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No.20336の一覧
[0] 【習作】がくえんもくしろく あなざー(オリ主・ちーと) 更新停止のお知らせ[磯狸](2010/08/19 12:29)
[1] ぷろろーぐ[磯狸](2010/07/24 10:28)
[2] 第一話[磯狸](2010/08/05 10:06)
[3] 第二話[磯狸](2010/07/16 04:28)
[4] 第三話[磯狸](2010/07/20 10:13)
[5] 第四話[磯狸](2010/08/12 16:04)
[8] 第五話・改訂[磯狸](2010/07/20 00:33)
[9] 六話[磯狸](2010/07/18 19:52)
[10] 七話[磯狸](2010/08/12 16:30)
[11] 八話[磯狸](2010/07/20 10:04)
[12] 第九話・微改訂[磯狸](2010/07/22 09:42)
[13] 第十話[磯狸](2010/07/22 19:28)
[14] 第十一話[磯狸](2010/07/23 10:36)
[15] 第十二話[磯狸](2010/07/24 22:50)
[16] 第十三話[磯狸](2010/07/27 18:02)
[17] 第十四話[磯狸](2010/08/03 09:00)
[18] 第十五話[磯狸](2010/08/04 12:35)
[19] 第十六話[磯狸](2010/08/10 21:26)
[20] 第十七話[磯狸](2010/08/12 23:43)
[21] 4話分岐…生存ルートぷろろーぐ。別名おふざけルート 注意書き追加[磯狸](2010/08/05 22:47)
[22] 一話[磯狸](2010/07/20 22:12)
[23] 第二話・あとがき少し追加[磯狸](2010/08/05 22:45)
[24] 第三話[磯狸](2010/08/08 04:44)
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[20336] 第四話
Name: 磯狸◆b7a20b15 ID:9ed37a25 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/12 16:04
 最初の遭遇は、実験室を飛び出してすぐだった。音や声などから、すぐ近くに迫っていたのは出る前から分かってはいた。
相手の正体はともかく、現実では推し量れない化け物である事は分かっていたのだ。
それでも。相手がどういう物かおおよそ分かっていながらも、飛鳥達は眼の前の直視しがたい光景に、絶句した。


飛鳥達の眼の前、呻き声を上げながら近づいて、来るのはつい先程まで飛鳥達のクラスメートだった物達だった。
肉を抉り取られ、肉と骨が剥き出しの物、胸を重点的に被りつかれ、豊かであった乳房を喰いちぎられた少女だった物、他にも数人の見覚えのある”物”達。


話しかけられた者もいる。話しかけた者もいる。まだ入学したばかりで、交流は無いに等しかったが、皆無だった訳ではない。
僅かな間とは言え、言葉を交わさなくとも、毎日顔を合わせ、彼等が”普通”に生きているのを見て来た。それも、つい先程までは皆が生きていたのだ。
五体満足で、誰もが健康な状態で、”普通”に生きていた。


それが今はどうだ。
程度の差はあれど、衣服や皮膚を血に染め、臓物を垂らし、完全に死体となって迫って来る。
生命力に満ち、輝いていた瞳は、色を失い、白濁した濁った眼で飛鳥達をぎょろりと弊害し、まるで助けを求めるかのように手を伸ばして来る。

『ひっ―――』

背後で猛と健二の息を呑む声が聞こえた。
見なくとも分かる。二人は生前とは比べ物にならない酷い有様となってしまったクラスメート達を直視できず、顔を背けている。
自身もそうしたくなる衝動を、必死に押し殺す。


そしてついに後一歩でも進まれれば、伸ばした手で掴まれてしまう所まで、笑顔の可愛かった女生徒の手が迫った時、飛鳥は動いた。
気を抜けば震えそうになる手に力を込め、至って無造作に右手に握ったモップの柄を振り下ろし――――。

『――――グシャッ』

女子生徒だった物を、既に人外の力と言える膂力を持って粉砕した。
振り下ろされた一撃は、どれだけの筋力があればそんな事が可能となるのか、獲物はモップだと言うのに、少女だった物は脳天から股下まで、断ち切られ―――いや、押し潰され、二つに分かれてゆっくりと倒れ伏す。


吹き飛ばして手の届かない範囲に飛ばす事も、窓の外へ向かって飛ばす事もできたが、飛鳥は敢えて頭部を粉砕した。
飛鳥は覚悟を決めたのだ。元人間と言う事もあって、躊躇う気持ちがあった。現れたクラスメート達だった物を見て、迷いが生じた。
だが、クラスメート達はもういない。”者”は”物”となり、自身や背後にいる友人達の命を奪おうとする敵と化した。
だからこそ、飛鳥は迫りくる物達を、明確なる自身の敵として定める為に、これは人では無く、物であると言い聞かせる為に、その覚悟として少女だった物をを必要以上の力で粉砕したのだ。


呻きながら寄って来る、男子生徒と少女の頭を粉砕する。
至って簡単な作業だった。祖父との立ち合いに比べれば、それこそ停止していると同義である緩慢な動き。ただ真っすぐ向かって来て手を伸ばすだけの、技も技術も無い動き。無造作に一閃するだけで、やって来る物達は何の抵抗も無くそれを受け、吹き飛び、血を撒き散らす。


頭を潰せばそれで終わるのか、最初に潰した物も、その後潰した二人も再び動き出す気配は見られなかった。
しかし、吹き飛ばして壁に激突させた物達は、平然と再び迫り、飛鳥は今度は頭部に向けて一閃。頭の中身が飛び散り、血が窓ガラスへと飛び散る。
倒れた物等は、もう動き出す気配は見られなかった。


「――――敵に慈悲は必要無い、だよね。お爺ちゃん」


口の中だけで呟くだけの言葉。背後で震える二人が聞けば、あまりに弱々しく覇気の無い飛鳥の声に驚愕しただろうが、あいにくそれを聞いた者はいなかった。
そして飛鳥は、未だ顔を背けた二人へ向けて怒声を上げる。

「”敵”から目を逸らすなッ! こいつ等はもう人間じゃねぇ…。ただの動く肉塊だ! 躊躇えば俺達がやられる! こうして立ち止まっているだけでも先輩がこいつ等みたいになっちまう可能性は跳ね上がるんだぞ! 猛、泣いている場合か!? 先輩も今頃、助けを求めて泣いてる筈だ! 此処で現実から目を背けて泣いてて良いのか!?」

二人が思わず飛び上がるような凄まじい大喝だった。
猛は飛鳥が打倒した物達に視線を向け、思わず顔を逸らしたが、顔をぶるぶると振って見据え、飛鳥の怒声に引きつけられたのか、奥からやってくる奴等に視線を向け、飛鳥の眼を見てしっかりと頷いた。そこに恐怖の色は無く、どんな事をしても佳代を助けると言う強い意志が窺える。飛鳥への言葉にも、何の含み無い、純粋な心からの言葉。

健二は飛鳥が倒した相手達と飛鳥を見比べ、飛鳥に何時もの―――祖父との稽古を見物した後の―――呆れた眼差しをやり、苦笑した。

「―――ごめん、飛鳥君。僕、佳代ちゃんを助けたい! お願い、手を貸して!」
「―――ほんと、お前は人間やめてるよな。ま、本当に今更だからどうでも良いけどさ」

化け物に対する恐怖もあったのだろう。ちょっと前までクラスメート…人間だった物を平然と処理した飛鳥を恐れる気持ちも生まれただろう。
でも、それを見て尚二人は、普段と何ら変わらぬ態度で飛鳥に触れた。

「――――最初から助ける手筈だろ。俺だって先輩は助けたいんだ。頭を潰せば倒せるとは言え、全部相手をするのは面倒だ。敵は左側へ飛ばすから、右側を付いて来い。
 教室とかにも奴等は侵入している可能性もある。扉の前を通る際には十分に注意しろ」

行くぞ、と告げて背を向ける飛鳥に、二人は顔を見合わせて苦笑した。
付き合いの長い二人は、飛鳥が二人の言葉に酷く安堵し、それを隠す為に先へ進んだ事を看破していたのである。






飛鳥は走りながら直系3メートル以内に近づく奴等を一蹴。頭を潰し、胴を薙ぎ、突き飛ばし、緩慢な動作でやって来るゾンビ達を全く寄せ付けない。
その動きは、一つ一つの動作が全て攻撃へと転じていて、全くの無駄が無い。健二達には飛鳥が獲物を振るっている姿さえ視認できず、ただ飛鳥が持っているモップの柄でゾンビ達を打倒している事しか分からなかった。


結構頻繁に飛鳥の家に遊びに行き、突発的に起こる飛鳥と祖父のじゃれ合いを目撃している二人からすれば、その光景も見慣れた物であったが、やはりこうして実戦の中で見ると殊更異様に見える。飛鳥の一見細い腕で、相撲部の先輩だった物が吹き飛んだのには度肝を抜かれたし、蹴り一発でゾンビ数体が纏めて吹っ飛び、更にはその後ろにいたゾンビ達がドミノ倒しよろしく倒れて行く様は、とんでもないの一語に尽きる。

「…これ何て飛鳥無双?」
「あれだよな。お前等が前やってた三国○双みたいな光景だよな」

何てコメントを手持ちぶたさの二人が漏らす程、眼の前の光景は圧巻だった。

「あ、飛鳥君待って!」

渡り廊下を抜け、管理棟を抜けようとした時だった。
突然の猛による制止の声に、飛鳥は壁に叩きつけ、自分に倒れたゾンビの頭を踏みつぶしながら応じた。

「どうした? 何か見つけたのか?」

かなりの運動をしている筈だが、その顔には微塵の疲れも見えない。
制服にも顔にも、結構な血が付着しているが、それも気にも止めていないようだ。

「うん、この廊下の奥に、うちのクラスの矢部さんと峰君がいる! 追いつめられてるんだ!」

その廊下は結構な長さがあり、構っていれば確実に時間をロスする。
飛鳥にとって身近な者や、その者にとって特別な意味を持つ相手で無ければ助ける価値を見出せない。
飛鳥とて鬼では無い。余裕があり、できる事なら助けてやりたいとも思う。だが今は一秒を争う状況だ。それなのに一番佳代の救出を望んでいる筈の猛がそんな事を言いだすとは思いもしなかった。

「馬鹿言うな、状況を考えろ。俺達は先輩を救出する為に動いてるんだぞ。さっきも言ったろ、こうしてもめている時間さえ、今の俺達にとって酷く貴重な時間を無駄に浪費している愚かな行為だぜ? それでもあいつ等を助けたいと言うならお前一人で行け。俺達は先輩を探す」

突き放したように冷たく告げる飛鳥の声に、猛は肩を震わせて俯いていたが、きっと顔を上げ、決意の籠った眼で飛鳥を射抜いた。

「確かにそうだっ! でも此処で彼等を見捨てたら僕は先輩に顔向けできないっ! 御免、飛鳥君っ! 僕、僕彼等を放ってけないよ! 佳代ちゃんは飛鳥君が助けてあげて!」

叫び、踵を返し、後ろから迫っていた女生徒だった物の頭を殴り潰し、猛は猛然とクラスメートのいる曲がり角に突っ込んだ。
奴等は奥にいる二人に引きつけられていて、向かう先にはいなかった。







これに一番慌てたのは飛鳥である。まさか本当に猛が突っ込んでいくとは思っていなかったのである。
眼の前の者であろうと、他に目的があったり優先順位が低ければ躊躇わずに切り捨てる事のできる飛鳥と違い、猛は誰に対しても平等な優しい男だ。眼の前で数日とは言えクラスメートなった者達が危機に陥れば、例え佳代と天秤にかけても決める事はできない。だったら、一刻も早く助けるか、信頼できる友人に託すしか無いのだ。

「え、ちょっ、待ておい! マジでか!? おぃいいいいい!? さっきの決意は何処行ったんだよ!? あぁっ、もうっ! ちくしょう!」
「っておい飛鳥! 俺を置いてくなぁあああああ!」

当然猛を一人になどできる筈が無い。飛鳥は慌てて猛を追いかけ、圧倒的な脚力ですぐさま追いつきその頭を殺さないよう手加減しつつ力一杯はたいた。

「この馬鹿がっ!? どうでも良い時に男を見せやがってそういのは、好きな子が危機に陥っている時に見せろよな!」
「あ、飛鳥君!? 佳代ちゃんを任せるって言ったじゃないか!」
「黙れこのあんぽんたんっ! お前置いて先輩助けに行って何の意味があるんだよっ! それこそお前を無視って助けに行ってみろ! 仮に助ける事ができたとして、俺達はお前を放って来た事を先輩に知られた途端サンドバックだよ!? 先輩に泣きながら殴られるとかもう二度とごめんだ! 三年前の先輩の暴走を思い出して見ろッ!」

良く走りながら噛まずにこれだけ捲し立てる事ができる物である。
猛も三年前の勘違い暴走事件を思い出し、冷や汗を垂らす。更に飛鳥達より遅れて後ろから、飛鳥の怒声に追従するように健二も声を張り上げる。

「飛鳥の意見に全面的に賛成ッ! あの普段おしとやかな先輩に憎しみに駆られた瞳で見られた俺達の気持が分かるか!? いや、お前には分かるまいこのシスコン野郎!
三年前は知り合ってなかったからまだ良いが、今一度同じように責められたら俺達、マジでもう立ち直れねっての! それこそ此処でお前を見捨てたら先輩助けた所であの時の二の舞じゃぼけぇええええええええっ!」

怒声と共に箒の柄を放り投じ、勝手な行動を取った猛へと制裁を加える。
が、基本的に運動音痴である健二の投げた柄は、猛へと向かってはいるものの、当たりそうにない。

「へぶっ!?」

だが、それを振り向きもせずに飛鳥が軽く触れて軌道修正し、猛の頭に命中するように誘導する。
鈍い音を立て、頭部に柄が当たった衝撃で、前につんのめって転がる猛。無駄に高度な事を無駄な事に使う飛鳥。この辺しっかりと祖父の血を継いでいた。

「ほぐぅっ!? おぶっ!?」

更におまけとばかりに倒れた猛の背中を飛鳥が踏みつけて行き、当然それに健二も続く。
飛鳥はそのままの勢い元、五体の肉塊達に囲まれ、必死にバットを振り回して矢部を護ろうとしている峰達の元に辿り着き、柄を一閃、二閃。


最初の一撃で、大体同じ身長だった四体の肉塊達の頭部を吹き飛ばし、身長の関係であたらかった小柄な肉塊へ向けてもう一撃。
刹那の間に五体の肉塊を今度こそ、本物の死体へと変え、何が起こったか理解できていない峰達は、突然頭部を無くして倒れ伏す肉塊達と、その背後に佇む飛鳥を見て、助けられた事を悟ってへなへなと座り込んだ。

「た、助かったよ霧慧ッ! ありがとう!」
「ほんとに、ほんとっ…うっ、ひぐっ…ありが……」

半泣きで飛鳥に頭を下げる峰と、ぼろぼろと涙する矢部。
余程怖かったのだろう、ぶるぶると震える矢部は小動物のようでちょっと可愛らしかったが、それはそれ、これはこれである。
飛鳥は面倒くさそうにあー良いから良いからと手を振り、矢継ぎ早に言葉を発する。

「こいつ等は頭を潰さなきゃ死なないらしい。それ以外は攻撃しても急所を潰しても基本的に無意味だ。動く動作は分かってるかもしれないがせいぜい徒歩程度で緩慢。
 ただ力は非常に強いから捕まったらアウト、諦めろ! 峰はさっきから何とか押し返していたようだから、扉から出て来る奴等に気を付けて、進むのに邪魔な奴だけ脳天カチ割って脳髄をぶちまけてやればまず大丈夫! さっきの何気に洗練された動きからして何か武術やってた? 槍術か何かだと思うんだが!」
「え、あ、あぁ。中学までは槍術を」

よくこれだけの台詞を噛まずに素早く言える物だと戸惑いながら頷けば、飛鳥は大袈裟に肩を竦めて戸惑う峰の肩に両手を置いた。

「おぉ、それは素晴らしい! なら此処からはもう大丈夫だよな!? さっき教えた事に気を配りながら進めば大丈夫な筈だ! 連れてってやりたいとこだけど、その調子じゃお前等すぐには動けないだろ!? 悪いが手助けしてやれるのは此処までだ! 矢部をしっかり守ってやんなよ! じゃあな!」
「えっ、あっ、まっ!」

しゅたっと片手を上げて踵を返す。
あまりに突然色々な出来事が起きたせいで、飛鳥は少々自棄になっているらしい。健二がかつて見た事が無いくらい飛鳥の様子は可笑しかった。

飛鳥は未だ倒れ伏す猛の襟首を掴み、どうやらちょっと当たり所が悪かったようで気絶しているらしい猛を引き摺り、猛然と元来た道を駆けだした。
やはり、声に引きつけられているのか、向かって来ていた物等を、峰達へのサービスとして全部頭を潰しながら、全くペースを変えずに突き進む。

その後ろを、もうこいつ駄目かもしんないと、ほろりと涙しながら箒の柄と、猛のモップの柄を回収した健二が続くのだった。






猛は教室棟へ入った所で目覚めた。
自分の状態よりも、すぐに峰達がどうなったか確認するのは実に猛らしいと正気に戻った飛鳥と、健二が苦笑する。

「峰達の付近にいた奴等はほとんど倒したから大丈夫の筈だ。先輩を助けたら迎えに行こう。それなら良いだろ?」
「う、うん……。ごめんね、飛鳥君。僕の事を思って厳しい事を言ってくれてるのに無碍にするような真似をして……」
「ま、あの方がお前らしいっちゃらしいさ。他人がやったんじゃあれだが、お前は友達だし別に良いさ。俺も結構お前にゃ迷惑かけたしな」

飛鳥が何時ものように楽しそうに笑うので、猛が安心したように頷いた時だった。
飛鳥の耳が、ドアが打ち破られるような音と、聞き覚えのある声を捉えた。

「今のはまさか…先輩の悲鳴!?」
「え!? 佳代ちゃんの!? 僕は何も聞こえ無かった!」
「俺もだ! でも飛鳥が言うなら確か何だろう! 飛鳥、場所は分かるか!?」

健二は飛鳥が身体能力だけでなく、五感も人外めいている事を知っている。
事件が起こったばかりの時は、教室が非常にざわめいていたのと、窓など閉め切っていた事、騒ぎの発生元が、飛鳥が知る由も無いがかなり遠い校門に近かった故に、その時に起こった騒ぎは逃してしまったが、今は違う。ある程度静まっているし、距離も結構近いのだ。間違えようが無かった。

「上だ! 恐らく三年の教室のどっか! でも扉が破られるような音も聞こえた!」

階段や踊り場にいる敵を打ち倒しながら、飛鳥が叫ぶ。

「飛鳥君、僕達は自分達で何とか進むから、佳代ちゃんををお願い!」
「そうだ、行け! かなりやばい状況何だろ!? これくらい俺達で何とかして見せる!」

猛の必死な祈るような懇願と、震えながらも柄で突き、階段から突き倒す二人の言葉に、飛鳥も即座に頷いて動く。
今までただでさえ、視認する事が困難だった飛鳥の身体が、二人の眼の前で掻き消えるように消え去ると、残された二人の頬を疾風が駆け抜け、階段を下って来ていた連中の頭が一瞬にして消失し、ばたばたと倒れ、転がり落ち始める。

「お願い、佳代ちゃんっ…どうか無事で」

飛鳥を追って階段を駆け上り始めた猛の呟きが、飛鳥の移動範囲を逃れたであろう、肉塊の呻き声によって、かき消された。



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