「じゃあ、空から、と言うことで。」
「そやな。でもラオシャン怖いから迂回してこな。」
陸海がダメなら空しかない!
という訳で、飛んでいくことでFAである。
その方法。
ハルマサが、ハチエを引っ張って飛ぶのもありだが、今のハルマサには頼れる武器がある。
「いでよッ! ソウルオブキャ――――――ット!」
「テンション高いなァ……。」
テンションは大事ですよハチエさん!
特にこのダンジョンでは!
「収納袋」から取り出したのは漆黒の大剣である。
魔力を通せばふわりと浮くそれは、魔力を燃料とした何らかの機構で飛ぶようだ。
≪引力と斥力のコントロールですね。飛ぶことに特化させたため、攻撃には用いれないようですが。≫
2号さんスゴイなァ……。
「おお、なんや物々しい剣やな。触ってもええ?」
「あ、いいよ。」
柄を握った瞬間、ハチエさんは叫んだ。
「おおお! 凄いなこれぇ!」
確かにその剣は凄いが、凄いのはハチエさんのほうだとハルマサは思った。
ビババッババババ! と台風のように振っている。
ハルマサより明らかに使いこなせていた。
「おろ? しかもこれ……空飛べるや――――ん!」
ヒュバ! とハチエは飛び立ち、空でクルクルと回り始める。
空中での停止、加速、さらには遠心力を利用した戦い方など、すぐに見つけて実践してしまっている。
物凄い順応性だった。
「……。僕の方がうまく使えるんだ……」
≪拗ねないで下さいマスター……。その内いい事ありますから。≫
サクラが慰めてくれたので、ハルマサはシャキッとすることにした。
「ほんじゃあ行こか。」
ハルマサがソウルオブキャットにハチエさんを乗せて移動する計画は、ハチエさんが僕を引っ張っていく計画に変わっていた。
それが一番速いからね。
スピード的には以下のような感じ。
「魔力放出」で飛ぶハルマサ < ソウルオブキャットで飛ぶハルマサ < 全力全快の「魔力放出」で飛ぶハルマサ ≦ ソウルオブキャットで飛ぶハチエさん
破れた皮膚から血液噴射しながら飛んでも勝てずに、おまけにドン引きされたハルマサは悔し涙を我慢する。
(悔しい! でも、これが一番なんだ!)
≪マスター……。顔が梅干をたくさん食べたみたいになっています……。≫
泣くのを我慢してるんだよぉ!
左手でソウルオブキャットを握ったハチエさんが刀身に横向きに座る。そしてハルマサは刀身の上に立ち上がっていた。
ハチエには出来ない、「風操作」をして風を避ける役である。これをすることでさらに速度は増すのだ。
二人による強力プレイ! モンハンらしくなってきたァ―――――!とハルマサはテンションが上がっている。
ハルマサたちの乗ったソウルオブキャットはラオシャンロンの反対側から海に飛び出し、そこから迂回して、大陸の東側へと向かっていく。
上空50メートルくらいでの、意外と心地よい飛行だった。
タキシードを着ているハルマサは、踵を揃えてしゃんと背を伸ばし、刀身の先端に立って後ろでに手を組んでいる。
――――これこそが紳士立ち!
美しく伸ばされた背筋が、全ての男性の憧れだとかそうでもないとか!
そんなことを思っているハルマサに、ハチエが声をかけてきた。
「なぁハルマサ。」
「? どうしたのハチエさん。」
「ウチのことお姉ちゃんって呼ばへん?」
――――なぜ。
「そして一気に親密さを増したハルマサに言うんやけどね?」
「は、はい。」
増してないですよね。
と思ったハルマサは次の言葉で固まった。
「正直、蝶ネクタイ全然似合うてへんで?」
「なん……ええ!?」
閻魔様が折角直してくれた蝶ネクタイが……!?
≪実は私もそう思っておりましたマスター≫
「ぇえ―――――――!?」
「ま、まぁそのチョウチョ外したら結構カッコええし、そんな落ち込まんでもええんちゃう?」
「い、いやでも、これは大切な……」
≪あの時、閻魔様もボソッと、「蝶ネクタイは正直無かったかもな」ってお言いになってました≫
「は、早く言ってよぉおおおおおおおおおおお!」
とんだピエロボーイだぜぇ――!
「おおっと! せまいんやから暴れたらあかんて、な?」
「ごめんなさい……」
もうこの海にマリアナ海溝より深く潜りたいよ!
そう思ったハルマサの心が通じたのだろうか。
彼らを引き摺り込む腕が海を割って現れた。
ドパァアアアアアアアアアン!
――――――――――――ギィイイイイイイイイイイ!
海中から伸びた巨大な鋏が、50メートルの距離を瞬時に縮め、ハルマサたちの乗っていたソウルオブキャットを前後にガキーンと挟み込んだのだ。
「うぉおお!?」
「わぁ……大きいカニやで。ウフフ。」
急停止する剣の上で慌てるハルマサだが、ハチエさんは混乱しすぎて慈しむ目をカニの鋏に向けている。
それに突っ込む余裕もない。
ハルマサは一瞬、第二層で会ったカニかと思った。だが違う。
この威圧! 殺意! 明らかに敵だッ!
水の底から出てきたのか!?
ハルマサは咄嗟に掌の上に雷を集め、回転させる。
バチバチバチッ!
「くらえぇえええええ、「雷球」ッ!」
メキャア!
雷球は鋏へと当たり、表面へとダメージを与えた。
だがそれだけだった。
強打した掌にジン、と痛みが残る。
「観察眼」で見れば、やはりレベルは26。サクラによれば平均ステータスは3億。
ハルマサでは、ダメージを与えることさえ出来ていない。
「ク……!」
「ダメや! 攻撃全然効かへんッ! ハルマサのハンマー折れてもうた!」
ハチエの手の中には、一発で砕けたハルマサ製のハンマーがある。短い命だったね……。
それにしても防御が硬すぎる……!
こうなれば―――――――できることは全部やってやる!
「……よぉぉぉし!」
ば、とハルマサは空中に躍り出る。
「ハチエさん! 後よろしく!」
「ちょ、なにするん!?」
―――――――「黄金の煌毛(コウモウ)」発現ッ!
バチィ! と耳元ではじける雷光を聞きつつ、ハルマサはスーパーハルマサになった。(色的に)
そして両手を伸ばし肘あたりに鉄塊を生成。
電力を……プラズマ化するほどの電流を!
「レェエエエエエエエエルガンッ!」
――――――――キュボッ!
軽い音で、今度はちゃんと前方向に打ち出された塊はカニの鋏に直撃する。
一発じゃ足りない! 二発! 三発!
「―――――ッ!」
ドゴッ! ドゴォッ!
予想以上の衝撃だったからだろうか。
挟み込み、海へと引き込む力が弱った!(らいいなとハルマサは思った)
ハルマサは、ココに全てをかけると以下の三つを発動させる。
――――――――「濃赤の沸血」発現! 「剛力」発動ッ!――――――特技―――「加速」ッ!
ゴォオ、と周りが遅くなる。膨れ上がった筋肉を、熱い血潮で赤く染め。
≪長くもちません。10秒以内に決めてください。≫
「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
空を蹴りつけ、ハルマサは後ろへと下がる。一瞬で数十メートルの後退。
そして跳ね返るように前へ。
「空中着地」で、ギと空を踏み――速度を上げ――――――ギシ、と踏んで―――さらに倍速ッ!
10秒?
そんなにいらない! 欲しいのは渾身の力をこめた一撃! いや二撃ッ!
「突撃術」が発動し、ハルマサの体が赤く染まる。
腰にひきつけた腕に力が溜まる。
その最中、ハルマサはじっと見ていた。「解体術」で見えた黒い点、針の穴ほどの弱点を。
接触の瞬間、ハルマサが「空中着地」で作り出した足場に、空を揺るがす勢いで震脚を踏み込む。
―――――――――崩・拳ッ!
ゴォン! と巨大な鋏が揺れる。
硬すぎる甲殻にハルマサの右手が砕け、骨が潰れて血が飛んで。
痛みを感じる暇もなく、ハルマサは、送り足に力を込める。
体を小さく纏め、自分の血でマークした甲殻の弱点に左手を触れさせ。
―――ギシリギシリと力を縛る。暴れる全てを拳にこめる。
奥歯を噛み砕いた瞬間、特技が発動した。
「無、空波ぁああああああああッ!」
――――――――ドォン!
撃った瞬間、ちょっと硬すぎるよこれ、とハルマサは思った。
拳の耐久力が、敵の甲殻のそれに全然届いていない。
手は手首までぺちゃんこになり、深い亀裂がまるで陶器に入ったヒビのように腕を走り、一拍置いて血が噴出す。
肘、肩の関節が砕け、腱と筋が悲鳴を上げる。
「加速」「突撃術」「撹乱術」「空中着地」の急加速、急減速について来れなかったのか内臓が軋み、胃を吐き出したいほどの吐き気とともに、口の中に血が滲む。
頭は痛いし、鼻血も出てるし、もう何が何だか分からない。
――――でも効果はあった。
「ギイィイイイイイイイイイッ!」
彼の放った全力の二連撃は、カニの甲殻にヒビを作り、その鋏を開かせたのだ。
ハチエが一瞬の隙を逃さず、ソウルオブキャットを拘束から救い出す。
蟹の足を蹴って、ハルマサに手を伸ばし――――
「―――――――――ハルマサッ!」
その声を聞くか聞かないかするうちに、ハルマサは気絶していた。
<つづく>
これだけ色々やっても、ほとんどかすり傷っていう。
敵の装甲8億だし。
だが、レベル8つ上に挑んだのは無駄ではない!
という訳でスキルアップ祭り。
満腹度: 799441 → 4966483(496万)
耐久力: 920597 → 3140635(314万)
持久力: 798217 → 4965259(496万)
魔力 : 1158028 → 14943283(1494万)
筋力 : 1186530 → 22029855(2202万)
敏捷 : 1127386 → 22136311(2213万) ……★33204467(3320万)装備品により1.5倍。
器用さ: 1279876 → 27571986(2757万)
精神力: 786652 → 10894924(1089万)
○スキル(上昇値が高い順)
拳闘術 Lv21 : 189230 → 11289421(1128万) ……Level up!
戦術思考Lv20 : 158273 → 10127492(1012万) ……Level up!
雷操作 Lv20 : 130293 → 9871112(987万) ……Level up!
空中着地Lv20 : 103426 → 8274821(827万) ……Level up!
魔力放出Lv20 : 290784 → 8117245(811万) ……Level up!
剛力術 Lv20 : 130223 → 7011942(701万) ……Level up!
解体術 Lv20 : 30671 → 6782911(678万) ……Level up!
魔力圧縮Lv20 : 277983 → 6097724(609万) ……Level up!
撹乱術 Lv20 : 182938 → 5992011(599万) ……Level up!
突撃術 Lv20 : 168293 → 5891123(589万) ……Level up!
風操作 Lv20 : 239211 → 5902234(590万) ……Level up!
身体制御Lv19 : 92273 → 4228301(422万) ……Level up!
的中術 Lv19 : 87309 → 4082993(408万) ……Level up!
撤退術 Lv19 : 123984 → 4017992(401万) ……Level up!
鷹の目 Lv17 : 50021 → 827123(82万) ……Level up!
神降ろしLv15 : 48339 → 187392(18万) ……Level up!
<あとがき>
お久しぶりです。(4日ぶりでしょうか。)
MtG使いじゃなくて、ただのパンプアップ少女になったハチエさんの登場です。
カロンちゃん祭りは始まりかけて終わりました。申し訳ない。
明日も更新!
ハチエのシステムは最初ちょっとMtGで書いていたんですけど、書きにくいし書いてて面白くないしで却下にしました。
面白そうだと思っていただいていた方には申し訳ないです。
で、新しいシステムは118くらいまで書きましたがいい感じです。
色々意見ありがとうございました。携帯で見ながら、かなり参考にさせていただきました。
>次に戻ってこれるのはいつに成るのか。
まじでいつになるんでしょうか……
>母ちゃんがいいキャラしてますなあ……。
ウルトラ書きやすい母ちゃんです。
>イチャラブならぬカタラブ……ありですね
ギャグ的にもうこっちに行こうかと何度思ったことか。
>さあ、次は「ポケモンゲットだぜー!」
忘れとった。なに捕まえようかな。
>あと必要なパーティーメンバーはウィルオウィスプとデーモン辺りか
神卸しよりは天罰よりですね。
>骸骨相手に告白するハルマサ君マジ男前。いやもうそこらへんの普通の主人公には出来ませんよ。そこに痺れる憧れる。
彼はまぁ色々と普通じゃないですからね。頭の構造はハッピーな感じですし。
>ポケモン出るなら美人系出してほしいな、サーナイトとかミロカロスとか
そして舐められたり食べられたりしちゃと。エロイ。
>どれくらいの甘さになるのか楽しみです!
なんかすいません。甘いって何だろう。
>3話での主人公は筋力3だったのに(ノ∀`)
そういえばそうでした。笑っちゃうほど強くなってますね。
>カロンちゃんはもう落ちたねコレは。
落ちましたかね。
>母がかわいいなあ。
こんな母ちゃんいねえよと思いつつ書いてます。
>カードがマジック・ザ・ギャザリングである事に不安が拭えないです。ステータスとか違いもありわかりにくいですし。いまさらだけど遊戯王の方がよかったんじゃないかと思いました。
ステータスの調整は、かなり苦労します。強すぎもせず、弱過ぎもせずが理想です。それだけのために4日かかりましたからね。遊戯王じゃないけど竜騎士はその内登場しますよ。
>母の愛に感服。 弁当毎日作ってるんだろうけど食材のストックは余ったらどうしてたんだろう
捨てるしかありません。その辺あえて書いてませんでした。食材を大事にしろと怒られてしまう!
>ヨドミさん(♀)きた!!!
メスとは限らないんだぜ。ていうか出すとも限らないんで肩透かしになっちゃう可能性が。
>つまり後半に行けばエムラクールとか甲鱗様とかの召喚もできるかもしれないということか
むしろエラクムールはこのダンジョンのラスボスにしたい。あの強さはおかしいですよね。あのカードには「飛行」いらないんじゃないかと思うんですけど。
>姉系素直クールとか俺得すぎる。
気に入ってもらえたようで何よりです。
>…サーナイト ラプラス ハクリュー ミロカロス が擬人化して、ヒロイン化しないかry
擬人化……いい案ないかなぁ。
>プロ野球選手カードに吹いた。
しかし私は別にプロ野球に詳しくないという。何かを根っこから間違えている設定でした。
>そしてついにカロンちゃん出たか・・・そもそも性別あるのか?へたしたらエヴァのカオル君的な存在だったら・・・
BLは、ネタならいける!
>・俺は人間をやめるぞ――――! このネタがないのが不思議だった。
もっと早く言ってくれたら………! でも武美ちゃんが、ハルマサに対して『ズギューン!』お前の唇なんたらかんたらぁ!(うろ覚え)はしてくれました。何言いたいのか全然わからんと思いますけど。
>ギャザってわかりにくいよね!!
まさに、そうでした。
>絶対に設定を生かし切れないに900000リュピコ。
そもそも話をかけないに15諭吉。
>ICHIRO-召喚でハチエ無双ですね?わかります^^
考えてなかった。そういえば彼はビーム放てるんでしたね。
>Nice boat
ボートの描写は難しくて……
あ、ちゃんとわかってますよ! ほんとだよ!
>閻魔様、制限かけるなら他も(特に敏捷)下げようぜw
敏捷のこと全然考えてなかった……。
>まさかソウルオブキャットが13kmも伸びるなんて
セレーンの骨を合体させればいけますね。
>卍解、バリアジャケット、先端からビーム、乗って飛べるようにする
マジで適当に考えたんで他にもっと使えるのがあったんじゃないかと考え中。
>4号はでれるときにデレーって言うんですか
言ったらキモイなぁ……
>6版ウルザブロックのころ黒ウィニーで遊んでたな
作者も最近遊んでないです。カードすら持ってねぇ……
>母に桃色解除スプレーは使う必要はないのだろうかw
使ったけど効果ない感じで。
>深夜0時の段階で魔物を倒すカードが手札、山札に存在しない場合は詰む?
ハチエがレベルアップするしかなくなるという設定でした。
>デスペナで髪が…とかは負けたらってこと?
どの辺ですか? ちょっと自分の書いたなのにすら把握できてないです。
4層の人のルールのことでしたら、それなりの秘密が。
>ゾンビ化解除の薬はもらえるならもらっとくべきだと思うんだ、ハルマサ君。
ハルマサ君は頭があれなのでそこまで思考が回りませんでした。
>「堅硬なる骨」の耐久力上昇値も変更したほうがいいのでは?既に上昇値(+15000)が空気だし。
確かに。新たに強い骨概念得たらそうします。
>強さが通常時の25倍はチート過ぎるけど、ヨシツネ具象化があったかもしれない。
そんなんでしたっけ。あの漫画もうそろそろ最初のへん忘れてるんですよね。
>剣 さん
色々とありがとうございます。
コンセプトは、事前準備して数で圧倒。だったんですけど、それを書くのだるかったんで。
>たとえば、ハルマサがハチエをおぶって、走って移動すると、
第三層めちゃめちゃ広くしたんでありでしたね。
>さあ!、モンスターボールを手に入れたからには2層のシェンを仲間にして、3層でラオを仲間にして怪獣大行進
4層消滅のお知らせが! でもゲットできるならさせたいな。
>板移動はしないのですか?
こんなんでもいいんでしょうか。
じゃあ第三層が終わったら2レス目をその他板へあげましょうかね。
>もはやレベルが-になってひいひい言ってたのが嘘みたいだw
ほんとにそうですよね。
でもそろそろ新しい要素を加えないと書くのがだれてきます。まずは協力プレイですかね。
>設定がキャラによって完全に変わるのは厳しくないかい?作者的にも読者的にも
asadaさんは慧眼ですね。バレテーラって思いました。
>敏捷MAXな主人公が、現世での危険度=災害レベルな件についてw
韋駄天もついてこれそうにないですね。
本気出したら今どれくらいなんだろう。
>火力1点で90%ってデカ過ぎません?ショック一発で相手死にかけですよ?
一点タフネスが上がると強さが10倍になる敵に対処するにはこんなんでいいかな、と。
>つーかハチェだいじょぶ?彼女の設定はめんどくさすぎて話をスムーズに造れなくなるんじゃないか?
心配していただいてありがたいです。ものすごい勢いで方向転換したので大丈夫かと。