<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.20607の一覧
[0] 【初投稿・習作】信ONをネタに書いてみた【VR物】[ノミの心臓](2010/07/24 22:24)
[1] 序章[ノミの心臓](2010/07/24 22:19)
[2] はじまり[ノミの心臓](2010/07/24 22:24)
[3] はじまりはじまり[ノミの心臓](2010/07/25 22:23)
[4] はじまり×3[ノミの心臓](2010/07/26 21:50)
[5] [ノミの心臓](2010/07/31 23:50)
[6] [ノミの心臓](2010/07/31 23:59)
[7] [ノミの心臓](2010/08/02 19:49)
[8] [ノミの心臓](2010/08/07 19:48)
[9] 8 閑話[ノミの心臓](2010/08/05 23:20)
[10] [ノミの心臓](2010/08/05 23:26)
[11] 10[ノミの心臓](2010/08/08 09:46)
[12] 11[ノミの心臓](2010/08/08 20:30)
[13] 12[ノミの心臓](2010/08/10 22:00)
[14] 13[ノミの心臓](2010/08/20 22:22)
[15] 14[ノミの心臓](2010/08/26 21:38)
[16] 15 閑話[ノミの心臓](2010/08/29 00:49)
[17] 16[ノミの心臓](2010/09/01 23:40)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[20607] 8 閑話
Name: ノミの心臓◆9b8a3f51 ID:ee8cef68 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/05 23:20

長い夢から目が覚める…
「ふぅ…」
ゲーム内より遥かにしわくちゃな自分の手を見る。
――何かをするのに遅すぎるということはない。
使い古された説教台詞だろうか、はたまた心を打つ一言だろうか、言う人、聞く場所、聞いた年代によって様々に聞こえるこの言葉を思う。
自分の場合、遅すぎるから止めなさいと言われることだけは間違いがなかった。
朝食を終え、食器を洗い、居間のソファーに座り、久しぶりに孫の携帯に電話をかける。

「もしもし、わしじゃがな。」
「あっ爺ちゃんー?なーにー?」
間延びした女の子の声が聞こえてくる。
「加奈子のお母さんの弟君は確か古武術をかじったことがあるとか言うておったじゃろ?」
「あー叔父さんねー。何か破門されたって聞いたことがあるよー」
「そいつに弟子入りしたいんじゃが、話通してもらえんかのう?」
「なにいきなりバッカなこと言ってんの爺ちゃん!呆けちゃった!?」
「いや、至って真面目に……。」

遠くで、お母さん爺ちゃんが呆けちゃったかもーって声がする…。
「もしもし、お爺ちゃん」
息子のデキタ嫁が出てきた。加奈子の声に良く似ているが多少低く落ちついた感じがする。加奈子の母、美恵子さんだ。
「はい。」
「呆けちゃったんですか?」
「いえ、恐らくまだ大丈夫かと思われますが、、。何分本人には無自覚な事が多いようでして、、はい。」
「娘が私の弟にお爺ちゃんが弟子入りしたいと言ってると言ってますが、本当ですか?」
「若干、語弊があるようでして、少し古武術とやらを見せて貰いたいなぁと言っただけでありますよ。」
「言ったんですね?」
「はい。いいました。」
「お爺さん、貴方の息子も大概、変な人でしたが…」
過去形である…嫁と娘を残し愚息が事故死してからもう10年の月日が流れた。

「お爺さん、今年で84歳になろうかという人が武術なんてできるわけないでしょう?」
「いや、弟子入りは冗談じゃ。見せてもらうだけでもかまわんのだよ。弟君、道場盛況だって言ってた事があっただろう。その見学がしたいんじゃ。」
「……何年前のこと言ってるんですか、もう潰れましたよ。弟は今は行方知れずなんです。」
身内とはいえ他人の自分には言えなかったのかもしれない。

「ああ、そうか、いや、すまなんだ。悪いことを聞いた。」
「いえ…でも突然、古武術なんてどうしてです?。」
「いや、まぁ、言うのはちと気恥ずかしいじゃがな。」
わしはVRゲームの下りから、古武術の使い手ににコテンパンにされた事を掻い摘んで話した。


「まぁ、VRゲームって昨日始まった信長の野心ですか?私もやってるんですよ」
「ほう、そりゃ奇遇じゃな。」
「ええ。いいストレス解消になるかと思いまして…。なるほど、そういう訳でしたら、型ぐらいなら、私が見せてあげます。」
「み、美恵子さんも武術家だったのですか?」
何故かまた敬語に戻る。

「あら、お爺さんには言ってませんでしたか。弟と同じ師匠に師事してたんですよ。」
「は、初耳です。」
「女と言う事で、皆伝は頂けませんでしたから、あまり自慢できることでもないですし、人には内緒ですよ。なんでしたら、いつか伺いましょうか?」
「いやいや、わ、わしが、歩いて行こうかと思っております。久しぶりに加奈子の顔も見たくなってきたことなので。」
婆さんの仏間に置いてあるVR筐体が見つかれば、正座させられ、説教数時間コースは固そうだ。

「でしたら、市場が閉まる四時以降でしたら、いつでも良いですよ。」
彼女は個人投資家だった。それも凄腕の。
「わかりました。。では、さっそく今日の午後4時に歩いて行こうと思います。」
「はい、お待ちしております。では加奈子に代わりますね。」


「もしもーし。爺ちゃん呆けてないー?。」
「加奈子…いきなりお母さんに言いつけるなんて酷いじゃないか!」
「あははは、いや、ホントびっくりしちゃってねっ。でもお爺ちゃん、本当にお母さん苦手なんだねー。」
「いや、加奈子。お前はお母さんから何も感じないかっ?あのオーラがっ。」
「電話ごしでしょー?、まぁ…多少分かる気もするけど、母親だしね。ゲームもよくするし、普通のおばちゃんだよ。」
「おばっ……お母様といいなさいっ!。」
「ああ、はいはい。」
「うむ、それはそうとな、今日の四時ぐらいにな。そっちに行くからよろしくな。」
「まぁ…4時かぁ……居てもいいけど、お年玉奮発してね?」
「うむ。もちろんじゃ。くれぐれも頼むぞ。」
「はいはい。ちゃんと家に居ますよー。」
それで電話が切れる。


「ふぅ…びびったわい」
未だに、愚息がどうやって、あの美人さんをモノにしたのかが、気になるお爺ちゃんであったが、愚息のどこがよかったのですか?と聞く勇気はさらさらなかった。



昼間はネットで時間を潰し、午後3時に家を出る。
孫の家までは老人の足で1時間はかかる。
町外れの高台を目指して、歩いて行くと、山すそに百段以上はある石段が見えてくる。
石段を手すりを使いながら、なんとか登りきると、武家を思わせるような門構えが見えてきた。
周りは、これが神社の鳥居だったとしても何の違和感もないような古い木々に囲まれている。

通用口の呼び鈴を鳴らす。
「はーい。」
「わしじゃ、開けてくれぃ。」
「速かったねー。どうぞー。」
自動で木製のドアが開くと、立派な門構えの割にはこじんまりとした日本風の平屋が現れた。
その代わりといってはなんだが、純和風の庭は立派なものだった。
周りの大きな木が家の半分ほどを夏の強い日差しから遠ざけている。

「邪魔するぞー。」
「どうぞー。」
加奈子は確か今年で15歳だったか、黒い瞳に茶色に染めた髪をを肩口まで伸ばしている、今時の女子中学生といった感じだ。
贔屓目にみてしまうが、かわいいと評されるべき容姿だと思う。
孫に6畳の二間続きの和室に通される。
奥の一間は仏間だった、親不孝な愚息の写真が飾られている。
孫がお前に似なくてよかったなと語りかけつつ、とり合えず、焼香をあげさせてもらった。


「元気してたー?」
「うむ。ぼちぼちな。」
「おおっ、本当に元気になってんねー。」
「なんじゃ、そんなに今まで元気なかったかの。」
「いやぁ…ばあちゃん死んでから、目に光がなかったよ、爺ちゃん。」
わが孫ながらあけすけに物を言う人間だった。

「そうかい、心配かけたのならすまんの。」
「うん、でも本当元気そうでよかったよ。何かあったの?」
「ちょっとばかり、楽しみを見つけてな。」
「ふーん、何か聞いてもいい?」
「VRゲームじゃ。最近宣伝しとった新しい奴な。」
「あー。信長の野心ね。あれお母さんもやってるよ。一緒にやってるの?」
「いんや、やってるのを聞いたのは今日でな。それで…まぁちょっとばかり教えを請いにな。」
「そうなんだ。お母さんゲーム得意だもんね。」


「お爺ちゃん、いらっしゃい。お元気そうですね。」
襖が開き、加奈子の母親が登場する。彼女は、どこか古風な雰囲気で、背筋に一本筋が通っているような、それでいて楚々とした雰囲気を感じさせるオーラを纏っていた。
――オーラだよな、あれは……
「お邪魔しております。美恵子さんも、あまり変わりないようで。」
今年で42歳のはずだが、どうみても20代後半~30代前半といった容姿だ。
「お爺ちゃん、前から言ってました、同居する件…考えていただけましたか?」
「ああ……すまんがな……婆さんもあそこが好きじゃったしな。それに石段も辛いからの。」
「なんでしたらエレベーターでも作りましょうか?」
「いや、そんなお金は掛けんでよろしい。」
母娘二人が、一生暮らせるほどの蓄えはあると聞いているが、何分不安定な投資業、あまりお金は使わせたくなかった。
しばらく、孫を交えた3人で、お互いの近況を語り合った。



「それで、そろそろ古武術に関して見聞させてもらえんかの?」
「いいですけれど、見るだけですからね、お爺ちゃん。庭で待ってて下さいな。」
そう言うと準備をしてくると言って別室に行った。

縁側で白壁と木々囲まれた静かな広い敷地を見渡す、女性ばかりの家なので、防犯には気を使っているらしく、塀も見た通りの唯の塀でもないと聞いている。
こじんまりとした家との対比がなかなか面白い風景だ、お金を適材適所使っていく美恵子さんの性格を現している風景だと思った。

どこから持ってきたのか孫の加奈子が、試し切りに使うき巻藁をもってきている。
「そんなもん、どこにあったんじゃ?」
「えっ…と……地下室から持ってきた。」
「地下室なんかあるんかい。」
「まぁ…あんまり人を通すような所じゃないしねー。」
加奈子は何か言いにくそうにしていた。

美恵子さんが白装束姿で再登場する。
「古武術…古武道ともいいますが、 要はスポーツになり得ない、剣術・柔術・弓術・鎖鎌術…後その他諸々の武芸十八般の事です。私はその中で一般的な柔術・弓術・剣術・居合い術を修めました。今日は剣術の型をお見せします。」
そういうと真剣を抜き放ち、一つ一つ確かめるようにゆっくりと型稽古を始めた。
昼間にネットで古武術に関してネットで調べてみたが、今ある古武術は大抵門弟を従え、広めようという姿勢を打ち出している。
逆にそういう姿勢でない流派はもう時代に埋もれて行くしかないのかもしれない。
「私の師匠は一子相伝で伝えられてきた名も泣き流派の継承者でした…まぁこの時代までよく伝わったものと当時は関心したものですけどね。」
頑固な所はお爺ちゃんと似てたような気もしますね。と一言。


30分ほど、美恵子さんの型稽古を加奈子と二人、縁側で見学させてもらった。
正直、ゲーム内だけでも真似できるものがあればと思っていたが、一朝一夕にできるものではないとだけ理解できた。
何せ、最後の巻き藁を使った居合い術を見せてもらったが、速すぎて、いつ抜いたのか分からなかった。
「爺ちゃんが、コテンパンにされちゃったその人とお母さんどっちが強いかな?」と加奈子が聞いてきた。
「さぁ…わからんなぁ。ただ、その人にはこっちの攻撃が全く当たらんかったからな、達人といって良いのではないかのう。」
「そのお人は相当な強者のようですね。」美恵子さんが言った。
「連戦連敗でな、年甲斐もなく悔しくての。多少ヒントが得られればと思って無理をお願いしてしまったかもしれん。」
「いいですよ。半ば日課のようなものですし。そうですね……真の強者はあまり自ら仕掛けることをしません。体の正中線をまっすぐに保ちつつ、相手の攻撃を呼び込みます。いわゆる「隙のない構え」で、相手の攻撃を待つのです。」
「ふむ……言われてみれば、ほとんどこちらから仕掛けていたような気がするのう。」
「強者は正中線を保ったまま、相手の攻撃を受け流すことによって、相手の体勢を崩していきます。その意味で、強者にとっての防御は、相手の体勢を崩すという攻撃の開始でもあります。」
「なるほどのう…」
次に模擬戦をすることがあれば、色々と参考になる意見を頂いた。

「お爺ちゃんはどこの国から始められたんです?」
「今川じゃ。なかなか綺麗な所じゃったよ。」
「私は、徳川です。隣国ですね。会おうと思えば会える距離ですけど、どうします?」
「気晴らしは一人こっそりやるもんじゃろ。爺の遊びに付き合って貰わんでもよいよ。」
ゲームがストレス解消らしい美恵子さんに気をつかった。
「別にそういうつもりで言った訳じゃないのですけれど、お爺ちゃんがそういうなら…、容姿はあまり変えてませんから、もし見かけたら声を掛けて下さいね。」
「うむ。楽しみにしておるぞい」
そうは言ったが、隣国と言っても信長の野心VRオンラインのフィールドは一部地域のみとはいえ、日本の実寸大3分の1程ある、見掛ける確率がどれだけあるやら…。
その後も、情報交換がてらゲーム内の話題で話しが弾んだ。



石段の下まで送ってもらった帰り際、
「お母さん、私も信長やってもいい?」

「学校の勉強頑張るならいいですよ。」

「うん。よし。頑張るから!お爺ちゃんと遊ぶ!」

「…お母さんとしなさい。」

「えええっ嫌だよっ。ゲーム内でもスパルタされちゃうよっ!」

「しませんよ。そんなこと。」

孫と一緒にゲームが出来る日が来ることが多少楽しみになった。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.023999214172363