドミンゲスはショルーダーアーマーで致命打を防ぎ、サラは持ち前の勘の良さで弾丸の雨を潜り抜けていく
 そもそも互いに走りながら、しかも精度の甘いマシンガンでの射撃だ。命中弾などそうは出ない。ドミンゲスに防がせている分だけ、矢張りサラ、と言うべきだろう

 「あてなァー! そのガキをどっかへやれ! 死なせるなよ!」
 「任しといてよ!」

 言う間に、サラとドミンゲスは一足飛びで肉薄できる距離まで近づいている
 ドミンゲスがチェーンソーを振り上げる。サラは雄叫びを上げながら、右足を振り上げた

 危険を感じていた。白兵戦を挑み、拳の間合いに踏み込んだ時点で、嫌な予感がしていたのだ

 ドミンゲスがチェーンソーを振り下ろす前に肘を打ち据える筈であったハイキックは、器用に身を捩ったドミンゲスの持つマシンガンによって受け止められていた

 チェーンソーを振り上げたのは囮だったのである。サラの右ハイキックを余裕で振り払ったドミンゲスは、体制が崩れたサラに向かって今度こそチェーンソーを振り下ろす

 しかし、当然イービーがこれを傍観している筈がなかった。今にもチェーンソーに解体されそうなサラの背後から、にょき、とショットガンが突き出される

 「シャァール、ウィイ、ダンス?」

 サラが銃口より内側に居るのだから、誤射の恐れなどない
 ぼ、とショットガンは火を噴く。ドミンゲスは雄叫びを上げながら首を捻る
 射撃音と同時に、ドミンゲスのヘッドギアが空を舞った。拡散した散弾に僅かに肉を抉られたか、額と肩から出血が始まる

 致命傷ではない。ドミンゲスは銃口をよく見ていて、直撃を回避したのだ。目を見張る糞度胸と勝負強さだ

 イービーはサラを引きずり倒す。身体が泳いで、ドミンゲスに背を向ける格好になったが、ショットガンを握りしめる左手だけは執拗にドミンゲスを追い続ける

 「テメェだけで踊ってな!」

 ドミンゲスは吠えながら一歩踏み込んだ。イービーが突き出したショットガンを右脇に抱え込む

 ショットガンが再び火を噴く。散弾はドミンゲスの背後の椅子や床を抉った。今ではドミンゲスも銃口の内側だ。中りたくても中るものではない

 「あの世でなァ!」

 ドミンゲスガンが突き出される。その糞度胸を褒めてやりたい気持ちだったイービーは、ドミンゲスの前例にならった。つまり、踏み込んだ

 真直ぐにイービーの頭部を狙うマシンガンを、手の甲でちょっとだけ押し退け、その内側にするりと滑り込んだ。イービーの顔の直ぐ横で、ドミンゲスガンはその齎す凶悪な効果とは裏腹に、軽快な音を立てる

 中りようのない射撃を続けながら、ドミンゲスは力任せにイービーを振り回した。起き上がろうとしていたサラは直感的に危険を察知したのか、慌てて椅子の陰に滑り込む。流れ弾が無秩序に床と壁、朽ちた椅子を穿つ

 イービーの背が椅子の背凭れに叩きつけられる。怪力でもってかなり重量のある男一人を叩きつけられた背凭れが、亀裂を生じさせ、直後に割れて崩れた。イービーは支えを失って体制を崩した。だがイービーに焦りはない。紅い瞳は、ドミンゲスの二手先までを見通している

 ドミンゲスは、ヘッドバッドを敢行しようとした。ドミンゲスガンを握る左手はイービーがしっかり握って離さないし、チェーンソーを握る右手を振り上げればその瞬間自由になったショットガンで頭をぐちゃぐちゃにされるだろう事は、ドミンゲスとて承知していた

 しかし、イービーは己の獲物に執着するタイプのハンターではなかった。ドミンゲスに拘束されたショットガンを放棄すると、コートの内側に手を差し込む

 抜き出した時には、ウージーが握られていた。発射は直後であった

 「ぬおぉぉぉ!!」

 巨体を縮め、左腕で頭部を庇い、ドミンゲスは悲鳴を上げた。屈強な体と頑丈なアーマーが、至近距離での銃撃を受け止めている
 何て野郎だ。イービーは笑いながらごろごろ転がって距離を取る。激情からか顔を真っ赤にしたサラが、ショットガンを構えて立ち上がっていた

 「サラおねーさまのお料理教室だ! “犬のエサ”の作り方!」

 ドミンゲスは椅子の陰に身を投げた。無様に這いつくばりながら、それでも目をぎらぎらさせている
 散弾が床を抉る。椅子を木端微塵にし、ドミンゲスを追い詰める

 「まず適当な冷血党員をミンチにします!」

 ショットガンを三射。イービーのマシンガンもそれに加わる。ドミンゲスは乱雑に置かれた教会の重厚な椅子を、巧みにカバーポジションとして使いながら蛇のように滑らかに逃げた

 「逃げられたら頑張って追いかけてミンチにしましょう!」

 サラは獰猛で容赦が無かった。手榴弾を二つ、口で器用にピンを引き抜いて、二方向に転がした
 ドミンゲスの進路と退路であった。サラは獰猛で容赦が無く、しかも勘がよかった

 手榴弾が同時に爆発する。木片と砂、埃が巻き上げられ、煙幕のようになった。耳鳴りがする。イービーが片目を閉じながら耳を抑える

 「ミンチにしたら調理完了です! 愛犬に食べさせてあげましょう! どうだ冷血党、ソルジャー伝統のサバイバルクッキングは!」
 「酷い料理もあったもんだ。キドニーパイですらない」

 軽口を叩くのもそこまでだった
 砂と埃の煙幕を引き裂いて、ドミンゲスが飛び出してくる

 「ば……」

 早い。獣のような敏捷性だ。冷血党と言うのは血も涙も、ついでに脳味噌もない野獣のような連中だが、こんな所まで獣並みとは恐れ入る。サラは既に目の前に居るドミンゲスを睨みつけながら、無意味な事を考えた

 恐ろしく早いのだ。不意を突かれた。情けない、このサラが。未熟。ではない、コイツが早すぎるだけだ。ショットガン、持ち上げて。いや取り敢えず伏せるか。ナイフ。手榴弾転がしながら後ろに。無理か。無理か、無理だな、どうも無理っぽい

 サラの脳内を言葉の波が流れていく。目の前には振り上げられたチェーンソーがある
 イービーが視界の端に映っていた。ウージーを向けている。舌打ちでもしそうな、苦み走った表情だった

 「邪魔だァ、ゴミがァー!!」

 無意識の内にショットガンを横向きに持ち、頭上に突き出していた

 チェーンソーが振り下ろされる。ショットガンの銃身がそれを受け止めた
 拮抗出来た時間は一秒の半分も無かった。瞬く間にショットガンは輪切りにされる

 サラの米神をチェーンソーがなぞる。ぱちぱちと奇妙な音がした。米神から頬を伝い、肩口に落ちてゆく

 世界が遅く感じた。チェーンソーの回転すら緩やかに見えた

 鎖骨辺りの肉が弾ける。そこから更に下、アーマーを引き裂きながらチェーンソーは振り下ろされ、豪快に床に突き立った

 ショットガンの稼いだ瞬きほどの間がサラを救った。米神及び頬からは激しい出血が始まり、鎖骨辺りの肉はずたずたにされていたが、奇跡的に重症は無かった

 腰元のウージーに手が伸びていた。これも矢張り、無意識の行動である

 イービーの横合いからの銃撃がドミンゲスを襲う。サラもそれに続くように、ウージーの銃口を持ち上げた。ドミンゲスはショルダーアーマーを突き出す格好で防御態勢に入っている

 「ドミンゲスゥゥ!」

 クロスファイア。イービーの射線とサラの射線がドミンゲスで重なった
 アーマーを抉られ、その下の肉体を抉られ、ドミンゲスは唸り声を上げながら後退りする

 イービーはウージーを放り出した。弾切れだ。足音荒く五歩ほど進み、その間に先程放棄したショットガンを拾い上げる

 「ナイスダンスだったぜ、カウボーイ」

 腕を交差させて銃弾を防ぐドミンゲスに、イービーはショットガンを向けた
 銃声と同時にドミンゲスが吹き飛んだのは、当然であった


――

 後書

 調子出んなぁ……。
 本当は、賞金首との戦いだけを抽出した、練習短編連作にしようと思っていたのに、3が結構ドラマティックだったからどうにも我慢が効かなかったという情けない事に。


 因みに私は、敵役は格好よくないと駄目派でござる。
 ついでに、追っかけてこいと言われたら上等だコラァ! となるタイプだが……。
 さてどうしようかのぅ……。


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