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No.20938の一覧
[0] 【習作】処女はお姉さまを愛している(おとボク×おとボク2)[uppers](2011/03/22 10:41)
[1] 第一話「卒業前のBonds connected 前」[uppers](2010/09/03 11:36)
[2] 第二話「卒業前のBonds connected 中」[uppers](2010/08/17 20:10)
[3] 第三話「卒業前のBonds connected 後」[uppers](2010/09/05 15:11)
[4] 第四話「Before one troubleの邂逅 前」[uppers](2011/03/22 10:42)
[5] 第五話「Before one troubleの邂逅 中」[uppers](2011/03/22 10:42)
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[20938] 第五話「Before one troubleの邂逅 中」
Name: uppers◆878c9117 ID:8f69557e 前を表示する
Date: 2011/03/22 10:42
懐かしの門をくぐり、正面に見える校舎を見上げる。本来ならば通学して卒業することは夢物語のはずだったのに、今こうして聖應女学院の校舎を見上げることはなんと感慨深いことか。

こうして目を瞑れば今すぐにでも瑞穂にはあの一年間が浮かぶ。それほどになによりも濃い一年間だった。五月半ばに転校してきて、六月にはエルダーになり、夏休みには梶浦先生の過去を知り、九月には運動会、十月には生徒会、十一月は学園祭での演劇を始めとした催し物、十二月には舞踏会、一月には貴子を悪漢から守った際に正体がばれ、二月には紫苑の問題を解決したりと慌ただしいものの卒業して翔陽大学へと紫苑と貴子とともに進学することができた。

自立の一歩を踏み出す為に父親は付き人である楓に任せ、大学の近くで一人暮らしには広い部屋を借りた。はじめは自由気ままな生活をしていたのだが、いつのまにか当たり前のように聖應での同級生だった十条紫苑と厳島貴子がいた。

はじめは遊びに来るだけだったのが、勉強などで夜遅くなってしまい、帰るには女性だけでは心配かなと思って泊めてから次第に二人の物が増えてきた。例えば、二人の食事で使うコップや箸だったり、洗面所にある歯ブラシや化粧品(中には二人から無理矢理買わされた僕用のものもある)、気づいたら二人とも僕の家で暮らす分には困らないぐらいの日常品が置いてある。

瑞穂としてはさすがに男の家に泊まるのはまずいではないかと思うのだが、二人の家庭事情を考えると仕方ないと考えると同時に心が温かくなるような気がしてくるから不思議だ。

気付けば二人は瑞穂の家から大学へ行くことが多くなり、周囲の学生からは「翔大名物美少女トリオ」と呼ばれるようになり、学生会にも参加した。

瑞穂は学内では女装もしていないのにトリオの一人として数えられているとはどういうことか?

生徒証にもしっかりと男性で登録しており、ゼミや学生会でも自己紹介のときにはっきりと男性だと言い切ったにも関わらず、瑞穂は女性扱いされることが多い。

特に酷いのが紫苑だ。学祭のときなどは率先して女物の服を着させようとしてくるのだから周りもそれに煽りを加えてくる。しかも、大学でのミスコンにいつのまにかにエントリーされており、あらゆる方面から強制的に参加させられてしまった。

旧友の知り合い、特に奏とまりやには絶対に知られたくないので課程は省くが、結果として晴れてめでたく?堂々のぶっちぎり一位に輝いてしまった。おかげで学内でも声をかけてくる人が多くなった。男性からはそういった趣味の人が大量に目覚めてしまったことが大多数で女性からは主に美容のこと、悪ノリしてくると僕に女性の服を奨めてくる。交友関係が広がったことは瑞穂としては嬉しいことであるが、紫苑と貴子とふれ合う機会が減ってしまい二人の機嫌が多少なりとも悪くなったのは記憶に新しい。
それで今回も母校である聖應に来ることになったのだが、今も在校生にばれないように女装している自分はなんだろうか?

一昨年、奏に頼まれて薫子にフェンシングを指南したことで少なくともではあるが、最上級生には顔を覚えられてしまった可能性と自身の輝かしい功績が今になって自らを苦しめている。
「宮小路瑞穂」という名はここ最近のエルダーの中でも絶大な人気を誇る。エルダー選挙というのは生徒同士が投票を行い、全校生徒の20%以上の票を獲得することでエルダーの資格を得ることになる。開票日で20%以上を得た者が全校生徒の前で親愛の証を行って自らが獲得した票を譲渡することが通例になっている。ほとんどは他者と得票率が重なってしまい、何人かが選ばれるはずが「宮小路瑞穂」というカリスマを目の前で見てしまったことで得票率は過去最高の90%オーバーとなり、エルダーシスターとなった。一応はまりやと妹分である奏、由佳里や前エルダーである紫苑の影響もあるが、最終的に決定的なものは瑞穂の行動力の結果だろう。

それであるが故に瑞穂は卒業式に父兄席に参加するというのにピンクのタートルネックセーターと白いフレアスカートという出で立ちで紫苑たちと並んで講堂へと足を進めている。

瑞穂の長い髪と相俟って服装がよく似合っている。これ以上にないほどにだ。周囲の視線が痛くていたたまれない気持ちになる。苦笑いが出て、頬がどうしてもひきつってしまう。そんな様子を目敏く見てしまうのが瑞穂の周囲にいる者たちである。


「どうかしました?瑞穂さん」


そう問いかける紫苑は見惚れるぐらいの笑顔で瑞穂は表情に出さないも頬を少しばかり桜色に染めてそむけてしまう。その仕草を逃すのは紫苑だけではなく手を繋いでいる貴子にもその会話は聞いており、心配そうな顔で覗き込んでくる。


「どうかしたのですか?」


瑞穂はびっくりするもすぐに平静を取り戻して笑みを浮かべて返事をする。貴子は不思議に思いながらも視線を前方へと移す。紫苑と圭以外はなんだかわかっておらず、瑞穂に笑顔で返してまた自分たちの話へと戻る。


「わかっているのでしょう?」


「いえ、私にはわかりかねます。瑞穂さんのことは不思議でしょうがありませんから退屈しないのです」


瑞穂はジト目で紫苑を見るが、当の紫苑はどこ吹く風といった感じで流している。瑞穂はしょうがないなと思ってしまうのがここにいる周りの人たちが瑞穂にとって大切だと思うからだからだろう。

確かに瑞穂が卒業してすぐに学院へと行ったのが間違いだったのかもしれないと思う。妹分である奏に頼まれたのが安請け合いしたのが今更にツケがここでくるとはと瑞穂にも思いもしなかったのだから。

薫子と出会い、フェンシングを教えたことは後悔をしていない。けれども、教えた場所とフェンシング部長との決闘を見届けなくてもよかったのではないかと今更ながらに思う。聖應という場所の特殊さを考えたらこうなることは予想できていたのではないか。

しかし、本当に今更だ。今の現状などどうしても変えることができないのなら、今を楽しみことにした。ただし、ある程度の節度を持ってと決めて。でないと暴走したときに止めようがないから。

瑞穂らの集団はただでさえ目を引く。今、現在も他の父母やらの視線が通りかかる度に突き刺さる。瑞穂、貴子、紫苑の三人はこういった視線にさらされることは慣れているし、圭に関しては元来気にしない質なので普段と様子は変わらない。表情に出るのは前年度のエルダーである『白菊の君』周防院 奏と同じく前年度の生徒会長である『琥珀の君』上岡 由佳里の二人である。

二人は出身がどちらかというと聖應の中では庶民という位置なので最終学年などである程度の衆目にさらされたとはいえ、他のメンツに比べれば未熟だろう。しかも、今は卒業生の一人として聖應に来ているのだ。普段より在学時とは違う緊張をしているのは間違いない。

それはそうだろう。父兄にはわからないかもしれないが、二人は未だ在学生には大きな影響力を持つ。昨年の卒業式からちょうど一年。今年の2年生と3年生には憧れを抱くのも何人もいたのは事実である。しかし、それは今は意味を為さない。なぜならここに在校生はいないからだ。

それでも瑞穂から見ても今の二人の立ち振る舞いは堂々としたものである。初めてに出会った頃に比べると雲泥の差だ。妹と思っている二人が自分の見ていないとこで成長していると思うと嬉しくなるのはこれが母性というものだろうかと思うと瑞穂としては感慨深くなる。

その後に思い出してちょっと落ち込む瑞穂が見られたのは周囲の者から見れば微笑ましいものである。



瑞穂たちが講堂の中に入ったときには既にある程度の席は埋まっており、どうしようかというと悩んでいたときに懐かしい顔を見つけた。向こうもこちらに気づいたようで準備の手を止め、こちらに駆け寄ってくる。


「お久しぶりね。十条さん、厳島さん、小鳥遊さんに周防院さんと上岡さん、それと瑞穂・・・・・・さんでいいのかしら?」


声をかけてきたのは担任であり、学内でもっともお世話になった教師である梶浦緋佐子だ。緋佐子が疑問に思うのは仕方のないことだ。卒業するときに彼の親しい人たちには話すということは聞いていたので今度会うときは男装してくると思ったからだ。なのに、今の服装は可愛らしい女性そのもの。鏑木瑞穂という性別を知っていなければ確実に女性と思ってしまう。


「ええ、合ってますよ。今日は奏に誘われてきたんですけど、今年の最上級生には何人かに顔を見られているので」

そう答える瑞穂の姿にはどこか哀愁が漂う。その答えを聞いて事情を知っている者には苦笑するしかない。どう答えていいのかわからないからだ。ただ、紫苑と圭だけはどこか嬉しそうな感じが見られているが。


「それにしても梶浦先生はどうしたのですか?確か、私たちと同じときに学院を去られて小説家として活動を続けていたと記憶していたのですが?」


「私も読ませていただきましたわ。『陽の当たる教室」、確か先生が聖應で生徒時代に経験したことが元になっているという話でしたね?」


瑞穂は退職していると思っていた恩師の梶浦緋佐子が今もこうして学院にいることに疑問を思い、貴子は退職してから執筆されて出版したのを瑞穂から借りて読んだことを伝える。

当時、瑞穂が寮で暮らしていたときの夏休みにある噂が流れ込んできた。学院内にある第二音楽室で誰もいないのにピアノの音が聞こえるという怪談としてはありふれた内容なのかもしれないが、確かにそこにはいた。ただし、その物語は悲恋だった。悲しいくらいにお互いに恋い焦がれていたのに、二人は結ばれることなく一人はいなくなり、一人は学院内に残っていた、学院を卒業してからも。
そして、時は流れて瑞穂たちは見た。二人の最期の逢瀬を。

梶浦緋佐子は学院に在籍していた当時はピアノなど得意と言えるほどではなかった。ましてや、教師になるほど誰かに教えるなど当時など考えなかっただろう。それを変えたのが親友とも言えてなにより恋と呼べるほどに焦がれた唯一の相手、それが『』だった。

二人の逢瀬は瑞穂をはじめとした寮生に言葉へできないなにかを感じた。その想いはきっと当事者である緋佐子にしかわからないのだと瑞穂は感じた。だから、瑞穂は伝えたのだ。緋佐子に。


「この美しい物語を、先生の想いを失わないように、色褪せないようにしてほしいんです。」と。


その想いに緋佐子は悩んだ。この想いは自身だけのものであるし、その場面を見ていた者を除き、他の誰にも汚されたくなかった。

物語にするとはなにかに記すということだ。紙であれ、機械であれ、残るものだ。そうするといずれは世間の目に曝されるであろう。それを考えると瑞穂の想いは未だ脳裏に焼き付いている緋佐子には辛いものである。

賢く理知的である瑞穂のことだ。当事者である緋佐子の想いは気づいているだろう。それでも伝えた瑞穂はどんな想いだったんだろうか。

確かに瑞穂が言葉にしなければ緋佐子はそのようなことは考えることなどしなかった。なにより、一生涯自らの内に秘めて生きていくつもりだった。このままいけばきっと彼女の想いや生きてきた軌跡は誰にも知られることなどないだろう。

物語であるならば名は変えていてもきっと物語は、彼女が生きてきた軌跡は話継がれていく。この想いは色褪せることなどないのだから。

緋佐子は瑞穂たちとともに学院を卒業し、ゆっくりと執筆を始めた。自らの高校生活を振り返りながら、当時の想いを一つ一つ思い出しながら調べを言葉にして読む人に届くように綴っていく。

そうしてできたのが『陽の当たる教室』だ。発刊からしばらくして口コミでベストセラーとなり、今では学院長としての業務の傍らで暇を見つけては少しずつ執筆している。
出版社には読者から様々な感想が寄せられている。緋佐子も打ち合わせのときに何通か読んだときに「ああ、よかった。」と。

そのあと、次に執筆することが決まった時期に学院長より代理を頼まれて今に至る。


「ええ、私がここに通っていたときに彼女と体験したことが基にして作り上げたの。・・・・・・もっとも瑞穂くんが言ってくれなければしようとは思わなかったけれど。」


口元に手をやり、クスクスと当時の少女のままの雰囲気で嬉しそうに自然と笑みがこぼれてくる。

それを聞き、瑞穂は頬を指で掻いて照れくさそうに視線を目を逸らす。周りの女性たちは微笑ましく見ている。瑞穂一人だけが罰がわるそうにしていて雰囲気に耐えられなくなり、露骨に話題を逸らそうと口を開く。


「まぁ、そうなんですが・・・・・・そ、それよりも先生。式の準備はしなくていいのですか?」


「あら、そうですね。生徒ばかりに任せておくのもよくないので戻りますね。」


瑞穂の言葉で思い出したようにこの場での別れの言葉を伝えると、足早に在校生であろう足下まで伸ばした長い黒髪の子とツインテールの金髪の子のところに歩いていった。どうやら卒業式で使う生け花を飾っており、配置を決めるようだ。

二人もこちらに気づいたようで軽く会釈をしている。どうやら先ほど尋ねた金髪の可愛らしい女の子だ。手を振ってあげると振り返してくれる。それに過剰反応するのが二人ほど。


「瑞穂さん?あの可愛らしい女の子はどうしたのですか?」


「またですか?いったい何人の女性を口説けばいいんですの?」


両方の肩を掴まれて、二人の言葉とともに徐々にミシミシと嫌な音と痛みが増していく。振り返ればきっと笑顔のままで怒っている二人の姿がいるのは想像に難くない。だから、瑞穂はその場で笑うことしかできない。

その後、なんとか二人に許しをもらい、その場ではなんとか収まることができた。ただ、後日にはということを約束することになったのだけれども。

聖應の厳かな卒業式がもうすぐ始まる。来賓の方をはじめ、在校生、父兄席には多くの人たちが座り、後は卒業生を待つだけになった。ほら、卒業生が入場する扉が開かれる。これから大きな空へと羽ばたく小鳥たちに祝福があらんことに。


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