<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.20997の一覧
[0] 【習作】【短編連作】私の頭の中のダルシム[TEX](2011/01/21 15:20)
[1] 雨の日、さとりをもとめて。[TEX](2010/08/16 00:02)
[2] 伸びたい手足[TEX](2012/08/02 15:02)
[3] 無我の境界/滞空祈願[TEX](2010/08/18 23:33)
[4] その幻想は壊れない[TEX](2010/09/14 10:24)
[5] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム1[TEX](2010/09/20 16:28)
[6] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム2[TEX](2010/09/25 16:37)
[7] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム3[TEX](2010/09/30 15:16)
[8] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム4[TEX](2010/10/03 21:19)
[9] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム5[TEX](2010/10/09 16:24)
[10] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム6[TEX](2010/10/13 21:04)
[11] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム7[TEX](2010/10/13 21:37)
[12] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム8[TEX](2010/10/14 14:14)
[13] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム9[TEX](2010/10/21 13:35)
[14] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム10[TEX](2010/10/25 01:02)
[15] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム11[TEX](2010/10/31 16:31)
[16] 私の頭の中のダルシムの中の妹の頭の中のダルシム12[TEX](2010/11/06 19:23)
[17] Yoga, Cocktail, Jazz, Ghost.[TEX](2012/08/02 15:05)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[20997] 【習作】【短編連作】私の頭の中のダルシム
Name: TEX◆57eef252 ID:9ec604d4 次を表示する
Date: 2011/01/21 15:20
初投稿です。
ローカルでちまちま書いているシリアス系ファンタジーがスランプなんで、
八つ当たり気味に書いてみた。反省はしている。
盛大に罵ってくれると嬉しいです。


追記;完全にノリと勢いで書いていたこの短編ですが、予想以上に温かい感想を頂いてさらに深く反省しました。
読んでくださる方がいるということを肝に銘じ、『誰もが心の中に秘めているそれぞれのダルシム』をテーマに、様々な角度からヨーガの奇跡と向き合っていきたいと思います。
それに伴い、タイトルに【短編連作】の文字を冠しました。
正直、ダルシムでどこまで書けるのか不安ですが、これを一種の縛りプレイと考え、腕を磨くべく頑張っていきたいと思います。
それではお暇なかた、楽しんでいただけたら幸いです。




================================================================




男には、避けることのできない闘いがあるという。
使い古された言葉だが、それはつまり太古の昔から男たちが『避けられない戦い』を経験してきたということだろう。
その日の俺も、そうだった。

年下の彼女が家に来たときのことだ。
彼女が悪戯っぽい笑みを浮かべ、自らスカートを下ろした。
その瞬間から、俺の全身は彼女のためだけのものになったといえる。
彼女の望むように、彼女が喜ぶように。
たとえ呼吸という、生物として基本的なことが困難な状況に追い込まれたとしても、
俺の顔面にまたがった彼女を押し退けることなどできない。できるはずがない。

「お兄ちゃん、ヘルシングの8巻って……ごめん」

ばたん。

む。あれは妹の声ではなかったか。ばたん、というのは、もしやドアを閉める音では?

「うわ、どうしよう……今思いっきり見られちゃったよ」

不意に視界が開け、再び呼吸が可能になった。
これは、まさか。

「今……妹きた?」

「……目が合っちゃった」

彼女も完全に理性を取り戻してしまった。なんということだ。

「ヤバイ、マジヤバイ。この気まずさは過去最大級に気まずいぞ」

「落ち着いて。ええと。ヨガ!ヨガをやっていたとか言えばさ」

「え、火を噴いてたの?さっき」

「噴いてないよ!え、ヨガって火を噴くの?」

「あと、手足が伸びたりとか」

「ワンピースだっけ?」

「いや、ヨガの人は海も平気だと思う。空も飛べるし」

「なにその無敵キャラ。何系なの?」

あれは何系なんだろう。

「……東欧系かな」

しばしの沈黙のあと、彼女が口を開いた。

「……えっと、じゃあ、その、どうすればいいんだっけ」

「その、ヨガ?」

「そう、それ」

「俺よく知らないんだけど、ヨガで通るの?」

何か女性には特別な意味のある言葉なんだろうか。

「プロレスとかいうよりはマシなんじゃないかな。わかんない。でも、もうそれぐらいしか……」

彼女もやはり混乱しているようだった。
これ以上心配させてはいけない。安心させてあげなくては。
覚悟を決めろ、俺。

「……わかった。行ってくる」

「うん……」

俺は服を着て立ち上がり、ドアを開けて妹の部屋に向かった。
どんな顔をしていいかわからない。しかし、きっと妹も同じはずなのだ。
お兄ちゃんのフォロースキルが試されている。

「ヨガ……か」

俺の記憶が確かなら、今晩はカレーだったはずだ。ただの偶然か、それとも運命か。
直感が告げる。自分が大きな流れの中にいるのだと告げている。
これは運命だったのかもしれない。乗り越えろという、試練なのかもしれない。

──男には、避けることのできない闘いがある。

俺は逃げない。俺は、家族の絆を信じる。

拳を握り締め、重力に引かれる右腕をやっとの思いで持ち上げ、ドアを叩く。
乾いたノックの音がひとつ、ふたつ、みっつ。

ごくり。

鉛を入れられたように身体が重い。いや、心が重いのだ。
暴れまわる心臓。ひとすじの汗が頬を伝う。

「……なに?」

妹の声と共に、扉が開いた。

「驚かせてごめん。あれは…」

「いや、いい。わかってる。これからちゃんとノックするから」

俺の言葉をさえぎって妹が早口に言う。
言葉とは裏腹に、妹の表情は固い。

しかし『わかってる』とは。
ヨガとはそんなにもメジャーだったのか?ヨガって何だ?あとで動画を検索しよう。
もしや『ヨガ』という名目で同じことをクラスメイトなどとやっているのでは…いや、今は触れないでいたほうがいいか。

「っと、これ」

「あぁ、うん」

ヘルシング8巻を渡し、俺は妹の部屋を後にした。
そのとき、妹に呼び止められた。

「あ、お兄ちゃん」

「ん?」

「9巻も、できれば。続き、気になるし」

「あぁ、そっか。確かに続きは気になるよな」

「……ばかっ」

「え?」

「……早く。あと彼女さんにごめんって言っといて」

「……?あぁ、うん」

一旦部屋に戻り、9巻とついでに10巻を持って再び妹の部屋に。

「ありがと。えっと。が、がんばって」

ぎこちない笑みだ。
なんだかこっちが笑えてくる。

「ははっ。お兄ちゃんがんばるよ」

「ほどほどにね」

「あぁ」


そして俺は、彼女の待つ部屋に戻った。
不思議なほど足取りは軽く、胸には爽やかな風が吹き抜けていた。

「ただいま」

「うん、おかえり。……どうだった?」

彼女が不安そうにしている。それもそうか。

「大丈夫だったよ。ごめんって言ってた」

「そ、そっか。よかった……」

タオルケットにくるまった彼女を抱きしめる。
その下はさっきと同じ、生まれたままの姿だ。

「続き、しようか。ヨガの」

「あはは、ヨガね。うん、いいよ」


それから、三年が過ぎた。
結局、ヨガという単語に隠された意味はわからなかった。
でも、最近になって思うようになったことがある。
こんなふうに締め切った部屋で、俺たちは無我の境地を垣間見ていたんじゃないかと。

「ヨガ、だったのかもしれないな」

夏が来るたびに思い出す。
今はもうどこかの誰かと幸せになっているのだろう彼女。
クーラーの風、甘酸っぱい情熱。
カレーの匂いと、根源に至っていた日々。


次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.022522926330566