<124>
今回は仲間を増やしながら、大陸へとたどり着くことが出来た。
幸先の良いスタートである。
ここまで来たら、カロンちゃんを呼ばねばなるまい……というか呼びたい。
そう思って、集中しようとしたとき、ハチエが声をかけてきた。
「なぁハルマサ。」
「どうかした?」
「ハルマサはこれからもモンスターを捕まえていくのん?」
「うーん………」
後一匹欲しいかな。ドドブランゴの騎竜として。
で、それ以外はいいや。
いつか一緒に冒険できるかもしれない金ちゃん枠もあけておきたいし。
「あと一匹だけね。白ヒゲの乗る騎竜が欲しいかな。」
「……まぁハルマサがそれでエエなら、まぁええねん。ちゅうかハルマサがこれから出会うモンスター全部捕まえてもうたら、レベルアップできへんウチが完全に役立たずになってまうと思ぅてな。」
「ハチエさんが居てくれるだけで、僕はいいけどね。」
「………」
あれ? 返事が帰ってこないと、予想以上に恥ずかしいな。
「ハチエさん?」
「…ま、それやったらもうちょい一緒に行動しよかな。よろしゅうな。」
「……うん。」
ハチエさんはとても良い笑顔をしていた。
まぁハチエさんはいいとして、カロンちゃんを召喚せねばなるまぃいいい!
「ウチの扱い酷ぅない?」
「カロンちゃん………おとりよせぇ―――――――!」
緑の光が天から飛来し、ハルマサの作った魔力塊へと飛び込む。
魔力塊は形を変え、小さなカロンちゃんになった。
そしてカロンちゃんにいきなり叩かれた。
【もっと早ぅ呼ばんかい! 忘れられておるのかと……お主が呼ばぬと、我は他のやからに呼び寄せられてしまうのじゃぞ!? ええのか!?】
な、なんだとぉ―――――!
「だ、だめだ――――――! そんなこと言うと、もう片時も君を放さないからな――――――!」
【そ、それでよいのじゃ……】
「ラブラブやね……ちょっと妬けちゃう。」
ハチエさんそんな見ないで。
西側も一面の砂漠だったが、しばらく進むと、昨日は見なかったものを見つける事が出来た。
向こう岸が遥か向こうにある、大河である。川幅が一キロ以上あるのではないだろうか。
ハルマサたちはその河に沿って、山に向かって、つまりは大陸の中心に向かって進んでいくことにした。
足はチャリンコである。
「ふ~んふふ~ん♪」
シャコシャコ。
漕ぎ手は、自らかってでたハチエさんである。
「ハチエさん鼻歌上手いね。」
「喜んでええもんか微妙やねぇ。」
ハチエは首を傾げるが、他人を悲しくさせる歌しか歌えないハルマサとしては純粋に羨ましい。
「綺麗だし、楽しくなるよ。誰かを楽しくさせられるって最高だと思うんだ。」
「褒めすぎやで、恥ずかしいわぁ」
手で顔をハタハタしているハチエを横目で見つつ、ハルマサはあたりに警戒を払っていた。
前回のモノブロス強襲もあり、気が抜けない。
しかし僕の頭の上で髪の毛をいじっているカロンちゃんを見ると、とても冷静ではいられない……!
み、三つ編みにしているだと……!?
動揺するハルマサはさて置き、河は大きく蛇行しているようだった。
河のカーブの内側は流れが緩やかなこともあり、意外と植生が豊かである。
外側も外側で、土砂などが打ち上げられるので肥沃な土地となっているようだ。
つまり河の両端は意外と木が多い。
木が多いということは実りが多く、そこに集まるモンスターも大勢居るということである。
「グゥ?」
「グルル。」
【猿ばっかりじゃの。】
「凄い生態系やな……」
しかし居るのはドドブランゴの亜種ばっかりだった。
何故か凄く友好的で、避けて道を明けてくれたり、果物を投げ渡してくれたりする。
見覚えのあるリンゴのような果実も含まれており、ハルマサは遠慮なく食べる。
シャリッ。
「うまい……」
【……のぅハルマサ。我にも一口くれぬか?】
「あ、ウチもー!」
もとより独り占めするつもりも無い。
ここで休憩しようか、という運びになった。
「―――――ハッ!」
―――――手刀斬!
シパパ! と素手で皮を剥き、種を取る。
「解体術」も使った早業である。
「さぁお食べ!」
【うむ……!】
「うまいなぁこれ…なんなんやろ。」
折角なので、ドドブランゴの白ヒゲもボールから出してあげている。
仲間と嬉しそうにじゃれているのを見ると、ここで開放したほうが良いのかもしれないな、と思えてくるのだった。
世の中には、昔話というものがある。
その中に、川の上流から桃に入って流れてくる男の子の話があるのだ。子どもの無い老夫婦はそれをとてもありがたがったという。
しかし、ここはダンジョンだ。
上流からどんぶらこっこ、どんぶらこっこと流れてくるものがあるとすれば、それは歓迎されないものであることが大半だ。
今回の場合では、ラオシャンロンでした。
「なんでラオシャンロンがどんぶらこっこと流れてくんね―――――――ん!」
「ハチエさん、抑えて抑えて!」
【何度見ても大きいのぅ。】
流れてきたというよりは、スイー、と泳いできたという方が適切だが、まぁ細かいことは関係ない。
眼と鼻と背中を浮かせたラオシャンロンは、ゆっくりと泳いでくる。
意外と静かに泳げるらしいという無駄な情報を得てしまった。
色からして亜種ではなく普通のラオシャンロンだが、強いことには変わりない。
「ど、どないしょ。逃げへん?」
ハチエさんはすでにおよび腰である。確かに前回何も出来ずに捻り潰されたし、今はデスペナを食らった後なのである。
勝てると思う理由が無い。ただ、一つを除いて。
「いや……僕らには新しい仲間が出来たんだよ! レンちゃんという、頼れる仲間がね!」
ハルマサは、腰の「収納袋」からモンスターボールを取り出すと、河に向かって投げ込んだ。
「いでよ! 超巨大甲殻種、シェンガオレぇぇぇぇぇン!」
役目を終えたモンスターボールがシューン、とハルマサの手に戻ってくると同時、河の水が盛り上がり、そして弾けた。
――――――――――――――ギギギギ、ゴゴゴ……!
少し白みがかった青い甲殻に、巨大な宿、そして体長の3分の2を占める長い足。
間接の音を盛大に響かせつつ、我らがレンちゃんは立ち上がった。
巨大な体積を持つ巨大蟹が突如として現れたことで、河の水は左右にザバァ、と溢れる。
それを高い木に飛び移って避けつつ、ハルマサとハチエは状況を見守っていた。
シェンガオレンが現れると、ラオシャンロンもそうそう余裕ぶっこいてはいられないようである。
ごばぁ、と水を掻き分け水の中で立ち上がった。
でかい。そして高い。
「やっぱりあかんよ! 大きさ全然足りてへんやん!」
ハチエさんがそう叫ぶのも無理は無い。
河の水深は相当なもので、レンちゃんの長い脚が半分以上水の中へと沈んでいるが、ラオシャンロンは立ち上がった際の後ろ足が沈んでいるだけである。
サイズが全然違った。
それもそうだろう。シェンガオレンが、ラオシャンロンの頭の骨を宿として用いているのだ。
全高は2倍ほどの差がある。
でも、「観察眼」によるレベルは一緒だし、
「何よりレンちゃんなら、やってくれると、僕は信じているッ!」
――――――ギィイイイイイイイイイ!
シェンガオレンの口元に、想像を絶するような魔力が凝縮する。
次の瞬間、それは水の塊となっており――――――打ち出された。
――――――ドォン!
衝撃波で、川の水が放射状に津波を起こし、ハルマサたちの捕まっている木もぐわん、と揺れる。
その威力、速度、そして規模。
ラオシャンロンの鱗を抜くには十分だった。
そして、ラオシャンロンの腹を抉った水は、一発では終わらなかった。
――――――――――――ドォッ――ドォンッ!
二発三発と打ち出される水塊が、ラオシャンロンの体を打ち据える。
ラオシャンロンは苦悶に身を捩り、しかし踏み出して右前足を振り上げ―――目の前の敵を叩き伏せた。
――――ギャオオオオオオオオオオオオオオ!
ゴギギギギ、と盛大に甲殻が砕ける音が響き、レンちゃんが天地を逆転し、川底へと突き刺さる。
ズゴォ、ともうただの地震だろコレ、というレベルで地面が振動し木の上のハルマサとハチエは空へと放り出された。
地面に居た白ヒゲは、ちゃっかり仲間を率いて避難しているようだ。
ハルマサはソウルオブキャットを取り出し、ハチエの腕を掴む。キュン、と飛行術式が発動し、二人の体は安定する。
「ちょ、ヤバイで!」
「!? レンちゃん!」
ラオシャンロンは、そのまま長い首をたわませて、ひっくり返っているシェンガオレンへと牙を立てる。
メキメキメキ、と目を覆いたくなるような轟音が響き、宿が砕けていく。
だが、シェンガオレンは今齧られている部位から、攻撃を放つことが出来るのだ。
ハルマサたちの見ている前で、大きく魔力が凝縮していき、
キュゥゥゥゥゥ――――――
直後、目が潰れるような光が溢れた。
カッ―――――――!
今度の衝撃は並ではなかった。何しろ、第二層のボスを一撃で大地ごと消し飛ばした砲撃だ。
ゴォオオ、と大気が荒れ狂い、あたりの木々は根こそぎ、生えていた大地ごと吹っ飛んでいる。
顔面に砲撃が直撃したラオシャンロンは、たまったものではないだろう。
弾かれるようにひっくり返り、盛大に水しぶきを飛ばしている。
だが、やはり死ななかった。
この龍は大陸よりも硬いのだ。
―――――――――――ギォオオオオオオオオオオオオオオオオ!
口から怒りで煙を吐きつつ、憤怒に目を染めてラオシャンロンは起き上がる。
鼻の上にあった角は折れ、顔の鱗も大半が消し飛んで、血を落としている。
だが、まだまだ限界には程遠い。
レンちゃんも、起き上がり、ブクブクと泡を吹いていた。
しかしその姿は痛々しい。
左の鋏は途中でおかしな方向に曲がっているし、宿が半壊して弱点部位のコブが覗いてしまっている。
「なぁハルマサ。」
隣で、じっと戦いを見ていたハチエが呟いた。
「ウチ、助太刀してくるわ。」
【……それでか?】
カロンがそう言うのも無理は無い。
ハチエの手には、「しゃもじ」と書かれたカードが握られているのだから。
<つづく>
ハルマサのスキル
身体制御Lv20: 4714561 → 7309283 ……Level up!
風操作Lv20 : 4721787 → 7089237 ……Level up!
魔力放出Lv21: 12167507 → 14028736
観察眼Lv20 : 5230632 → 5493820 ……Level up!
鷹の目Lv18 : 927866 → 1408274 ……Level up!
戦術思考Lv20: 8511138 → 10029384
PテイスターLv21:1926699 → 12487582 ……Level up!
<あとがき>
今回もつっこみ多そうなんだぜ……
読んでいる人を置き去りにしているんだろうなぁと思いつつ。
ゾンビ騒動で読む人が減り、今回でさらに減ったら……!
もうアワアワ言ってしまいそう。
あとカロンちゃんが空気。やべぇ。
明日も更新するだろうか。
>できれば2スレ目への移動が終わってから1スレ目の109話以降を消して頂きたかった
ほんとに申し訳ないです……読んでくれてありがとう。
>捕まえた白ヒゲは特技を使うことが可能なんですか
レベルが上がればいけますね。
>ハチエさんがヒロインでいい気がしてきた
カロンちゃんテラ空気だからですかね。
>最初の注意書きに1スレ目のURLか、リンクを張ると新規の人が助かるかもしれません
貼ってみたっす。貼り方これでいいのかなぁ……
>白ヒゲですかぁ。いつか地震を引き起こしそうだなぁ
「あなをほる」くらいなら今すぐにでも使えるんですけどね。ポケモン的に。
>静かなる中条は一応ジャイアントロボOVA版のつもりだったんだが
ろくに確認せずに書いた私は罰としてジャイアントロボを見るべきかもしれない。というか見たい。
>最近ハルマサがあんま目立たなくなってきましたのう。
難しいところですね。
今回も彼は大して動いてませんし。
>獲得経験値とかはどうなってるんでしょうか
分ける感じでいきます。
>さぁ、今度はポケモンを食べましょうw
食べますかね。どうしようかな。
>ハチエさんは一度魔力の扱いを覚えたら化けそうですね。
違う方向に化けてほしいと思ってシステム変えちゃったんだぜ。
>ふたりして食べられて、腹の中で大冒険すると思ってたのになぁ
なん……だと……!
このネタを使ってもいいでしょうか。いやマジで。
>両手武器の存在価値がなくなっちゃうので、正直計算式は「元ステ×(武器1+武器2+・・)」のがいいような。
そっちのほうが計算も軽いですよね。
そうしました。ぶっちゃけあのまま行ってもトンファーキック無双でしたしね。
>オオナズチ捕まえて古龍ライダーにすればよかったのにww
これは私も迷ったんですが、仲間食おうとするモンスターに乗らせるのも変かな、と。
>もう1人の第4層で足止めうけてる人は、この鬼のような第3層をどうやって攻略できたのか、だんだん不思議に思えてきます
ハチエさんのシステムが変わってから、彼女のシステムも宙ぶらりんです。なんかいいネタ思いつかないかなぁ。
>パーティー登録方法
これ作っちゃうと、そもそも最初っから組ませること前提だった話になっちゃうのであんまりよくないかな、と思います。ありっちゃあありなんですけど。
>やったねたえちゃん
虐待か……
>正式なタイトルをつけてオリジナル板に
タイトル超むずいっスね。シュレディンガーのハルマサとかしか浮かばない。
もうちょいここでやらせていただこううかな、と思っています。
>ハチエさんレベル上がってさらに強力な武器装備できるようになったらゾンビ化の3倍とか目じゃないくらいの能力の跳ね上がり方しますよね
しますね。とんでもねぇ数値になって計算間違ったかと思うでしょうね。