どうして真咲さんを殺した虚があそこにいるんだろう。私はちょっとおつかいにスーパーに行く途中なのに。
でもここ例の川の近くだああ! 雨降ってないからわかんなかったあああぁ!
なにはともあれ。
180°ターン! 全力疾走! 目指せ! 黒崎家!
第四話
「小娘、わしが見えておるな?」
いいえ、見えていません。シカトして走る! 全力で走る!
「久しぶりに美味そうなやつよのう……クックック……」
だが虚から小学一年生の私が逃げられるはずもなく、ギュルン! と細くて長い舌のようなものが首に巻きつく。息がー!
「さて、じっくりと味わって食うとしようかのう……」
虚はあんぐりと口を開け、私を食べようとする。
舌のうなもので首を絞められている私は悲鳴すらあげられない。
イヤーッ! 誰かー! 助けてー! ウーラーえーもーん! 一心さーん! 担当の死神さーん! 善良な幼女が食べられようとしてますよおぉー!
っていうか目覚めなさい私の能力! 一護の近くにあれだけいたんだからなんか影響受けてるはずでしょうがああ! ホラ! ホラァ!
あああぁ頭が奴の口に入り――
そして突然、何も見えなくなった。
……は、ははは、私食われたの……かな……? いや、でもそのわりには意識がはっきりしている。まさか、これは。
――翔子――
頭の中に! 頭の中に突然声が!
――私が見えるか――
きちゃった! きちゃったよなんか目覚め的なものが!
目の前に右半分が黒く、左半分が白いコートを着たキレイなおねーちゃん(胸がデカイ)がいる。
デカイ、メッチャデカイ、それだけでなく美しい、まさに完璧だ。
この世の全ての財と知と技を結集させてもあれほど美しいものなど作れないし探し出せないだろう。
クッ……!こんなときに下半身が疼きやがる……!
――力が欲しいか?――
「いいえ! あなた(の特に一部分)が欲しいです!」
アレークチガカッテニウゴクー
――ならばくれてやる!――
いやったあああぁー!
非常事態の連続でちょっと私はおかしくなっていた。
「な!? 霊力がいきなり――」
いつのまにか、右手に何か棒のような物が握られている。
それを思い切り奴の口の中に突き刺す!
死ね! 氏ねじゃなくて死ね!
「ぐああぁ!」
虚は暴れだし……っておい! 放り出されたあ!
飛んでる! かなり飛んでる!
小学一年生では上手く着地できても骨の一本や二本は折れそうな高さにポーンと放り出される。ああ、すごく痛そうだなあ……
せまってくる地面。
私は目をつむり体を丸くした。それは着地に備えるわけではなくただ怖くて丸くなってるだけだった。
メッチャ痛ソオオ!
しかし
ドサッ
地面とは明らかに違う、柔らかく、優しい感触。
「大丈夫か!? おじょうちゃん」
前髪を触覚のようにたらした角刈りの死神が、私を抱きとめていた。