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No.20671の一覧
[0] 【ネタ】魔法先生フェイま!【こんな話はどうよ?】[kuboっち](2011/02/07 20:43)
[1] 第一話[kuboっち](2011/02/07 18:16)
[2] 第二話[kuboっち](2011/02/07 18:17)
[3] 第三話[kuboっち](2011/02/07 18:17)
[4] 第四話[kuboっち](2011/02/07 19:45)
[5] 第五話[kuboっち](2011/02/24 21:26)
[6] 第六話[kuboっち](2011/03/05 23:53)
[7] 第七話[kuboっち](2011/07/21 08:01)
[8] 第八話[kuboっち](2012/02/29 22:15)
[9] 第九話[kuboっち](2012/03/24 23:02)
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[20671] 第三話
Name: kuboっち◆d5362e30 ID:9c20ba48 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/07 18:17
最近の私、輝いてる……嘘です。
謎の連休にインフルエンザでの強制休日が重なっただけです。









その少年は電車の始発から乗っていたが、終点が近づく麻帆良学園都市の敷地へ入る頃から、減ってきた乗客の中で違和感を増してきた。
正確にいえばギュウギュウに詰まっていた空間に空きが出来ただけなのだが、そんな事は実に小さな案件。
周りには学生服、如いてはこの路線上に位置するエリアの都合上から女の子が多い中で、彼は異彩を放っていた。

年は10歳に届くか否か?という微妙なライン。日本人ではない事が瞳や髪や肌の色から容易く推測できた。
身を包むのはスーツ。淡い色彩 アイボリー色のジャケットとズボン。血のように赤いネクタイは、清潔な白のワイシャツの首元でしっかりと止められている。
その上からは白いロングコートとストール。足元には古い革製の旅行鞄 トランク。

多くの異常を内封する巨大な学園都市に向かう電車の中であっても、その少年は異彩を放っていた。
言葉にするのは難しい事なのだが、その姿を見ていた誰もが理解している。
少年である事、外国人である事、スーツである事。そんなことで彼がめだっている訳ではない。
何かもっと深い部分で違っているのだ……と。


「ねぇ? ボク?」

「?」

「「「「「!!」」」」」

集まる視線の中、少年に向けて発せられた言葉。声の主は何処にでも居る女学生。
声をかけられた少年は首を傾げ、他の乗客からは驚きと称賛の声。気には成っていたが、声を掛けられない状況の打破。

「この先は麻帆良学園の中でも女子部が集まるエリアだよ。降りる駅を間違えたなら駅員さんに言って…『ありがとう』…っ!?」

外人然とした外見からは信じがたい綺麗な日本語。平坦な視線からは観察されているような印象さえ受ける。
言葉にも表情と同じく起伏がなかったが、そんなまま放たれた感謝の言葉にはいわゆる『ギャップ萌え』が生み出す破壊力がある。

「見知らぬ外人の身を案じてくれたのかい? ありがとう、お嬢様。」

『お嬢様』なんて日本人的な普通の感性をもっていては決して口にできない言葉だろう。
そんな単語に思わず顔を赤らめて、悶絶する女性徒を観察するように見ながら、少年 フェイト・アーウェルンクスは続けた。

「でも心配いらない。僕の行く先はこっちなんだ。麻帆良学園女子中等部……そういう場所」









「……」

仕事場の最寄り駅、その入り口近くの喫煙スペースでタカミチ・T・高畑は紫煙を吐き出した。
彼はいま人を待っている。新人の教師であり、魔法学園を卒業したばかりの魔法使いの卵を。
本来ならば彼の人柄からしてこう言った場面に立ち会うのは喜びを感じるはず。
なのに彼の顔には重く辛い色を湛えている。全ては数日前に渡されたその教師であり、修行に来る若者の写真が問題だったのだ……



「学園長! これは一体どういう事ですか!?」

「どうもこうも無かろう? 全てが正式な書類、しかも気心知れたウェールズの友からの手紙じゃぞ」

「しかし!!」

「絶対に君が考えている人物との接点はない。これは生まれであるイスタンブール魔法学校からもお墨付きがあるんじゃよ」

「……分かりました。ですが迎えにはぜひ私を。この目で見極めなければ気が済みません」

「あい、分かった。だが昼間からもめごとは勘弁じゃぞ?」



常に有効的な関係を築いてきた学園長とあんな悪い空気になったのは何時以来だろうか?
そしてこれからの事を考えるとさらに気が重くなり、自然と煙草を消耗するスピードも速くなるというものだ。
半分は入っていたはずのケースには空白が目立つ。約束の時間よりも早く来てしまったのだから仕方がない。

「喫煙は貴方の健康を害する恐れがあります」

「!?」

冷たい声だった。ふざけた事を言っているのに笑っていないような声色。

「箱にも書いてあるのに、どうして止められないのだろうね?」

慌てて顔を向ければ近くのカフェのオープンテラス。当然の風景 見慣れた日常の一コマとして処理していたはずなのに、そこに居る存在に気がつかなかった。
年を10に届くか否かという少年。老人のような白髪。整った顔立ち。

「君が……」

「なんだか警戒されていたみたいだから、少し様子を見させてもらったよ」

ピッチリと身に付けたスーツ。横に置かれていたのは古びた皮の旅行鞄。絵になるように手に持ったコーヒーのカップ。
だが駄目だ。自分が考えている人物とは何の関係が無いとしても、その目だけは許容できない。

「悪名を轟かせているつもりはあるけど、個人的にそこまで嫌われる覚えはないんだ」

全てに対して価値を見出していない冷たい瞳。氷のように解ければ消える冷たさでは無い。鉱石が持つ永遠の鈍い輝きと永遠の冷たさ。
自分に向けられる悪意にも、向けられている自分にも大した興味がないという目。
魔法世界を弄び、幾千もの命を無碍に散らし……自分の命にすら頓着がない瞳。

『アレ』と同質の目だ。












「案内の彼には大分嫌われてるみたいだ」

案内されるまで終始無言だった事を鑑みて、フェイト・アーウェルンクスは通された学園長室でまずそう呟いた。
そして目の前にいた不思議な頭部についての思考を巡らせる。魔法の副作用だろうか?と

「ほっほっほっ、何やらイヤな思い出があるらしくての。どうか気を悪くしないでやってくれ、フェイト君や」

「嫌われるのは馴れているからお構いなく。僕は『イスタンブールの忌子』だよ」


『全く珍妙な取り合わせだわ』

当事者以外に不幸にもこの場に居合わせることになった源しずなは内心でそう呟いた。
魔法世界にもこの人在りと知られる大魔法使いにして、普通の学校としても魔法学院としても有名な麻帆良学園の長たる近衛近右衛門
そしてそんな人物を前にして、もっと言えば自分の一生を左右する立派な魔法使いを目指す修行開始を前にしても動じないこの子。
ここに来る魔法使いの卵として名前を告げられた時、魔法教師の誰もが息を呑んだ恐るべきネームバリュー。
自ら名乗った通り悪名高き『イスタンブールの忌子』。生まれた瞬間に上級魔法 石化を暴走させ、十人を超える人間を永久石化。
それ以降は優秀すぎるほどに修練を怠らず、十歳を前にして忌むべき力 石化魔法すら使いこなす異能の天才。


「とりあえずは様子見じゃな。中等部を中心に英語の教師をやっておくれ。担任を持つのも貴重な体験じゃろうから、2年A組も任せるぞい」

「少しばかりトルコ訛りがある英語で良ければ……修行であれば是非も無いけどね」

「よろしい。ではしずな君、案内してやってくれんか?」

そこで自分に矛先が向いたしずなは先ほどの思考を一切表に出さずに笑顔を浮かべて頷いた。
2年A組へと至る道中にて写真付きの名簿を渡したり、『困ったことがあったら言ってね』と声をかけながら彼女は思考する。
自分でもイヤな女だと思いながら、この人物との距離の置き方を念入りに考えていた。


「早くみんなの顔と名前を覚えられると良いわね」

「目的地に着くまでには覚えるよ」

「……」


試験内容を決定する運命の精霊の意思はほぼ無条件で快諾されるのが常であり、今回もそれに従ってこそいるが、やはり人心はそうはいかない。
イスタンブールの忌子のネームバリューは大きいし、誰よりも他者の信頼厚いあの高畑君の反応が不味かった。
会議でこの子の写真付きプロフィールが配られたら、テーブルに拳を叩きつけるくらいの同様っぷり。
今日とて私が迎えに行くはずだったのにわざわざ変わってまでの敵情視察。
彼は詳しい理由を私たちには語らなかったけど、それだけの反応をする理由をこの子は持っている訳だ。
本当ならば厳しい試練 十歳の子供が学校教師なんてモノに挑むのだから、親身になって助けてあげたい。
だけどあまり深入りするのは良くないだろう。本人と会ってみてその感想が大きくなった。

「ここが2年A組よ」

歩きながら写真付き名簿を見つめていたフェイト君もその言葉に顔を上げる。
扉に手を掛けたところで思い出したようにこんな事を呟いた。

「貴女の立ち位置が僕は一番うれしい」

「え?」

『優しくしてくれてありがとう』と言う意味だろうか? そりゃ最初に遭ったのがあんな珍しい態度の高畑君じゃそう思うのも……

「優しく接する『ふり』をして、一歩引いた場所に居てくれる」

「!?」

心を読まれていた? 魔法!? いや……流石にそれくらいは私でも分かる。
きっと経験。私みたいに考えて、私みたいに接してきた人物もたくさんいたのだろう。


「そういう人が一番気が楽なんだ」


そして何より恐ろしいのは『ふりでも良いから僕には近づくな』と平然とした顔で言えてしまう事。
固まった私にはすでに興味も無いと既に前を向いてドアに手を掛けている。
この子は教師なんてできるのかしら?……そういう私も駄目な教師なのかもしれないけど……












頭上に落下物。使用済みの黒板消し。古典的な歓迎トラップ。
古典的だけど本気で仕掛ける奴らの気が全く知れない。恐るべき日本の女学生。


さて、これはどう対処するべきか? 
回避する→→大き過ぎる挙動 Non。
払い除ける→→せっかくの一張羅が汚れる Non。
掴み取る→→この年がするアクションか? Non。
甘んじて受ける→→→→被害は顔だけ、洗えばとれる。
子供の顔面をチョークの粉塗れにしたという『貸し』を早々に作っておくのも悪くない。

よし、決めた。


ここまで一秒とかからず。


フェイトは軽い衝撃を頭部に覚え、衝撃の割には多くの白い粉が飛散するのを確認。
使い古した黒板消しは軽い衝撃だと、吸着した粉を飛ばし憎くなる事を考えて、わざわざ新品を使用しているらしい。
そんな余分な事まで考えて、一歩教室内に足を踏み入れようとした時、彼は足元に堂々と張られた縄に気が付く。

「「「「「……」」」」」

突き刺さる無数の視線に一切動じることなく、その縄の先にある金タライを確認。
そこから連動する形で吸盤付きの弓矢発射装置も視認。
さらにそこから延びるピアノ線は床に……あぁ、跳ね上げ式なのか。レベル高いな、さすが技術立国日本。

「……」

そこから数秒先ほどと同じく消去式の思考を行った結果、彼は自分が受け持つクラスの面々に向かって、初めての言葉を決定した。

「僕はこれらのトラップに全て引っかかるべきなのかい?」


数秒の沈黙。

「うぅ……ごめんなさ~い!」

室内で在る事を鑑みて、女子中学生とは思えない加速を魅せた某シスター見習いが、フェイトを一度教室から押し出してドアを閉める。
ここから先の数十秒間の事はフェイトとしずなには見えなかったが、室内が大騒ぎする音だけが聴こえて来た。
『どうして解除しちゃうの!』とか『あんな目で見られたら謝るしかないっしょ!』だの。
やれ『だから最初から仕掛けなきゃ良かったんだよ』やら『そんなの良いから早く金タライ取って!』
挙句の果てに『ギャー暴発した!!』とかもうお祭り騒ぎである。

「自己紹介をする前にこのクラスの事が何となく分かったよ」

「貴方みたいに出会い頭で彼女たちを御する人もそんなに居ないわよ?」

「……顔と髪を洗ってくる」



結局三分ほどをお互いの良好な関係の為の下準備に費やして、今度こそ室内に足を踏み入れることに成功した新任教師は自己紹介。
クラス中 31人分の好奇の視線を浴びながら、長い道中の132分の1の時間を費やして考えた言葉。


「はじめまして、僕の名前はフェイト・アーウェルンクス。色々あってこのクラスの担任をやることになりました。
 みなさんとはお互いに『害』の無い『程度』の関係を築きたいと思っています。どうぞ、よろしく」




フェイト、つまらね~(なに


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