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No.20697の一覧
[0] 【2スレ目】ダンジョンに挑戦するいじめられっこの話【習作・ネタ】[大豆](2010/10/04 19:52)
[2] 109[大豆](2010/07/28 18:19)
[3] 110[大豆](2010/07/28 18:20)
[4] 111[大豆](2010/07/28 18:21)
[5] 112[大豆](2010/07/28 18:21)
[6] 114(修正)[大豆](2010/07/28 18:23)
[7] 115[大豆](2010/07/28 18:23)
[8] 116(修正)[大豆](2010/07/28 18:24)
[9] 117・スレ変更後の新規投稿分はここから![大豆](2010/07/29 19:31)
[10] 118[大豆](2010/07/28 18:28)
[11] 119(修正)[大豆](2010/07/30 17:10)
[12] 120[大豆](2010/07/28 19:06)
[13] 121(修正)[大豆](2010/07/30 17:10)
[14] 122(誤字修正)[大豆](2010/10/03 19:49)
[15] 123[大豆](2010/07/29 18:58)
[16] 124[大豆](2010/07/29 19:30)
[17] 125[大豆](2010/09/29 01:42)
[18] 126(誤字修正×2)[大豆](2010/09/29 01:43)
[19] 127(修正)[大豆](2010/07/31 23:17)
[20] 128(誤字修正×2)[大豆](2010/09/29 01:44)
[21] 129[大豆](2010/07/31 23:19)
[22] 130(誤字修正)[大豆](2010/09/29 01:45)
[23] 131[大豆](2010/07/31 23:20)
[24] 132[大豆](2010/07/31 23:49)
[25] 133[大豆](2010/08/04 22:30)
[26] 134[大豆](2010/08/04 22:31)
[27] 135(誤字修正)[大豆](2010/09/29 01:46)
[28] 136[大豆](2010/08/04 22:56)
[29] 137[大豆](2010/08/08 00:09)
[30] 138(誤字修正×2)[大豆](2010/08/08 01:07)
[31] 139[大豆](2010/08/08 00:11)
[32] 140(誤字修正)[大豆](2010/09/13 23:27)
[33] 141[大豆](2010/09/13 23:28)
[34] 142[大豆](2010/09/13 23:29)
[36] 144[大豆](2010/09/14 08:19)
[37] 145[大豆](2010/09/29 01:34)
[38] 146[大豆](2010/09/29 01:35)
[39] 147[大豆](2010/09/29 01:35)
[40] 148(誤字修正)[大豆](2010/09/29 20:03)
[41] 149[大豆](2010/09/29 20:03)
[42] 150[大豆](2010/09/29 20:04)
[43] 151[大豆](2010/09/29 20:05)
[44] 152[大豆](2010/09/29 20:18)
[45] 153[大豆](2010/09/30 22:03)
[46] 154(修正)[大豆](2010/10/03 19:46)
[47] 155[大豆](2010/09/30 22:03)
[48] 156(数字修正)[大豆](2010/10/03 19:45)
[49] 157[大豆](2010/10/01 20:29)
[50] 158[大豆](2010/10/01 20:29)
[51] 159[大豆](2010/10/01 20:29)
[52] 160[大豆](2010/10/01 20:57)
[53] 161(第4部はここから)[大豆](2010/10/10 04:42)
[54] 162[大豆](2010/10/04 19:53)
[55] 163[大豆](2010/10/04 19:53)
[56] 164(誤字修正)[大豆](2010/10/05 21:22)
[57] 165[大豆](2010/10/05 21:23)
[58] 166[大豆](2010/10/05 21:23)
[59] 167[大豆](2010/10/05 21:24)
[60] 168[大豆](2010/10/05 21:39)
[61] 169~171?(打ち切り)[大豆](2010/11/03 18:39)
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[20697] 169~171?(打ち切り)
Name: 大豆◆c7e5d6e9 ID:6e35c1f3 前を表示する
Date: 2010/11/03 18:39
前回のあらすじ

・第4層は町ごとにクエストが設けられている。
・ハルマサはポケモンを2段階進化させなければならない。→街の外で虫ポケモンをゲットだ!
・ハチエはポケモントレーナーのコバルトを倒さなければならない。→すでに倒した。
・アオイは仲間を二人集めなければならない。→一人(ハチエ)は決定したけどもう一人どうしようか……というところで、アオイとハチエのいる喫茶店にマリーがやってきた。



<169>



【第四層 右足都市】

「あら、ごきげんよう」

黒いドレスの少女が入ってきたことで、ハチエとアオイが楽しくお茶をしばいていた喫茶店の空気は

見る見る悪くなった。

「ごきげんようやないわ。ウチあの時死に掛けたんやで?」
「ふふふ、いい気味だわ」

何故会った早々こんなにギスギスしているのかアオイには計りかねたが、取りあえず横の椅子を引い

てあげた。
黒いドレスを着た少女を見る。

「おおぅ、アオイさんは相変わらず殺人鬼みたいな目やね」

ハチエが少し引いていた。どんな目だ。

「あら、素敵な視線。ゾクゾクしちゃう。……あ、座っても良いのね。うれしいわ」

何故か少女はうれしそうに身を震わせると、トテトテと歩いて、アオイの横にストンと座った。
体からかすかな腐臭がする。
腐肉でも持ち歩いているのだろうか。
ふわりと座った少女はハチエとアオイとを交互に見て、口を開いた。

「それで? 見たところ二人ともビックリ箱の申し出を受ける必要も無いほど強く見えるのだけど、私

に何か用かしら? 私は見ての通り、自力で立てもしなかったから力を一般人程度に抑えられているわ

。だからいじめないで欲しいの」
「いじめたら呪われそうやから止めとくわ。」
「ウフ。あら、ご苦労様。ホットミルクをくださるかしら?」

やってきたウエイトレスに注文している少女を見ていたアオイだが、この少女は本当に強いのだろう

かと疑問に思った。
動作は洗練されているとは言い難いし、気味が悪い以外はただのお嬢様である。
アオイよりもよほど淑女システムに相応しそうではあるが、それは置いておこう。
しかし、アオイが認めるハチエを殺しかけたのなら、何か秀でたところがあるのだろう。
紙にペンを走らせる。

≪何が出来るんだ?≫

それを見たハチエが言った。

「そういえばよぅ知らんわ。何が出来るん? えーと、名前なんていうん?」
「マリーよ。何が出来るかといっても、そこらの不死人よりも弱い今は、死体を操るくらいしか出来

ないわ。この前の傑作はあなたにやられちゃったから、今持っているのは骸骨と骸骨犬だけよ?」

そう言った後、マリーなる少女がチラリと視線を向けた先には、4つ脚テーブルの脚の影に隠れて震

えている小さな骸骨の姿があった。
先ほどアオイの体を這い回っていた奴だ。くすぐったかったが、動物に好かれたことの無いアオイに

は新鮮で、少し嬉しかった。
マリーが冷ややかな目をして言う。

「英霊? 何でこんなところに居るのかしら?」
『ふ、ふん! そちらから捨てておいてよく言う! 私はもうお前の支配など受けないぞ! 新しい主人

が出来たからな!』
「震えながら言っても格好良ぅないでパロちゃん。……それにしても、あんたこの子になにやっとっ

たん。えらい怖がられとるやん」
「別に普通のことよ。この子は死んでから日が浅いから自意識が濃くて辛かったかもしれないけど、

その内慣れる程度のことだったはずよ。それよりも……ああ、名前を刻み直したのね。まぁ骸骨はた

くさん居るから構わないわ。英霊ほど強力なのはもう一体しか居ないけど」

ウフフ、と笑う少女。どこか不気味だ。不穏、と言った方がいいか。

「それで、その新しい主人は何処にいるのかしら?」
「ああ、別々に転移してもうてん。額都市やったっけ。ここから一番遠いところにおるで」
「マルフォイは左手都市だって言ってたわ」
「いや、聞いてへんけど。ていうかあいつ生きとったんかい。それにしてもハルマサ大丈夫やろか…

…」

話についていけなくて少し寂しいアオイである。
いや、大事なのは積極的に行動することなのだ。
ハチエのコロンブスの卵的な発想で筆談とは言え会話できるようになったのだから、ドンドン参加し

ていかなければ!
アオイはサラサラと文字を書いて、運ばれてきたミルクに口をつけているマリーにそれを見せる。

≪マリーのクエストはなんだ?≫
「……なんでこの人は喋らないの?」
「さぁ。わからへんけど、なんや事情があるやない? あとアオイさんやで」
≪白根アオイ。18歳だ≫
「年下なん!?」
「アオイさんね。よろしく。マリー・グレイズ。私は87歳よ」
「年上!? ていうかお婆さんやん!」
「失礼ね。あなたの名前は教えてくれないの?」
「あ、ハチエやで。19……かな? なんやダンジョンに来てからえらい年取ったような気がするで」

確かにダンジョンでの時間は濃いとアオイも感じていた。
漫然と過ごしていたこれまでの人生全部と同じか、それ以上の密度である。

「……ハチエの喋り方は変ね。初めて聞くわ」
「実はあれや。ウチより年くっとる人がこの喋りを聞くと、一分ごとに一つ年老いていくねん」
「……え?」
「だから、マリーはもう90代やな。まさか年上とは思わんかったで。すめんすめん」

ハチエがてきとうに謝る動作をする。
びちゃびちゃと音がすると思ったら、隣で盛大にマリーが動揺していて、手に持ったカップからミル

クが零れていた。

「え、ウソよね? ウソと言って! お願いよッ!」

すがりつきそうな勢いでハチエに詰め寄るマリー。
その牛乳まみれの手を避けつつハチエは言った。

「実はウソや」
「そ、そう。それならいいわ。いえ、良くはないけど」
「というのもウソやねん」
「ええ!?」
「しかし、今回だけは本当やねん」
「…………あら? ちょっと待ってくださる? どっちがどっちだか……」
「はっはっは! そういえばアオイさん、ウチ目玉からビーム出せるで」
「……!」
「ね、ねぇ、結局ウソなの? 本当なの?」

聞いてくるマリーに、ハチエは肩を竦めて言った。

「ビーム以外は全部ウソや」
「そ……」

マリーは一瞬表情を固めたが、直ぐに席に座りなおした。

「そうよね。ふ、ふふん。そのくらい予想していたし、ここで全然怒らない大人な私。ミルク美味し

いわ。ぶっ殺したい。」

マリーは小刻みに震えながら少なくなったミルクを飲んでいる。
本音漏れてる、とアオイは思ったが、紙に書くのも面倒だったので何も言わなかった。
そして、この二人なら一緒に旅をするのも悪くない、とは思うのだが、少し仲良くしてくれないかと

、思いもするのだった。

『なぁアオイ』

しばらく沈黙が流れていると、机に登ってきていた身長6センチの骸骨がアオイに話しかけてきた。

「……?」
『話すのがダメなら、私のようにテレパシーを覚えれば良いのではないか?』
(……簡単に言ってくれる……)

それくらい、アオイも試したことはある。
だが、取っ掛かりも無い状態では上手く行くはずもなく――――待て。取っ掛かりならここにいるで

はないか。
アオイはペンを握り、文字を書いた。

≪教えてくれるか?≫
『勿論だ! 任せろッ!』

小さな骸骨はスカスカの胸を張るのだった。




「私のクエストはこれよ」

マリー少女の出しだしてきた紙には、今まで見たクエストとは少し毛色が違う事が書いて在った。

【右足都市:手持ちのポケモンを増やす。難易度:★ ……clear!】

「あれ? これもうクリアーしとるやん。」
「実はさっきモンスターボールとやらを拾ったの。ついてるわ」
「拾ったんかい」

何処で拾ったかと言うと、服飾店の前だったとか。で、拾ったポケモンは、「ドンカラス」らしい。

「コバルト君のやん」
「この階層に来たばかりにも関わらず、すでにクエストをクリアーしている私に賛辞を送ってくれて

もいいわ」
「いや、ネコババしとる人に言われても。それにウチもクリアーしとるし」
「なんですって!?」
『そして私もこれでクリアーできる……声は届いているか?』

突然念話が話に参加してきた。アオイさんだ。とても声がハスキーである。

「アオイさんかいな。テレパシー、もう出来るようになったん?」
『教師が優れているのだ! 出来ないはずが無いだろう!』

パロちゃんも割り込んでくる。相変わらず声は甲高い。これで通常サイズに戻ったら普通の声になる

のだから不思議だ。
アオイさんが深く頷く。

『その通りだな。素晴らしい教えの対価として私の頭の居住権を払った。なにやら居心地が良いよう

だ』
『フカフカなんだぞ!?』

パロちゃんがアオイさんの短髪の上でピョンピョン跳ねている。
まぁ二人とも幸せそうやしええか、とハチエは思った。
マリーがアオイのほうを向く。

「アオイさんのクエストは何だったのかしら?」
「え、普通ウチから聞かん?」
「どうでもいいわ。少し黙ってちょうだい」
「あ、さっきのこと根にもってるんやろ。大人気ないでマリー。ウチのを聞いてみんかい」
「……そこまで言うなら、教えてちょうだい」
「それはなぁ、」
「あ、やっぱり興味が無いわ。黙ってて」
「ムキャー!」
「ウフフ、猿みたい。」
『私のクエストは3人パーティを組むことだ。マリーはポケモンを拾って二匹にしたのだな?』
「ええ。さっき拾ったものをあわせて二つよ。しかも拾ったのが意外と強いの。」
『まぁそうだろうな』
「大きなカラスみたいなポケモンよ。羽の色が艶のある黒で綺麗なの」
「返してあげんでええんかなぁ」
『別にかまわんだろう。どうせ誰かから奪ったものだ。……それはさて置き、マリーがポケモントレ

ーナーであれば尚更頼みたい。私と共に旅をしてくれないか?』

アオイさんが手を出すと、マリーが手を握る。ちゃんとミルクは拭いたのだろうかと、ハチエは心配

した。

「こちらからお願いしたいくらいよ。頼もしいわアオイさん。あとついでにハチエ。」
「誰がついでやねん。一番弱いのはマリーやで?」
「馬鹿にしないで! 骸骨が使えるわ!」
「はいはい」
『なぁ、少し仲良くしないか?』

そしてこの3人はパーティを組み、見事右足都市から脱出できるようになったのだった。
しかし、まだ3人はスタートラインに立っただけである。


<つづく>





<170>



【第四層 額都市】

そろそろ日も暮れようかという頃である。
斜陽に浮かび上がる30メートルの巨大な門は、ハルマサを押しつぶすような圧力を放っていた。
それはそのまま、扉の向こう側へ対するハルマサの恐れの現われでもあった。

「オリーブさん、一つ言っておこう」
「な、何よ?」

ハルマサはオリーブさんへと顔を向けた。

「あのね。」
「……うん」

ゴクリとつばを飲むオリーブさんに、ハルマサは厳かに言った。

「今さらだけどすごく……不安になってきたよ……それじゃ、行ってきます!」
「ちょ」

キィと巨大門の脇にある通用門を開けると、瘴気というか濃い魔力というか、なにやら禍々しい風が

流れ込んでくる。

ゴクリ。こいつぁ危険が満載だぜぇ……!

≪ポケモンだと思われる魔力反応が無数にあります。ポケモンの準備はよろしいですか?≫
「あ、よくないよくない。」

袋からいつでもレンちゃんを出せるようにスタンバイする。
そしてラルトスはもう召喚して、頭の上に乗せた。

「ラルゥ!」

喜んでくれているようで何よりだ。
しかし、ラルトスの体重は6キロ。
気を抜くと首がもげる。
という訳で降りてもらった。

「ラルゥ……」

寂しそうだ。
く、心が痛む。
ここは首がもげるのを覚悟して乗せるか……!?
ラルトスを小脇に抱えて逡巡していると、オリーブさんが声をかけてきた。

「き、気をつけてね! 待ってるから! ずっと待ってるから!」
「う、うん。またね!」

こ、こいつは死ぬわけには行かないね!

何となく踏ん切りがついたので扉を潜り抜けた。
踏み出た途端、ゴファ、と黒い風がハルマサの体を通り抜ける。
全てのレベルが1になった気がしたけど、全然そんなことは無かった。
ハルマサのステータスは殆どレベル1みたいなものだし。

通用門の外には、心臓都市へと真っ直ぐに伸びる道路が延々と続いている。
この道の上に、顎都市やら喉都市やらがあるのだろう。
「鷹の目」スキルでも、全然次の都市は見えなかった。

幅20メートルはある太い道路が地平線まで延々と続いているだけである。そしてその両脇には森が

あるだけ。
オリーブさん曰く、都市南東の森に、虫ポケモンが居るらしいとのことなので、そちらに向かうこと

にした。
よし、と頷いてハルマサはモンスターボールを開いた。

「出でよレンちゃん!」
「ギィイイ!」

ずおぉおおおおおおおん、と出現したレンちゃんに乗って、ハルマサは右の森へと入っていくのだっ

た。





木々をなぎ倒して進むレンちゃんの背中で、ハルマサはポケモンを探していた。
レンちゃんの高さまである木は無いため、上に乗っていると探しやすい。
レベル10で2回目の進化をするポケモンは、キャタピーとかケムッソとか、いもむしみたいなポケ

モンである。
ハルマサは探すことに集中していたため、そのポケモンに気付くのが遅れた。

「ラル……!」
「……ん?」

ラルトスがハルマサのタキシードの袖を引く。
振り向くとラルトスは少し震えていた。
指人形みたいに指の無い小さな手で、上を必死に指している。

「上?」

見上げた先には、緑色のポケモンが居た。
大きさは1.5メートル、人型で、両手が鎌のようになっている、蟷螂のポケモンだった。
腕組みしているかのように、鎌を体に巻きつけて、背中の羽を震わせて静止している。

(ストライク……?)

ポケモンと目が合った。

「貴様がその方らの将か。」
「ええっ!?」

喋っただと!? しかも意外と渋い!
いや、口があるんだし喋ってもおかしくはないのかな……?
ハルマサがうーん、と唸っているとストライクが口を開く。

「ここは我らの領域だ。これ以上進むと言うならば、私は貴様を討たねばならん。生きたいならば、

去れ、人間よ。」

そう言って、冷ややかに睨んでくる。

≪「観察眼」での情報取得に失敗しました! 魔力反応からの推定レベルは、およそ33です!≫
(……ミラボレアスといっしょ?)

あのミラボレアスだって、強化されていたって言うのに。

≪勝率は限りなく低いです。交戦は控えたほうが宜しいかと≫

ですよね。いや、できるならそうしたいけど。

第三層の入り口近くに居たレベル28のラオシャンロンと言い、入り口近くに強い奴を配置するのは

心を折るためなのだろうか。
しかし、諦めるのはまだ早い。
言葉が通じるのは大きいぞ!
交渉が出来るじゃないか!

「あの、別に荒らすつもりは無いんですけど、イモムシ型のポケモンを仲間にしたいなって」
「森の若者を連れて行くだと……!?」

ストライクから強大なプレッシャーが膨れ上がる。

「森の未来を担うものたちを、貴様ごときが連れ出すだと!?」

あ、やばい、怒らせた! これは気付いたら死んでいるパターンか!?
いや、言葉でこちらに害意がないことを伝えるんだ!
キーワードは、「若者」と「頑固な大人」だ!
なんかいけそうだ!
この時ハルマサの灰色の脳みそがフィーン! と高速回転し、活路を見つけ出した。

ハルマサは慌しく手を振りつつ、弁解する。

「き、きっと外の世界に出てみたいって言う子も居るはずだ! 一人くらい居るでしょ!?」
「……………」
「い、いるんだね!? その子に外の世界を見せてあげるだけさ!」
「何故、貴様は我らの子を欲しがるのだ」

あ、やべ。考えてなかった。

「む、虫ポケモンが好きだから、一緒に冒険したいのさ!!!!!!」
「………」

一息に言い切ったハルマサは、ストライクにじー、と見つめられる。

じーーーーーーー、と見つめられる。

じぃ~~~~~~~~、と……。

(長い……! 長いよストライクさん!)

たっぷり数分は見据えてから、ストライクはふむと頷いた。

「貴様の言うことにはウソの臭いがするが、子らを大事にしそうではある。その幼き者にも好かれて

居るようだしな」

ばれてたぜ! でも何とかなりそうなヨカーン!
そういえばラルトスがさっきから背中に隠れているんだったぜ!

「良かろう! 確か、蝶の子に外に出たいと申すものが居た。だが……」
「だ、だが!?」
「貴様の力を見ないことには安心して預けられぬ……抜け、人間よ!」
「は、はい?」

両の手をこすり合わせて硬質な音を立てるストライクに、ハルマサはうろたえる。
なにを抜けばいいんだろう……。血? 献血しろだなんて、社会的なポケモンだなぁ。
……いや、冗談だよ。ちゃんと分かってるよ! でも敵うわけないよねぇええええええええ!?

≪マスター早く構えて!≫
(言われずとも! くそう見せてやるぜ! 迅竜から取得した僕の刃を!)

―――――「刃を持つ腕」、発現!

ブッチィイイイッ!

(痛ぁああああ!?)

ハルマサの肌を突き破り、黒い刃が腕から飛び出してくる。
久しぶりにやるとメチャクチャ痛いなこれ……。
ビタビタ零れる血に、後ろのラルトスがドン引きしている気配がするぜぇ……!

「ほぅ。」

ストライクは喜んでいる。
ちょっとは気圧されて欲しかった!

「ラル! ラルゥ!」

ラルトスが、傷口を押さえようと近づいてくるのを尻でガードする。
血を止めてくれようとしてくれてるんだね。ありがとう。
ありがたいけど、危ないから後ろに下がっててね。後ろって言ってもレンちゃんの上だけど。

「ギィ……!」
「レンちゃんも動いちゃダメだよ! これは僕の戦いなんだ!」

レンちゃんの声を振り切って、ハルマサは殻を蹴って飛び上がる。

「うぉおおおおおおおおッ!」

「空中着地」でストライクへと、走っていく。
彼我の距離はたったの10歩!
二歩、三歩と走る内に、ハルマサの体が赤い光に包まれる。「突撃術」が発動しており、そのスピー

ドはただの人間には出せない領域に到達する。

コォオオオオ! と赤い筋を引いて走るハルマサは、ストライクが鎌を振り上げるのを見た。

「その意気や良し! だが、遅すぎる! 消えうせろッ!」

空気を引き裂いて振り下ろされる刃がハルマサに到達する瞬間、ハルマサは切り札を発動した。

(見よ、これが―――――――「電流の体躯」だぁあああああああああ!)

概念が発現し、バチィ!とハルマサの体が電光へと変換される。

「電流の体躯」は魔力も要らないし、持久力も要らないし、速さが~倍される、ではなく「光速で動

ける」体となる概念である。元々がどれだけ貧弱だろうと問題ない!

ハルマサがすり抜けた後に、残っていたタキシードを切り裂いたストライクの背後へと、ハルマサは

回り込む。
そして緑色の首筋に、電流の手刀を突きつけた。

『これでどうだ!』

ハルマサが空気を震わせない声で叫ぶ。テレパシーかなんかで伝わるといいな、と思いながら。

「ふっ。驚いたぞ。空蝉の術とは中々やるではないか」

―――――ィンッ!

ストライクは笑ったかと思うと、次の瞬間には消えていた。
瞬間的にトップスピードに移ったというのか!?

「空間把握」によって把握した位置は、ハルマサの真後ろである。
「回避眼」がハルマサの胸を輪切りにする攻撃を予知させる。そこにはハルマサの核がある。正確に

この体の弱点を見切られていた。

『くッ……!』

――――――シュボッ!

空気を発火させるような鎌が振り始められる前に、ハルマサは体を沈める。
それでギリギリだった。

(こんどはコッチだ!)

だが、振り向き様に放った雷光の速度の後ろ回し蹴りは、浮かび上がって避けられる。
ハルマサはそこからさらに動いた。
コマのように体を回してストライクの頭上から蹴りを落とし、それを後ろに避けたストライクに、最

後の一撃を食らわせる。

『だぁああああああッ!』

バチィイイイ!!!!!!!

「ぬ……!?」

ハルマサの手が3倍ほどに伸び、ストライクの腹を叩いていた。イメージによって留められている「

電流の体躯」だからこそ出来る攻撃である。
「野獣の骨格」という、腕の伸びる概念を経験しておいたのがこんなところで役にたった。

だが、ストライクにダメージはない。
もともと静電気くらいしか感じないだろうと予想されるし、それ以前にストライクの腹の前に透明な

障壁が出現しているようだった。ポケモンに危害を与えられないというのは、電気人間であっても適

用されるらしい。
だが、反撃は来なかった。逃げようとして、ハルマサは動きを止める。

『……あれ?』

ストライクは手を組んだまま目を細めていたが、ニヤリと口を吊り上げた。

「よかろう、見事だ人間! 貴殿を我が森の子を預けるに相応しいと認めようッ!」
『お、おお?』

どうやらやったらしい。
よっしゃあ、とガッツポーズをしつつ、ハルマサのポケモンたちを振り返ると、ラルトスは手で目を

覆っており、レンちゃんは覆っているようにみせて鋏のあいだからしっかりと見ているようだった。

甲殻が赤いからバレバレである。
そうか、そう言えば全裸だ。
ハルマサは、慌てて切り裂かれたタキシードを拾いに行くのだった。




<つづく>





<171>




【第四層 右足都市】


女性三人は未だに喫茶店でくつろいでいた。
パロちゃんは、アオイの頭の上で昼寝しており、歯軋りしながらうなされている。
ハチエは、ふと聞いてみた。

「マリー、あんた金貨いくら持ってるん?」
「ふふん、聞いて驚くと良いわ」

そう言ってマリーは収納袋らしきものを開く。

「ええとね、ひぃ、ふぅ、……」
「数えてへんのんかい」
「たくさんあるから面倒だわ……」

マリーはそう言いつつも、どんどんと数えていく。

「にひゃくにじゅうに、にゃくにじゅうさん……ハチエ、数えたい?」
「なんでやねん」

200枚を超えたくらいで数えるのが面倒になってきたようだった。まぁ分からないでもないので、ハチエが半分ほど受け取って数えるのを手伝ってやっていると、アオイが言葉を発した。

『……二人はもうレベルアップに神金貨を使ったか?』
「いや、ウチはまだや」
「私も来たばかりだもの」

『間に合ったか』とアオイはつぶやいてコーヒーを口に運ぶ。
頭が少しも揺れない当たり、洗練されている。
アオイ曰く、このような動作でも淑女ポイントは溜まるらしい。
使う時はゴソッとなくなるから常日頃から溜めておくのが肝心だとか。
それはさておき、アオイはカップを静かに置いて、視線を向けてくる。

『実はな、金を稼ぐ必要は無いのだよ』
「なんで? 神金貨ないとレベルアップできへんやん」
『ビックリ箱はダンジョンのシステムだ。言うことは基本的に間違っていないが、大体言っていない

ことがあると見るべきだ。このダンジョンのいやらしさはもう身に染みているだろう?』
「……ということはどういうことになるのかしら?」

マリーが収納袋を仕舞いつつ尋ねる。

『ポケモンのレベルアップは普通の魔物と変わらない。ただ、金貨でもレベルがあがる、というだけ

だ。あとはおまけで毛並みが良くなったりする』
「……意味があるのかしら。経験地でレベルが上がるなんて、すぐに皆気付いてしまうと思うわ」
『金稼ぎに翻弄する様が見たいのではないか? 私もバイトをしようとしてしまったからな。断られた

が』

寂しい表情になるアオイさん。その強面も慣れれば案外いけるものだと、ハチエは思った。未だに睨

まれると怖いが。

「そやったら、神金貨いらへんやん」
『いや、そうでもない。モンスターボールを買うためには必要だし、何よりトレーナー関連の物品は

やたらと高い。ポケモンセンターを使うだけでも、神金貨が十枚単位で飛んでいくぞ。大金持ちにな

ったからと浮かれていたら直ぐに身動きが取れなくなってしまうだろう』

苦労させられた、という雰囲気を漂わせるアオイさん。

『だから、攻撃技を覚えるまでは金貨を使い、それ以後は大事に溜めておくのが賢い使い方だと私は

思う。ご丁寧に、技を一つも覚えていないレベル0のポケモンが支給されるようだからな。』
「アオイさん色々と考えてるんやなぁ」
「ハチエが全然考えて無いだけだわ。突進するしか能が無い可哀相なハチエ。」
「はっはっはー。脳みそ2gのマリーちゃんに言われたらしまいやな」
「ウフフ。いったい何処のマリーちゃんかしら。」
『もう少し仲良くしないか? な?』

アオイが仲裁に入り、さらに丁度良く料理が運ばれてきたので、二人は黙った。
それにしても、ハルマサ大丈夫かなぁ、とハチエは窓の外を眺める。
お金がなくてヒィヒィ言っている弟の姿は、ありありと想像できるのだった。







【第四層 額都市南東の森】


ストライクが森を出たいポケモンを連れて現れたのは、もう日が暮れてからだった。

「さぁこの子だ。名前はアムールと言う。事情は話しておいたぞ」

キャタピーは緑色の芋虫ポケモンである。頭がハンドボールくらいある巨大な虫だ。目玉が野球ボー

ルくらいある。
レベルは2。

「ぴー!」
「よろしくね」
「そしてこの子はボイドと言う」
「!?」

ストライクは二匹目を繰り出してきた。こんどは球体を繋げたような芋虫型のポケモン、ビードルである。頭に角が付いており、全身が茶色。目は小さくつぶらである。

「ビー!」
「い……一匹じゃないの?」
「最近の子らは外の世界に興味津々でな」

遠い目をするストライク。聞きたかったのはそういうことじゃない。
一度に二匹も仲間になることは想定外である。しかし下手に断れば即座に死ねる。どうやって断ろうかと思案するハルマサに、しかしストライクは容赦はしなかった。

「さらにこの子はキュアという」
「!?」

ストライクがカマに乗せて差し出す三匹目はケムッソというこれまた芋虫型のポケモンである。
それを受け取りながらハルマサの思考は完全に逝った。

「ついでこの子が――」
「ま、まだ増えるの!?」
「まだまだいるぞ。お前の後ろを見てみろ」

揺れる頭を抑えつつ振り返ったハルマサの後ろには、木の梢にたわわに実る芋虫型のポケモンたち。キャタピーとビードルとケムッソしか居ないが、それぞれ何匹いるか数えるのが不可能な密集具合である。イメージで言えば葡萄だろうかと、ハルマサはぼんやりする頭で思った。
それらを一匹づつ指し示しながらストライクが名前を教えてくれる。

「あの木の天辺にいるのはディオラ、その下がイース、その左がフィム、その左がゴルム………」

途中からハルマサの頭には記憶されなかったが、サクラさんによると総勢128匹いたらしい。

「子らを頼んだぞ、人間よ」
「あ、あの……」
「では、さらばだ!」

ハルマサの出した手はむなしく空を切る。闇夜に飛び立ったストライクは、ものの数秒で見えなくなってしまったのだった。
残されたハルマサは、辺りでミューミューキューキューと鳴きまわる芋虫たちに囲まれて、呆然とするよりほかに無かった。










【第四層 額都市】

次の日。
どこにでも居そうな女子高生のオリーブは額都市の門のそばで、手持ちポケモンのサンドを撫でくすぐりつつ、ハルマサの帰りを待っていた。
角質化した表皮の隙間をなでられたサンドが身を捩ってゲゲゲと笑っている。
燦燦ときらめく日光の下、開け放たれた門からは、通商隊が出て行こうとしている。
大型の四足獣、ケンタロスに引かれた馬車が、石畳の上をゴトゴトと動いていく。
それを傍目に、オリーブはハルマサを心配していた。
どうしてここまで気になるかはよく分からない。恋愛感情ではないだろう。しかし、放っておけない危なっかしさがある少年なのだ。
もやもやとした気持ちを抱えつつため息を吐くオリーブの視界の中、通商隊の面々がやおら騒ぎ始めた。
うわぁ、とか、うひぃ、とか騒ぎ立てる男どもにオリーブは眉を顰めつつ、その方向を見た。どうやら、騒動の元は外からやってきたらしい。
見ていると、門の途中で固まっている通商隊の横をすり抜けるようにして一人の男が顔を出した。

「ハルマサ!」

彼女が待ち望んでいた男である。彼女はサンドを拾って駆け寄っていく。

「あ。オリーブさん。元気だった」
「それは私のセリフだけど……うわぁ……」

ハルマサはどうやら傷ひとつ無いようで、一先ず落ち着いたオリーブが周りの状況を認めて思わず吐いた言葉「うわぁ」。
それは、この場に存在する全ての人の言葉なのかもしれなかった。

ハルマサの姿は普通(?)のタキシードだったが、彼のつれているポケモンは普通ではなかったのだ。姿が、ではなく数が。
ハルマサの肩越しに見えた光景は、彼の足元から門の外へとずらっと連なる芋虫ロードである。乗った途端に潰れて体液が靴とズボンに跳び散りそうなフワフワの芋虫ポケモンたちが粛々とハルマサに這い寄ってきているのだった。
彼女の様子に気づいたのか、ハルマサは困ったように笑う。

「まぁ……色々あって、虫ポケモンをゲットしたんだ。128匹」
「そ、そう……よかったね」

いったい何があったのか、予想もできないオリーブだった。













<謝罪>



もう書くの止めます。すいません。
この後の予定では、蛹化したポケモンを「かたくなる」させてから投擲スキルで投げつける外道ハルマサが光臨したり、羽化した大量のポケモンによる状態異常攻撃で強敵を蹂躙したりする予定でしたが、今の状態で書いてもつまらないものしか出来ないのでお目汚しになる前に打ち切らせていただきます。
楽しみにしていてくれた方、本当に申し訳ありません。
ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました。読者の皆さんの感想が無ければ、多分夏の間に終わってました。お褒めいただいた言葉は忘れることが出来ません。




感想返しで少し触れましたが、この作品を書こうと思ったきっかけは、「失われた青春を取り戻しに行くマダオの話し」の中でダンジョン物が増えてほしいと書かれていたからです。
そして、ダンジョン物を書くに当たって脳裏に浮かんだのが、SAOでした。私はあの作品を読む前にWEBで連載されていたと言う情報から、このように思いました。「一層一層クリアしていって74階層で終わったのか。いったいどれほどの長編物なのだろう。一層ごとに少しづつ成長していく主人公。一層ごとにイベントがあり、ボス戦があり、出会いの喜びや別れの苦しみがあるのだろう。そして全体を見たときに壮大な話が完成しているに違いない。」読む前から、ワクワクがとまりませんでした。しかし、読んでみれば実際は最初っから74階層。
そりゃそうだよね、と思いつつ私は思いました。

「一階層からクリアしていく壮大な話を書こう」と。

まぁ結局無理だったわけですが。
敗因は色々ありますが、主人公が簡単に超人になってしまったことが問題だったのかもしれません。
もっと苦しみ、痛みを負って精神から強くなっていく、そんな姿を書くべきだったのでしょう。書けるかどうかは別にして。
ネタに走りすぎて全体が見えていなかったと言うのもありますし、そもそも明確なテーマもプロットも無く、見切り発車だったという罠。そりゃ無理だ。現代とか混ぜたせいで訳のわからないことになったし。
ともあれ、私には無理だったので、無責任ながら他の人にこの夢は託します。
読めるかどうかも分かりませんが、勝手ながら期待しております。

それでは、今まで読んでいただいて本当にありがとうございました。


2010/11 最終投稿



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