間があき過ぎたので、第三層の軽いあらすじ。
砂漠を越え、モンスター(体長12メートルのゴリラと40メートルの巨大蟹)をゲットし、火山を制覇して、順調に第三回層を攻略していたハルマサとハチエだったが、中ボス(二匹目)を蹴散らそうとしたところで、最大の敵に出会った。
気味の悪い少女とゾンビ男である。
その敵に戦う前からビビッたハルマサは、最後っ屁とばかりに奇襲で頭を蹴り飛ばしてさっさと逃げ出し、スタート地点に向かって飛んでいるのだった。
スタート地点に居る敵をボコってレベルアップ! そして力をつけて、リベンジマッチ! と言うところである。
場所説明
ハルマサたちが向かっているスタート地点と言うのは、この階層に来た時に強制的に引き摺り下ろされる、三方を壁に囲まれた正方形状の場所である。
角の丸い矢尻型をしている第三階層の大陸の先端に、おまけのように引っ付いた島という位置取り。
三方の壁は天辺が歪んで見えるほど高く切り立っており、乗り越えても向こう側は海である。壁がない方向には、左右が崖になった道がついており、大陸との連絡通路となっていた。
そしてその連絡通路に、第二層のボスよりレベルが9も高い(=2の9乗強い)、レベル28の巨大な龍が行く手を遮るように寝そべっている。(現在はモンスター全体が強化されるイベントが発生したためレベル29)
ハルマサたちの狙いは、この龍、ラオシャンロンというモンスターである。
<141>
空を高速で一本の剣が飛んでいく。その上に乗った二人はテンション高めに叫んでいた。
「もっともっとやぁああああああ!」
「光に、なぁれぇええええええええええええええええええええええええ!」
シュバアアアアアアアア!と過剰に込められた魔力を溢れさせつつ、二人の乗った大剣・ソウルオブキャットは空を切り裂くように飛んでいく。
行きに二日かけた道のりも、全力で空を飛んだら数時間である。
軽く600kmくらいあったが、超人と化したハルマサたちがその程度の距離でへばるはずも無い。
スタート地点に帰ってきたのは日が暮れる前だった。
「―――――――居たッ!」
2日前と変わらずラオシャンロン亜種はスタート地点の出口に陣取っていた。
空を飛ぶ小さな人間に気付いたのか、ごおぉ、と風を巻きつつ巨体を起こす。
―――――――――キォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!
こちらに向き、咆哮するラオシャンロン亜種に、ハチエさんは耳を抑えつつソウルオブキャットで近づいていく。
「ハルマサ、このまま突撃するで!」
「望むところ!」
立ち上がれば高層ビルすら余裕で凌駕するラオシャンロンの巨体は、上空から見下ろしてやっとその全容が分かる。
力強く長い尻尾。
大きな顎。
長い首。
羽は生えていないが、広く長い背中にはゴツゴツとトゲがあり――――――――そのトゲが眩く輝きだした。
それを見ていたハルマサに悪寒がする。
ああ、遠距離攻撃ないとか思ってごめんなさい。このダンジョンでは何でもありだった―――――
「あれやな…ゴジラが光線吐く時の前フリみたいや」
ゴォ!
ハチエが言った直後に、巨龍の口から、天を穿つ巨大な火柱が放たれる。
当然狙いは空を飛んでいる小バエのようなハルマサたちである。
「熱いけどッ!」
しかしまぁ、ハルマサたちにとって見ればそんな遠くから撃たれたら、テレフォンパンチならぬテレフォンビームに他ならない。
いくらビームの太さがビルくらいあるとしても、避けるのは比較的簡単だった。
その次の攻撃がなければ。
「―――――――!」
ハルマサの「心眼」スキル(=危険察知)に大きな反応があり、ハルマサは「魔力放出」でソウルオブキャットの進む方向を無理矢理変更する。
カクンと直角に真下へ落ちた直後、水の奔流が頭上を通り過ぎていった。
「水……!?」
「カニか!」
スタート地点を囲んでいる海に、合計4体の巨大なカニ、シェンガオレンが顔を出していた。
そしてそのうちの3体は背中を向けており、背中に背負った龍の顔(骨)には濃密な魔力が凝縮していた。
(これが高い場所を飛んだ時に襲ってくる障害だったのか!)
ハルマサたちがあえて避けていた、ラオシャンロンを大きく飛び越えていく作戦。
イヤな予感がしたからなのだが、やはりシャレにならない障害が用意されていたようだ。レベルが低い時に受けたら普通に死んでいただろう。
「や、やばいんちゃう!?」
ハチエの言葉を補足するように、「回避眼」の攻撃予知線は広範囲というか空いっぱいに広がり、カニの背から放たれる魔力弾を避けることは難しいことを示している。
しかし―――ハルマサにはこんな時の秘策があった。
ハルマサが袋より取り出したるは赤と白で塗り分けられたモンスターボール。そこに封じられているのは、魔法反射毛を持つモンスター。
「いでよ白ヒゲぇええええええええええ!」
「グル……ォオオオオオオオオオ!?」
登場した白ヒゲは勢い良く咆哮しようとしたが体長12メートルはある白ヒゲでは、長さが二メートルちょいしかないソウルオブキャットの上に乗るのは無理がある。
高速移動中に呼び出されたせいで、あっと言う間に置き去りにされて、空を飛ぶ術を持たない白ヒゲはただ地面へと落ちるだけである。
「オオオオオオオォォォォォ………!」
「し、白ヒゲぇえええええええええええ!」
「また嫌われそうやね……」
ふ、好感度はこれ以上下がらないよ! 何しろ既に最低だからね!
とは言え、この状況をどうしよう。白ヒゲを回収している時間は………!
そう思っているとハチエさんが不敵に笑う。
「ついに、コイツを使うときが来てしまったみたいやね……」
彼女は懐から三枚のカードを取り出した。それらは全て同じ名前。
その名も……
「割り箸や―――――!」
ハチエは高々と掲げたそれを具現化する。
何の変哲もない割り箸が三本飛び出し、三方向から飛んでくる半径500メートルくらいの大きすぎる魔力砲に、ハチエはそれを一本ずつ掲げる。
一応は説明に「どんな衝撃も一回だけ吸収する」と書いてあるアイテムだったが、大陸を削り取るような攻撃にも有効なのかハルマサは甚だ不安だった。
(だ、大丈夫かなぁ……)
「割り箸バリア―――――――ッ!」
大丈夫でした。超余裕でした。
割り箸に触れた瞬間、魔力弾はピタリと静止し、そして拡散したのだ。
魔力弾の勢いを全て吸い取った箸は折れ、焦げて二度と使えないものになった。
「……ハッ! ほうけている場合じゃなかった! この間に!」
ハルマサはソウルオブキャットを地面に急降下させる。
「もう、白ヒゲは頼りにならない……ここはレンちゃん! 僕らの最高の連携でカニどもを倒すよ!」
―――――――――ギィイイイイイイイイイイ!
空中でモンスターボールからシェンガオレンのレンちゃんを召喚する。
左のハサミは完全に回復しているようだ。
「ヤドがまだ直ってないけど……レンちゃんならやれる!」
―――――――ギィ!
レンちゃんは勇ましく咆えると、完全復活してちょっとおかしいくらい太くなった左のハサミを振り回しながら空中で水を噴射し、4匹いる内の一番左へと凄まじい速度で向かっていく。
同種だろうがなんだろうが、彼女には関係が無いようで何よりだ。
頼りになるぜ!
「ウチはラオシャンロンやな!?」
「うん! お願い!」
ハルマサはソウルオブキャットをハチエに預け、シェンガオレンの方へと魔力全開で飛び出した。
「いっけぇええええええええええええッ!」
――――――――ドォン!
ハチエは下に落ちる勢いのまま、ラオシャンロンの頭に突っ込んだ。
ゴィン、と巨大な頭を吹き飛ばし、反動で距離を取る。
ソウルオブキャットが良い感じに鱗を抉ったようだが、顔を引き戻したラオシャンロンには目立った傷も無い。
やっぱり硬い、とハチエは唇を舐める。硬いなら、切るより叩くほうが良いだろう。
―――――――――ゴォアアアアアッ!
ラオシャンロンは怒り、噛み付いてくる。
ハチエは正面切って迎え撃った。
ソウルオブキャットを蹴って跳躍し、巨大なトンカチを具現化させる。
アカムトルムの牙を壊して手に入れた、「たけのこハンマー」だ。
この時、ハチエさんの筋力は92億。
たけのこハンマーの耐久値は52億。
そして敵の装甲は40億。
「せぇえええええええええい!」
その一撃は、ラオシャンロンの超絶な反応が無ければ一気に顔を抉り取っていたかもしれない。
ラオシャンロンは勘が働いたのか、わざと体勢を崩すように足を広げ、首の軌道を変えたのだ。
ハチエの打撃は鱗をかするだけだったが―――――――それだけでラオシャンロンの頭を叩き落した。
反動で吹き飛びつつハチエは体勢を立て直し、上手く足から着地する。
ラオシャンロン亜種も、モンスター強化の影響でレベルがアップしているのだが、ハチエが規格外なのだ。
「レベル29やってなぁ! 色々壊させてもらうでぇ!」
ハチエはたけのこハンマーを握り締め、跳躍した。
ハルマサのシェンガオレンはレベルが26のままである。
モンスター強化によってパワーアップしているシェンガオレンを相手どれば苦戦する、とハルマサは思ったが、全然そんなことは無かった。
砲撃を撃った後の硬直を狙って一気に飛び掛り、その逞しい左手で敵の頭を強打! 強打! 強打! 強打!
―――――ギィイイ!
ハメ状態である。
シェンガオレンの身体構造的に頭上がもろに死角で、加えて手も届かない場所になっているので、そこに取り付いて滅多打ちであった。
もうライフが無いんじゃないかって言うくらいになっても殴り続けて、機先を制したまま最後までボッコボコにしてのフィニッシュ。
あまりの益荒男ぶりにハルマサは大興奮である。
「すごいや! レンちゃんカッコイイ!」
―――――ギィ!
レンちゃんは嬉しそうに鳴きつつ、背中の壊れたヤドをポイと捨て、代わりのヤドを敵から剥ぎ取って装着。
レンちゃん完全復活である。
そして今、倒した敵の経験値でレベルアップもしたらしい。
「最強のカニはレンちゃんに決定だぜぇ―――――――!」
――――――――ギィイイイイイイイイイイ!
ハルマサは援護が要らないことを確信し、自分もレベルアップするために一番離れたところに居た敵のシェンガオレンに突撃したのだった。
結果:レンちゃんが3体倒して一つレベルアップ。ハルマサが1体倒してレベルアップ。
「そして―――――これからお食事タイム!」
「相変わらずテンション高いねんな。まぁ分かるけど」
そう言うハチエさんはレベル29のラオシャンロン亜種を倒して一つレベルアップ。
いろんな部位を破壊して、大剣他、色々武器を手に入れたらしい。
防具は新しく靴が出たようだ。
「靴っていうか……まぁこれやねんけど」
ほれ、と見せてくれたカードは以下。
○「健康サンダル」(Lv22)耐久値:40億
ラオシャンロンの頬肉を使った履き心地抜群のサンダル。サンダルなので足は遅くなるが、足のツボを刺激するので、麻痺と眠りに50パーセントの耐性が出来る。
耐久力+200%、持久力+200%、魔力+200%、筋力+200%、敏捷-99%、器用さ+200%、精神力+1100%
サンダルだった。
つぼに当たるようイボが配置されている。
「なんも無い状態では絶対にはいたらあかんサンダルやねん。素早さが100分の1になってまう」
「すごいサンダルだね……耐久値も高いし」
「一応履くんやけど……。普通の靴が欲しいと思うのは贅沢やろうか……」
ハチエさんは贅沢なため息をついていた。
まぁまぁと宥めながらレンちゃんが倒したお陰で全然消えようとしないカニを丸々1体モリモリ食べているとファンファーレがなった。
≪マスター! 凄い概念出ました!≫
桃ちゃんがアバウトな報告をしてくる。
ステータスで見てみた。
□「巨蟹の重殻左腕砲・ネオ」
驚異的な密度の青い甲殻に包まれた左腕の強化版。ズシリと重く、扱いには相応の筋力を要する。発現時魔力を消費する。発現中、左腕耐久力を20倍し、全体的な敏捷がマイナス15%される。魔力を消費することで、掌の穴から「砲撃Lv30」を発射可能。
(パワーアップキタ――――――!)
テンション上がるぜ―――――! となったカニ退治でした。
<つづく>
以下ステータス。
簡単に言うと、ハルマサは結構強くなったけどハチエさんはもっと強くなりました。
ハルマサ
レベル: 26 → 27 Lvup Bonus: 167,772,160
満腹度: 347,947,190 → 518,947,148
耐久力: 249,242,267 → 420,242,225
持久力: 356,946,210 → 527,946,168
魔力 : 1,076,075,276 → 1,261,299,181
筋力 : 509,900,001 → 701,316,408
敏捷 : 874,594,617 → 1,068,668,944 ……★1,603,003,416
器用さ: 1,169,024,830 → 1,394,090,740
精神力: 276,586,761 → 464,229,750
経験値: 306,118,655 → 641,662,975 残り: 28,114,945
○スキル
PイーターLv26: 190,604,629 → 382,091,823 ……Level up!
観察眼Lv25 : 262,273,891 → 287,923,712
解体術Lv22 : 8,722,736 → 33,920,188 ……Level up!
戦術思考Lv24: 72,893,019 → 92,763,848
魔力放出Lv26: 519,829,301 → 537,281,046
風操作Lv26 : 382,450,654 → 399,018,222
拳闘術Lv25 : 229,028,391 → 245,167,382
撹乱術Lv25 : 284,718,022 → 300,287,134
身体制御Lv24: 139,300,281 → 154,829,011
突撃術Lv24 : 97,827,110 → 112,837,623
ハチエ
レベル: 27 → 28 Lvup Bonus: 335,544,320
耐久力: 335,281,252 → 670,825,572 ……☆ 12,074,860,296(防具でのステータス修正後)
持久力: 335,281,254 → 670,825,574 ……☆ 14,087,337,046
魔力 : 335,281,248 → 670,825,568 ……☆ 4,695,778,976
筋力 : 335,281,251 → 670,825,571 ……☆ 12,074,860,282
敏捷 : 335,281,258 → 670,825,578 ……☆ 10,069,091,932
器用さ: 335,281,251 → 670,825,571 ……☆ 2,012,476,714
精神力: 335,281,264 → 670,825,584 ……☆ 22,137,244,272
経験値: 611,844,096 → 1,282,932,736 残り: 43,515,904
○防具
霞龍の鳥帽子、重牙のピアス、煌毛の手袋、雷獣パンツ、健康サンダル
【防具でのステータスアップ】
耐久力+1700%、持久力+2000%、魔力+600%、筋力+1700%、敏捷+1401%、器用さ+200%、精神力+3200%